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国は全面的に争う姿勢 鬼怒川水害国賠訴訟 裁判始まる(2018年11月28日)

2018年11月29日
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11月28日、2015年9月の鬼怒川氾濫は国の河川管理の瑕疵にあるとして、国家賠償を求める裁判の第1回口頭弁論が水戸地裁下妻支部でありました。その記事を掲載します。
原告お二人の切々たる思いが伝わる意見陳述をお聞きして、この裁判を何としても勝たなければならないと思いました。


国は全面的に争う姿勢 鬼怒川水害国賠訴訟 裁判始まる

(NEWSつくば2018年11月29日) https://newstsukuba.jp/?p=10613

(写真)第1回口頭弁論終了後の住民側報告集会で意見交換する住民と弁護士ら=下妻市内

【鈴木宏子】常総市に甚大な被害をもたらした2015年9月の鬼怒川氾濫で、水害が発生したのは国交省の河川管理に瑕疵(かし)があったためだとして、住民32人と企業1社が国を相手取って総額約3億4400万円の損害賠償を求めた国家賠償訴訟=8月7日付け=で、第1回口頭弁論が28日、水戸地裁下妻支部(伊藤一夫裁判長)で開かれた。国側は訴えの棄却を求め、全面的に争う姿勢を見せた。ただしどのような主張を展開して争うかについては、次回以降の準備書面で明らかにするとした。
この日の裁判は傍聴者の抽選が行われ、法廷は住民や支援者らで満席となった。法廷では住民側弁護団がプロジェクターを使い、法廷に設置されたスクリーンに、水害が発生した原因や国の河川管理の問題点などを大写しにして、国の責任を改めて追及した。
続いて原告住民2人が意見陳述をした。常総市の赤羽武義さん(78)は水害の翌年2月、妻を災害関連死で亡くした経緯を話し、時折言葉を詰まらせながら「水害が無かったならば私の妻は死ななくてすんだ。水害は防ぐことができた」と話した。
花き園芸会社を経営する同市の高橋敏明さん(64)は、水害で花や観葉植物など10万株を失ったと話し「国は責任から逃げている」などと訴えた。
訴状によると鬼怒川水害の原因は、国が若宮戸地区の無堤防状態を放置し河川区域に指定しなかったことから規制が及ばず、ソーラーパネル事業者によって自然堤防の砂丘林が削られたこと、堤防が決壊した上三坂地区は、地盤沈下が進み堤防の高さが年々低くなっていたが国は改修を後回しにしたこと、市中心部の水海道地区は、排水河川である八間堀川の排水機場の運転再開が操作規則に違反して遅れたことなど国の管理に瑕疵があったためだなどと主張している。
次回第2回口頭弁論は2019年3月20日午後3時から行われる。

国、請求棄却求める 地裁下妻支部で初弁論 /茨城
(毎日新聞茨城版2018年11月29日)https://mainichi.jp/articles/20181129/ddl/k08/040/016000c

2015年9月の関東・東北豪雨で鬼怒川が氾濫したのは、国の河川管理に不備があったためとして、被災した常総市の住民ら約30人が総額約3億4400万円の損害賠償を国に求める訴訟の第1回口頭弁論が
28日、水戸地裁下妻支部(伊藤一夫裁判長)であった。国は答弁書で請求棄却を求めた。
原告数は提訴時の29人と1法人から3人増え、請求総額も約900万円増えた。
原告住民2人が意見陳述した。
水害から5カ月後に死亡した妻芳子さん(当時75歳)が災害関連死と認定された赤羽武義さん(78)は、「裁判に加わったのは、水害がなかったら妻は死ななくてすんだという思いが強いから。心の中の妻と一緒に裁判に参加したい」と述べた。
また、観葉植物や花卉(かき)類の農園が浸水した高橋敏明さん(64)は「水害が人災であり、そのために私たちはどれだけつらく、苦しい目にあったか、国は分かっているのでしょうか。国の言動は責任から逃げているとしか思えない」と訴えた。
この豪雨では、常総市の市域の3分の1にあたる約40平方キロが浸水。災害関連死の12人を含め14人が死亡した。
訴状によると、鬼怒川が越水した同市若宮戸付近は私有地で堤防がなく、砂丘が堤防の役割をしていたが、民間業者が14年春にソーラーパネルを設置するため掘削するのを止めなかったのは、国の河川管理の不備と主張している。【宮田哲】


