水源連:Japan River Keeper Alliance

水源開発問題全国連絡会は、ダム建設などと闘う全国の仲間たちのネットワークです

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各地ダムの情報

思川開発の栃木県利水問題(2013年7月17日の裁判)

八ッ場ダム等に関する6都県の住民訴訟で、栃木の裁判は八ッ場ダム、思川開発(南摩ダム)、湯西川ダムの3ダムを対象としています。
湯西川ダムはすでに完成してしまいましたが、思川開発に関しては栃木県の利水問題が裁判の最大の争点になっています。
栃木県は思川開発で毎秒0.403㎥の水源を得ることになっていますが、この水源を使う予定は全くなく、巨額の費用を負担して、ただ抱えているだけの水源になることは必至です。
思川開発事業のダム検証でも、栃木県の0.403㎥/秒については厚生労働省の認可を受けた水道事業が存在しないことが問題になり、栃木県は対応を迫られました。
栃木県が窮余の策として今年3月に策定したのが「栃木県南地域の水道用水確保の方針」です。この方針は「将来は県南地域の水道用地下水を減らすから、思川開発の水が必要となる」というものですが、全く机上のもので、ただそのように語っているだけのものです。
栃木県は水道用地下水の削減の理由として地盤沈下や地下水汚染などを上げていますが、いずれも根拠がなく、杞憂のものにすぎません。また、0.403㎥/秒の水源を県南地域に供給するためには、約200億円もかかる水道用水供給事業の施設を建設しなければならず、実現性がゼロです。
先週7月17日(水)の栃木控訴審で、この問題についての証人尋問が行われ、私が控訴人側の証言を行いました。
私の証言の意見書は訴訟ホームページに掲載されています。http://www.yamba.sakura.ne.jp/shiryo/tochigi_k/tochigi_k_g_iken_shimazu.pdf
また、栃木県の元・水道課長の早乙女正次さんが控訴人側に立った陳述書を提出しています。 http://www.yamba.sakura.ne.jp/shiryo/tochigi_k/tochigi_k_g_chinjutsu_saotome.pdf
合わせてお読みいただければと思います。
翌日の下野新聞が裁判の様子を伝えています。

下野新聞 2013年7月18日
3ダム訴訟 利水・治水効果なし 住民側、県と争う構え

鹿沼市の思川開発事業(南摩ダム)などダム3事業をめぐり、市民オンブズパーソン栃木{代表・高橋信正弁護士}と県民20人が、
福田富一知事に事業負担金の支出差し止めと既に支出された約81億9千万円の損害賠償を求めた住民訴訟の控訴審第1回口頭弁論が17日、東京高裁(田村幸一裁判長)で開かれた。
住民側は「南摩のほか湯西川(日光市)、八ッ場(群馬県)のいずれのダム事業でも、利水・治水の効果はない」とする控訴理由書を提出。控訴棄却を求める県側と全面的に争う構えをみせた。
この日は思川開発事業の利水問題について、原告、被告双方証人尋問が行われた。
県側の印南洋之県土整備部次長は、同事業に関係する栃木市など県南2市2町の高い地下水依存率を下げる必要性があると主張。ダム建設によって水道水とする河川表流水を確保し、地盤沈下などのリスクに備えるとした。
これに対し、住民側でダムに詳しい嶋津暉之さんは「地下水のみに依存する市町は、県内でほかにもある」「地下水くみ上げの大半は農業用地下水で、水道用ではない」などと反論した。次回期日は11月12日で終結する見涌し。(田面木千香)

佐世保市に科学者の会が意見書、市民団体が公開質問書を提出

2013年7月10日
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7月8日、「ダム検証のあり方を問う科学者の会」佐世保市水道の新水需給計画についての意見書(その2)を、二つの市民団体が佐世保重工業の使用水量の将来予測に関する公開質問書を佐世保市に提出しました。

「ダム検証のあり方を問う科学者の会」が提出した意見書のタイトルは、

佐世保市水道の新水需給計画についての意見書(その2)
―長崎市・水需給計画と比べてあまりにも非科学的な佐世保市・水需給計画の抜本的な見直しを求める―

です。
長崎市は本明川ダムの水源が必要としていた従前の水需給計画を見直し、水需要が人口の減少に伴って減少していくとして、同ダムからの撤退を表明しました。
人口が減少していくのは佐世保市も同様であるにもかかわらず、佐世保市は石木ダムへの参画の理由を無理やりつくるため、水需要が一挙にV字回復するという非科学的な予測を行っています。「ダム検証のあり方を問う科学者の会」は「佐世保市の予測が余りにも不合理な予測」であると指摘し、「石木ダムありきの予測でしかない」と断じています。意見書はこちら
PDF版は下記から。
佐世保市水需給計画の抜本的な見直しを求める意見書20130708  pdf版 358kb

