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事務局からのお知らせ

国土交通省の「水災害分野における気候変動適応策のあり方についての中間とりまとめ」

2015年3月3日
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国土交通省が2月27日に、「社会資本整備審議会河川分科会気候変動に適応した治水対策検討小委員会」で審議が行われてきた「水災害分野における気候変動適応策のあり方についての中間とりまとめ」 を公表しました。
 国土交通省のHP
『水災害分野における気候変動適応策のあり方について~災害リスク情報と危機感を共有し、減災に取り組む社会へ~中間とりまとめ』 http://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo03_hh_000870.html をご覧ください。
この中間とりまとめは網羅的、総花的であって、これによって河川行政をどのように変えようとしているのか、よく分からないところがありますが、下記の記事が要点を伝えています。
その中で、「ダム再生で洪水調節機能を増強」というのがあります。国交省の狙いの一つはこのあたりにあるのかもしれません。
新しいダムはつくりにくくなったので、既設ダムの改造、再生をこれから進めることを考えているように思われます。
想定を超える洪水に対応するためには、河川法で定められた現在の治水計画の立て方「河川整備基本方針+河川整備計画」をリセットして、治水対策のあり方を根本から変える必要がありますが、この中間とりまとめにはそのような問題意識が見られません。

「水災害」先陣切り具体の道筋/国交省 気候変動に適応策[建設通信新聞 2015-03-02  1面] http://www.kensetsunews.com/?p=44789

2013年9月のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書の公表以降、災害、食料、健康などさまざまな分野で適応策の検討が進む中、洪水や高潮などの水害、土砂災害、渇水といった「水災害分野」がいち早く適応策の具体化に踏み出す。

国土交通省は2月27日、水災害分野における気候変動適応策のあり方について、中間とりまとめを公表。他省庁に先駆けて、一定の道筋をつける形となる。気候変動に関する具体的な計画を打ち出すのは国内で初めて。
太田昭宏国交相が再三にわたって「雨の降り方が変わってきている」と語るように、近年の水災害は激甚化の傾向にある。昨年8月に広島市で発生した大規模土砂災害を始め、“新たなステージ”で猛威をふるう自然災害への防災・減災対策は最優先かつ喫緊の課題になっている。
焦点は、災害の原因となる豪雨、洪水、高潮など自然現象の大きさを表す「外力」の増大にどう対応していくか。気候変動によって頻発・激甚化が懸念される水災害に適応していくには、施設の計画あるいは設計の段階から、増大する外力を踏まえた対策を打っていく必要があるからだ。
国交省は、気候変動によって懸念される外力の増大を見込んだ、想定し得る最大規模の外力「想定最大外力」を新たに設定。施設だけでは守りきれない事態を想定しながら、社会全体で危機管理対策に取り組む。
引き続き、現況の安全度に基づく施設整備を推進する一方で、施設の能力を上回る外力に対しても、浸水想定など災害リスクの評価をベースにウィークポイントを抽出。土地利用のあり方を含めて、そこに優先的な投資を打ち出すなどできる限りの被害軽減を図る。
◆外力増大に設計段階から工夫を
具体策の1つが施設の設計段階での工夫だ。
将来的な外力の増大に柔軟に追随できる施設整備を進めていくため、当初の設計段階で「幅を持った外力」を想定。老朽化対策など施設の更新に合わせて、将来的な施設の改造に対応できる構造形式を選定するなど、増大する外力に順応した取り組みを進めていく。
特に河川整備では、現況の安全度から、想定最大外力までのさまざまな規模の外力を想定していく中で、地域特性を見極めながら、流域全体の施設計画の長期的な目標を定める河川整備基本方針や、施設計画の短中期的な目標を示す河川整備計画を必要に応じて見直す。
◆ダム再生で洪水調節機能を増強
施設の運用面でも工夫を凝らす。一例が「ダム再生」による洪水調節機能の増強など、既存施設を「賢く使う」取り組みだ。
堤体のかさ上げや既設ダムの直下(下流)にダムを再構築する「貯水容量の拡大」、下流側に向けて水路トンネルによる洪水吐を新設する「放流能力の拡大」など、ダム再生による機能強化を推進。
合わせて、ダム上流域の降雨量やダムへの流入量の予測精度の向上をさせることで、ダム操作の高度化を図るなど、ダムの洪水調節能力を最大限に活用する。
洪水前の段階から事前放流によって貯水池内の水位を下げ、あらかじめ洪水調節のための“空き容量”を確保。操作規則(運用ルール)の見直しなどで、洪水調節機能の増強を図る。
◆災害のリスクを踏まえ土地利用
土地利用や企業の事業継続を踏まえた「リスク評価」と「リスクの提示」も重要なポイントになる。防災・減災を実現していくためには、施設管理者側から見たリスクだけでなく、まち・地域あるいは住民など実際に被害者となる側から見たリスクを分かりやすく示していくことが必要だからだ。
住民の主体的な避難行動を支えるきめ細かな浸水想定(ハザードマップ)の公表など、土地ごとのリスク情報を容易に入手できる仕組みに加え、災害リスクの低い地域への居住誘導など、コンパクトシティーと連動した土地利用の転換に踏み出す。
◆「水災害分野における気候変動適応策のあり方」(中間まとめ)
13年12月に国土交通大臣より社会資本整備審議会に諮問。14年1月から河川分科会「気候変動に適応した治水対策検討小委員会」(委員長・福岡捷二中央大研究開発機構教授)が計10回の調査審議を実施してきた。
来夏に予定されている政府全体の適応計画の策定に合わせて、今夏にも最終とりまとめ(答申)を行う見通し。国交省は、中間とりまとめで盛り込んだ適応策の、それぞれの対策の進め方や目標時期を今後5年間程度のロードマップに落とし込み、実施可能なものから直ちに取り組む考え。