鬼怒川氾濫訴訟 国側は争う姿勢 地裁支部で初弁論

(東京新聞2018年11月29日)
二〇一五年九月の関東・東北豪雨で茨城県常総市の鬼怒川が氾濫したのは国の河川管理の不備が原因として、被災した市民ら約三十人が、
国に計約三億三千万円の損害賠償などを求めた訴訟の第一回口頭弁論が二十八日、水戸地裁下妻支部(伊藤一夫裁判長)であった。
国側は全面的に争う姿勢を示し請求棄却を求めた。
弁論で、原告二人が意見陳述。
温室などが水没し被害額五千万円以上という園芸会社の男性経営者は「どれだけ大変な目に遭ったのか、国は分かっているのか。責任から逃げているようにしか見えず、反省してもらいたい」と訴えた。
訴状によると、市内の上三坂地区で決壊した堤防は、地盤沈下で低くなっていたのに、国がかさ上げを怠ったと主張。
さらに上流で大量に水があふれた若宮戸地区は、自然堤防の砂丘しかなく、民間業者の太陽光発電施設の設置工事で削られるなどし、治水対策が不十分だったとしている。
国側は、具体的な主張を次回に提出するとした。 (宮本隆康)
(写真)第1回口頭弁論後、原告弁護団が開いた報告集会=28日、茨城県下妻市で

 

南摩ダム  水源変更反対で集会 栃木で25日、市民団体 /栃木

2018年11月28日
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11月24日(土)~25日(日))、栃木県南地域水道問題全国集会&水源連総会がhttps://suigenren.jp/news/2018/09/24/11081/ のとおり、
開かれました。

11月25日の全国集会についての記事を掲載します。

南摩ダム
水源変更反対で集会 栃木で25日、市民団体 /栃木
(毎日新聞栃木版2018年11月22日)https://mainichi.jp/articles/20181122/ddl/k09/010/157000c?pid=14516

鹿沼市に建設される南摩ダムの完成に伴い、上水道の水源が地下水からダムの水に一部変更になる予定の栃木、下野、壬生の3市町の住民らでつくる「県南地域の水道水をいかす市民ネットワーク」(代表・大木一俊弁護士)は25日、栃木市惣社町の市国府公民館で、水源変更への反対集会を開く。
ダムは2024年度に完成予定。県はダムから最大毎秒0・4立方メートルの配分を受け、3市町への給水を計画している。13年3月に公表した報告書では、3市町の上水道水源に占める地下水の割合を30年度に65%、最終的には40%まで低減する目標を示している。
このため、3市町の住民の一部は水道水の水質低下や料金の値上げなどを懸念し、同市民ネットを17年8月に結成。従来通り地下水を水源にするよう求める署名活動などを続けている。
集会は午後1時15分開演。太田正・作新学院大名誉教授の講演「新規水源開発事業の不合理性を検証する」、大木代表らによる現地報告「高くてまずい水はごめんだ」などを予定している。資料代500円。
問い合わせは水源開発問題全国連絡会(028・600・5106、八幡山法律事務所内)。【太田穣】

貯水量は浜名湖の2倍、見えぬ使い道 岐阜・徳山ダム

2018年10月23日
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徳山ダムが完成して10年、その開発水は全く使われていません。徳山ダムの開発水を無理矢理使うため、揖斐川から長良川と木曽川に送水する木曽川水系連絡導水路事業が計画されていますが、水余りが進む状況で必要であるはずがなく、
事業の検証も行われない状態になっています。
この問題を取り上げた朝日新聞の記事を掲載します。

貯水量は浜名湖の2倍、見えぬ使い道 岐阜・徳山ダム

編集委員・伊藤智章
(朝日新聞2018年10月18日1

14人死亡の鬼怒川氾濫、国は危険性を認識しつつ放置…住民の対策要求を何度も無視

2018年10月23日
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8月7日に提訴した鬼怒川水害訴訟についての詳しい記事を掲載します。
第1回口頭弁論は水戸地裁下妻支部で11月28日(水)(15時45分~)に開かれます。