二つの市民団体が提出した公開質問書のタイトルは、
佐世保重工業の使用水量の将来予測に関する公開質問書
です。
佐世保市は2013年に発表した水需要予測で、佐世保重工業の一日水使用量が2015年度以降は2011年度実績値(1,166㎥/日)の約5倍(5,700㎥/日)に急増するとしていました。しかしそれは、佐世保重工業㈱(SSK)が5月17日に発表した2015年度を目標とする「新中期経営計画」と全くかけ離れていることが判明しました。「2015年度以降は2011年度実績値(1,166㎥/日)の約5倍(5,700㎥/日)」は全く根拠のない数字だあったことが明らかになりました。この問題について、「石木川まもり隊」と「水問題を考える市民の会」が佐世保市水道局に公開質問書を提出しました。公開質問書はこちら
PDF版は下記から
佐世保重工業使用水量予測に関する公開質問書   PDF版 58kb

新聞記事

 石木ダム見直し  科学者の会要望 佐世保市に意見書( 読売新聞長崎版 2013年7月9日http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/nagasaki/news/20130708-OYT8T01350.htm

県と佐世保市が計画している石木ダム(川棚町)の建設に反対する有識者らでつくる「ダム検証のあり方を問う科学者の会」(共同代表・今本博健京大名誉教授)は8曰、市に水道の需給計画やダム建設の見直しを求める意見書を提出した。

意見書では、同会が過去10年間の実績値を重視する手法で1曰の最大給水量を独自に算定した結果、2024年度で約8万5900~約8万9500立方㍍となり、市の予測を約2万立方㍍下回ると指摘。人口減少で将来的にはさらに減るとして、「石木ダムがなくても十分な水源がある」としている

長崎新聞 2013年7月9日

 「ダム検証のあり方を問う科学者の会」意見書

2013年7月8日

佐世保市長 朝長則男 様 

「ダム検証のあり方を問う科学者の会」
呼びかけ人
今本博健(京都大学名誉教授)(代表)
川村晃生(慶応大学名誉教授)(代表)
宇沢弘文(東京大学名誉教授)
牛山積(早稲田大学名誉教授)
大熊孝(新潟大学名誉教授)
奥西一夫(京都大学名誉教授)
関良基(拓殖大学准教授)(事務局)
冨永靖徳(お茶の水女子大学名誉教授)
西薗大実(群馬大学教授)
原科幸彦(東京工業大学名誉教授)
湯浅欽史(元都立大学教授)
賛同者 125人
連絡先
〒112-8585 東京都文京区小日向3-4-14 拓殖大学政経学部
関良基 気付 「ダム検証のあり方を問う科学者の会」
電話:090-5204-1280、メール:yseki@ner.takushoku-u.ac.jp

 佐世保市水道の新水需給計画についての意見書(その2)
―長崎市・水需給計画と比べてあまりにも非科学的な
佐世保市・水需給計画の抜本的な見直しを求める―

 「ダム検証のあり方を問う科学者の会」は去る3月11日、貴市長に「佐世保市水道の新水需給計画についての意見書」を提出しました。これは今年1月に佐世保市水道局が新しく作成した水需給計画を科学的な視点で「科学者の会」が検証し、その問題点をまとめたものです。
その後、同じ長崎県の中核都市である長崎市も今年3月に新しい水需給計画を策定し、本明川ダム計画から撤退しようとしていることがわかりましたので、「科学者の会」は長崎市水道の計画資料を入手して、佐世保市と長崎市の水需給計画を比較検討しました。
その結果、佐世保市水道の水需給計画は長崎市水道の水需給計画と比べてあまりにも非科学的な計画であることがあらためて明らかになりました。
比較検討の結果は別紙に記すとおりです。
この検討結果を踏まえて佐世保市が新水需給計画の抜本的な見直しを早急に行うことを強く求めます。
さらに、本意見書に対する貴市の見解を文書で7月22日(月)までに示されることを要望します。郵送またはメールで上記の連絡先までお送りください。

