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球磨川治水「ダム不要」 熊本県の意見聴取会、反対4団体が主張

2020年10月21日
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10月20日、蒲島郁夫・熊本県知事は、川辺川ダム建設に反対する四つの市民団体の意見を聞きました。そのニュースと記事を掲載します。

 

球磨川治水対策 ダム反対派から批判相次ぐ(熊本県)

(KKT熊本県民テレビ10/20(火) 18:57配信) https://news.yahoo.co.jp/articles/6f5fe32340dabe6ce607744525c708eeae55bdba

(映像)

7月豪雨で氾濫した球磨川の治水対策の方向性を決めるため各地で開かれている「住民から意見を聞く会」で20日、ダム建設に反対する住民団体から批判や疑問の声が相次いだ。

■子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会中島康代表 「川にダムを造ることに非常に大きな危機感を感じている。これが偽りのない被災者の声」

蒲島知事に意見を述べたのは「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」などダム建設に反対する4団体。このうち3団体は国や熊本県、流域の市町村長でつくる検証委員会が「川辺川ダムがあれば浸水被害を6割減らせた」との結果をまとめたことに対し、「科学的根拠がなく被災住民の声を聞いていない」などと質問状を出していた。住民団体からは「ダムによる緊急放流への恐怖」などダム建設に反対する意見が相次いだ。

■美しい球磨川を守る市民の会出水晃代表 「ダムを建設するということは全くの論外だ、絶対認めてはいけない。熊本県の宝である清流球磨川と不知火海を子どもたちに引き継ぐことこそ私たちの世代の大前提であり、責任だ」

さらに別の団体は「ダムありきの検証をする前に水害で犠牲になった人の状況を詳しく知るべき」と訴えた。

■子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会中島康代表 「犠牲者の方々がどこで亡くなられて、いつ亡くなられて、なぜ亡くなられたのか、そのことがほとんどわからないままだ。あの方々を助けるためには一体どういう方法があったのかということが、本当は検証委員会の一番最初にやらなければならない仕事ではないかと私は思っている」

治水対策をめぐり“川辺川ダムも選択肢の1つ”と明言していた蒲島知事は「災害がより大きくなる可能性を常に考えて治水対策を考えないといけないということではないか」と述べ「復旧・復興とともにできるだけ早く治水の考え方を示したい」とした。

終了後、住民団体は次のように語った。

「はっきり言って消化不良。こういう会議は意見のやり取りが必要だと思う。聞く会ではなく相互に話し合いの会議をやるという精神を持ってもらいたい」

「私もたくさんの被災者の声を聞いたが、今からダムを造ってくれなんて声は一度も聞いたことがない」

蒲島知事は引き続き被災者からの声を聞き、年内の早い時期に結論を出すとしている。なお蒲島知事は今から12年前、賛否が分かれ長く議論が続いていた川辺川ダム計画を白紙撤回した。意見を聞く会では「12年前のようなダム問題での住民同士の対立が再び起こると思うとぞっとする」などの意見も出た。

 

市民団体「ダムは自然環境悪化」 蒲島・熊本知事と面会 球磨川治水検討

(毎日新聞2020/10/20(火) 20:29配信)https://mainichi.jp/articles/20201020/k00/00m/040/291000

熊本県の蒲島郁夫知事(左端)に向かって球磨川の治水対策について意見を述べる市民団体の代表(右端)=熊本市中央区の熊本県庁で2020年10月20日午後3時9分、清水晃平撮影

7月の九州豪雨で氾濫した球磨川の治水対策を検討するため、流域住民から意見を聴取している熊本県の蒲島郁夫知事が20日、川辺川ダム建設に強く反対してきた四つの市民団体と豪雨後初めて面会した。団体側は「ダムは自然環境を悪化させる」などと訴えた。約20回を予定する知事の意見聴取会はこの日で5回を終えたが、ダムへの賛否は分かれている。

