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国土交通省の「リスク管理型の水の安定供給に向けた水資源開発基本計画のあり方について」 答申(案)に対する意見〈2017年3月7日)

2017年3月7日
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国土交通省が全国7水系の水資源開発基本計画(フルプラン)のあり方に関する答申案に対して意見募集を行っています。

 意見を提出しましたので、参考までに掲載します。
国土交通省の意見募集は http://www.mlit.go.jp/report/press/water02_hh_000083.html をご覧ください。
リスク管理型の水の安定供給に向けた水資源開発基本計画のあり方について 答申(案)に対する意見(嶋津暉之)

1 答申案は、水道用水および工業用水の需要が減少の一途を辿ってきていて、将来はますます縮小していく事実を無視している。

下図のとおり、全国の水道用水および工業用水の需要は減少の一途を辿っている。全国の水道の一日最大給水量は1994年度から2014年度までの20年間に一日当たり約1,100万㎥も減っている。一人一日最大給水量を400リットル/日と仮定すると、20年間で約2,700万人分の水道給水量が減ったことになる。今後は人口減少時代になることにより、水道用水の規模縮小に拍車がかかることは必至である。工業用水も減り方が凄まじい。1975年と比べると、2014年の使用量は2/3の規模になっている。下図で示した水道・工業用水の減少傾向は、利根川・荒川水系などの各指定水系でも同様である。

2 水道用水および工業用水の規模縮小で水余りがますます顕著になっていく時代において新たな水資源開発事業は不要であるから、答申案は現在計画中および建設中の水資源開発事業の中止を求めるべきである。

上述のとおり、水道用水および工業用水の需要が減少の一途を辿り、将来はますます縮小していくのであるから、新たな水資源開発事業が不要であることは明白である。それにもかかわらず、各水系で不要な水資源開発事業が推進されている。利根川・荒川水系では八ッ場ダム、思川開発、霞ケ浦導水事業、豊川水系では設楽ダム、木曽川水系では木曽川水系連絡導水路、淀川水系では川上ダム、天ヶ瀬ダム再開発、筑後川水系では小石原川ダムなどの事業である。いずれも水需要縮小の時代において無用の事業であるから、答申案はこれらの新規水資源開発事業の中止を求めるべきである。

 

3 水需要が減少の一途を辿り、水余りが一層進行していく時代においてフルプラン(水資源開発基本計画)の役割は終わっているのであるから、根拠法である水資源開発促進法とともに、各指定水系のフルプランを廃止すべきである。

各指定水系のフルプランは水資源開発促進法の目的に書かれているように、「産業の開発又は発展及び都市人口の増加に伴い用水を必要とする地域に対する水の供給を確保するため」に策定されるものであり、水道用水・工業用水の需要が減少傾向に転じた時点で、その役割を終わっている。答申案は、フルプランの延命策を講じるのではなく、役割が終わった各指定水系のフルプランとその根拠法である水資源開発促進法の廃止を求めるべきである。

 

4 「リスク管理型の水の安定供給に向けた」という言葉で、役割が終わった各指定水系のフルプランの延命策をはかってはならない。

今回の答申案は「地震等の大規模災害、水インフラの老朽化に伴う大規模な事故、危機的な渇水等の危機時において最低限必要な水を確保するためには、・・・効果的な施策の展開を検討するよう留意する必要がある」と述べているが、これは、役割が終わった各指定水系のフルプランの延命策に他ならない。

第5次利根川・荒川水系フルプラン〈2008年策定〉などの現在のフルプランも無理矢理、延命策が講じられたものである。フルプランは当初から水需要の実績と乖離した過大予測によって水資源開発事業の必要性を打ち出すものであったが、1990年代から水道用水・工業用水が減少傾向に転じたため、過大予測を行うにも限度が生じてきた。そこで、国は水資源開発事業を推進するための新たな理由をつくり出した。それはより厳しい渇水年(1/10渇水年)になると、ダム等の供給可能量が大幅に減るので、それに対応するためにも水資源開発が必要だというものである。

現行のダム等の開発水量は、利水安全度1/5で計画されているので、それより厳しい渇水が来ても対応できるように、利水安全度1/10での水需給を考える必要があるというものである。1/10渇水年においてダム等の供給可能量が大幅に減るという国の計算結果は、ダム放流を過剰に行う恣意的な計算によるものであって、1/10渇水年の話も虚構のものなのであるが、このようにしてフルプランの延命策が講じられてきた。

今回の答申案「リスク管理型の水の安定供給に向けた」は、役割が終わった各指定水系のフルプランをさらに延命させることを企図したものであり、答申案の内容を根本から見直すべきである。