国土審議会水資源開発分科会の答申「今後の水資源政策のあり方について」のパブリックコメント

2015年2月6日
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国交省が国土審議会水資源開発分科会の答申「今後の水資源政策のあり方について」のパブリックコメントを始めました。
今後の水資源行政のあり方を左右する重要な答申になりますので、皆様も意見をどんどん出していただきたいと思います。

意見書の一例を参考までに添付します(水源連の嶋津暉之の意見)。水資源分科会答申案へのパブコメ意見(嶋津)

意見募集期間は2月4日(水)から2月24日(火)まで(必着)です。

国土交通省のHP http://www.mlit.go.jp/report/press/water02_hh_000059.html をご覧ください。

今後の水資源政策のあり方について~水の恵みを享受できる「幅を持った社会システム」への転換~ 答申(案)に関する意見募集について

平成27年2月4日
国土審議会水資源開発分科会は、平成25年10月22日に、国土交通大臣から国土審議会長に対し「今後の水資源政策のあり方について」諮問されたことを受け、水資源開発分科会調査企画部会において11回の審議を行った上で、
平成26年12月26日に水資源開発分科会において審議を行い、「答申(案)」をとりまとめました。
つきましては、下記の要領にて広く国民の皆様の御意見を募集します。いただいた御意見については、「答申」とりまとめの参考にさせていただきます。

(詳細は上記リンク先を参照ください)
[報道発表]今後の水資源政策のあり方について 答申(案)に関する意見募集(PDF形式:77KB)
【添付資料】意見募集要領(PDF形式:105KB)
【添付資料】意見提出様式(PDF形式:50KB)
【添付資料】意見提出様式(Word形式:17KB)
【添付資料】今後の水資源政策のあり方について 答申(案)(PDF形式:580KB)
【添付資料】(参考)概要(PDF形式:61KB)
【添付資料】(参考)諮問書(PDF形式:124KB)

球磨川の治水対策など知事に要望 流域12市町村 (川辺川ダムは法的に中止させるためには)

球磨川流域12市町村が川辺川ダムに代わる球磨川の安全対策の強化を熊本県知事に要望しました。朝日、毎日、熊日の記事を掲載します。

川辺川ダムは八ッ場ダムと異なり、2009年9月の国交大臣の中止言明で中止が決定しましたが、法的にはまだ中止になっていません。
川辺川ダムなしの球磨川水系河川整備計画が策定されないと、特定多目的ダム法による川辺ダム計画を廃止できない仕組みになっているからです。
国、県、流域市町村による「ダムによらない治水を検討する場」が今まで11回開かれましたが、既往洪水の再来に対応できる、川辺川ダムなしの治水計画をつくることができない状況に陥っています。
実際には河道を掘削して河道対応流量を増やす計画をつくれば、川辺川ダムなしで既往洪水の再来に対応できるのですが、
河川整備計画の上位計画である球磨川水系河川整備基本方針を2007年に策定するときに、川辺川ダム計画の代替案が浮上しないように、人吉地点の計画高水流量(河道対応流量)が4000㎥/秒に据え置かれました(基本高水流量は7000㎥/秒)。
河道対応流量が4000㎥/秒のままであると、既往洪水の最大は5千数百㎥/秒ですから、既設の市房ダムの効果を差し引いても、1000㎥/秒程度の洪水をカットする方策がなければなりません。遊水池を多く設置する代替案が検討されていますが、その効果は限られています。
河道対応流量を4000㎥/秒に据え置いた表向きの理由は河道を掘削すると、軟岩が露出して堤防の維持に支障が出るというものでした。
しかし、それは河道をやや深めに掘って砂礫で覆えば、解決できることですし、むしろ、川辺川ダムがもしつくられれば、砂礫の流下を妨げれ、川辺川ダムの方が軟岩の露出を引き起こします。
河川整備基本方針を審議した国交省の委員会に、私たちはそのような意見書を提出したのですが、当時は川辺川ダム計画の推進が至上命題であったので、受け入れられませんでした。
球磨川に関しては河川整備基本方針そのものを真っ当な内容に改定しないと、川辺川ダムなしの河川整備計画がいつまでも策定されず、川辺川ダムは法的に生き続けることになります。