「ダムを造っても費用対効果は疑問。熊本県の宝である清流球磨川と不知火(しらぬい)海を子どもたちに引き継ぐことこそ我々の責任だ」。蒲島知事と対面した同県八代市の市民団体「美しい球磨川を守る市民の会」の出水晃代表は語気を強めた。また、国が「川辺川ダムがあれば人吉地区の浸水面積を約6割減らせた」とする推計を示したことについて、熊本市の「子守唄(うた)の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」の中島康代表が「多くの犠牲者が出た原因を十分に検証せず、ダムの効果ばかり強調するのは疑問だ」と批判した。

15日から始まった意見聴取会には、これで計41団体と住民が出席。農協などからダムに賛成する意見が相次ぐ一方、水質への影響を懸念する漁協などからは反対や慎重意見が出ている。

約1万4600人の組合員がいる球磨地域農協の福田勝徳組合長は「被災地を回り、多くの方から『怖い目に遭った』と聞いた。ダムありきで進めてほしい。(治水対策の一つとして検討されてきた)遊水池は、水田の減少もあり、地権者の理解は得られない」と強調。「川辺川ダムは(水没予定地の住民の移転など)既に8割の手続きが終了している」(八代平野北部土地改良区)など、治水対策の迅速性からダムを支持する意見も出た。

一方、球磨川河口に近い八代海で操業する八代漁協(組合員約200人)は「市房ダムなどができる度に海への影響は大きかった。ダムによらない治水を極限まで追求してほしい。ダム建設になれば漁民に更なる影響が出る」と反対。球磨川水系に漁業権を持つ球磨川漁協(組合員約1000人)は「組合員の混乱を避けたい」として賛否を明らかにしていない。

蒲島知事は20日、「多くの方から意見を聞き、人命と財産だけでなく清流を守ることも大事にしながら治水のあり方を示したい」と改めて語った。今後も被災住民たちから直接意見を聞き、11月中に治水方針を判断するとみられる。【城島勇人、清水晃平】

 

意見聴く県の手法、ダムの影響を問題視 熊本知事へ意見

(朝日新聞2020年10月21日 10時00分)

 

 球磨川治水「ダム不要」 熊本県の意見聴取会、反対4団体が主張

(熊本日日新聞2020/10/21 08:00) https://www.47news.jp/localnews/5398865.html

(写真)川辺川ダム建設に反対する市民団体のメンバーから球磨川治水について意見を聞く蒲島郁夫知事ら=20日、県庁

7月豪雨後の球磨川治水について、熊本県が川辺川ダム建設に反対する四つの市民団体から意見を聴く会が20日、県庁であり、団体の代表ら11人から、国土交通省が示したダムの効果への疑問や、ダムによる環境破壊を危ぶむ声が噴出した。

県が二十数回予定する意見聴取会の一つ。ダム反対派の聴取会は初めてで、県側は、蒲島郁夫知事や田嶋徹、木村敬の両副知事らが出席した。

子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会(熊本市)の中島康代表(80)=熊本市=は「今回は支流の増水が課題。なのに『川辺川ダムがあったら』の検証にばかりエネルギーを使っている」と指摘。国交省が示した人吉地点の最大流量も「ダム効果を強調するために過小評価した数値だ」と述べた。

清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会(人吉市)の木本雅己事務局長(69)=人吉市=は、人吉市の犠牲者20人の多くは「球磨川の越流よりも早い時間に、山田川や万江川など支流沿いの豪雨が市街地へ押し寄せたことで犠牲になった」とする独自の調査結果を提示した。

同会の黒田弘行顧問(86)=人吉市=は「『球磨川は宝』と言った蒲島知事の言葉は正しかった。住民はこんな被害に遭っても、球磨川と共に暮らせる復興を望んでいる」と訴えた。緒方紀郎事務局次長(57)=熊本市=は、流水型(穴あき)ダムでも「洪水時に土砂がたまって長期間、川の水が濁る。川辺川が『死の川』になる」とした。

球磨川中流部で電源開発が運営する瀬戸石ダム(芦北町、球磨村)の撤去を求める会も参加。土森武友事務局長(59)=玉名市=は「瀬戸石ダムが流下の妨げとなり、上流側の被害を拡大した」とする資料を提出し、「ダム建設よりもダム撤去を」と主張した。

美しい球磨川を守る市民の会(八代市)の靎[つる]詳子さん(71)=八代市=は、鹿の食害などで山が荒れていると説明。「山が崩れるなど、川だけでなく山の問題もある」とした。