 

5 目標年度を過ぎ、期限切れになっている各水系のフルプランを上位計画として国が水資源開発事業を推進している異様な事態を答申案はなぜ問題にしないのか。

利根川及び荒川、豊川、木曽川、淀川、筑後川のフルプランは目標年度が2015年度、吉野川水系は2010年度で、いずれも目標年度を過ぎており、期限切れになっている。この期限切れのフルプランを上位計画として、八ッ場ダム等の新規水源開発事業が推進されているのは異常である。法律に基づいて計画を策定し、その計画に沿って事業を進めるのが行政の責務であるにもかかわらず、計画を期限切れのままにし、計画の裏付けなしで国が八ッ場ダム等の事業を推進しているのは由々しき問題である。国が法律を軽視した行為を公然と行うのは法治国家としてあるまじきことであるので、答申案はそのことを問題視すべきである。

 

6 川の自然を取り戻すため、ダム撤去や河口堰のゲート開放などを視野に入れた答申案にすべきである。

過去のダムや河口堰といった水資源開発事業によって各河川の自然は大きなダメージを受けてきている。アメリカでは川の自然を取り戻すため、ダム撤去が数多く行われてきている。日本も水需要の縮小で、水余りが一層進行していく時代になっているのであるから、既設のダムや河口堰などの水資源開発施設がどこまで必要なのかを徹底検証して、必要性が稀薄な施設は撤去または運用の改善を進めるべきである。答申案はそのように川の自然を取り戻すことも目指すべきである。

常総はいま 鬼怒川決壊1年(連載記事) (東京新聞茨城版 2016年9月13~15日)

2016年9月19日
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昨年9月の台風18号では鬼怒川下流部で堤防が決壊し、常総市を中心に凄まじい被害を受けました。鬼怒川水害は深い傷跡を残しています。被災地の現状をとらえた東京新聞茨城版の連載記事(上)(中)(下)を紹介します。

総はいま 鬼怒川決壊1年(上) 「みなし仮設」適用残り1年

(東京新聞茨城版 2016年9月13日)

(写真)水海道地区の幹線道路沿いに広がる、レストランや住宅が解体されたままの空き地=常総市で

「みんな戻ってきてほしいからね。空き地のままでは寂しい」。鬼怒川の決壊現場で十世帯の住宅が流されたり傾いたりして、広い更地になったままの常総市三坂町の上三坂地区。八月下旬の夕方、雑草が生い茂らないよう、区長の秋森二郎さん(69)が一人で除草剤をまいていた。

 自宅を失い、市内のみなし仮設住宅で暮らす前区長の渡辺操さん(71)が、車で立ち寄った。ねぎらうように秋森さんに缶コーヒーを差し出した後、嘆いた。「とにかく二年じゃあ、どうにもならないよな」

 全壊の十世帯は、いずれも市内や近隣市内で、公営住宅や民間住宅を借り上げた「みなし仮設」で生活する。制度上、適用期間は原則二年で来年秋までだ。

 「先祖代々ここに住み、墓もある。みんな、やっぱり戻りたい。期限までに自宅を完成させるなら、来年五月ごろに着工したいが、みんな、それまでに着工できるかどうか。六十歳を過ぎたらローンも組めない」と渡辺さんは心配する。

 市によると、避難生活を続ける市民は九月八日現在、七十八世帯の百九十六人。市幹部も「一年後も住宅のめどが立たない人は多いだろう。数世帯なら市営住宅でいいが、何十世帯も、どこに入居してもらえばいいのか」と懸念する。

 渡辺さんは、みなし仮設の期間延長を行政に求めようと考えている。

     ◇

 市によると、人口は八月末現在、一年前より八百三十四人減った。うち日本人は千六十八人減少した。

 外国人は、逆に二百三十四人増えた。支援団体によると、自宅アパートの浸水で市外へ転出した人も多いが、人材派遣会社から次々と別の外国人が派遣されてくるという。

 浸水被害が大きかった地区には今も、建物を解体したままの更地が点在する。アパートの多い地区は、人口減少が目立つ。

 常総市森下町の自治会加入者は、五百一世帯から三十世帯減った。区長の男性は「加入していないアパート住まいの世帯も多い。市の広報紙を配ると、大量に余る。減ったのは百世帯ぐらいだろう」。

