水源連:Japan River Keeper Alliance

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神奈川)海岸線の後退防げ 県、「養浜」の拡大を検討

2018年10月3日
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ダムの堆砂で後退した海岸線の対策として、ダムの堆積土砂を使って養浜を行っているという記事を掲載します。

神奈川)海岸線の後退防げ 県、「養浜」の拡大を検討
(朝日新聞神奈川版2018年10月3日03時00分)https://digital.asahi.com/articles/ASL9F55T2L9FULOB00V.html?iref=pc_ss_date

(写真)茅ケ崎海岸「中海岸地区」の養浜前(2005年12月)の様子=神奈川県提供
(写真)養浜後(2017年6月)の同じ箇所。土砂が盛られ、砂浜の幅が回復している=神奈川県提供

神奈川県は、相模湾岸で進む海岸線の後退を防ごうと、これまで主に相模川の河口周辺の砂浜で進めていた盛り土作業「養浜(ようひん)」を、より広範囲に行う方向で検討を始めた。
県によると、相模湾岸で海岸線の後退が目立つのは、相模川河口の東側の茅ケ崎海岸(茅ケ崎市)。とりわけ同海岸の中海岸地区は、1950年代半ばからの30年間に最大約50メートルの海岸線後退を確認した。相模川上流でのダム建設や中流域での川砂利採取、護岸整備などの進展に伴い、川から供給される土砂の量が減ったことが要因と考えられるという。
県は生態系や水質への影響を勘案し、同じ水系のダム底の土砂を使った養浜を2006年から実施。11年に定めた「相模湾沿岸海岸侵食対策計画」でも養浜を対策の中心に据えている。
中海岸地区では相模川上流の相模、道志両ダム(いずれも相模原市緑区)の底の土砂や、相模湾岸の周辺漁港付近にたまっていた土砂計約37万立方メートルを運び入れ、後退していた海岸線を約40メートル回復させたという。
一方で、中海岸地区の東側にある菱沼地区や相模川河口の西側にある平塚海岸では、海岸線が養浜で復活した部分もあるが、高波で砂浜が削られるなどしている。エリアによって養浜の効果は異なるという。
県は毎年、相模湾全体で測量や環境調査などを行い、養浜の効果や影響を検証。ダム底の土砂を入れても、海洋環境の面で影響は見られないとしている。
今年度からは試験的に、相模原市緑区と愛川町、清川村にまたがる相模川上流の宮ケ瀬ダム(国土交通省管理)の底の土も養浜に使っている。使える土が増え、養浜をより広い範囲で行うことができるという。県砂防海岸課は「相模川水系は上流のダムから河口まで県内にあり、ダム底の土砂をさらう必要性と、養浜の必要性が、経費面も含めて県の中でうまく一致している」としている。
養浜による砂浜の回復と保全は、黒岩祐治知事が2期目で掲げた主要施策のひとつ。同課は「養浜は砂浜を利用するサーファーなどから『コンクリートを使わない公共工事』として評価も高い」として、実施エリアを広げる方針だ。どこで実施するかについては「今後検討する」としている。(岩堀滋)

水資源 水巡る対立、世界で激化 国の争い00年以降357件

2018年9月25日
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世界各地で水資源を巡る争いが頻発しているという毎日新聞の記事を掲載します。

