水源連:Japan River Keeper Alliance

水源開発問題全国連絡会は、ダム建設などと闘う全国の仲間たちのネットワークです

ホーム > ニュース > 石木ダムの情報

ニュース

石木ダムの情報

まるでゾンビ、45年間本体未着工のダム計画 徹底抗戦13世帯、長崎県「実力行使も選択肢」

2020年6月1日
カテゴリー:

石木ダム問題についての全国新聞ネットの記事を掲載します。
この記事のタイトルに書かれているように石木ダムはまさしくゾンビです。必要性がなくなったので、とっくに中止されるべき事業であるのに、いまだに地元住民を苦しめています。

まるでゾンビ、45年間本体未着工のダム計画 徹底抗戦13世帯、長崎県「実力行使も選択肢」
(全国新聞ネット 2020/06/01 07:00)
https://news.yahoo.co.jp/articles/ffd8bbc9acb74247fa275b3b7142b41b109d7785

© 全国新聞ネット 長崎・石木ダム建設予定地
45年前に建設が決まったが、いまだに本体の着工すらしていないダム計画が長崎県で生き続けている。まるでゾンビのような公共事業は、石木ダム計画だ。県と佐世保市が川棚町の石木川流域に予定。ダム建設に伴う移転対象の約8割に当たる54世帯が既に転居した一方、水没予定地の13世帯約60人が残り「死んでもふるさとを離れない」と徹底抗戦の構えだ。住民は見直しを含めた対話を求めるが、県側は住民や家屋を撤去して強制的に土地を取り上げる〝実力行使〟の行政代執行を「選択肢の一つ」と言い放つ。両者の深い溝は埋まりそうにもない。(共同通信・石川陽一)

▽強制測量の記憶
生い茂る木々の間から響く鳥の声。透き通るような清流には、夏になると無数の蛍が舞う。そんな集落にダム建設が決まったのは、1975年のことだった。「こんなに美しい場所は他にないよ」と笑う松本好央さん(45)は、その年に生まれた。水没予定地の川棚町川原(こうばる)地区で鉄工所を営む。仕事後に自宅の窓から田園風景を眺め、一杯やるのが最高の楽しみだ。
© 全国新聞ネット 石木ダムの水没予定地になっている長崎県川棚町の自宅付近で、思いを語る松本好央さん=19年10月9日
82年5月、小学2年生だった松本さんは初めてダム問題を意識することになる。県が県警機動隊を動員し、建設予定地の強制測量に踏み切ったのだ。学校を休んで大人や近所の子どもたちとともに座り込み、迫る隊員に「帰れ!」と叫んで抵抗したが、あえなく排除された。「本当に家を奪われてしまうのだと思った。今でもあの時の恐怖は忘れられない」
この出来事が、住民と県側との決裂を決定的なものとした。「見ざる、言わざる、聞かざる」をスローガンに、住民はダム計画が存在していないかのように「徹底無視」を貫く。ダムの話題はタブーだ。住民は玄関に「県職員訪問お断り」と書かれたシールを貼り付け、用地買収の交渉は一切受け付けない。感情面の対立が激しさを増した。

▽洪水と大渇水
強制測量後、県側は動きを控える。「ダムのことは忘れて日常生活を送っていた」(松本さん)という92年7月、豪雨で石木川の本流の川棚川が氾濫し、町中が浸水。94年8月から95年4月にかけては、佐世保市で最大43時間連続断水、給水制限264日に及ぶ大渇水が起こった。
石木ダムは佐世保市への給水と川棚町の治水対策が目的だ。県関係者は「ダムがあれば氾濫は防げたし、渇水の被害も緩和できた。行政としては痛恨の出来事だった」。建設計画は息を吹き返す。当初は反対で一致団結していた住民側からも用地買収に応じる人が出始め、97~2004年度に計54世帯が立ち退きに同意した。
© 全国新聞ネット 石木ダムの建設に反対し、水没道路の付け替え工事現場付近で座り込む住民ら=19年11月13日
反対運動も再び活発化した。10年3月に水没予定道路の付け替え工事が始まると、反対住民は抗議して連日、重機の周辺に座り込んだ。「命を懸けた」行動で一時は工事を中断させ、中村法道知事と4回面談したが、決裂。両者が歩み寄ることは無かった。13年9月、国がダム建設に「お墨付き」を与える事業認定を告示し、翌年から県は土地の強制収用に向けた手続きに入った。19年9月、ついに県側は全予定地の権利を取得し、松本さんら残る13世帯は、法的には「国有地を不法占拠する元地権者」となった。

