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八ツ場ダム、今も賛否 治水、「堤防が優先」見方も 利水、需要減予測どう反映  ダムの町、63年の曲折 八ツ場、本体工事に着手

2015年1月22日
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八ッ場ダム本体工事が開始されたことに関連して、八ッ場ダムの問題点について賛否両論の見解と、ダム事業が地元に与えた影響をまとめたをまとめた朝日新聞のネット記事を敬愛します。

八ツ場ダム、今も賛否 治水、「堤防が優先」見方も 利水、需要減予測どう反映

〔朝日新聞2015年1月22日05時00分)http://digital.asahi.com/articles/DA3S11563341.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11563341
(写真)八ツ場ダムの完成イメージ
写真・図版
21日、群馬県長野原町で始まった八ツ場(やんば)ダムの本体工事。計画浮上から63年たつが、国が建設の目的に挙げる治水・利水の効果には、今も賛否両論がある。
「時代に合わない国の大型直轄事業」。2009年に政権交代を果たした民主党は公約通り、八ツ場ダムの建設中止に突き進んだ。しかし、国土交通省関東地方整備局は、ダムの必要性を他の治水策と比べて再検証。11年に出した結論は「建設継続」だった。
根拠の一つに挙げたのが、ダムで防げる洪水の被害額を、治水にかかる事業費で割った「費用便益比」だ。1倍以上であれば、効果が費用を上回ることになり、八ツ場は6・3倍だった。07年は2・9倍、09年は3・4倍で、13年には6・5倍に上昇している。
地方整備局は「利根川下流の堤防が未整備な現状を考慮するなど最新データで見直している」とするが、会計検査院は10年に「想定が過去の水害の被害額を上回っているものが多い」と指摘。「算定方法を合理的に」と改善を求めた。
有識者の見解も割れる。
大熊孝・新潟大名誉教授(河川工学)は「八ツ場の予定地は地すべり地帯で砂がたまりやすく、ダムの適地ではない。利根川水系では河川改修や堤防強化を優先すべきだ」と話す。一方、宮村忠・関東学院大名誉教授(同)は「大きな支川が多いのが利根川の特徴。堤防を造り続けるのは非現実的で、八ツ場は必要だ」と訴える。
利水面でも論争がある。日本水道協会によると、利根川流域6都県の1日最大給水量は92年度の1418万立方メートルがピークで、12年度には1190万立方メートルと16%減った。「節水の機器普及と意識向上」が要因だ。人口減も予想される。しかし東京都水道局は「施設の老朽化や政策転換の可能性」を理由に12年度の469万立方メートルから、30年度には582万立方メートルへ増加すると予測。市民団体は「ダムを造るための方便だ」と批判している。
宮村名誉教授は「利根川水系は取水制限を伴う渇水が全国で最も多く起きている。様々な産業基盤が集まる首都圏では水資源の安定的確保が必要だ」と話す。
■建設継続46カ所、中止21 全国83計画、ダム脱却進まず
国交省の有識者会議(座長=中川博次・京大名誉教授)は民主党政権下の10年に「『できるだけダムに頼らない治水』への政策転換」を提言。全国83ダムについて必要性の再検証が始まった。安全性や費用面で他の治水策と比べ、住民の意見も聴いて判断するもので、「ダムありき」からの脱却かと注目された。
中川座長は「財政状況が悪化する中、治水も利水も財源は限られる。緊急性があり、効果がある方法は、地域で暮らす人だからわかると考えた」と振り返る。
だが全国では今、ダム計画が続々と息を吹き返す。83ダム計画のうち、建設継続は46カ所(55%)で、中止は21カ所(25%)。残る16カ所で検証が続く。大規模な国直轄の25カ所に限ると中止は5カ所だけだ。
再検証は国交省の出先機関である地方整備局や都道府県といったダム計画の事業主体が担った。中川座長は「客観的なデータに基づいて行われている」と評価するが、省内からは「民主党政権時代の精神論では命は守れない。必要なダムは造る」と本音も漏れる。
政府が来年度当初予算案に計上したダム事業費(国費)は1616億円。今年度当初より9・1%増えた。国交省治水課は「再検証で『建設継続』となったものが多いだけ。5年前よりは約4割減っている」と、“ダム復活”との見方にはくぎを刺す。
危機感を抱く全国の学者約140人は「ダム検証のあり方を問う科学者の会」を結成し、国交省に見直しを求める。共同代表の今本博健・京大名誉教授(河川工学)は「事業主体による再検証を認めたところから問題があった。有識者会議の委員もダム推進派が大半。今からでも市民団体や流域住民も交えて公開で議論すべきだ」と訴える。(小林誠一)
◆キーワード
<八ツ場ダム> 利根川の堤防が決壊し約1100人が死亡した1947年のカスリーン台風を受け、52年に計画が浮上した。
総貯水量1億750万立方メートルは東京ドーム87杯分。水没予定地は316ヘクタールに上る。移転対象の470世帯のうち、昨年10月までに456世帯が転居した。