意見聴取を終え、蒲島知事は「長年ダム問題に携わった方々の知識や意見は説得力がある」と感想を述べ、改めて年内の早い時期に治水の方向性を示すとした。(堀江利雅、太路秀紀)

 

ダムで浸水6割減「科学的でない」球磨川治水 4団体が知事に意見

(西日本新聞2020/10/21 6:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/656331/

(写真)蒲島郁夫知事(左)に治水に関する意見を述べる市民団体=20日午後、熊本県庁

7月の豪雨で氾濫した熊本県南部の球磨川流域の治水策に民意を反映させようと、蒲島郁夫知事は20日、ダムによる治水に反対する市民団体「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」など4団体を県庁に招き、1時間半にわたり意見を聞いた。被災地中心に開催している意見聴取会の一環。団体側から11人が出席し、国が示すダムの治水効果への疑念や自然環境悪化の懸念を蒲島氏に直接ぶつけた。

国が今月、県や流域市町村との豪雨検証委員会で示した「川辺川ダムが存在すれば浸水範囲を4割に減らせた」とする検証結果に対し、同会の緒方紀郎事務局次長は「どのように算出されたか不明であり、科学的ではない」と主張。「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」の中島康代表は「ダムは怖い。これが流域の声」と訴えた。

また、球磨川にある発電用ダムについても「流れを阻害し、被害を広げた」として撤去を求める声が相次いだ。

蒲島氏は聴取会後の記者会見で「参考になった。みんなの意見を聞き、(現在の)民意をはかっていきたい」と述べた。 (古川努)

支流越水後に球磨川も氾濫 人吉浸水の経過熊本県調査で判明

2020年10月13日
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月4日の球磨川豪雨で人吉市中心部が刻一刻と浸水していく経過が熊本県の調査で判明したという記事を掲載します。

始まりは支流山田川からの越水で、その後、球磨川本流からも濁流が市街地へと流れ込みました。、

 支流越水後に球磨川も氾濫 人吉浸水の経過熊本県調査で判明

(西日本新聞2020/10/13 11:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/653696/

7月4日の豪雨で氾濫した球磨川流域のうち、人吉市中心部が刻一刻と浸水していく経過が熊本県の調査で判明した。始まりは支流山田川からの越水。その後、球磨川本流からも濁流が市街地へと流れ込み、氾濫水位は深い所で約4メートルまで急上昇したという。浸水解消時には、たまった水が川に流れ込む「引き戻し」で激しい流れが発生。新たな水害リスクも浮かび上がった。

県の調査は8、9月に実施。河川カメラや地元住民が撮影した動画や証言を分析した。動画には日時が記録され、水が流れる方向も確認できたという。

調査結果によると、7月4日午前6時10分ごろ、球磨川との合流部に近い「出町橋」付近で山田川からの越水が始まり、同31分には500メートルほど上流の「五十鈴橋」付近でも越水が確認された。県河川課は「球磨川の水位が上がり、はけきれなくなった山田川が先に氾濫していった」とみる。

午前6時57分、球磨川が九日町付近で越水開始。同7時台には、山田川と球磨川の氾濫水が合わさり、市街地を襲った。国宝「青井阿蘇神社」付近では、7時22分から20分間で水位が1メートル以上上昇していたことも確認された。

午前7時45分、山田川東側の鍛冶屋町付近では、あふれた濁流が上流方向に逆流し、同58分には住宅街に濁流が激しく流入した。山田川の水位上昇は同8時前にいったん止まった。この時間帯、球磨川に近い九日町付近では、浸水深は約2メートルに達したところで氾濫水位の上昇が止まった。

山田川の水位がピークに達したのは午前9時半ごろ。鍛冶屋町付近の浸水範囲の拡大が止まる一方、球磨川からの浸水が拡大。球磨川の水位はその20分後にピークを迎え、九日町付近の浸水深は午前10時15分ごろ、最大約4メートルに達した。

水位がピークを越え、浸水が解消に向かっていた午前11時以降にも、水害リスクは高まった。市街地にたまった氾濫水の「引き戻し」でJR人吉駅付近では球磨川の下流方向、市街地では山田川に向かって激しく流れたという。