水資源 水巡る対立、世界で激化 国の争い00年以降357件

(毎日新聞2018年9月21日 東京朝)刊)https://mainichi.jp/articles/20180921/ddm/007/030/027000c

(写真)メコン川とトンレサップ川の合流地点。メコン川では上・中流のダム建設計画が流域国間の争いの種となっている=カンボジア・プノンペンで、須賀川理撮影

メコン川
世界各地で水資源を巡る争いが頻発している。アジア、アフリカなどの人口急増に伴う水の大量使用、ダム建設による河川流量の減少などの環境変化、地球温暖化による干ばつなどが大きな要因だ。一方で、水資源の保全を目指す新たな取り組みも始まっている。「水」を巡る現状を報告する。
ダム増加、下流域反発 アジア
「20世紀は(各国が)石油を巡って争う世紀だったが、21世紀は水で争うことになる」。1995年、当時世界銀行の副総裁だったイスマイル・セラゲルディン氏はこう予測した。あれから23年。大規模な紛争こそ起こっていないが、水を巡る人々の対立は激しさを増している。
90年に約53億人だった人口は現在、約75億人。2050年には約97億人に達すると予想される。人口増加は水の使用量増加に直結する。経済協力開発機構(OECD)は、00~50年の間に製造業の工業用水は5倍、発電に使う水は2・4倍に増加すると予測、50年には世界人口の40%以上が深刻な水不足に見舞われると警告している。
inRead invented by Teads
米シンクタンク「パシフィック・インスティテュート」によると、水を巡る各国の争いは00年以降で357件に上る。地域別では、サハラ砂漠以南のアフリカ93件▽中東90件▽南アジア60件--など。人口が増加し、干ばつの影響を受けやすい中東、アフリカ、アジアでのトラブルが増加している。
メコン川で続々建設
例えば、東南アジアで大きな問題となっているのが、中国からミャンマー、ラオス、カンボジア、ベトナムを通って南シナ海に注ぐメコン川での「ダム建設」を巡る争いだ。
メコン川は流域に住む約7000万人の生活を支える「要」だ。上流に位置する中国は人口増加によるエネルギー需要などを満たすため、複数のダムを設置。さらに20以上のダムの建設計画がある。中国は「ダム建設による下流域への影響はほとんどない」との立場だが、下流域の国々は河川流量の減少、生態系の破壊、漁獲量の減少などが起こり、農業や漁業に影響を与えているとして、中国に強く抗議している。
一方で、中流域にあるラオスもダム建設を計画する。水力発電を行い、タイに電気を売るためだ。これには下流域のベトナムが抗議しているが、ラオスは河川を自国資源の一つとして位置づけ、譲る様子はない。流域国は「メコン川委員会」という仲裁機関を作っているが、委員会に法的な権限がない上に、中国は加盟しておらず、対立が収まる気配はない。
中央アジアでは、キルギスとタジキスタンがシルダリヤ川などの上流にダム建設を計画し、下流のウズベキスタンがキルギスに天然ガスの供給停止で対抗するなど対立が表面化した。
気候変動の影響も
インドでは、気候変動で南部カベリ川の流量が減少。16年9月には流域のカルナタカ州とタミルナド州の住民が対立して暴動が発生。警察の発砲によって2人が死亡し、500人が逮捕される事態となった。
イスラム過激派のテロに悩まされている東アフリカのソマリアでは、干ばつによる食料不足が混乱に輪をかけ、さらなる不安定化につながっている。
水問題に詳しい米オレゴン州立大学のエリック・スプロール研究員は今後、複数国にまたがる国際河川について、アジアでは807、南米では354のダム建設が予定されており、「水を巡る対立」がさらに増加する可能性があると指摘。「各国(または各地域)は事前に、水資源の利用を規定した条約などを結ぶ必要がある」と指摘する。【ウィーン三木幸治】
干ばつ、内戦で深刻化 中東
水資源を巡る問題が特に深刻化しているのが中東だ。砂漠地帯では水不足が住民生活に大きな影響を与えるため、各国の政権にとって無視できない内政課題であり、時には外交問題にも発展する。
たとえばイラク。南部バスラやアマラでは今年7月以降、停電や断水が頻発する政府の公共サービスに抗議するデモが続く。現地ジャーナリストによると、デモ参加者は「水が欲しい」などと訴えているという。干ばつの影響で耕地面積が減り、南部では水のある土地を求めて離村する農家も続出している。
イラクでは14年から台頭した過激派組織「イスラム国」(IS)との戦闘が昨年にほぼ終結し、荒廃した国土の復興にようやく乗り出した。だが今年5月の国会の総選挙後、各勢力の連立交渉が難航。新政権は4カ月以上も発足せず、公共サービスは停滞し、南部では汚染された水道水を飲んだ住民が多数入院しているという。