長崎市水道と佐世保市水道の水需給計画の比較検討結果

 目次

 1 長崎市水道の新水需給計画. 3
2 長崎市水道と佐世保市水道の新水需要予測の比較. 3
 ① 一日最大給水量の比較. 3
 ② 工場用水の比較. 4
 ③ 業務営業用水の比較. 5
 ④ 一人一日生活用水の比較. 5
 ⑤ 給水人口の比較. 6
 ⑥ 有収率の比較. 6
 ⑦ 負荷率の比較. 7
 ⑧ 小括. 7
 3 佐世保市が長崎市と同様な予測手法を採用した場合の将来値の試算. 7
 ① 予測手法の比較. 7
 ② 試算の結果. 8
 ③ 水需要の長期的な縮小. 8
 ④ 小括. 9
4 長崎市の保有水源の評価との違い. 10
 ① 長崎市の保有水源の評価. 10
 ② 慣行水利権の扱い. 10
 ③ 統合地区の固有水源の扱い. 10
 ④ 小括. 11
5 総括. 11

 1 長崎市水道の新水需給計画

長崎市は2013年3月に水道の新しい水需給計画を策定して、長崎県南部広域水道企業団に提出した。県南部広域水道企業団は、国交省九州地方整備局が計画中の本明川ダム(諫早市)の開発水を長崎市、諫早市、時津町、長与町に供給するために設立された水道用水供給事業者である。
長崎市の新しい水需給計画の予測は大幅な下方修正を行ったもので、本明川ダムの水源を不要とするものであった。長崎市の参画なしではこの水道用水供給事業は成立しないため、同企業団は早期に解散する方針を決めた。これにより、本明川ダムは利水目的の受け皿がなくなり、治水専用ダムに計画変更されることになった。
このように長崎市は水需要予測の下方修正を行って本明川ダム計画への参加を白紙にした。一方、佐世保市は同じ長崎県の中核都市であるのに、実績と乖離した水需要予測を今なお続けて、石木ダムの新規水源が必要だと言い続けている。
今回、長崎市の水需給計画の資料(「長崎県長崎市水道事業 水需要予測概要」平成25年3月7日提出)を入手したので、佐世保市の新水需給計画と比較することにする。

 2 長崎市水道と佐世保市水道の新水需要予測の比較

 ① 一日最大給水量の比較

図1は一日最大給水量について長崎市と佐世保市の予測を比較したものである。
目標年度は長崎市が2025年度、佐世保市が2024年度である。
給水量の規模に大きな差があるので、対比できるように左と右の縦軸の座標を変えてグラフを示した。
同図のとおり、長崎市の予測は実績に多少の余裕を見た値を起点として、その後は漸減していく。
佐世保市は今後は急速に増加していく予測を行っており、長崎市の予測と対比すると、佐世保市の予測の異様さが浮かび上がってくる。
2011年度実績を100%として、同図の縦軸をパーセント表示に変えて、佐世保市と長崎市の予測を比較しやすくしたのが図2である。
 目標年度の一日最大給水量は長崎市の予測では2011年度実績値に対して111%にとどまっているのに、佐世保市の予測では131%になっており、増加分は長崎市の約3倍にもなっている。 

② 工場用水の比較

 両市の予測が大きく違っている理由を探るため、予測項目ごとに両市の比較を行うことにする。まず、工場用水の使用量を取り上げる。
 図3図2と同様に2011年度実績を100%として両市の工場用水の実績と予測を対比したものである。
目標年度の工場用水は長崎市の予測では2011年度実績値に対して117%にとどまっているのに、佐世保市の予測では475%にもなっている。
工場用水は両市とも減少傾向が続いているのであるから、その予測は長崎市のようにせいぜい現状に近い値にとどめなければならないにもかかわらず、佐世保市は、常識外れの無茶苦茶な予測を行っている。
 これは主にSSKの経営方針の変更を理由にして、工場用水急増の話を作り上げたものであるが、それが虚構であることはすでに明らかになっている。

③ 業務営業用水の比較

 図4は2011年度実績を100%として両市の業務営業用水の実績と予測を対比したものである。
目標年度の業務営業用水は長崎市の予測では2011年度実績値に対して96%で、現状より減ることになっているのに、佐世保市の予測では133%にもなっている。
両市とも業務営業用水は概ね10年間以上、減少傾向が続いてきているので、将来、増加傾向に転じることは考えられない。長崎市はこの実績を踏まえた予測を行っている。
ところが、佐世保市は観光客数の増加に対応して増加するという因果関係がない回帰式を持ち出して、業務営業用水が33%も増加するとしている。 