調査結果は今月6日に開かれた国や県、流域市町村の豪雨検証委員会で報告された。県河川課は「人吉市街地の復旧復興や、今後の防災対策に生かしたい」としている。 (古川努)

浸水深

午前6時半~7時半ごろ(矢印は水の流れる方向)※豪雨検証委員会資料より

午前7時半~50分ごろ(矢印は水の流れる方向)※豪雨検証委員会資料より

午前9時~10時ごろ(矢印は水の流れる方向)※豪雨検証委員会資料より

「ダムありき」で議論加速 慎意見の首長わずか1人 川辺川ダム効果推計

2020年10月7日
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昨日(10月6日)、7月の球磨川水害の検証委員会の第2回会合が開かれました。主な記事を掲載します。

国と県、流域自治体の検証委員会は今回で終了し、3者は球磨川の治水対策を検討する新たな委員会が近く設置されます。蒲島郁夫・熊本県知事は会合後「年内に治水の方向性を決めたい」と述べており、川辺川ダム推進に向けて一気に進む様相を呈してきました。

川辺川ダム反対の声を広げていかなければなりません。

 

 「ダムありき」で議論加速 慎意見の首長わずか1人 川辺川ダム効果推計

(毎日新聞2020年10月6日 22時7分) https://mainichi.jp/articles/20201006/k00/00m/040/277000c

検証委員会を終え、記者の質問に答える熊本県の蒲島郁夫知事=熊本市中央区の熊本県庁で2020年10月6日午後3時58分、津村豊和撮影

7月の九州豪雨で氾濫した球磨川流域の被害を検証する国と熊本県、流域自治体による検証委員会で、国は6日、川辺川ダムがあれば流域の浸水被害を軽減できたとの推計を示した。出席した流域の首長らは川辺川ダムを治水対策の中心とすべきだとの姿勢を強めているが、豪雨からわずか3カ月で加速する「ダムありき」の議論には住民らから反発の声も上がる。

川辺川ダムがあった場合の球磨川と川辺川の水位(国土交通省の推計)

「ダムの重要性、必要性が実証された」

「ダムの重要性、必要性が実証されたと思っている。今後はダムを柱に種々の方法を組み合わせていくことも必要ではないか」。検証結果を受け、錦町の森本完一町長は語気を強めた。

流域12市町村長でつくる「川辺川ダム建設促進協議会」の会長として豪雨後、ダム復活の旗振り役を務めてきた森本町長は、ダムの形状にまで踏み込み「流水型ダム」を提案。ダムの下部に開いた穴から普段は常時川の水が流れ、洪水時だけ水をためる治水専用の流水型ダムは環境への負荷が小さいとされる。今後の議論の焦点になるとみられる「流水型ダム」に言及することで、森本町長はダム建設への強い意欲を示した。

山江村の内山慶治村長は、川辺川ダムと同様に旧民主党政権がいったん中止を決めながら復活した群馬県の八ッ場(やんば)ダムに触れ「2019年の台風19号の時、下流はダムのおかげで救われたと聞いた。ダムが効果があると改めて感じた」と発言した。

熊本県の蒲島郁夫知事が08年に川辺川ダムの「白紙撤回」を表明した背景には、最大受益地の人吉市と建設予定地の相良(さがら)村の当時の首長によるダム反対があったが、人吉市の松岡隼人市長は「(今回の豪雨で)治水対策に取り組む前提も大きく変わった。住民も安全に不安を持っている。やれることはすべてやる」と語り、ダム容認の姿勢をにじませた。

一方、相良村の吉松啓一村長は「(村内を流れる川辺川が)14年連続で清流日本一になったのは村民の誇り」と述べたが、こうした慎重意見を表明したのは1人だけだった。蒲島知事はこの日、年内に球磨川の治水対策に一定の方向性を示す考えを明らかにしたが、流水型ダムについても「排除しない」と述べた。

「豪雨被災者の声を直接聞くべきだ」

熊本市のホテルでは約20人がインターネット中継を見守った。反対する住民の間には、ダムに土砂が堆積(たいせき)することによる川の水の水質悪化を懸念する声もある。同市の市民団体「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」の中島康代表(80)は「『清流を子々孫々まで残したい』という相良村長の声に、知事や他の首長も応えてほしかった。豪雨被災者の声を直接聞くべきだ」と憤った。