(写真)シリア内戦でアサド政権と反体制派が奪い合った山岳地帯の水道施設=シリア南部アインフィージャで
戦闘で施設破壊
「水を巡る争い」で忘れられないのが、内戦が続くシリアを取材した時だ。
反体制派の武装勢力は13年、首都ダマスカス西郊の水源の町アインフィージャにある水道施設を制圧した。だがアサド政権軍はこの町を徹底的に空爆し、17年1月に奪還した。
記者は17年12月、山岳地帯に位置するこの町に入った際、言葉を失った。黒焦げのまま放置された廃虚の家々がどこまでも続く。銃を構えた監視役の政権軍兵士からは「廃虚は撮るな」と写真撮影を止められた。「水のため」に敵の拠点を破壊し尽くした痕跡を、政権側は外国人記者に見せたくなかったのだろう。
取材が許可されたのは、山のふもとにある水道施設のみ。地下水をくみ上げるパイプはほぼ復旧していたが、がれきが放置されている場所も多く、戦闘の激しさを物語っていた。取材後、ある兵士が「戦争は水を制する者が勝つ」と話すのを聞いた。

(写真)古代から人々の営みとともにあったナイル川=エジプト南部ルクソールで、いずれも篠田航一撮影
ナイル川でも「紛争」

ナイル川
実際の戦闘に発展しなくても、水問題が「外交紛争」を引き起こすケースもある。たとえばエジプトだ。近年はナイル川上流に位置するエチオピアとの対立を深めている。

(写真)国際原子力機関(IAEA)で地下水の年代測定を担う松本拓也分析官。研究室には、自ら設計した分析装置が設置されていた
背景にあるのは、10年からエチオピアが建設を始めた巨大ダムの存在だ。仮にダムが完成し、ダム湖に水がたまれば、下流に向かう水量は減少する。17年6月、エジプトのシシ大統領はウガンダで開かれたナイル川流域国による国際会議で「わが国は人口も増え、水不足が始まっている。流域国は水資源維持のため協力すべきだ」と訴えたが、エチオピア側は「下流への影響はない」と反論し、協議は続いている。
追い打ちをかけるのが人口爆発だ。70年に約3500万人だったエジプトは現在約9500万人に激増。このため、地元メディアによると、70年に1972立方メートルだった1人あたりの年間水消費量は、13年には663立方メートルまで減った。国連が「絶対的な水不足」のラインとする500立方メートルも近付いている。中東はまさに、水資源を巡る争いの「最前線」になっている。【カイロ篠田航一】
地下水の年代調べ活用 IAEA分析官・松本拓也氏、装置設計から解析まで担当
核施設の査察などで知られる国際原子力機関(IAEA、本部ウィーン)に、世界の水資源を有効活用するため、水に含まれる同位体を使って地下水の全貌を調査している部門がある。ここに異色の日本人研究者がいる。岡山大准教授からIAEAに転身した松本拓也分析官(49)だ。
松本さんが取り組むのは、放射性同位体を使った地下水の年代測定だ。地表に降った雨水は、地下に染み込んで地下水となるが、地表降下後に経過した時間によって同位体の量や構成が異なる。例えば水素の同位体であるトリチウムは12年で半減し、ヘリウムの同位体を作る。そのため、地下水に含まれるヘリウムの数を調べれば、その水が何年前の雨水なのか知ることができる。
日本は降水量が多く、地形が急勾配であるために、比較的若い年代の地下水が多い。富士山麓(さんろく)の地下水は数十年前の雨水であることがわかっている。これはこの地域の地下水が数十年という短期間で入れ替わり、持続的に水資源として活用できることを示している。一方、アフリカなど水資源が不足している地域では、数万年という「年齢」の地下水に依存している場合が多い。古い地下水は石油同様、1回限りの資源であるため、持続的な活用については厳密な管理が必要だ。
だが地下水にごく微量しか含まれない同位体を分析するのは、途上国の当局や機関にとっては困難。そこでIAEAが途上国の調査に協力を始めた。元々、大気中での核実験が水資源にどう影響するかを調べており、ノウハウを持っていたのだ。
2010年からIAEAで働き始めた松本さんは、まず比較的若い年代の地下水の調査を欧州や中東など10以上の加盟国とともに実施。現地で地下水サンプルを採取する手法などを確立するとともに、年間300を超える試料の分析を可能にするための装置を完成させた。
IAEAは昨年まで、干ばつに苦しむアフリカのサハラ砂漠南部で、五つの地下水系を調査した。各国はこの調査を基に今後、どのように水資源を確保し、地下水を持続的に利用していくか計画を立てる。
また中国では人口増の影響で、大量の地下水を取水しており、地下水保全戦略の一環として地下水の年代測定に力を入れる。松本さんは最近、中国の研究者との共同調査で100万年を超える年代の地下水の存在を明らかにして注目された。
松本さんは分析装置の設計・作製から、同位体のデータ分析、科学的解釈までを行える世界でも数少ない研究者の一人。「大学では真理を追究する仕事をしてきたが、IAEAの仕事は世界に貢献しているという実感がある。自分の役割は今ここにある、と思っています」と話す。【ウィーン三木幸治】