14人死亡の鬼怒川氾濫、国は危険性を認識しつつ放置…住民の対策要求を何度も無視

(Business Journal / 2018年9月30日 16時0分)https://news.infoseek.co.jp/article/businessjournal_479061/?p=1

鬼怒川で発生した2015年9月の水害。関東・東北豪雨により、茨城県を流れる鬼怒川が氾濫し、流域の5つの市が洪水に飲み込まれた。住民は孤立し、約4300人が救助されたが、災害関連死と認定された12人を含む14人が死亡。多くの住宅が全壊や大規模半壊などの被害を受けた。
この水害は単なる自然災害ではなかった。住民は洪水が起きる危険性を、発生前から国に指摘していたのだ。しかし、現在も国が非を認めないため、常総市の住民ら30人は8月7日、国に約3億3500万円の損害賠償を求めて提訴した。
今年7月の西日本豪雨、昨年7月の九州北部豪雨など、全国で水害の被害が相次ぐなかで、住民は「水害被害にあった多くの人たちのためにも、国のデタラメな河川行政の転換を求める」と憤る。現地で原告の住民に話を聞いた。

●凄まじい被害は「国による人災」
8月7日、水戸地方裁判所の下妻支部には、提訴に訪れた住民と弁護団、それに報道陣と、多くの人が詰めかけていた。提訴を終えて、建物から出てきた弁護団の只野靖事務局長は、報道陣の取材にこう答えた。
「3年前、水害が起きた当初から、国の対応に瑕疵があると考えてきました。国の責任が大きいこの水害は人災です。その思いを強くしています」
3年前の15年9月10日午前6時頃、関東・東北豪雨により、常総市の若宮戸地区で最初に洪水が発生した。鬼怒川の水量はその後も増え、午後0時過ぎには上三坂地区の堤防が決壊。最終的に決壊は200メートルにわたった。
激しく流れる洪水は建物、田畑などを次々と浸水し、常総市の中心部である水海道地区にも及んだ。常総市の面積の約3分の1にあたる、約40平方キロメートルが浸水してしまった。市内では住宅の全壊が53棟、大規模半壊と半壊が約5000棟。災害関連死と認められた12人を含む14人が亡くなる甚大な被害を出した。
この水害が、なぜ人災なのか。原告のひとりで、最初に洪水が発生した若宮戸地区で農業生産法人を営む高橋敏明さん(64)は、静かな口調ながら、怒りを込めて話した。
「若宮戸地区には自然の堤防となっている砂丘林があるだけで、本来国がつくるべき堤防がありませんでした。しかも、ソーラー発電の業者が、砂丘林を掘削して、無堤防状態になっていました。にもかかわらず、国は十分な対応を取りませんでした。そこから洪水が流れ出たのです」