ダム建設に反対した人吉市前市長の田中信孝さん(73)は取材に「避難指示の遅れなどの検証を放棄し、住民の関心をダムのあり無しに向かわせている。なぜ前日の明るいうちに避難させられなかったのかをしっかり検証しなければ、ダムを造っても再び被害が出るだけだ」と批判した。【城島勇人、清水晃平、山本泰久】

 

「川辺川ダムあれば人吉の浸水6割減」国交省が推計 治水策、年内に結論

(毎日新聞2020年10月6日 21時47分)  https://mainichi.jp/articles/20201006/k00/00m/040/282000c

(写真)川辺川ダムの本体建設が予定されていた場所。中央部分を流れるのが川辺川=熊本県相良村で2020年9月29日午後0時46分、平川昌範撮影

7月の九州豪雨で氾濫し甚大な被害をもたらした熊本県の球磨川について、国土交通省は6日、旧民主党政権が2009年に計画を中止した川辺川ダムが仮に建設されていた場合、氾濫自体は防げなかったものの、人吉地区の浸水面積を約6割減少させられたとする推計を明らかにした。国と県、流域自治体の3者による球磨川豪雨検証委員会の第2回会合で示した。検証委は今回で終了し、3者は球磨川の治水対策を検討する新たな委員会を近く設置する。蒲島郁夫知事は会合後「年内に治水の方向性を決めたい」と述べた。

(略)川辺川ダムがあった場合の球磨川と川辺川の水位(国土交通省の推計)

国交省の推計によると、7月4日の豪雨による球磨川のピーク流量は、同県人吉市で毎秒7400トンだったが、最大の支流の川辺川にダムがあればダムの洪水調節容量などから4800トンに減らすことができた。

流量の減少により、水位は市街地が広範囲に浸水し、20人が死亡した人吉市で1・9メートル、特別養護老人ホーム「千寿園(せんじゅえん)」で入所者14人が死亡した球磨村渡(わたり)地区で1・7メートル低下。いずれも大きな被害が出た中流域の芦北町(あしきたまち)白石地区で1・5メートル、八代市坂本地区で1・2メートルそれぞれ水位を下げられ、川辺川でも球磨川との合流点手前の相良(さがら)村柳瀬地区で2・1メートルの水位低下が見込まれたとした。

今回の豪雨で人吉市街地から球磨村渡地区にかけて568ヘクタールが浸水したが、水位低下により約6割減の223ヘクタールに抑えられ、このうち2階以上が浸水する3メートル超の浸水面積は224ヘクタールから25ヘクタールと約9割減らせたと結論づけた。

一方、国交省はダム以外の治水対策についても検証。最も効果のある遊水地を中心とした対策の場合、ダムがなくても人吉市街地から球磨村渡の浸水面積を約4割減の350ヘクタールに抑えられたと推計した。

8月25日の検証委初会合で、国交省は人吉市のピーク流量を毎秒7500トンから4700トンに減らせたとの推計を示していたが、今回それぞれ修正した。【平川昌範、城島勇人、清水晃平】

 

川辺川ダムで浸水6割減 政府推計、熊本の豪雨被害

(日本経済新聞2020/10/6 17:29)  https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64679190W0A001C2ACYZ00/

熊本県の球磨川流域で7月発生した豪雨被害の検証委員会の第2回会合が6日、県庁であり、国土交通省は氾濫した球磨川支流に川辺川ダムがあれば流量が抑制され、人吉市内の浸水範囲は「約6割減少する」との推定を示した。「現行の川辺川ダム計画だけでは、全ての被害を防ぐことはできない」とも説明した。

川辺川ダムを巡っては、豪雨後に建設計画の是非を巡る議論が再燃しており、推定結果が判断材料の一つになりそうだ。検証委参加の球磨川流域12市町村の一部首長からはダム建設に期待を寄せる声が出た。蒲島郁夫知事は会合後「ダムで被害を軽減できることは確かだ。参考にしたい」と報道陣に語った。