韓国政府「大規模なダム建設、国は主導しない」

2018年9月19日
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韓国政府が今後、国が主導する大規模なダム建設は中断し、その代わりに中・小規模ダムを、それも流域別に共感が形成される場合に限り建設を進める方針を示しました。
その記事を掲載します。

韓国政府「大規模なダム建設、国は主導しない」
(中央日報2018/9/19(水) 16:15配信) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180919-00000049-cnippou-kr

(写真)昨年8月25日、北漢江(プッカンガン)昭陽江(ソヤンガン)ダムが6年ぶりに水門を開いて放流した。昭陽江ダムは29億トンの水を貯蔵できる大規模なダム。(中央フォト)

「今後、国が主導する大規模なダム建設は中断する」と政府が宣言した。その代わりに中・小規模ダムを、それも流域別に共感が形成される場合に限り建設を進めるということだ。また、海水を飲み水にする海水淡水化も他の代替水資源の開発が難しい場合に限り開発を検討し、大規模な淡水化施設は公論化を経ることにした。

環境部は18日、水管理業務の一元化から100日を迎え、今後の水管理政策課題を盛り込んだ「持続可能な水管理に向けた第一歩」課題を発表した。水管理の一元化以降に改正したり、今後重点的に推進する水管理政策課題を選定したのだ。

環境部は▼水資源の浪費の除去▼飲み水に対する心配の解消▼水による被害の最小化▼未来世代への配慮--の4つを政策目標に設定し、これを達成するための4大推進戦略と14件の政策課題を準備した。

今回の課題は、環境部が昨年8月から運営してきた「統合水管理ビジョンフォーラム」と4大河川流域別討論会・懇談会、国会討論会などを通じて幅広い階層の意見をまとめた結果だ。今回の課題のうち目を引くのは、ダム政策の「認識体系(パラダイム)」を建設から管理に転換した点だ。水資源業務が国土交通部から環境部に移った後、水資源に関する政策方向も開発から保全に変わったのだ。

これを受け、国家主導の大規模ダムの建設は中断し、中・小規模ダムは流域「協治」(ガバナンス)を通じて合意と共感が形成された後に推進することになる。特に、現行の「ダム建設長期計画」を「ダム管理計画(仮称)」に改編し、ダムの効率的な維持管理と安定的な運営に重点を置くことにした。これに関し環境部の関係者は「従来のダム建設長期計画には14件のダムが反映されているが、このうち洪水被害予防を目的に地方自治体が施行中の小規模ダムは2件があり、国が現在推進している新規ダム建設計画はない」と説明した。

海水淡水化施設も他の代替水資源開発が難しい場合に限り開発を検討することにした。大規模な海水淡水化は公論化などを経て施行することになる。海の下に上水道管を設置する海底管路は来年、全国110島を対象に事業が推進され、全羅南道甫吉島(ボギルド)の甫吉島貯水池の下流には地下水ダム設置も推進している。

環境部は干ばつと洪水の予防にも積極的に対処することにした。まず、統合干ばつ情報センターを設置し、2021年までに全国干ばつ脆弱地図も作成することにした。干ばつ被害が多い忠清南道(チュンチョンナムド)に対し、地方自治体・関係部処(農食品部など)・専門家などとガバナンスを構成し、総合的な対策を準備することにした。

洪水被害防止のために洪水予報地点を現行の50カ所から2020年には64カ所に拡大し、降雨レーダー全国網も構築し、局地性豪雨と突発洪水への対応力を強化することにした。また、都心の水循環力量の強化に向けて地方自治体別・流域別水循環率、不透水面積率の目標設定など制度の改善も推進することにした。

水質分野では下水処理場放流数基準の強化、家畜糞尿の集中管理などが提示された。さらに主要浄水場と飲料水を対象に微細プラスチック検出原因を究明し、検出原因別の管理対策を今年末まで用意する予定だ。このほか、環境部は4大河川の堰開放・モニタリングを通じた科学的な調査・分析、国民的共感に基づく合理的処理案を用意することにした。