 被災者を支援するNPO法人「コモンズ」の横田能洋(よしひろ)代表(49)は、市外の親族の家に移ったお年寄りの女性をよく覚えている。

 女性はコモンズの活動拠点の近くで一人暮らしをしていて、自宅が床上浸水した。大勢のボランティアが片付けてくれた。しかし、敷地が借地だったこともあり、自宅の修理をあきらめ、住み慣れた土地を去ったという。

 コモンズは現在、空き家を生かし、高齢者ら向けの「見守り付き共同住宅」を計画中。横田さんは「つくば市のアパートに入れたからいいとは思わない。自宅は無理でも、せめて近くに安心して住める環境をつくりたい」と考えている。

 昨年九月の常総水害から一年がたった。被災地の今を探った。 (宮本隆康)

  ■

常総水害 昨年9月の関東・東北水害で、常総市内で鬼怒川の堤防が決壊したり、水が堤防を越えたりしたため、市域の約3分の1に当たる約40平方キロメートルが浸水。約10日間にわたり広範囲で水に漬かったままになった。4000人以上が救助され、市内で2人が死亡、44人が負傷。住宅5023棟が全半壊した。


常総はいま 鬼怒川決壊1年(中) 人口減や買い控え続く 

(東京新聞茨城版 2016年9月14日)

 写真)シャッターを閉めた店舗が目立つ中、「がんばろう常総」ののぼりが掲げられた商店街=常総市で

「当面の間、夜の営業は金、土、日曜のみにします」。常総市森下町のそば店の入り口に、張り紙がある。「店を開けても、平日の夜は全然お客さんが来ないから」と、店主の名取勝洋さん(63)が語る。

 店は一年前、胸の高さまで浸水した。名取さんは「一カ月で営業再開」を目標にした。床や壁などを交換し、知人に片付けを手伝ってもらい、自分で壁の塗装もした。目標通り、十月十日に再開できた。

 「十一月に一週間、試しに夜、営業したが、全然駄目だった」と振り返る。町内はアパートが多く、水害で百世帯が引っ越したとも言われる。日中は県外からも客が来てにぎわうが、地元住民が主になる夜は、以前の客足は戻っていない。

 商工業を担当する市職員は「多くの市民が何百万円もかけ、自宅を直したり車を買い替えたりした。買い控えが広がり、小売店や飲食店は売り上げが落ちている。人口が流出した地区は特に厳しい」と指摘する。「私だって車二台が水没した。妻に『飲みに行っている場合ですか』と言われれば、返す言葉がない」

     ◇

  市商工会によると、二〇一五年度に退会した会員企業は八十七社。このうち約四十社は、水害が原因の廃業とみられる。

 経営指導員は「経営者が高齢で後継者がいなければ、水没した機械などを買い替えても、費用を回収できない。大多数は、家族経営の小規模な零細企業。水害で廃業が十~十五年ほど早まった」と説明する。

 水害から一年たったが、今になって「やっぱり廃業する」と断念する企業もあるという。再開した企業も、市内の得意先も苦しかったりして、売り上げが戻らない場合が多い。

 「一時期よりは落ち着いたが、まだまだ企業は苦しんでいる」という。

     ◇

  常総市本石下にある老舗酒造会社「野村醸造」の酒蔵の居住部分は、今も床を外したままだ。直せないのではなく、古民家レストランとして改修を計画中。「創造的復興を目指している」と野村一夫社長(62)は話す。

  酒蔵は水害で浸水し、酒造りに欠かせない「こうじ室(むろ)」にも水が入った。県内の酒造会社の従業員やボランティアら延べ約五百人が、泥かきをして片付けを手伝った。昨年十一月に新酒を仕込み、年末の出荷にこぎ着けた。

 「三十年以上、この仕事を続けているが、去年、しぼりたての新酒ができた瞬間は格別だった」

  築九十三年の酒蔵を壊すことも考えたが、居住部分を飲食スペースに変えることを思い立った。地場産の野菜や肉を使った料理を出す店として、来年春の開店を目指す。

 「ライバルだったはずの蔵元や、大勢のボランティアに助けてもらった。取引先のスーパーも出荷再開を待ってくれた。恩返しと感謝の気持ちを込めて、復興する」。野村さんはこう言い切った。
(宮本隆康)

常総はいま 鬼怒川決壊1年(下) 離農相次ぎ、進む農地集約

(東京新聞茨城版 2016年9月15日)

 (写真)水害から1年後も変わらず稲刈りをする農家=常総市で

 黄金色に染まった水田地帯で、稲穂が揺れ、コンバインが進む。一年前、がれきや土砂が流れ込んだ常総市の水田に、例年と変わらぬ光景が戻ってきた。常総市川崎町の農業生産法人「ひかりファーム常総」の事務所は、今まで以上に忙しい稲刈りシーズンを迎えている。