▽人口減でも需要増
県側が石木ダム建設の根拠とするのは大きく2点。一つは、佐世保市の水需要がこれから緩やかに増加していくという市水道局の予測だ。今から18年後の38年には、最大で1日当たり約10万6500トンの水需要を見込み、予備の10%を加味した約11万7000トンが必要と推計。佐世保市が保有する年間355日以上水を供給できる「安定水源」は、1日当たり約7万7000トンにとどまるため、ダムで残りの約4万トンを補うつもりだ。
市水道局によると、09~18年の1日最大給水量の実績値は約10万7600トン。この年は寒波で家庭用の配管が破裂する事故が起きており、残りの年は約7万7000~約8万2000トン。安定水源の供給量を超えた場合は、天候によっては取水できない「不安定水源」の約3万トンや民間の農業用水などを組み合わせて対処しているという。水道局の担当者は「水道事業者は常に水を安定供給できる施設の整備を水道法で義務付けられている。需要予測は必要最小限にとどめており、石木ダムを造ればギリギリ足りるという状況だ」と説明する。
ただ、佐世保市の人口は減少傾向にある。20年5月1日時点で約24万人が住んでいるが、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、今から20年後の40年には約21万人に落ち込む見通し。生活用水や工業用水の使用量の増加は見込めないとして、反対派は水需要予測を誤りだと主張している。

▽100年に1回の大雨
県側の2点目の論拠は、川棚町の治水対策でダム建設が最も費用対効果が高いとの試算だ。県河川課が19年に作成した資料によると、堤防のかさ上げや河道の掘削など7種の方法を検討した結果、ダム中止に伴って発生する費用約62億円を含めて210億~433億円程度かかる。このままダムを造れば、治水面に限ると今後50年の維持管理費を含めて約77億円で済むという。
反対派は石木川にダムを建設しても川棚川の流域面積の約8・8%しかカバーできず、上流部分での氾濫は防げないと主張。県が治水面で想定している「100年に1回レベルの大雨」という基準も過大評価で、他の対策の費用試算も誤りだとしている。川棚川と石木川を河川改修すれば対応できるとしており、双方の主張は平行線をたどっている。
© 全国新聞ネット 長崎県庁でダム計画反対派の地権者の話を聞く中村法道知事=19年9月19日
19年9月、約5年ぶりに中村知事が県庁内で住民との面会に応じた。参加者は住民約50人に限定し、場所は当日まで明らかにせず、入り口にバリケードを設けるなどの「厳戒態勢」だった。住民は代わる代わるふるさとへの思いを口にし、涙を流した。最後には立ち上がり「どうか事業の見直しをお願いします」と全員で頭を下げた。知事はうつむき、視線を合わせなかった。その場で「継続して対話する機会を設けたい」と述べたが、以降、両者の話し合いは一度も開かれていない。

▽ふるさと愛は悪か
知事との面会には、松本さんの長女で高校生の晏奈(はるな)さん(18)の姿もあった。「帰る場所がなくなるのは嫌だ。思い出が詰まったふるさとを奪わないでください。どうか私たちの思いを受け止めてください」と語りかけた。
松本さんは、強制収用によって、子どもたちにかつて自身が感じた以上の恐怖を味わわせることは許せないと感じる。年老いた祖母や両親にも、ここで最期を迎えさせてあげたい。「ふるさとを愛することは悪なのか。もう弱い者いじめはやめてほしい。水の確保や治水は何か他の方法が絶対にあるはず。県や佐世保市はまず対話に応じてほしい」
© 全国新聞ネット 長崎県庁で中村法道知事に石木ダム計画反対を訴える水没予定地に住む女児=19年9月19日
13世帯の土地の明け渡し期限を迎えた19年11月18日、住民約40人が県庁を訪れた。「石木ダムは県政の最重要課題の一つ」と公言する中村知事は節目のこの日、別の公務で出張のため留守だった。代わりに対応した平田研副知事は「ダムで恩恵を受ける人たちは大切な県民だ。行政代執行は選択肢から外さない」と告げた。私たちは県民じゃないのか―。会場の会議室には住民の怒号が飛び交った。

▽フラットな対話の場を
「隣町の水道水を確保するためにあなたの実家をダムに沈めても良いか」と問われたら、どう答えるだろうか。筆者なら嫌だ。「大勢のために少数の犠牲が必要」という考えは強権的で、民主主義社会にそぐわない。
確かに新たな水源や治水対策は必要なのかもしれない。でも、ふるさとに住み続けたいと願う人が居るなら、それを守るのも行政の仕事だ。県側と住民側をそれぞれ取材していると、お互いに感情的な対立が極まってしまっていると感じた。現状では何も解決しない。フラットな状態で対話できる場を設けてほしい。
もし13世帯を実力で排除し、立ち退きを強制することになれば、前代未聞の出来事だ。禍根は世代を超えて残り続け、関わった人間全員の背中に決して消えない十字架を刻むことになるだろう。