京仁(キョンイン)運河は公論化委員会の議論を通じて機能を再確立し、釜山エコデルタシティなど進行中の親水区域事業は環境の面で補完、発展させる計画だ。

キム・ヨンフン環境部水環境政策局長は「水管理一元化効果を国民が体感できるよう課題に取り組んでいきたい」とし「統合水管理ビジョンフォーラムを中心に今年末までに別の『統合水管理政策ロードマップ』を用意する予定」と説明した。

記者の目 西日本豪雨と国の破堤防止対策 「耐越水堤防」封じる茶番=福岡賢正(熊本支局)

2018年9月4日
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治水の要である耐越水堤防の普及を国土交通省が頑なに拒み続けています。この問題を取り上げた記事を掲載します。

記者の目
西日本豪雨と国の破堤防止対策 「耐越水堤防」封じる茶番=福岡賢正(熊本支局)
(毎日新聞2018年9月4日 東京朝刊)https://mainichi.jp/articles/20180904/ddm/005/070/007000c

(写真)決壊した小田川の堤防。天端は舗装されていた=7月8日、本社ヘリから加古信志撮影

西日本豪雨でまた越水によって堤防が決壊(破堤)し、岡山県倉敷市真備町で多くの人命が失われた。国はかつて推進した越水に一定時間耐える堤防(耐越水堤防)の整備を封印したまま、いつまでまやかしの対策を続けるのか。
2015年9月に茨城県常総市で起きた鬼怒川の破堤災害を受け、私は同年10月8日の本欄で「国は越水に強い堤防の整備に取り組め」と訴えた。2カ月後、国の諮問を受けた社会資本整備審議会も「越水等が発生した場合でも決壊までの時間を少しでも引き延ばすよう堤防構造を工夫する対策」の推進を答申し、国は越水の恐れが高い1級河川の約1800キロを20年度末までに補強する「危機管理型ハード対策」に着手した。
このため私はてっきり、国が「フロンティア堤防」や「難破堤堤防」の名で1997年から推進した耐越水堤防の整備に再び取り組み始めたと思っていた。「再び」というのは、ダム計画に反対する市民団体が耐越水堤防をダム不要論の根拠として主張し始めると、国は02年7月に突然、整備計画を全廃したからだ。
現行の強化策、効果は限定的
実は真備町を流れる小田川も危機管理型ハード対策の対象河川で、補強工事は15年度に終えている。その川が今回破堤したのが不思議で、国土交通省に聞くと、同対策は耐越水堤防とは別物で、限定的な効果しかないという。
越水破堤が起きるメカニズムはこうだ。(1)堤防の最上部(天端(てんば))を越えた水が陸側の斜面(裏のり)を流れ下る(2)重力で速度を増した水流の力で陸側の堤防最下部(のり尻)や裏のりの浸食が始まる(3)裏のりの浸食が進んで天端の一部が崩れ落ちる(4)そこに水流が集中し破堤する=図参照。
 それゆえかつての耐越水堤防は、のり尻、裏のり、天端という越水に対する弱点を、鋼線のかごに石を詰めた「布団かご」やコンクリートブロック、遮水シートやアスファルトなどで補強していた。大切なのは3カ所とも補強することで、フロンティア堤防が水深60センチの越流に住民の避難に必要な3時間程度耐えるとうたっていたのも、三つの弱点が水深60センチの越流に耐えるよう設計されていたからだ。
一方、現在の危機管理型ハード対策は、天端のアスファルト舗装と、のり尻のコンクリートブロックなどでの補強を単独または組み合わせるだけ。たとえ両者を組み合わせても、越流によってまず裏のりがえぐられ、天端のアスファルト舗装もやがて折れたり、傾いて流されたりして破堤する。
同対策について国交省治水課の菊田一行課長補佐は「国の研究所の実験でも効果は条件によりまちまちで、はっきり言えない。やらないより悪くなることはないということでやっている」と言う。審議会答申の「少しでも」という言葉は、「可能な限り」と同義と取るべきだと思うが、国は「少しでいいから」と読み替えて対策を立てていたのだ。
小田川で施された危機管理型ハード対策も、未舗装だった左岸400メートル、右岸140メートルの天端をアスファルト舗装しただけ。決壊したのは新たな舗装区間ではなく、それ以前に舗装された所だったが、天端のアスファルト舗装だけでは人命を守れないことが証明されたことになる。
3点セット拒否、理由はメンツ?
では国はなぜ耐越水堤防を造らないのか。菊田課長補佐は「決壊を完全には防げず、コストもかかる。今は安く早くやるのを主眼に対策を進めている」と説明する。だが3点セットで補強する際の費用を国は試算すらしていない。
3年前に越水破堤して災害復旧工事で建設された鬼怒川の新しい堤防も、天端とのり尻は補強されたが、裏のりは補強されていない。このため越水すれば再び破堤すると心配する専門家は多い。
その一人、石崎勝義・元建設省土木研究所次長(79)は「わずかな追加コストで残る裏のりを保護するだけで堤防は越水に対し格段に強化され、越水時間がよほど長くならない限り決壊しない。技術があるのになぜそれを使わないのか」と不思議がる。小田川の洪水についても石崎さんは「ピークの継続時間は短く、越水地点の堤防が3点セットで補強されていたら、決壊せずに氾濫水量もはるかに少なくて済んだ」と分析する。
国交省を辞めて同省が設置した淀川水系流域委員会の委員長に転じ、耐越水堤防の整備をダム建設より優先すべきだとする意見書をまとめた宮本博司・元近畿地方整備局河川部長(65)は言う。「もはや治水の解は耐越水堤防の整備しかないが、裏のり強化も加えて3点セットにすると、かつて我々が主張して国が否定した対策をやることになる。だから国は意地でもやらない」。官庁のメンツで有効な越水対策が封じられ、人命が失われ続ける。茶番は、即刻終わらせるべきだ。

