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報道

熊本、球磨川治水 国内最大規模の「流水型ダム」提案

2020年12月19日
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12月18日、「球磨川流域治水協議会」の第2回会合が開かれ、国交省は川辺川ダムを軸とする治水案を提示しました。その記事を掲載します。

治水対策のメニューにはいろいろと書いてありますが、ゲート付き流水型ダムの川辺川ダムを建設することがメインになっています。

 熊本、球磨川治水 国内最大規模の「流水型ダム」提案

(西日本新聞 2020/12/19 6:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/674870/

球磨川の治水対策のメニュー地図

7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川流域の治水策として、国土交通省九州地方整備局は18日、支流・川辺川への流水型ダム建設を含む素案を公表した。既存ダムの再開発や遊水地整備などを組み合わせた「流域治水」を実現することで、次に熊本豪雨級の雨が降った場合、大規模氾濫が発生した熊本県人吉市付近では、堤防の越水を防ぐほどの水位低減効果があるとする試算も明らかにした。

素案は、県と流域12市町村などでつくる流域治水協議会で提示した。遊水地の整備範囲を、球磨川上流部や人吉市を流れる支流付近に設定。球磨村などの山間狭窄(きょうさく)部では河道の掘削・拡幅に加え、道路や宅地のかさ上げなどの対策を盛り込んだ。その上で、九地整は流水型ダム案の具体化に向けた地質調査や環境調査、構造の検討などに「速やかに着手する」と表明した。

また、熊本豪雨における人吉市付近のピーク時の流量毎秒7400トンに基づき、対策の効果を試算。流水型ダムで同2600トン、県営市房ダムの再開発で同200トン、遊水地で同300トンを貯水するなどして、最下流の八代市平野部や人吉市などでは越水を防ぐほどの効果がある一方で、狭窄部の八代市坂本町や球磨村付近での氾濫は完全に防げないという。

出席した首長からは「時間がかかる環境アセスメントをする必要があるのか」など、治水対策を急ぐよう求める意見もあった。

九地整は次回会合で、田んぼダムやため池の利用、土地の利用制限、避難対策など河川以外の対策案を提示する。流域治水の全体計画は来年3月に策定予定。 (古川努)

周辺環境に及ぼす影響未知数

球磨川流域の治水対策の一つである支流・川辺川へのダム計画で、国土交通省が素案で示した「流水型」は同形態としては国内最大になる。常に水をためる「貯留型」に比べて環境負荷は少ないとされるが、前例のない規模だけに周辺環境に及ぼす影響は未知数。国交省は熊本県の意向に沿い、環境影響評価(アセスメント)などの実施に前向きだが、法定通りに行う場合は最長5年近くを要することもあり、事業スケジュールを左右しそうだ。

1999年施行のアセス法に基づけば、国交省は本体着工に必要な河川整備計画を策定する際に、環境影響を調べる必要がある。主に(1)環境面で配慮すべき事項(水質や生態系、地質など)の検討(2)調査方法の決定・実施(3)結果-を各段階で公表し、住民からも意見を募る。知事は市町村長の意向を踏まえて意見を出せるほか、環境省も内容に問題がないかチェックする。

国交省が今回提示したダム案では、大雨時に洪水調節でたまる容量は1億600万立方メートル。国内最大の益田川ダム(島根県)など既存の流水型5基の72万~650万立方メートルを大きく超え、建設中の足羽川ダム(福井県・2820万立方メートル)の3倍以上ある。既存の流水型ダムは参考にしづらい面があり、「ダムの堤体が厚く、放流口が長いため、魚が遡上(そじょう)しにくくなる」など生態系への影響に対する専門家の懸念も根強い。

従来の川辺川ダム計画が発表された66年にはアセス制度はなく、旧建設省は独自に環境調査した結果を2000年に公表。専用設備によって貯水池の水質を保全し、下流への影響は軽減可能-などとした。

熊本県の蒲島郁夫知事は流水型ダムについて「客観的かつ科学的な環境への影響評価が必要」とし、アセス法に基づく調査または同等の調査を要望し、国交省も必要性を認めている。「時間を要しても厳密に法定通り行う」「法に準じながら過去の環境調査も参考にし、一部手順を省略する」などの選択肢が想定され、環境省と協議するとみられる。 (大坪拓也)

 