●国は危険を2度にわたって放置
写真は、現在の若宮戸地区。ソーラーパネルが並ぶ場所の付近だけ、200メートルほど砂丘林が切れているのが確認できる。ここが最初に水が溢れた場所だ。いまは水害後の工事で堤防がつくられているが、被害が出た時には、砂丘は低く削られていた。
鬼怒川は一級河川なので、国土交通省の管理下にある。砂丘が削られた2014年3月以降、住民が国に対策を求めると、国は「その場所は河川区域ではなく、私有地なので手が出せない」という態度だった。
しかし、あまりにも危険な状態なので、住民が引き続き対応を求めると、14年7月、国の担当者は1個の高さが約80センチの土嚢を2段積んだ。取られた対策はそれだけだった。
それからわずか1年あまり。住民の予想通り、豪雨の早い段階で、砂丘林が削られた場所から川の水が溢れ出た。洪水はあっという間に住宅や田畑を飲み込んだ。砂丘林が削られていなければ、あふれた水量はもっと少なく、これほどの被害は出なかった可能性が高いのだ。
それだけではない。国は長い時間をかけて「鬼怒川直轄河川改修事業」を進めている。11年度の事業評価の際には、当面7年で堤防を整備をする区間と、おおむね20年から30年をかけて整備をする区間が定められている。
若宮戸地区の砂丘林の高さは、事業で整備の基準にしている「計画高水位」よりも1メートル低い。しかし、整備計画の区間には入っていなかった。原告を支援する水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之共同代表や弁護団が、国が提出した資料を分析すると、国は03年度に若宮戸地区で堤防をつくる詳細な設計をしていながら、その報告書がお蔵入りしていたことがわかった。
つまり、国は若宮戸地区の砂丘林が低いことを認識していながら、意図的に堤防を整備せずに放置していたことになる。さらにその砂丘林が削られても、十分な対策を講じなかった。住民は2度にわたって国に放置されてしまったのだ。
●誰かが立ち上がらなければ
若宮戸地区の高橋敏明さんは、砂丘林が削られた場所からおよそ800メートルほど離れた場所で、観葉植物や、花卉の栽培を行なっていた。鬼怒川の氾濫により、1500坪もあった花卉栽培の温室などの施設は破壊されてしまった。
「45年間、丹精を込めて植物を育ててきましたが、水害によって壊滅的といいますか、跡形もなくなりました。経営も危機的な状況に陥りました。皆さんに協力いたただいて、今は水害前の7割くらいまで再建できています」
高橋さんは、法人と個人の両方で原告になっている。責任があるのは明らかなのに、非を認めない国の態度が今でも許せなかった。しかし、それだけではない。多くの被災者が国の落ち度を訴えてきたが、生活の再建に追われて、裁判まで起こそうという人は時間がたつとともに減ってきた。誰かが立ち上がらなければ、国の態度が変わることはない。そう思い、裁判を決心した。
「私たちの声を無視して、危険を放置した国に責任がないというのは、信じられません。私たちが立ち上がることによって、あきらめかけていた人たちも、また一緒に国を訴えようと、動きだすのではないかと思っています」
実際に、今回提訴した法人と個人の30人以外にも、原告団に加わろうという動きが出ている。近く追加提訴が行われる見通しだ。

●泣き寝入りしている人のためにも
今年7月に発生した西日本豪雨により、各地で大規模な河川の氾濫が発生し、これまでに220人が犠牲になった。
鬼怒川氾濫と同じように、危険がわかっていながら、洪水対策がとられていなかった場所といえば、岡山県倉敷市真備町の小田川が挙げられる。小田川は過去にも繰り返し氾濫し、河川改修も計画されていたが、実施されないまま今回の水害が発生し、51人が亡くなった。
水害をめぐる訴訟では、1984年1月に出た大東水害訴訟最高裁判決によって、その後住民側が行政を訴えてもほとんど勝訴できない状況となった。大東水害とは、72年7月に大阪府大東市で大雨で寝屋川が氾濫した水害。その判決で示されたのは、河川の管理と、改修中の河川の管理について瑕疵が認められるのは、「河川管理の一般水準及び社会通念に照らして、格別不合理なものと認められる」場合だけというものだった。
鬼怒川水害でも、国は非を認めていない。しかし、常総市に行って見てみれば、これだけ長い流域で、周囲に多くの住民が暮らす一級河川を、自然の堤防に頼って国がまともに管理していないことに驚かされる。鬼怒川は利根川の最大の支流で、関東平野を流れる重要な河川のひとつである。社会通念に照らして、放置してきた国に責任がないとは、到底思えない。
弁護団の只野靖事務局長は、水害訴訟の流れを変えるのも今回の裁判の意義のひとつだと、力を込めて語った。
「水害で被災した方で、裁判で行政の責任を問いたくても、できなかった方が何万人もいると思います。全国で水害が多発しているなかで、鬼怒川と同じメカニズムで被災した方もいるかもしれません。想定外の雨が降ったのだから仕方がない、という国の姿勢で済ませていたら、大きな被害が出る状況はいつまでたっても変わらないでしょう。水害の被害にあった多くの方のためにも、裁判で河川行政の転換を求めていきたいと思います」
行政による人災を、自然災害で済ませていいはずがない。鬼怒川氾濫をめぐる訴訟では、国の河川行政そのものが問われている。
(文=田中圭太郎/ジャーナリスト)

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