  ひかりファームは、JA常総ひかりの子会社。高齢化した農家などから耕作を請け負っていて、水害以降は依頼が急増した。

  「水没した農業機械を買い替えられず、高齢化で後継者もいない農家が目立つ」と担当者。十五戸から計十三ヘクタールの依頼があり、耕作面積は約四十五ヘクタールから一気に約六十ヘクタールに増えた。

 市によると、「農地中間管理機構(農地バンク)」を通じて耕作を依頼した農家は今年二月以降、二十五戸。前年の十一戸から倍以上増えた。面積も前年の計十二ヘクタールから、計二十五ヘクタールと二倍になった。

 農家が離農する場合、農地バンクやJAよりも、知人の農家に直接、耕作を頼むケースが多いという。水害で離農した農家は、もっと多いとみられている。

     ◇

 県のまとめや市の推計では、鬼怒川東側で約千五百ヘクタールの農地が水害で浸水した。農機具の被害額は、四百六戸で計約二十八億円に上った。

 当初から小規模な兼業農家の離農は予想された。さらに大規模な専業農家も被害が大きければ、離農者の農地の受け入れ先がなくなる。耕作放棄地の大量発生が懸念されていた。

 農地百十二ヘクタールで復旧工事が実施され、田植えシーズンに何とか整備が間に合った。農業機械の買い替えや修理にかかった費用の六割は補助された。本年度の鬼怒川東側の米の作付面積は、千七百三十ヘクタールになり、例年並みを維持できた。

 市の担当者は「農地の耕作依頼が進んだし、離農も予想より出なかった。赤字だけど農業機械を買い替えた、という年金暮らしの兼業農家さえいた」と胸をなで下ろした。

     ◇

 「『もうダメかな』と最初は思った」。常総市三坂新田町の専業農家、瀧本進さん(70)は水害直後を振り返る。

 瀧本さんによると、水没して使えなくなったコンバインだけで、被害額は約千六百万円。さらにトラクター二台、田植え機、もみすり機、乾燥機三台、トラックも水没。被害総額は五千万円以上だった。

 公的補助のほか、保険金も受け取れると分かり、農業を続けることを決めた。「かなり借金もしたが、ある程度、返せる見通しが立った」という。

 所有する農地のほか、周囲の農家からも耕作を依頼され、約三十ヘクタールを耕作している。「請け負った以上、やらなきゃいけないし、自分がやめれば相手も困る。まだやめられない。自分の農地は守る」と笑った。 (宮本隆康)

緊急!市民集会 「思川開発事業と栃木市の水道水」

2016年4月21日
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思川開発問題に関する市民集会が下記の通り、開かれます。
集会案内チラシ思川開発問題の市民集会20160430もご覧ください
推進の結論を出すための思川開発の検証作業が急ピッチで進められていますので、何としても市民側の反対の動きを広げていきたいと思います。
緊急!市民集会 「思川開発事業と栃木市の水道水」
思川上流に南摩ダムをつくり、思川から水を引き込む開発計画があります。計画が実現すると地下水を水源としている栃木市の水道水は、水質が悪化し水はマズくなり、それに加えて水道料金がかなり高くなってしまいます。これは将来の私たちの健康にとっても重大問題です。
この問題に深く関わってこられた専門家の報告を聞いて、私たちに何ができるかを考えたいと思います。ぜひ、誘い合わせ多数参加ください。
日 時 2016年4月30日(土)午後1時30分~4時
場 所 栃木市栃木文化会館 大会議室(栃木市旭12-16 ☎0282-23-5678)
内 容 <入場無料・申込不要>
1 「思川開発事業は本当に必要なのか」
嶋津 暉之氏(水問題研究家、元東京都環境科学研究所研究員)
2 「栃木県南市町の水事情」
高橋比呂志氏(思川開発事業を考える流域の会事務局長)
3 「思川開発事業が栃木市水道水に与える影響と経費試算」
早乙女正次氏(元栃木県職員)
4 「思川の治水問題と渡良瀬遊水地」
伊藤 武晴氏(思川開発事業を考える流域の会代表)
思川開発テーマ 市民団体が集会30日、栃木市文化会館(下野新聞2016年4月24日)

鹿沼市の思川開発事業(南摩ダム)を巡る緊急市民集会「思川開発事業と栃木市の水道水」が30日午後1時半~4時、栃木市文化会館大会議室で開かれる。

総事業費1850億円の事業は南摩川にダムを建設するなどして治水や利水を図り、栃木、下野両市の水源にもする計画。民主党政権時代に一時凍結され、事業の必要性を検証している国は3月、事業継続が「有利」との評価案を示した。