© 全国新聞ネット 石木ダム事業の経過

【石木ダム】長崎県と佐世保市が川棚町の石木川に計画する多目的ダム。計画では総貯水量約548万トンで、事業費は約285億円。当初の完成目標は1979年度だったが、今もダム本体は着工しておらず、現在の目標は2025年度。県は14年に強制収用の手続きを開始。水没予定地の13世帯は19年9月に土地の権利を失い、県側は全予定地の用地取得を終えた。現在、知事の判断で行政代執行し、住民や家屋を強制的に排除できる。国の事業認定取り消しを求めた訴訟は一審、二審で住民側が敗訴し、上告中。工事差し止めを求めた訴訟も一審は住民側が敗訴し、福岡高裁で係争中。

(現場へ!)岐路に立つ長崎・石木ダム:新聞の連載1~5

2020年4月14日
カテゴリー:

石木ダム問題についての新聞の連載記事「(現場へ!)岐路に立つ長崎・石木ダム」の15を掲載します。力作の連載記事です。

 

(現場へ!)岐路に立つ長崎・石木ダム:1 住民の闘い60年、問いかける
(朝日新聞2020年4月6日 16時30分)

現場へ!)岐路に立つ長崎・石木ダム:2 命の土地、2度も収奪ならぬ
(朝日新聞2020年4月7日 16時30分)

現場へ!)岐路に立つ長崎・石木ダム:3 強制測量とカネ、分断を生む
(朝日新聞2020年4月8日 16時30分)


(現場へ!)岐路に立つ長崎・石木ダム:4 「266年、世代つなげ私がいる」

(朝日新聞2020年4月9日 16時30分)

(現場へ!)岐路に立つ長崎・石木ダム:5 みんなが「勝つ」方法、考えよう
(朝日新聞2020年4月10日 16時30分)

反論書提出 石木ダム収用明渡裁決取消を求める審査請求 

2020年4月2日
カテゴリー:

反論書 提出

2019年7月3日付で113名の地権者(コウバル居住者と共有地家者)が提起した「石木ダム収用明渡裁決取消を求める審査請求」に対する、処分庁・長崎県収用委員会からの弁明書が、2020年1月7日付で審査請求者に届いています。

この審査請求については、収用明渡裁決の取消を求める審査請求書と収用明渡裁決の執行停止を求める審査請求書 の修正版 を参照願います。
その答弁書への反論の準備を「石木ダム建設絶対反対同盟を支援する会」が進めてきました。反論書作成段階で佐世保市が再評価にとりかかったので、その結果を踏まえて反論書を作成しました。
そして4月5日、106名の連名で2022年3月31日付で提出しました。

提出する反論書は本文と、佐世保市による再評価問題を記した別紙からなります。
反論書には引用した資料を証拠として添付しました。
これらの提出した書類と、ここまでの経緯で重要な書類を下に記します。

反論書提出に至るまでの重要書類

反論書と付属資料

反論書と別紙

付属資料

 

 

石木ダム訴訟判決はみな、何故こんな論調なのか?

2020年3月26日
カテゴリー:

2020年3月27日 石木ダム事業継続差止訴訟で原告敗訴判決

26日、水源連ホームページに石木ダム事業差止訴訟の不当判決を報じる記事「裁判によって私たちが左右されるとは思っていない。私たちは今後も住み続ける」 が掲載されています。マスコミによる報道については、このページをご覧いただくようお願いいたします。

ここでは、判決本文と判決要旨、当日判決言い渡し後の報告集会について報告します。

石木ダム事業認定取消訴訟、そしてこの事業差止め訴訟を通して、原告団と弁護団は①石木ダム事業が全く不要であること、➁その不要な事業によってこれからの生活の場を奪うこと、過去50年間にわたって寝ても覚めてもダムがらみの生活を強いられていること、を事実を詳細にあげて説明してきました。

しかし、取消訴訟では長崎地方裁判所による第一審不当判決、福岡高等裁判所による第2審不当判決は「起業者側の言う石木ダム必要は行政裁量の範囲」とする一方で、地権者の生活が破壊されることについては、「本件起業地内からの移転対象者は, 従前培ってきた暮らし• 生活を失い, 新しい生活に慣れなければならないものの, これらは, 土地が収用される場合には, その士地上に建物を所有したりこれに居住したりする者に必然的に生じるものであって, 土地収用法はこのような不利益を踏まえてもなお, 必要がある場合には損失を補償して土地を収用できることを定めているといえるから, この不利益のみを重視することはできない。」として切り捨てています。