国交省の川辺川ダムがあったと仮定した推定では、球磨川の水位は甚大な被害に遭った人吉市街で1.9メートル程度低下。八代市や芦北町、球磨村などの被災地でも1~2メートル程度下がる。人吉市の浸水面積は60.7%減と見積もった。浸水の深さ別の内訳では0.5~3メートルでは52.1%減、3メートル以上では88.8%減。

川辺川ダムでは、流れ込む量をそのまま通す「異常洪水時防災操作」には至らないとした。

ダムに反対する市民団体の中島康代表(80)は傍聴後の取材に「推定結果は根拠が不十分だ。清流を守るためにどうすべきかという議論がほとんどなかったことも残念だ」と批判した。

国交省は八代河川国道事務所のサイトで推定を公開している。国交省と県、12市町村は新たな協議体を設け、推定を踏まえ治水対策を検討する。

蒲島知事は2008年、川辺川ダム建設計画に反対を表明し、当時の民主党政権下で中止方針が示された。蒲島氏は今年8月下旬、球磨川の治水対策を巡り「川辺川ダムは選択肢の一つだ」と述べていた。〔共同〕

川辺川ダム揺れる民意…白紙撤回から12年 

2020年10月5日
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「川辺川ダム揺れる民意」という記事を掲載します.川辺川ダム無しで今回の豪雨に対応できる治水対策案を示すことが求められています。

 川辺川ダム揺れる民意白紙撤回から12年

(西日本新聞2020/10/05 06:05) https://www.47news.jp/localnews/5335931.html

西日本新聞社 西日本新聞社 球磨川の治水を巡る経過

熊本知事「11月に治水策」

7月の豪雨災害を契機に、かつて熊本県の蒲島郁夫知事が「白紙撤回」した川辺川ダム建設を巡る議論が再燃している。発端は、国が8月の検証委員会で提示した「ダムがあれば被害は軽減できた」とする推計結果。蒲島氏は治水対策として「ダムも選択肢の一つ」との構えで、年内に新たな判断を表明する。

「11月末までに治水計画を示すことで、住民の皆さんも将来の計画ができるのではないか」。蒲島氏は9月下旬、甚大な被害を受けた人吉市を視察した際にこう述べた。

県南部の球磨川流域は1963年から3年連続で水害が発生。特に65年の家屋の損壊と流失は1281棟に及び、人吉市街地の3分の2が浸水した。そこで国は66年、最大の支流川辺川へのダム建設を発表。「5~10年に1度」の洪水にしか耐えられない治水安全度を一気に「80年に1度」に向上させる計画だ。

ダムの用地取得は98%完了し、水没予定地の五木村では移転対象549世帯のうち、1世帯を除いてすべてが移転。水没する道路の付け替え道路は9割が完成。かかった費用は概算事業費約3300億円の6割に当たる約2100億円に達していた。

だが、大型公共事業への反発なども相まって「脱ダム」の機運が高まり、蒲島氏は初当選した2008年、「球磨川そのものが守るべき宝」として白紙撤回。翌09年に前原誠司国土交通相(当時)が中止を表明した。

代わりに国や県、流域市町村は「ダムによらない治水」を検討。国は19年、堤防かさ上げや放水路設置などを組み合わせた10の治水案を提案した。しかし、治水安全度の目標は「20~30年に1度」とダムに及ばず、費用1兆円、工期100~200年をつぎ込む案はまとまらなかった。

この間、行われた対策は宅地のかさ上げなど一部に限られる。「5~10年に1度」の洪水にしか耐えられないままだった流域は今年7月、「戦後最大規模」の豪雨で壊滅的な被害を受けた。死者65人のうち浸水による犠牲は50人に上る。流域市町村は9月、国と県に「ダムを含めた抜本的な治水」の早期実施を要請した。一方、ダム反対派の動きも活発化している。

蒲島氏は白紙撤回を表明した県議会での演説で、「未来の民意」にも言及していた。「再びダム治水を望んだ場合、すでに確保されているダム予定地が活用されることになる」。被災地の惨状を目にした蒲島氏が、12年後の民意とどう向き合うのか注目される。 (古川努)