集会は「思川開発事業と栃木市の水道水を考える会」が主催。事業を巡り、2月に栃木市内で開かれた集会の参加者有志らが3月に結成。「事業で市内水道水の水質低下や水道料金の高額化を招きかねない」と訴えている。

水問題研究家の嶋津暉之元東京都環境科学研究所研究員が「事業は本当に必要なのか」と題し語るほか、県南各市町の水事情、事業が栃木市の水道水に与える影響などについて「思川開発事業を考える流域の会」メンバーや元県職員など3人が報告する。無料。当日直接会場へ。(問)考える会の猿山弘子共同代表0282・23・1078。

 

 

ダム計画反対のデモ隊、警察の強制排除に絶叫 フランス

2015年3月7日
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フランスのダム問題についての新しいニュースです。このニュースは表題と動画だけで、内容が分かりませんので、昨年12月の解説記事も掲載します。

ダム計画反対のデモ隊、警察の強制排除に絶叫 フランス

AFPBB News 2015年3月7日(土)12時30分配信) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150307-00010006-afpbbnewsv-int

(動画)
 【3月7日 AFP】フランス南西部のリル・シュル・タルン(Lisle-sur-Tarn)で6日、ダム計画に反対するデモ隊が警察に強制排除された。(c)AFPBB News

ダム建設反対と緑の党と欧州委員会 [編集]