今回の差止訴訟判決においては、石木ダムの必要性については驚くことに一言も触れていいません。地権者の生活が破壊される件については、①こうばるの豊かな自然とその恵みを享受しながら生活を営む権利、➁人が人として生きる権利(総体としての人間そのもの)及び人間の尊厳を維持して生きる権利 ともに、「差止めを求め得る私法上の権利といい得るよ
うな明確な実体を有するものとは認められない。」として切り捨てています。「ダム予定地とされたところの住民は、土地とその上に存在する物に対する権利しか持ち合わせていない」ということになります。

このような判決は「公共事業予定地とされたところの住民は、従前の生活を継続することができないのは当たり前。それを口実に反対しても無駄」というものです。私たちは、このような司法の考え方にNO!を突きつけなけれならないですね。

判決

長崎地裁佐世保支部判決全文
長崎地裁佐世保支部判決要旨

この日の報告

石木川まもり隊ホームページの下記記事を紹介いたします。
石木ダム工事差止 請求棄却

 

 

 

「裁判によって私たちが左右されるとは思っていない。私たちは今後も住み続ける」

2020年3月26日
カテゴリー:

3月24日、石木ダムの工事差し止めを求めた訴訟の判決が長崎地裁佐世保支部でありました。その記事とニュースを掲載します。
まことに残念ながら、原告側の敗訴でした。「ダムの建設によって、住民の生命・身体の安全が侵害されるおそれがあるとは認められない」という判決です。腹立たしい限りの判決でした。

原告の岩下 和雄 さん は次のように語っています。「裁判によって私たちが左右されるとは思っていない。私たちは今後も住み続ける。今までどおりの生活を続けていく」


石木ダムの建設工事差し止め認めず、住民側が敗訴【長崎】

(テレビ長崎2020/3/24(火) 19:44配信) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200324-00000008-ktn-l42

長崎県川棚町の石木ダムをめぐり、建設予定地の住民などが県と佐世保市に工事の差し止めを求めていた裁判で、長崎地裁佐世保支部は訴えを退けました。

長崎地裁佐世保支部で開かれた裁判は、新型コロナウイルスの感染予防で傍聴席が普段の約3分の1、9人に制限されたにも関わらず、59人が傍聴券を求めて列を作りました。

この裁判は石木ダム建設予定地の住民など原告601人が、長崎県と佐世保市に対しダム本体の建設と県道の付け替え工事などの差し止めを求めているものです。

2年半以上にわたり、これまで13回の口頭弁論が開かれました。

原告側は佐世保市が水需要を過大に見積もっていて、石木ダムは必要がないこと、県がダム建設を優先し川棚川の過去の洪水被害の原因究明や対策を行っておらず、生命・身体の安全の権利を侵害されている、などと主張しました。

判決で平井 健一郎 裁判長は「生命、身体の安全が侵害されるおそれがあることを認めるに足りる証拠はない」などとして、原告側の訴えを退けました。

原告 岩下 和雄 さん 「裁判によって私たちが左右されるとは思っていない。私たちは今後も住み続ける。今までどおりの生活を続けていくつもり」

石木ダム対策弁護団 馬奈木 昭雄 弁護団長 「これまでの生活基盤を根底から奪って追い出す、生命身体(の安全)を奪うこと以上のものじゃないかと私たちは問いかけたつもり。それに対する答えは(判決文には)書いていないと思う」

判決を受け中村知事は「県の主張が認められた。(住民には)事業への反対をやめていただきたい」と述べました。

中村知事 「近年、自然災害が頻発する中で(ダムの)早期完成を目指していかなければならない。順調に関連事業が進捗していけば、できるだけ早期に(本体工事に)着手できるよう努力していきたい」

原告側は近く控訴する方針です。


石木ダム工事差し止め訴訟 原告敗訴の判決

(NBC長崎放送2020/3/24(火) 19:12配信) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200324-00003603-nbcv-l42

東彼・川棚町に計画されている石木ダムをめぐり建設予定地の住民らが工事の差し止めを求めている裁判で長崎地裁・佐世保支部は、きょう住民の訴えを退ける判決を言い渡しました。住民側は控訴する方針です。

訴えているのは東彼・川棚町の石木ダム建設予定地内に住む13世帯50人あまりの住民らです。裁判の中で住民らは必要性のないダム建設のために平穏に暮らす権利を侵害されているなどとして現在行われている石木ダム関連の道路工事と今後予定されているダム本体工事を中止するよう求めています。