 「反対だったが」「またもめるのか」

熊本県南部の球磨川流域の住民たちは半世紀前、度重なる水害の解決策として支流、川辺川でのダム建設を認めた。だが、その後の反対運動で流域は分断。対立の歴史は2008年、蒲島郁夫知事の「白紙撤回」でいったん決着した。そして12年後の今年7月、死の恐怖にさらされた流域住民の「民意」は、再び大きく揺れている。

「今はダムが必要だと考えている」。7月豪雨で自宅が全壊した人吉市紺屋町の男性(71)は「かつてはダム反対が民意だった。でも今回の災害で変わった」と打ち明ける。自宅2階に避難した八代市坂本町の50代女性は「(上流にある市房)ダムがなければ助からなかったと思う。昔は反対派も多かったけど、今回の雨で考えを変えた人も多いはず」と推測する。

壊滅的な被害を受け、住民の心には変化の兆しも見える。だがダムを巡る対立と分断の記憶は深く刻まれ、「おおっぴらに賛成とは言えない」とのムードも漂う。

「ダムを造らなくても、他に手段があると(白紙撤回を)決断したはずではなかったか」。球磨村一勝地地区で、全壊した自宅を片付けていた70代男性はうんざりした顔を見せた。渡地区の女性(49)は「またダムでもめるのか。何年後に実現するのか…」。復興という深刻な現実に直面する住民たちに、繰り返される議論はむなしく映る。

◇ ◇

球磨川の上流には既にダムがある。1960年に建設された水上村の市房ダム。治水面で一定の役割を果たしているが、流域住民の見方は違う。

球磨村で生まれ育った80代男性は「球磨川はコントロールできない。よそ者には分からない」。渡地区の男性も「机の上で計算しても分からないことはある」と同調する。清流とともに生きてきた住民の心底には、そもそも人工構造物への疑念があるようだ。

神瀬地区の男性(70)は今回、川の水位が一気に上がって下がった、と感じた。その原因は「市房ダムの緊急放流」だと考え、さらにダムができれば「被害が広がる」と不安がる。

だが市房ダムはこれまで一度も緊急放流をしていない。国も県も流域市町村も、いまだ今回の豪雨による被害の検証内容を正式に住民に説明する場を設けていないことが、疑念や不安を増幅させる。行政への不信は募る。

各機関のトップだけで方針を決めるやり方に反対する人吉市の会社員の男性(49)は「国、県、首長だけの会議ではダムのメリットしか説明されないだろう。デメリットも明らかにし、住民の意見を反映させるべきだ」と注文。川辺川ダムができれば水没する五木村で、建設方針だった当時、苦渋の決断で高台に移転した男性(71)は願う。「下流域の甚大な被害を思えば反対はできない。せめて村民にしっかり説明し、意見を聞いてほしい」 (中村太郎、長田健吾、綾部庸介、松本紗菜子)

 

「当事者の声を聞いて」球磨川流域 被災者の会が発足

2020年9月30日
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9月29日「7・4球磨川流域豪雨被災者の会」が発足しました。被災者の意見を聞いたり、建設論議が再燃している川辺川ダムのデメリットを明示したりするよう、国や県、流域自治体に求める活動を進めていくとのことです。

その記事とニュースをお送りします。

 「当事者の声を聞いて」球磨川流域 被災者の会が発足

行政の検証、計画への反映求め

(西日本新聞 熊本版2020/9/30 11:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/649528/

(写真)設立の記者会見を開いた「被災者の会」のメンバ―

7月の記録的豪雨で被災した球磨川流域の住民有志が、行政が進める豪雨災害の検証や治水計画策定に被災者の声を反映させようと「7・4球磨川流域豪雨被災者の会」を立ち上げた。被災者の意見を聞いたり、建設論議が再燃している川辺川ダムのデメリットを明示したりするよう、国や県、流域自治体に求めていく。

29日に熊本県人吉市で開かれた設立記者会見で、共同代表になった熊本大名誉教授の鳥飼香代子さん(72)=同市九日町=は「当事者の話を聞かずにダム建設の話が進むのは理不尽。もっと時間をかけて検証すべきだ」と発言。川辺川ダムや球磨川上流の市房ダムが緊急放流したり、決壊したりした場合の被害想定を示すよう求める考えを示した。市花保さん(50)=球磨村渡=も「行政は被災者の記憶が鮮明なうちに声を聞き取り、豪雨の検証に生かして」と訴えた。