(毎日新聞熊本版 2015年01月29日)http://mainichi.jp/area/kumamoto/news/20150129ddlk43010508000c.html
川辺川ダム計画中止後の球磨川水系の治水策を巡り、流域の12市町村を代表して松本照彦・多良木町長ら3人が28日、県庁で治水の安全度向上や地域振興を求める要望書を蒲島郁夫知事に提出した。
昨年12月に国と県、流域市町村が治水策を協議する「ダムによらない治水を検討する場」の首長級会議が開かれた際、蒲島知事は「検討する場」の終了を提案。次回にも終了し、今後は新たな枠組みで安全度向上について検討することになる。
今回の要望は、協議が次の段階に入る前に地元の意向を再確認するのが目的。要望書では、治水の安全度が低い区間で早急に最大の対策を講じることと、ダム建設事業を受け入れた五木村や相良村四浦地区の再建に最善の措置を講じることの2点を求めている。
蒲島知事は「ハード、ソフト両面から総合的な治水対策を進め、地域振興にもしっかりと取り組む」と話した。【松田栄二郎】

球磨川の安全対策の強化継続を 市町村が要望
(熊本日日新聞2015年01月28日)http://kumanichi.com/news/local/main/20150128007.xhtml
球磨川の治水対策などについて蒲島郁夫知事(左)に要望書を手渡す松本照彦・多良木町長=28日、県庁
人吉球磨地域など球磨川流域の12市町村長は28日、蒲島郁夫知事が川辺川ダム以外の治水対策を探る「ダムによらない治水を検討する場」での協議終了を提案したことを受け、引き続き安全対策の強化と五木村などの振興に配慮するよう県に要望した。
国、県、市町村の「検討する場」をめぐっては、蒲島知事が昨年12月の会合で「積み上げた対策案の実施で治水安全度は現状より向上する」として終了を提案。ただ、安全度が全国の国管理河川の目標より低い水準にとどまるため、「新たな形での検討」を続ける考えも示した。
要望で流域市町村は、これまでの議論について「抜本的な治水対策を共有できるまでには至っていない」と指摘。安全度が低い地区の解消と、ダム計画で疲弊した五木、相良両村の再建に最善の措置を講じるよう求めた。
球磨郡町村会長の松本照彦・多良木町長、和田拓也・五木村長、柳詰正治・球磨村長が県庁を訪ね、蒲島知事に要望書を手渡した。
県は、「検討する場」の次回会合で約6年に及ぶ治水代替案の協議を総括し、今後の方針について具体的に示す考え。(蔵原博康)

荒瀬ダムの撤去は蒲島熊本県知事ではなく潮谷義子前知事のおかげ

2015年1月29日
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蒲島郁夫(熊本県知事)のインタビュー記事を参考までにお伝えします。ダム関係の発言を下記に掲載します。