きょうの判決で平井健一郎裁判長は「ダム事業によって住民の生命・身体の安全が侵害されるおそれがあるとは認められず工事差し止めの根拠とはなりえない」として住民らの請求を棄却しました。
原告弁護士「これまでの生活全体の基盤を根底から奪って追い出す、それは生命・身体の安全を奪うこと以上のことではないでしょうか」
原告岩下氏「本当に水が要るのかダムが必要なのかということを裁判官に訴えてきましたけれども、そのことについて本当に議論がされたのかと私たちは疑問に思っています。私たちは今後ともそこに住み続け、今まで通りの生活を続けていくつもりです」

住民らは「佐世保市の水需要予測や川棚川の洪水防止対策などダムは不要とする我々の主張が充分に検討されていない」などして近く控訴する方針です。


石木ダム差し止め認めず 地裁佐世保、住民の請求を棄却

(西日本新聞2020/3/25 6:00)https://www.nishinippon.co.jp/item/n/594750/

長崎県と佐世保市が計画する石木ダム建設を巡り、予定地の同県川棚町住民ら601人が工事差し止めを求めた訴訟の判決が24日、長崎地裁佐世保支部であった。平井健一郎裁判長は、原告が訴えた「良好な環境で生活する権利」などは工事差し止めの根拠にならないとして、請求を棄却した。原告は控訴する。
石木ダムは佐世保市の水不足解消と治水を目的として、1975年に国が事業採択。13世帯が用地の明け渡しを拒んでいる。県は2010年、水没する県道の付け替え工事に着手。住民らは16年に工事差し止めの仮処分を申し立てたが、地裁佐世保支部は却下した。
判決理由で平井裁判長は「人間の尊厳という概念は抽象的で内容や範囲も不明確」などとして、良好な環境の中で生活を営む権利が侵害されるとした原告の主張を退けた。ダム建設の妥当性には言及していない。
石木ダムの用地は土地収用法に基づき、19年に所有権が国に移り、家屋などの強制撤去が可能な状態になっている。県は25年度の完成を目指している。
住民らが国に土地収用法の事業認定取り消しを求めた訴訟は19年11月、福岡高裁が控訴を棄却。原告は上告した。 (竹中謙輔)


原告「座り込み続ける」 石木ダム差し止め認められず

(西日本新聞2020/3/25 6:00 )https://www.nishinippon.co.jp/item/n/594749/

(写真)数秒で終わった長崎地裁佐世保支部の判決言い渡し。「裁判って、こういうものなのかな」。原告の一人、川原房枝さん(79)は力なくつぶやいた。

1963年に石木ダム予定地の長崎県川棚町川原(こうばる)地区に嫁いで間もなく、ダム建設の話が持ち上がった。夫や義理の父母、近所の人と反対運動に参加。2018年秋に夫を亡くしてからも、抗議の座り込みに毎日出掛ける。参加者で最年長。料理が得意で、おはぎやまんじゅうを差し入れる。
昨年9月、中村法道知事と面会した際、川原地区の日常を切々と訴えた。「まずダムの抗議を先にして、その後、家のこととか自分の用事を済ませています。まず、ダムのこと。ダムのことが毎日頭から離れない。もういいかげんやめてほしい」。だが、思いは届かない。
判決が言い渡された3月24日は10年前、ダム建設に向けて県道の付け替え工事が始まった日。あれから現場の風景は大きく変わった。さらに県は、20年度予算に初めてダム本体の工事費を計上した。反対運動の長い年月とこれからを思うと「不安でね、胸がいっぱいになって…」。言葉を詰まらせた。
一審で工事の差し止めは認められなかった。それでも気持ちは揺るがない。一緒に反対している川原の人たちや支援者が支えだ。
「私たちは川原から出ていかない。私が現場じゃ一番のお姉さんだからね。簡単には(本体工事を)やらせないぞって思いで、力を込めて座り込みを続けます」 (平山成美)