(欧州連合ものがたり2014-12-17 00:27) http://euandjapan.blog.so-net.ne.jp/2014-12-17

今回は、環境問題です。 一国の政治に、EUがどういう影響を与えうるのかというのが今回のテーマです。
sivens.jpg
フランスで、10月から11月にかけて、連日大きなニュースになっていたダム建設問題です。 まずは、簡単に事件の概要を説明します。
フランスの南西部、タルヌ県にある湿地帯のテスク渓谷というところで、ダムの建設計画がありました。シヴァンス(Sivens)・ダムという名前で、
農業用水という名目でした。 最初の計画は1969年、現在の計画の形は1989年からのものです。
反対する地元民や環境保護の活動家は、長年闘い続けてきましたが、今年に入って軍警察が、反対する人々が居座っていた
テント・やぐらを、何度かにわたって強制排除を始めました。日本人の中には「成田みたい」という人もいます。
そしてとうとう10月25日、植物学を専攻している学生のレミ・フレスさん、21歳が、機動隊の手榴弾が
背中にあたり、即死してしまったのです。これを機に反対運動が激化、パリやトゥールーズでも反対のデモが起こり、逮捕者続出という事態になりました。
毎度のことながら、言いたいことがあるとちゃんと主張して行動するフランス人には関心します。
(国会周辺でのデモ活動について、「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」と自分のブログに書いた有力政治家がいたそうですが、頼むから首相にならないでください。世界で日本が極右国家になったと思われてしまいます。日本人はおとなしいけど、言いたいことがあったらデモなどで行動するのは、世界の常識、特に民主主義国家の常識です)
年月が経つうちに、ダムという形での用水そのものの必要性が減じたという問題もあり、まるで長良川の河口堰のような事態になっています。 ロワイヤル環境大臣は、ダムの規模が35
パーセント過剰であり、共同利用できる貯水池をつくることを提案、計画の撤退にまでは言及していないものの、代替案を考えると発表しました。ちなみに、個人貯水池は、もうたくさんあります。 緑の党では、官憲の行き過ぎに対して、カズヌーブ内務大臣の辞任を要求する要人があらわれるなど、騒動になっています。
日本も同じですが、国、県、地元の利権、建設会社、農業関係者たちの利益が複雑にからみあっていますので、なかなか難しい問題です。
これがどう欧州連合と関係あるかといいますと、このダムは、2割程度、EUの農業援助が入っているのです。正確には「農村開発のための欧州農業基金」です。他は国や地方自治体などです。このようにEUがかかわってくるのは、全然珍しいことではありません。
建設反対派にとっては、EUの欧州委員会は「思わぬ味方」だそうで。なぜなら、欧州委員会がフランスに対して、EUの環境ガイドラインを侵害しているといって、違反手続き措置を始めるらしいからです。委員会の広報官は、「書類を調査しているところ」で、「まだ違反手続きのための段階には入っていない」と言ってますが。
なんでこうなったかと言いますと。 フランス南西部から選出されたエコロジストのCatherine Greze欧州議員が、もう2011年から5回にわたって、欧州委員会にこのダム建設に関して、質問をなげかけてきたからです。彼女は54歳、フランスのヨーロッパ
エコロジー緑の党に所属しています。そして、グローバル・グリーン・コーデイネーションにも所属しています。これは何かというと、2001年にオーストラリアのキャンベラで設立されたもので、一言で趣旨をいうなら「世界の緑の党が団結しましょう」というものです。 彼女は「もし欧州がフランスに対して違反手続き措置を始めるなら、欧州基金は補助金を停止し、計画は放棄されるでしょう」と言っています。
ル・パリジャン紙の情報筋によると、欧州委員会は2013年11月に、フランスに対して「水に関する欧州ガイドラインの要請が、このダム建設によって脅かされていないか」を確認するために、必要な情報を提出するようにすでに求めているそうです。 Catherine Greze欧州議員はさらに、2月24日にも、13ヘクタールもの湿地帯が破壊されるせいで、欧州の規範に完全に反するのだから、このプロジェクトは維持できないはずだと、欧州委員会に新たな質問をしたとのこと。 10月26日に若い学生が死亡したせいで、政府の判断で建設は停止されています。前述したように、環境大臣のロワイヤル女史は、3人の専門家を現地におくり、規模の調整をはかるか、ダム以外の別の方法をとるかを検討し始めています。
もしこれが日本だったら、時間が経って人々の関心が薄れるのを待って、再びぞろ利権がからむ人たちが建設をなし崩しに再開するでしょう。でも、フランスの場合、国内だけでも政権交代があるし、人々は日本人ほど大人しくないです。さらに加えて、緑の党の議員が欧州規模で訴えるという方法を駆使しています。世界規模だと、たかだかダム一つくらいは、もっと深刻な問題が多すぎて埋もれてしまうかもしれませんが、EU規模なら、十分効果があると思います。
さて、もし今後フランス政府が、EUから欧州委員会の署名入りの手紙を受け取ったら、公けにしなくてはいけなくなるでしょう。違反行為の最初の手続きとは、いわば訴訟の前段階になるわけです。もしフランス政府がEUの満足のいく返事をすぐに返せなかったら、欧州委員会は、EU裁判所にフランスを訴えることになります。ただでさえ難しい問題になっているのに、フランス政府がそんなリスクを侵すのかどうか。 環境の権利に詳しい弁護士によると、「欧州委員会は軽率にこれらの手続きに入ることは決してないので、もし本当にやるとなったら、もうダム建設プロジェクトはおしまいだろう」と語っています。
いつもいつも、国内問題は国内だけ、一国だけで解決し、せいぜい
アメリカ様の圧力を利用するしかない日本にとっては、「共同体」ということそのものが理解されていないと、常々感じています。共同体とは何か、どう一国の社会に影響を与えているのか、この記事で少しでも伝わるといいのですが。