鬼怒川決壊提訴 原告語る「あれは人災」/「責任認めて」(記事の続き)

2018年8月13日
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8月7日、国に対して鬼怒川水害の損害賠償を求める提訴が行われました。この提訴に関する記事の続きを掲載します。

 

鬼怒川氾濫で集団提訴 常総市民29人ら
(東京新聞2018年8月8日)http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201808/CK2018080802000175.html

(写真)横断幕を持って水戸地裁下妻支部に向かう原告や支援する市民団体メンバーら=下妻市で

常総市で五千棟以上が全半壊し、関連死を含め十四人が死亡した二〇一五年の鬼怒川氾濫は、市民二十九人らが計約三億三千五百万円の国家賠償を求める集団訴訟に発展した。家族の死の責任の所在などを明らかにしたいとする原告ら。国土交通省OBからは、堤防決壊を防ぐ対策への国の責任を問う声も挙がった。 (宮本隆康)
七日午前、原告ら支援者ら約二十人が水戸地裁下妻支部に集まり、提訴の手続きをした。只野靖弁護士は「西日本豪雨の被災地に限らず、水害で泣き寝入りしている人たちを勇気づけるような訴訟になればいい」と話した。
提訴は、弁護士や「常総市水害・被害者の会」メンバーらが約一年半前から計画してきた。昨年十二月に説明会を開いて原告を募り、災害関連死で家族を失った遺族や自宅が浸水した人などで原告団を結成した。
泥水に漬かった自宅と家財の損害賠償や家族を亡くした慰謝料などを国に求めており、ほかにも訴訟への参加を考えている被災者もいるという。

◆訴訟支援の旧建設省OB 「堤防決壊は人災」
(写真)「堤防決壊は人災」と語る石崎さん=つくばみらい市で

「堤防決壊は人災だ」。旧建設省土木研究所の元次長で、訴訟の支援団体の共同代表になった石崎勝義さん(79)=つくばみらい市=はそう語る。鬼怒川決壊を受けて被災者支援に参加。国が一九九〇年代、想定以上の雨に備えた堤防強化策を始めながら、撤回した問題を指摘している。
九六年の旧建設省の白書には「計画規模を超えた洪水による被害を最小限に抑えるため、破堤しにくい堤防が求められる」と明記。同様の記述は五年連続で白書に書かれ、五カ年計画では、決壊しにくい「フロンティア堤防」の整備が盛り込まれた。
フロンティア堤防とは、陸側の法(のり)面に遮水シートを入れるなどして水の浸食を防ぎ、川から水があふれても決壊しにくくする工法。決壊を防げれば、市街地などに流れ込む水は堤防を越える分だけになり、被害も減らせる。
二〇〇〇年に設計指針が出先機関や都道府県に通知され、全国で計二百五十キロの整備を計画。実際に四つの河川の計約十三キロで工事が実施された。しかし、〇二年に設計指針を廃止する通達が出された。
国土交通省は「効果が定量的にはっきりしなかったため」と説明するが、旧建設省河川局のあるOBは「ダムの反対運動の間で、代わりの治水策としてフロンティア堤防の推進論があったからだ」と証言。ダム建設を優先したい論理で方針が変更されたとみる。
石崎さんは今月、西日本豪雨で堤防が決壊した岡山県倉敷市真備町を視察。「鬼怒川と同じで、堤防が強化されていなかったのが第一の原因」と指摘する。「堤防内に遮水シートを入れるだけなら、それほど予算はかからず、一般的に被害は床下浸水程度で済む」と強化の必要性を訴えている。 (宮本隆康)