石木ダム差し止め請求棄却 地裁佐世保 原告住民ら控訴へ

(長崎新聞2020/3/25 11:35)updated https://www.47news.jp/localnews/4646661.html

© 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、水没地区の住民ら601人が県と同市を相手取り、工事差し止めを求めた訴訟で、長崎地裁佐世保支部(平井健一郎裁判長)は24日、原告の請求を棄却した。住民らはダム建設で「平穏に生活する権利が侵害される」などと訴えたが、判決は「ダム事業で生命、身体の安全が侵害される恐れがあるとは認められない」と結論付けた。原告側は控訴する方針。
裁判で原告側は、ダムの必要性の根拠となる同市の水需要予測や川棚川の治水計画の問題点を指摘し、「必要性のない事業によって、住民の生命、身体の安全や平穏に暮らす権利が侵害されている」などと主張。県と同市は請求棄却を求めていた。
判決で平井裁判長は、生命、身体の安全について「侵害される恐れがあることを認めるに足りる証拠はない」と指摘。豊かな自然で生活する権利の侵害や居住地の強制収用による生活基盤の破壊については「主観的な評価による部分が大きい」「抽象的で内容も不明確」などと退けた。利水、治水面でのダムの必要性など他の争点については判断を示さなかった。
判決後の集会で住民の岩下和雄さん(73)は「裁判の結果によって、古里に住み続ける決意は変わらない。控訴して高裁で頑張っていく」と述べた。
同事業を巡っては、県が2010年、ダムに水没する県道の付け替え工事に着手したが、住民らが激しく反発し、完成の見通しは立っていない。こうした中、土地の明け渡し期限が過ぎ、家屋の撤去や住民の排除など行政代執行の手続きが可能な状態になっている。住民らは別の訴訟で国に事業認定取り消しを求め争っているが、一審の長崎地裁、二審の福岡高裁ともダムの必要性を認め、原告側が敗訴。原告側が上告している。

石木ダム 差し止め訴訟 怒り、失望あらわ 三たび請求も届かず
(長崎新聞2020/3/25 11:40)updated https://this.kiji.is/615373497721242721?c=174761113988793844

(写真)判決後の集会で、マイクを握る住民の女性(中央)=佐世保市光月町、中部地区公民館

「古里で静かに暮らしたい」との住民らの訴えは、今回も司法に届かなかった。東彼川棚町に計画されている石木ダム建設事業の工事差し止めを求めた訴訟は、住民らが国に事業認定取り消しを求めた別の訴訟の一審、二審判決に続く三たびの請求棄却という厳しい結果に。水没地域の川原(こうばる)地区の住民らは判決に失望と怒りをあらわにし、推進派の関係者からは安堵(あんど)の声が聞かれた。
請求棄却を告げた裁判長は足早に法廷を後にした。わずか1分足らず。「またか」。原告側の住民からはため息が漏れ、石丸穂澄さん(37)は「一字一句想像した通りの判決文だった」と苦笑した。原告の1人として当事者尋問に立ち、古里の自然環境の豊かさを訴えた。「私には自然の音に囲まれた落ち着いた静かな環境がどうしても必要」だと。だが-。
古里の川原の自然や生き物をイラストに描き、インターネットや漫画小冊子で発信する活動を続けている。請求棄却にも「闘い方は人それぞれ。私は私のやり方で活動していく」と前を見据えた。
「悔しい。私たちの人格が無視されている」。住民の松本順子さん(63)は肩を落とした。4世代8人がにぎやかに暮らす自宅も、夫と長男で営む小さな鉄工所も、昨年11月、土地収用法に基づく手続きで土地の所有権を奪われた。裁判では長男の好央さん(45)が「県が行政代執行に踏み切れば、生活の基盤が奪われる」と主張したが、こうした危機感に判決が言及することはなかった。「私たちはここに住みたいだけ。そう思うことがなぜ悪いのか」と憤った。
住民側は2016年2月、県と佐世保市に工事差し止めを求める仮処分を長崎地裁佐世保支部に申し立てたが、「工事禁止の緊急性がない」として却下された。同支部が判断を避けたダムの必要性や住民の権利侵害についてさらに踏み込んだ議論をするために、住民側は17年3月に提訴した経緯がある。
住民の岩本宏之さん(75)は「代執行が現実味を帯びている今なら、(緊急性が高まり)差し止めを認めてくれると思っていたのだが」と落胆。現在もほぼ毎日、付け替え道路工事現場に通い、抗議の座り込みを続ける。「このまま工事が進めば、取り返しのつかない事態になるのは明らか。我々は覚悟を決めているが、裁判所は本当にそれでいいのか」と語気を強めた。

「認められた」と推進派 石木ダム 差し止め訴訟
(長崎新聞2020/3/25 11:50)updated https://this.kiji.is/615374116109993057?c=174761113988793844