エジプトなど3カ国、ルネッサンスダム運用方法で暫定合意

2015年3月7日
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ナイル川に建設予定の巨大ダム「ルネッサンスダム」について3カ国が暫定合意に達したという記事です。容量630億m3の巨大ダムです。
エチオピア大使館の情報、IPS  japan の関連記事も掲載します。
エジプトなど3カ国、ルネッサンスダム運用方法で暫定合意
(ロイター2015年 03月 6日 13:26 ) http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPKBN0M20AD20150306
[ハルツーム 6日 ロイター] – エジプト、スーダン、エチオピアの3カ国は、ナイル川に建設予定の「ルネッサンスダム」の運用方法で暫定合意に達した。エジプトのムガーズィー水資源・かんがい相が6日明らかにした。
ルネッサンスダムはイタリアのサリーニ・インプレジーロが建設を請け負い、発電能力は6000メガワットとなる見込み。ただ農業、工業から飲料までさまざまな水資源をナイル川だけに依存するエジプトがダム建設を懸念し、3カ国の外相と水利相がハルツームで3日間にわたり協議していた。
ムガーズィー水資源・かんがい相は「ルネッサンスダム運用の制度と仕組み、およびダムについての協力体制で原則合意した」と述べた。
またスーダンのカルティ外相は3カ国が「東ナイル盆地とルネッサンスダムからどう利益を得るかで原則的に合意した。今回の合意文書は3カ国の関係で新たな1ページになる」と述べ、今後は各国が合意を最終承認するとの見通しを示した。
(エチオピア大使館)
グランド・ルネッサンス・ダム http://www.et.emb-japan.go.jp/comp_photo%20for%20news%20articles/ci_5.pdf
①場所:スーダン国境から40km
②費用:4,000億円(48億USD)
③目的:発電用(他国へ売電し、灌漑には利用しない)
④発電能力:5,250MW(世界第10位)
⑤ダム湖容量等:面積1,680km2、容量630億m3
⑥工期:6年半
⑦設計・積算:イタリア・サリニ社
※資金調達法:建設国債発行(約1000億円発行済)
ディアスポラ、公務員、一般市民への購入を促している。
満期5年(金利5.5%)、満期5年以上(金利6%)の2タイプ。
利子配当1回/半期
ナイル川をめぐる激しいエジプト・エチオピアの対立
(IPS japan 2014年?) http://www.ips-japan.net/index.php/region/africa/2033-egypt-prepares-force-nile-flow-2
【カイロIPS=キャム・マグレイス】
昨年6月、エジプトのムハンマド・モルシ大統領(当時)が、エチオピアがナイル川上流で続けているダム建設に対抗して、「交渉のテーブルには全ての選択肢が用意されている」と述べた際、軍事介入まで示唆するのはジェスチャーに過ぎないと見られていた。しかし専門家の間では、エジプトは自国への歴史的な割当水量を巡る権益確保については本気であり、もしエチオピアがアフリカ最大規模になることが確実視されている水力発電ダムの建設を継続するならば、軍事介入のオプションもあながち排除できないだろう、との見方も出てきている。
エジプトとエチオピアの関係は、エチオピアが2011年に42億ドルをかけた水力発電用のグランド・ルネッサンス・ダム(貯水量:740億立方メートル)の建設に着手して以来、急速に悪化してきている。
エジプト政府は、8500万人の国民の水需要の100%をナイル川に依存しているため、上流に位置するエチオピアでこのダムが2017年に稼働し始めると下流への水供給量が減らされるのではないかと危惧している。エジプト水資源・灌漑省の当局者は、このダム建設によってエジプトはナイル川の水資源の2~3割を失うとともに、(自国のナセル湖の貯水量が減少するため)アスワンハイダムによる発電量の3分の1を失うことになると主張している。
一方エチオピア政府は、グランド・ルネッサンス・ダムの建設は、エジプトの割当水量に関してなんら悪影響はないと主張している。エチオピア政府は、このダムの優れた発電能力(概算で6000メガワット)により、ゆくゆくはエネルギーの自給を達成し、電力輸出で経済苦境から脱却することを企図している。
「エジプト政府は、ナイル川からの割当水量は、安全保障にかかわる問題だと見ています。一方でエチオピアにとって、建設中のダムは国家の威信の源(とりわけ1980~90年代に同国を襲った大飢饉からの再生の象徴)であり、これからの経済発展に不可欠なものなのです。」と戦略アナリストのアハメド・アブデル・ハリム氏はIPSの取材に対して語った。
エチオピアは昨年5月に水流の方向事業転換を開始し、エジプトの怒りを掻き立てることになった。エジプト国内では、一部の国会議員から、エチオピアが工事を中止しなければ、軍隊を派遣するかエチオピア現地の反体制勢力を支援するなどの策を取るべきだとの声も出てきている。
これに対してエチオピアは先月、軍関係者がダム建設予定地を訪れ、建設事業を守るために「代償を払う覚悟がある」と国営テレビに対して語るなど、事態はエスカレートの兆しを見せている。
エジプト政府は、大英帝国時代に締結された条約を根拠に、エジプトには少なくともナイル川の流量の3分の2を使用する権利があり、ダムや灌漑用水路の建設といった開発プロジェクトをナイル川上流地域で行うことに関して、拒否権を持っていると主張している。