失速する「脱ダム」 八ツ場本体着工、計画浮上から63年

〔朝日新聞2015年2015年1月22日05時00分)http://digital.asahi.com/articles/DA3S11563456.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11563456
国土交通省は21日、八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の本体工事に着手した。総事業費約4600億円は国内のダムで最大。一方、国交省は2010年に八ツ場を含む全国83のダムで必要性の再検証を事業主体に指示したが、これまでに55%が「復活」している。▼5面=今も賛否、33面=地元苦悩
ダムの再検証は民主党政権時代に「『できるだけダムに頼らない治水』への政策転換」を掲げて始まった。だが「中止」は21カ所にとどまり、「建設継続」が46カ所。残り16カ所で検証作業が続く。政府は来年度当初予算案に前年度比9・1%増のダム事業費(国費)を計上。国土強靱(きょうじん)化を掲げる自民党政権のもと「脱ダム」は失速した。
八ツ場ダムは利根川などの堤防が決壊し、関東だけで約1100人が死亡した1947年の「カスリーン台風」を機に、52年に計画が浮上。洪水や水不足の防止で恩恵があるとされる群馬、埼玉、東京、千葉、茨城、栃木の6都県などが総事業費の6割を、残りは国が負担する。ただし今後、地滑り対策などで、事業費がふくらむ可能性がある。
国は72年以降に利根川で取水制限が必要な渇水が15回もあったとして、水源確保の重要性を強調。70~80年に1回の豪雨による洪水も想定し、利根川の最大流量を抑制できるとする。一方、首都圏の水需要は節水の影響で92年度をピークに減少しており、治水面でも河川改修や堤防強化の優先を求める専門家は多い。
(小林誠一、井上怜)

写真・図版

ダムの町、63年の曲折 八ツ場、本体工事に着手

〔朝日新聞2015年1月22日05時00分)http://digital.asahi.com/articles/DA3S11563447.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11563447
計画浮上から63年。21日、八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の本体工事が始まった。水没予定地にいまもとどまる人、新たな事業に乗り出した人。さまざまな生活をのみ込み、ダムは完成へと動き出した。▼1面参照
(写真)自宅の前に立つ冨沢吉太郎さん。奥に水没予定地に架かる不動大橋が見える=21日、群馬県長野原町、関田航撮影
写真・図版
「1軒また1軒と引っ越していき、うちだけになってしまった」
元長野原町議会議長の冨沢吉太郎さん(74)は寂しげに語った。
全世帯がダム湖に沈む川原湯(かわらゆ)地区。移転対象の176世帯中、水没予定地にとどまっているのは冨沢さんを含め3世帯だけだ。谷あいに立つ築100年を超す自宅の周囲には、撤去された家々の土台が目に付く。
代々農家で、約2ヘクタールの畑で桑やこんにゃくいもを栽培してきた。ダム計画が持ち上がると反対運動に加わり、国や県に陳情を繰り返した。その行動力を買われ、30代で町議になった。
だが町は1992年、生活再建と引き換えに計画を受け入れる。「道路一つ直すにも、国や県からカネが出ない。追い込まれた末の苦渋の決断だった」
2001年に立ち退きの補償交渉が始まったが、代替地の整備が進まない。しびれを切らして町外へ出る住民が相次いだ。分譲は07年から進められた。だが、冨沢さんに提示された土地では小規模な農業しかできない。盛り土をした宅地の安全性も不安だった。
昨秋、自宅近くの国道145号が工事車両専用に。買い物や通院に遠回りを強いられ、精神的にも追い詰められた。年が明け、別の代替地への移転を決めた。「自分の生活を守りたいだけなのに、悪者扱いされた。ダムなど造らず、そっとしておいてほしかった」
国道のバイパス沿いにある道の駅「八ツ場ふるさと館」。ダム建設に伴う地域振興施設として13年4月にオープンした。「反対してもダムはできる。だったらダムを再生の起爆剤に」と、地区のダム対策委員長だった篠原茂さん(64)らが立ち上げた。ダムの受益者である利根川流域6都県の負担で整備。住民が起こした株式会社で運営する。
150戸の契約農家が栽培した野菜や果物の直売が人気で、行楽シーズンには首都圏からの車で駐車場は満杯になる。開業1年の売り上げは約3億円と目標を25%上回った。「何といっても八ツ場の知名度のお陰」と篠原さん。「品ぞろえやサービスをもっと充実させ、ダム湖観光のお客さんを迎えたい」と意気込む。
(土屋弘)
■建設でも中止でも、地元に影
ダム建設は継続か中止かを問わず、地域住民の生活再建に暗い影を落とす。
設楽(したら)ダム(愛知県設楽町)は民主党政権下で必要性の再検証が始まったが、昨年4月に継続となった。総事業費は約3千億円。
人口約5400人の町は道路整備などダム建設に伴う開発に期待する。だが、水没する124戸の半数ほどは町外へ移転。73年の計画浮上時に見込んだ水需要もすでにない。町外の息子との同居をあきらめた90代女性は「早く決まっていれば」と嘆く。立ち木トラストなどでの反対運動も続く。
近畿最大級の多目的ダムとして計画された丹生(にう)ダム(滋賀県長浜市)は事実上中止された。近畿地方整備局などが昨年1月、「コストや治水能力などを総合評価すると有利ではない」とし、国の決定を待つ。住民が移転を終えた後に中止と判断された初のケースだ。
水需要が減り、大阪府が03年、京都府が04年に利水事業から撤退を表明。滋賀県で06~14年に知事を務めた嘉田由紀子氏も建設に慎重な構えだった。地整などは昨夏、移転住民らでつくる対策委員会に、跡地の整備や地域振興策で意見を求めた。委員長の丹生(にゅう)善喜さん(67)は「ダム建設を見越した道路や河川の整備は止まり、路肩が崩れて通れない県道がある。ダム建設を求める住民もいる」と悩む。
再検証前に中止が決まった川辺川ダム(熊本県五木村)。当初は、ダム予定地を村が使えるよう、生活再建の特別措置法を成立させて、地域振興につなげるシナリオだった。しかし、民主党政権時代に国会へ提出された法案は廃案となり、自民党政権が復活した。土地は今も国が所有。企業も誘致できない。和田拓也村長は「村はダム計画のため、強制的に過疎にさせられた」と話す。
(伊藤智章、坂田達郎、知覧哲郎)

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