石木ダム建設を計画する県や佐世保市などの関係者は、住民らの請求を棄却した判決を評価した。一方で事業の見通しは立っておらず、推進派からは早期完成を求める声が上がった。
中村法道知事は県庁で報道陣に、「県の主張が認められた」と安堵の表情。県は新年度予算にダム本体工事費約8億円を盛り込んでいる。「できるだけ早期に着手できるよう努力したい。タイミングは全体の状況を見極めて判断すべきではないか」と述べた。
「石木ダム建設促進佐世保市民の会」の寺山燎二会長は「ほっとしている。県と市は(反対する)住民とできるかぎりの合意を得てダムを造ってほしい」と注文。市議会石木ダム建設促進特別委の長野孝道委員長は「市民の安定した生活のためにはダムが必要。粛々と進めるべきだ」、川棚町議会石木ダム対策調査特別委の田口一信委員長は「川棚川の治水に必要な事業。裁判所の判断に沿って考え、(原告は)事業に協力してほしい」と求めた。

【解説】生活への影響 現実的 差し止め訴訟
(長崎新聞2020/3/25 11:45)updated https://this.kiji.is/615373799416317025?c=174761113988793844

© 13世帯もの住民が生活している土地を収用するという異例な状況で進む石木ダム建設事業。手続き上の違法性を訴えて国に事業認定取り消しを求めた行政訴訟に続き、人権面での違法性をただした工事差し止め訴訟でも住民側の主張は認められなかった。
工事差し止め訴訟の弁論では、住民5人が当事者尋問に立ち、古里への思い、家族の歴史、地域コミュニティーの価値を具体的かつ詳細に陳述。だが、判決はこれらの訴えを「主観的」「抽象的」と切り捨てた。
提訴から判決までの3年間で土地収用法に基づく手続きが進み、13世帯は同意しないまま宅地の権利を奪われ、立ち退きを迫られている。県道付け替え道路の着工から10年。住民らは座り込みなどで抗議行動を続け、昼夜問わず緊張した生活を強いられている。
県側は新年度当初予算に本体工事費を組み込むなど事業推進の姿勢を強め、家屋の撤去などの行政代執行も選択肢から排除しない構えだ。住民が感じる実生活への影響や脅威は現実的で、決して判決がいう「抽象的」なものではないはずだ。

 

石木ダム工事差し止め訴訟 原告「反対」強く決意 敗訴判決、司法への不信あらわ /長崎
(毎日新聞長崎版2020年3月25日)https://mainichi.jp/articles/20200325/ddl/k42/040/191000c

(写真)判決を前にダム建設反対を訴える原告ら

川棚町で進む石木ダム事業を巡り、水没予定地に暮らす地権者らが県と佐世保市に工事差し止めを求めた訴えを棄却した24日の長崎地裁佐世保支部判決。事業認定取り消しを求めた訴訟の1、2審に続く敗訴に、原告は司法への不信をあらわにし、ダム反対を貫くことを改めて決意した。【綿貫洋、松村真友、中山敦貴】
判決後に佐世保市であった報告集会には、原告団と支援者ら約100人が参加した。石木ダム対策弁護団の馬奈木昭雄団長は「判断を下した納得いく理由を説明すべきなのに、判決は主文を読み上げただけ」などと批判。一方で、他県でダム事業が中止されたケースを引き合いに、「地元の声の高まりがダムを止める」と語った。
水没予定地の住民で川棚町議の炭谷猛さん(69)は「裁判を続けることで行政にプレッシャーを与え治水、利水の議論に持っていきたい」、石木川まもり隊の松本美智恵代表(68)は「今後も問題を県民に発信して、事業の必要性を問い続けたい」と語った。
判決を受け、中村法道知事は県庁で記者団の取材に応じ、石木ダムの必要性を強調した上で、「地権者の皆さんには判決の趣旨をご理解頂き、事業に対する反対をやめていただきたい」と述べた。佐世保市の朝長則男市長は「今回の判決が、市民の石木ダム事業に対する理解につながることを期待し、事業進展に向けて県と共に尽力したい」とするコメントを出した。
〔長崎版〕

石木ダム訴訟 住民敗訴 工事差し止め認めず 長崎地裁佐世保
(毎日新聞西部朝刊2020年3月25日)https://mainichi.jp/articles/20200325/ddp/012/040/012000c