常総水害で国提訴 被災住民ら 河川管理の不備指摘
(茨城新聞 2018/8/8(水) 4:00配信) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180808-00000004-ibaraki-l08

(写真)横断幕を持って水戸地裁下妻支部に入る住民側の関係者ら=7日午前11時ごろ、下妻市下妻乙

2015年9月の関東・東北豪雨で、鬼怒川の堤防決壊などによる水害に遭ったのは国の河川管理に不備があったためとして、常総市の被災住民らが7日、国を相手に計約3億3500万円の損害賠償を求めて水戸地裁下妻支部に提訴した。原告は、被災した19世帯29人と1法人。住宅や家財の被害のほか、避難生活にかかった費用や慰謝料などを請求した。

訴状によると、堤防から水があふれ出た同市若宮戸では河畔砂丘しかなく、無堤防状態が放置された。しかし、掘削などの際、河川管理者の許可が必要とされる「河川区域」に国が指定せず、豪雨前の14年に太陽光発電事業による掘削を放任したと指摘。その後の治水対策も不十分だったと訴えている。

また、堤防が決壊した同市三坂町では、堤防の高さが周辺より低かったのに、国がかさ上げや拡幅を怠ったと主張した。

さらに、市の中心部を流れる八間堀川の排水ポンプの運転が遅れたことで、両地区であふれた水が八間堀川の氾濫につながり、被害を拡大させたとしている。

提訴後に会見した原告団の共同代表世話人の片倉一美さん(65)は「堤防が造られなかったり、かさ上げされなかったりと、手を付けるべき所に何もしなかったことは国の責任だ」と訴えた。

原告側の只野靖弁護士も「河川管理に瑕疵(かし)があり、人災の面が強い。でたらめな河川行政がまかり通っている」と批判した。

豪雨では、鬼怒川決壊などで常総市の約3分の1に当たる約40平方キロが浸水した。同市によると、市内では災害関連死12人を含む計14人が死亡し、5千棟以上が全半壊した。

国交省の担当者は「訴状がまだ届いていないので、コメントできない」と話した。(高岡健作)

鬼怒川決壊提訴 原告語る「あれは人災」/「責任認めて」
(茨城新聞2018/8/8(水) 4:00配信) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180808-00000005-ibaraki-l08

(写真)原告の一人、高橋敏明さん
鬼怒川の堤防が決壊した関東・東北豪雨から間もなく3年。取材に応じた被災者たちは7日、提訴に至った胸の内を明かした。

常総市原宿で花き園芸会社を営む高橋敏明さん(64)は会社と自宅が浸水。休業損害を含む賠償を求めている。

高橋さんの会社は鬼怒川の水があふれた若宮戸の現場から約1キロ。当時、丹精込めて育てた花々が泥水に浸かった。水害から3年たった今でも、会社の売り上げは以前の7割。再建途上だと話す。

「商売を始めて45年。築き上げてきたものが一瞬で壊滅的な被害を受けた」と話し、「掘削された自然堤防を国が放置したから水害が起きた。あれは人災だった」と訴える。

水害5カ月後に亡くなった妻を思い、訴訟に踏み切った人もいる。自宅が床上浸水に見舞われた同市水海道森下町の赤羽武義さん(78)。赤羽さんの妻は災害関連死と認定された。

「あの水が来るまでは妻も普通に暮らしていた。妻の死の責任が国にあるということを裁判で認めてもらいたい」。赤羽さんは一言一言、かみしめるように語った。(今橋憲正)

 

 


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