会の設立は25日付。球磨川流域の被災者や、会の趣旨に賛同する県内の有志計約50人が入会した。被災者への聞き取りや、豪雨当時の写真や動画など記録の収集も進める。 (中村太郎)

 

 九州豪雨 ダム治水、慎重に検討を 球磨川流域「豪雨被災者の会」発足 /熊本

(毎日新聞熊本版2020年9月30日)https://mainichi.jp/articles/20200930/ddl/k43/040/444000c

7月の九州豪雨で氾濫した球磨川流域の熊本県人吉市や球磨村の被災者らが29日、「7・4球磨川流域豪雨被災者の会」を設立したと発表した。球磨川支流の川辺川でのダム建設論議が再燃する中、同会は「国や県が被災者の意見を聞かないのはおかしい」として、慎重に治水対策を検討するよう求める。

会には人吉市や球磨村の被災者ら約50人が参加。熊本大名誉教授の鳥飼香代子さんらが共同代表を務める。同会は「川辺川ダムや球磨川本流の市房ダムが緊急放流したり、決壊したりした場合の危険性を含めて検証すべきだ」と主張。アンケートや聞き取りなどを通して、被災者のダムに対する考え方を国や県に届けていく。

29日に人吉市で開いた記者会見で鳥飼共同代表は「ダムのデメリットを議論せずに検証作業が進んでいるのはおかしい。国や県、流域市町村に、被災者の声を届けていく」と語った。【城島勇人】

 

治水対策「被災者の声を聞いて」(熊本県)

(熊本県民テレビ2020/9/29(火) 19:48配信)https://news.yahoo.co.jp/articles/6db9b7703864a7193d2a7c846d5fac600ee7ecc2

(映像あり)

7月の豪雨を受けて球磨川の治水対策の検討が進められているなか流域の住民たちが被災者の会を設立した。「当事者の意見を聞いてほしい」切実な声は行政に届くのでしょうか。

鳥飼香代子共同代表 「私たちの意見を聞いてほしい」 こう訴えているのは人吉市や球磨村の住民など約50人でつくる「球磨川流域豪雨被災者の会」。

7月豪雨では球磨川などが氾濫し流域は大きな被害を受けた。

これをうけて国や熊本県は球磨川流域の市町村などと検証委員会を設置し、治水対策の検討を始めた。 早ければ11月にも検証結果をまとめたいとする委員会の姿勢に被災者の会は…。

鳥飼香代子共同代表 「災害が次起きたとき犠牲を払わないといけないのは今回の犠牲者だ。もっと時間をかけて明確な検証をしてほしい」 被災者の会は、検証に参加している流域の市町村長から住民へ聞き取りもなく、被災した当事者の声を今後の治水対策に反映してほしいと訴えている。 そのうえで蒲島知事が再検討に言及した川辺川ダムについて急がずに時間をかけて検証して欲しいとした。

被災者の会では今後、被災者の被害状況や意見を集約し県や市町村に対して要望活動を続けていくという。

 

7月豪雨 被災者の会発足

(熊本放送2020/9/29(火) 18:33) https://news.yahoo.co.jp/articles/be3a93d0dddc77f774a6637fcb58df895387ed50

(映像あり)

7月豪雨の被災者が29日、会を発足。「7・4球磨川豪雨被災者の会」と名づけられた会は、国や県、自治体に被災者の声を届けながら、流域の住民が主体となって川と共生する地域づくりを目指すとしています。

「私たち当事者の意見も聞かないでダム建設の話が進んでいくことは理不尽です。何をそんなに急ぐのか理解できません」(7・4球磨川豪雨被災者の会 鳥飼香代子共同代表)

会見で代表たちは「被災者の意見を聞くことが復興の第一歩となる」とした上で、市房ダムを緊急放流した場合の想定被害などを明確にすることを国と県に要望しました。

会はこれから、当時の様子の聞き取りや写真や動画を編集保存して今後、地域づくりを提案することにしています。

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