長崎県川棚町に建設が計画される石木ダム事業を巡り、水没予定地の住民ら601人が建設主体の長崎県と同県佐世保市を相手取り工事差し止めを求めた訴訟で、長崎地裁佐世保支部(平井健一郎裁判長)は24日、請求を棄却した。原告側は控訴する方針。
原告側は、ダム事業は利水、治水両面で必要性がなく、不要な事業で故郷を奪われるのは人格権の侵害だと主張。人口減少が進む中で市の右肩上がりの水需要予測は過大で、治水も河川改修で対応できると訴えてきた。
一方、県などは、ダム建設の公益性を認めた事業認定取り消し訴訟の長崎地裁判決などを根拠にして争っていた。
判決は「(故郷で生活を営む権利は)主観的な部分が大きく、差し止めを求めうる明確な実態を有しない」と訴えを退けた。利水、治水の計画については判断を示さなかった。 原告団の判決後の集会で、水没予定地の住民、岩下和雄さん(73)は「控訴する。今の生活を続けていくことに変わりはない」と決意を語った。
長崎県の中村法道知事は「判決の趣旨を理解いただき、反対をやめていただきたい」と述べた。佐世保市の朝長則男市長は「事業の理解につながることを期待する」とコメントした。【綿貫洋】

 

石木ダム差し止め訴訟 原告敗訴
(NHK2020年3月24日 17時59分)https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20200324/5030007090.html

川棚町に建設中の石木ダムをめぐり、建設に反対する住民らが、長崎県と佐世保市に建設の差し止めを求めた裁判で、長崎地方裁判所佐世保支部は「住民の生命・身体の安全が侵害されるおそれがあるとは認められない」として、住民らの訴えを退けました。

長崎県と佐世保市が、川棚町に建設を進めている石木ダムをめぐり、建設に反対する元地権者の住民や支援者ら合わせて601人は、住民の生命・身体の安全や人間の尊厳を維持して生きる権利などが侵害されているとして、ダム本体の建設工事とダム建設に伴う道路の建設工事の差し止めを求める訴えを起こしていました。

24日の判決で、長崎地方裁判所佐世保支部の平井健一郎裁判長は「ダムの建設によって、住民の生命・身体の安全が侵害されるおそれがあるとは認められない。人間の尊厳という概念も抽象的で、内容や範囲も不明確で、差し止め請求の基礎となる具体的な法的権利とはいえない」と指摘し、住民側の訴えを退けました。

石木ダムの建設をめぐっては、住民側は、国の事業認定の取り消しを求めた訴えを起こしましたが、1審の長崎地方裁判所が訴えを退けたのに続いて、去年11月、2審の福岡高等裁判所も訴えを退けました。

【原告側は】。
判決のあと、原告側の馬奈木昭雄弁護士は「裁判所は、きちんと議論を尽くそうとしていない。おかしいことはおかしいと、国民が納得するまで、私どもはがんばっていきたい」と述べ、近く控訴する考えを示しました。

また、住民の岩下和雄さんは「本当にダムが必要かと、裁判官に訴えてきたが、議論が尽くされたのか疑問に思う。今のふるさとに住み続けるという気持ちは強く、裁判によって変わることは、ありません」と話していました。

【中村知事は】。
判決について、中村知事は、記者団に対し「これまでの県の主張を認めていただいた判決が出された」としたうえで、「地権者の皆様には、今回の判決の趣旨をご理解いただき、事業に対する反対をやめていただきたい」と話しました。
また、新年度の当初予算案に、石木ダムの本体工事にかかる費用が計上されていることについて「順調に関連事業が進捗していけば、出来るだけ早期に着手できるよう努力していきたい」と述べました。

【佐世保市の朝長市長は】。
判決を受けて、佐世保市の朝長市長は「これまでの本市の主張が認められたものと思う。事業に対する市民のご理解につながることを期待するとともに、今後の事業の進展に向けて、長崎県とともに尽力していきたい」とするコメントを発表しました。


石木ダム差し止め認めず 長崎地裁佐世保支部

(日本経済新聞2020/3/24 17:06)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57163010U0A320C2000000/

長崎県と佐世保市が同県川棚町に計画する石木ダム建設に反対し、住民や支援者ら約600人が県と佐世保市を相手取って工事の差し止めを求めた訴訟の判決で、長崎地裁佐世保支部(平井健一郎裁判長)は24日、請求を棄却した。

(写真)石木ダム建設工事の差し止めを求めた訴訟の判決を前に、長崎地裁佐世保支部前で集会を開く原告と支援者ら(24日午後、長崎県佐世保市)=共同

石木ダムは佐世保市への給水や川棚町の治水が目的で、当初の完成目標は1979年度だった。2010年に水没道路の付け替え工事が始まったが、本体はいまだに着工していない。現在の完成目標は25年度。
19年11月、水没予定地に住む13世帯の明け渡し期限が過ぎ、県は行政代執行で土地・建物を強制収用できる状態になっている。住民らは一連の手続きの根拠となる国の事業認定の取り消しも求めたが、一、二審とも敗訴している。〔共同〕

↑ このページの先頭へ戻る