 川辺川ダム「流水型にゲート」 国交省提示、放流量を調節可能に

(熊本日日新聞2020/12/19 08:43) https://www.47news.jp/localnews/5622593.html

7月豪雨で氾濫した球磨川の治水対策に関し、国土交通省は18日、熊本県の蒲島郁夫知事が支流・川辺川への建設を要請した治水専用の流水型(穴あき)ダムについて、放流量が調節できるゲート付きとする案を県や流域12市町村でつくる流域治水協議会の第2回会合で提示した。流水型ダムは、現行の川辺川ダム(貯水容量1億600万トン)の規模を維持した場合の治水効果(試算)を示した。実現すれば国内最大となる。

流水型ダムは、洪水時のみに水をため、平時はためない構造。本体下部の穴あき部分にゲートを取り付ければ下流への放流量を操作できる。一方、ダムの規模について同省は「建設場所を含めて検討中」と説明した。

流水型ダム建設と合わせて県が実施を求めている環境影響評価(アセスメント)について、国交省は同協議会に「追加して必要となる環境調査や環境保全措置を検討する」と報告した。

この日の会合では、ハード・ソフト両面の対策を総動員し、7月豪雨の最大流量(人吉地点で毎秒7900トン)に対応できる治水対策を目標とすることを確認した。目標値は、人吉地点で7千トンとした国の「河川整備基本方針」(2007年策定)を上回った。

国交省は、7月豪雨の流量に対し、新たな対策を実施した場合の水位低減効果の試算も公表した。人吉地点(7900トン)では流水型ダムで2600トン、既存の県営市房ダムで500トンをカット。さらに市房ダムに放流口を増設し、貯水容量を増やす改良で200トン、遊水地整備で300トンを削減し、4300トンまで減らせるとした。

河道掘削や引き堤を加えると、人吉地区の水位は概ね堤防の高さを数十センチから2メートル下回るとした。ただ、中流域の八代市坂本町付近では堤防を最大1メートル越える地点もあった。

国交省と県はこの日提案された治水対策メニューについて、河川工学など専門家から意見を聴く場を23日に設ける。来年の梅雨時期に備えて直ちに実施する「緊急治水対策」を年明けに公表した上で、流域全体で推進する「球磨川流域治水プロジェクト」を年度内にまとめる方針。(高宗亮輔)

 

川辺川ダム、開閉式のゲート備えた流水型に 国交省が案

(朝日新聞2020年12月18日 21時42分)

 

川辺川に流水型ダム建設、国が提案 熊本県知事「速やかな対応を」

(毎日新聞2020年12月18日 20時21分) https://mainichi.jp/articles/20201218/k00/00m/040/310000c

(写真)熊本県のあさぎり町、多良木町などにまたがって田畑が広がる球磨川流域=2020年11月17日午前10時50分、本社ヘリから津村豊和撮影

7月の九州豪雨で氾濫した球磨川の治水対策として、国土交通省は18日、従来の川辺川ダム計画の貯水規模を維持した治水専用の流水型ダムを建設する案を、熊本県や流域の12市町村に示した。実現すれば流水型ダムとしては国内最大となる。2009年に旧民主党政権が計画を中止した後、国はダムによらない治水を検討してきたが、九州豪雨後に蒲島郁夫知事がダム容認に転じたのを受け、11年ぶりにダムによる治水に回帰した。

18日に熊本県庁であった「球磨川流域治水協議会」の第2回会合で、国交省はダムを軸に遊水地や河川掘削などを組み合わせて氾濫を抑止する流域治水の案を提示した。蒲島知事は「必要な予算措置を含めて、速やかな対応をお願いしたい」と支持し、市町村からも異論は出なかった。国交省は今後、有識者から意見を聞くなどして具体的検討に入り、年度内に治水策を決める。

国交省案は、貯水型の多目的ダムから水をためない流水型ダムに変える。その上で不要になる農業や発電の利水容量をすべて治水に活用することで、洪水調節容量は従来計画に比べ少なくとも約1・2倍の1億600万トンになるとした。国交省の担当者は会合で「(従来計画の容量を)最大限活用する観点で考えたもの」と説明した。国交省は豪雨後、仮に川辺川ダムがあれば人吉地区の浸水面積が6割減らせたが、球磨川の氾濫自体は防げなかったとの推計を示していた。

国交省案ではまた、ダム本体にゲート付きの水路を設置。ゲートを開閉することで放水量を調整し、豪雨時に水をためられるようにする。国交省は流水型であれば水質を維持しやすく、魚の遡上(そじょう)など河川の連続性を確保しやすいと強調した。一方、蒲島知事が求めている環境影響評価(アセスメント)を実施するかどうかについては明言を避け、ダムの完成時期のめどや概算事業費も示さなかった。【城島勇人、平川昌範】

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