英国が1929年に作成したエジプトとスーダン間のナイル川の割当水量に関する合意(1959年に改訂)は、ナイル川の上流地域にあたる国々に相談することなく締結された。
1959年の合意では、ナイル川の年間平均水量840億立方メートルのうち、エジプトが555億立方メートル、スーダンが185億立方メートルを利用できると定めている。残りの100億立方メートルは、エジプトが1970年代に建設したアスワンハイダムによってできたナセル湖で蒸発してしまう。他方で、ナイル川に接する他の9か国には何の権利も与えられなかった。
この取り決めは、ナイル川上流の国々に対して不公平な内容に見えるが、ナイル川以外にも水源として降雨を期待できる上流の赤道地帯に位置する山岳国家とは異なり、砂漠気候に位置するエジプトとスーダンは、ほぼすべての水需要をナイル川に依存している。
「ここまで危機感が高まっている理由の一つとして、このダムの建設によってエジプトの取水量が実際どの程度影響を受けるのか誰も知らないという現状があります。エジプトは全くナイル川に依存した国です。ナイル川がなければ、エジプトは存在しないと言っても過言はないのです。」とカイロにあるアメリカン大学(AUC)のリチャード・タットワイラー氏はIPSの取材に対して語った。
エジプトの懸念には正当な根拠がある。同国の「人口一人当たりの最大利用可能水資源量」は僅か660立方メートル(1700立方メートルが最低基準とされ、これを下回る場合は「水ストレス下にある」状態、1000立方メートルを下回る場合は「水不足」の状態、500立方メートルを下回る場合は「絶対的な水不足」の状態を表す:IPSJ)で、既に世界最低レベルにあるが、これから50年の間に人口が倍増しさらなる水不足が予想されている。
一方、ナイル川上流域の国々も人口増加の問題に直面しており、それに伴う農業用水や飲み水の需要をナイル川からの取水で賄おうという考えが魅力的な選択肢として浮上してきている。
2010年、エチオピア、ケニア、ウガンダ、タンザニア、ルワンダのナイル上流域5か国はエンテベ協定を結び、これまでの協定に代わって、他のナイル川流域の国の水の安全保障に「重大な」影響を与えないかぎり、ナイル川に関するあらゆる活動を認めると取り決めた。ブルンジも翌年、この協定に署名した。
エジプトは、この新協定を断固拒否した。しかし、これまで数十年に亘って貧しいナイル川上流域諸国に対する影響力を駆使して水利開発を抑え込んできたエジプト政府も、今やナイル川の水資源に対する支配権が失われていっている現実に直面している。
「エチオピア政府の行動は前代未聞です。かつてナイル川上流域の国が下流域の国の承諾を得ることなく一方的にダム建設に踏み切ったことはありません。もし、他の上流域の国がエチオピアの前例に続いた場合、エジプトは深刻な水不足に陥ることになるでしょう。」とカイロに本拠を置くアフリカ研究所(Institute for Africa Studies)のアイマン・シャバーナ氏は、昨年6月にIPSの取材に対して語っている。
エジプト政府はこの協定を「挑発的だ」として、グランド・ルネッサンス・ダムの建設が下流地域に及ぼす影響が明らかになるまでエチオピアに建設作業を停止させるよう国際機関に提訴した。エジプトの政府関係者は外交的手段による危機回避を切望する旨を表明しているが、治安当局筋によるとエジプト軍当局はナイル川に関する国益を守るためには軍事力を行使する用意ができているという。
ウィキリークスに掲載された軍事情報機関「ストラトフォー」からの漏洩された電子メールによると、2010年、ホスニ・ムバラク大統領(当時)はエチオピアによるダム建設を空爆で阻止する計画を打ち出し、スーダン南東部に出撃拠点となる空港を建設していた。
しかし、ナイルの問題に関してはエジプトの同盟国だったスーダンが2012年にグランド・ルネッサンス・ダムに対する反対を取り下げ逆に支援に回ったことで、エジプトは窮地に追い込まれている。
AUCのタットワイラー氏によると、ダム建設による自国への影響が最小限に止まると判断したスーダン政府は、むしろこの巨大プロジェクトがもたらす恩恵に着目しはじめたのだろうという。グランド・ルネッサンス・ダムが稼働すれば、下流地域の洪水制御や灌漑という点でもメリットが発生するうえに、エチオピアの電力需要を満たしたあとの余剰電力を、国境をまたぐ送電線を通じて電力事情が切迫しているスーダンに引き込めるメリットも期待できる。
また研究の中には、エチオピアにおける水力発電ダムを適切に制御すれば、洪水被害を軽減できるのみならず、エジプトが取得する全体的な取水量を増やすことも可能だとするものも出てきている。砂漠地帯にあるエジプトのアスワンハイダムよりもより涼しい気候のエチオピアのダムで貯水することで、太陽熱に奪われる河川の水量を大幅に抑制できるのである。
しかし、エジプト政府はグランド・ルネッサンス・ダムの貯水にかかる5年とも10年ともいわれる期間に、自国への水量割り当てが少なくなることに深い懸念を示している。この点についてタットワイラー氏は、「エチオピアが必要なのは電力です。水力発電ダムは堰き止めた水を通過させて初めて発電ができるのです。」と述べ、エチオピア政府がその期間に下流への流れを大幅に制限したり停止したりする可能性は低いと指摘している。(原文へ)
翻訳=IPS Japan

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