蒲島氏は川辺川ダムの白紙撤回を求めた知事として評価されていますが、蒲島氏は決して脱ダム派の知事ではありません。
全く不要な県営の路木ダムを強引に建設し(一審の住民訴訟では住民側が勝訴)、阿蘇の自然を壊す直轄・立野ダムの検証で事業推進の意見を出し、また、荒瀬ダムに続いての撤去が熱望されていた瀬戸石ダム(電源開発)の水利権更新も認めました。
荒瀬ダムについても潮谷義子前知事が決めた撤去方針を変えようとしましたが、その方針を変えるためには球磨川漁協の同意が必要となっていたことから、やむなく撤去することにしたようです。
川辺川ダムについては蒲島氏は就任早々に「川辺川ダム事業に関する有識者会議」を設置しました。有識者会議の答申は、委員8人の意見が5対3で分かれ、推進の方向が強い内容になりました。
私たちの想像ではこの答申を受けて、蒲島氏は推進の方向に舵を切ろうと考えていたと思いますが、知事の見解を発表する前に、ダムサイト予定地の相良村長と、ダムの最大の受益地とされていた人吉市長が川辺川ダムの白紙撤回を表明したことにより、
により、蒲島氏は考えを変え、「球磨川は県民の宝であるから、川辺川ダムの白紙撤回を求める」との見解を発表したと思われます。
蒲島氏は信念の人ではなく、所詮はオポチュニストでした。
川辺川ダムに対して懐疑的な姿勢をとり続け、荒瀬ダム撤去の路線を敷いた潮谷義子前知事が信念の人であると思います。

なぜ「くまモン」は熊本県で生まれたのか?―蒲島郁夫(熊本県知事)
塩田潮の「キーマンに聞く」【9】(PRESIDENT Online TOP 2015年1月26日)http://president.jp/articles/-/14421?page=2
(ダム関係の発言)
【塩田】注目を集めていた川辺川ダムや水俣病の問題でも新たな挑戦に踏み出しました。

【蒲島】川辺川ダム建設計画については、ご承知のとおり就任5ヵ月後に白紙撤回しました。今、ダムによらない治水を目指す方向に進んでいます。水俣病問題では、特措法の成立過程でロビー活動を行いました。特措法は、水俣病問題の解決の中で一定の成果が得られたのかなと思います。水俣病は長期にわたる問題ですから、私の任期中にすべてに対応できるとは思いませんが、いい方向に向かうようにと思っています。
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【塩田】知事選出馬以後、ここまでの約7年間で一番辛かったことは何ですか。

【蒲島】1回目の選挙のとき、県民のために頑張ろうと思って選挙戦を戦っていて、唾を吐きかけられたことがありました。一生で初めてです。自分は一所懸命やっていても、必ずしもすべてが歓迎されるものではない。そのとき初めて政治の厳しさがわかりました。
知事就任後では、川辺川ダムのほかに、もう一つ、荒瀬ダムという大きなダムの撤去のときが辛かったです。前知事のときに撤去が決まっていたのですが、撤去に90億円くらいかかるというのです。財政再建に取り組んでいるとき、すぐ撤去すれば電力会社からおカネが入ってこなくなるし、今は電力も必要とされているので、もう少し財政的に余裕ができたときに撤去すればいいのではないかと思い、就任後2~3カ月のとき、方向転換しました。
その頃までは、理論的に正しければやれると思っていました。ところが、政治はそうではありません。撤去してほしい、昔の川を取り戻したいというものすごく深い思いがあるわけです。その深い気持ちに気づかず、それに応えることができませんでした。それが辛かった。実際は民主党政権下で、国土交通省と環境省が一定の補助をしてくれることになりました。そのような支援を活用しながら、現在、ダム撤去工事を進めています 。

太田川ダム問題への取り組み(建設されたダムの運用見直しを求める運動)

静岡県営の太田川ダムができ,貯水が始まってから6年目になりました。この間にダム湖と川の水質の汚濁が誰の目にも明らかになり、流域の住民から生態系を含めた川の異常と漁業被害を訴える声が出はじめています。

漁業者らの心配を押し切って多目的ダムの建設が進められた一つの根拠は「浜松の人に飲ませる水がなくなるから」でしたが、それが全くの虚構であったことが明らかになっています。

そして、ダムの堤体に多数のひび割れが発生するなど、ダムの安全性が危惧されるようになっています。

そこで、太田川ダム研究会等の三団体は、地元の森町に対して、大田川ダムの運用見直しを求める提案資料を提出しました。

「不必要な「利水」のための貯水を止め、南海トラフの大地震が起きる前にダム湖の水位を出来るだけ下げておく」という運用見直しの提案です。

他地域でも、非常に参考になる取り組みですので、太田川ダム研究会の岡本尚さんから提供していただいた資料の一式を掲載します。

この取り組みはアメリカ映画「ダムネーション」の理念につながるものです。現時点でのダム撤去は困難であるとしても、ダムの運用見直しは可能ですので、この運動を広げていきたいと思います。

 

討論資料 太田川と太田川ダム湖の現状をどう考えるか

資料1

資料2

資料3

資料4

資料5

資料6

資料7

資料8

資料9

 

静岡新聞 2015年1月20日

ダムのできた川とダムの無い川

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