④ 一人一日生活用水の比較

 図5は2011年度実績を100%として両市の一人一日生活用水の実績と予測を対比したものである。
目標年度の一人一日生活用水は長崎市の予測では2011年度実績値に対して105%、佐世保市の予測では109%であり、佐世保市は長崎市に比べると、4%大きくなっている。

⑤ 給水人口の比較

 図6は2011年度実績を100%として両市の給水人口の実績と予測を対比したものである。
目標年度の給水人口は長崎市の予測では2011年度実績値に対して93%、佐世保市の予測では92%であり、両市とも今後の人口の長期的な減少傾向を踏まえた予測になっており、特段の差異はない。 

⑥ 有収率の比較   

(有収率=一日平均有収水量÷一日平均給水量
 一日平均有収水量=生活用水+業務営業用水+工場用水+その他の用途)

 

 図7は両市の有収率の実績と予測を対比したものである。
目標年度の有収率は長崎市の予測では90.9%、佐世保市の予測では89.2%であり、長崎市の方が1.7%高い。
2011年度実績は長崎市が89.1%、佐世保市が87.6%で、もともと長崎市の方が1.5%高い。実績と予測の差を比べると、増加率は佐世保市の方が0.2%低い。

⑦ 負荷率の比較   

(負荷率=一日平均給水量÷一日最大給水量×100)

 図8は両市の負荷率の実績と予測を対比したものである。負荷率は1年間の毎日の給水量の変動を表す指標である。予測では一日平均給水量の予測値を負荷率で除して一日最大給水量を求めるので、負荷率を小さく設定するほど、一日最大給水量の予測値が大きくなる。
目標年度の負荷率は長崎市の予測では81.3%、佐世保市の予測では80.3%であり、長崎市の方が1.0%高い。
予測で用いた負荷率の差は小さいが、その根拠は大きく違っている。長崎市は過去10年間の実績の最小値、佐世保市は過去20年間の最小値を採用している。
佐世保市も前回の予測(1997~2006年度の実績から2017年度を予測)では負荷率は過去10年間の最小値80.3%を使った。しかし、新予測で同じ方法を採用すると、使うべき負荷率は2002~2011年度の最小値84.8%となる。それでは、一日最大給水量の予測値が小さくなると考えた佐世保市は前回の予測ルールをなりふり構わず変えて、過去20年間の最小値を採用することにした。それが前回の予測と同じ80.3%である。 

⑧ 小括   

以上のように、長崎市と佐世保市の予測を予測項目ごとに比較してみると,最も大きな違いは断トツで工場用水であり、続いて業務営業用水である。さらに、一人一日生活用水、有収率、負荷率の違いもあって、それらが合わさって、図2で示したように、目標年度の一日最大給水量が長崎市では2011年度実績値の111%にとどまっているのに、佐世保市では131%、増加分が長崎市の約3倍にもなっている。

 3 佐世保市が長崎市と同様な予測手法を採用した場合の将来値の試算

 ① 予測手法の比較

表1は長崎市と佐世保市の予測手法を比較したものである。(1)が長崎市、(2)が佐世保市の予測手法である。ただし、手法の内容が複雑なものは簡略化して示した。
長崎市と同様の予測手法を使って佐世保市の将来値を試算した。同表の(3)にその試算の前提を示す。佐世保市固有の数字である給水人口と「井戸からの転換等」は佐世保市の数字を用いた。
また、負荷率は長崎市と同様に過去10年間の最小値84.8%を採用した場合(ケースⅠ)と長崎市と同じ81.3%を採用した場合(ケースⅡ)の二つのケースを想定した。 

② 試算の結果

図9は佐世保市が長崎市と同様な予測手法を採用した場合の将来値を試算した結果である。
目標年度2024年度の一日最大給水量はケースⅠが85,878㎥/日、ケースⅡが89,535㎥/日である。
一方、佐世保市の新予測の2024年度一日最大給水量は105,461㎥/日であり、長崎市と同様な予測手法を採用した場合と比べて、約16,000~20,000㎥/日も過大になっている。 

③ 水需要の長期的な縮小

上記の試算値は2024年度の値であり、長崎市のように予測すれば、同図のグラフの傾向で明らかなように、佐世保市水道の水需要は2024年度以降も減少していくことは必至である。
今年の3月に国立社会保障・人口問題研究所は「日本の地域別将来推計人口」を発表した。この推計による佐世保市の将来人口は図10のとおりで、佐世保市の人口は比較的早く減っていく。
2025年が230,087人、2040年が193,949人であり、2040年は2025年の約84%になる。
一日最大給水量が給水人口に比例して減少していくと仮定して、目標年度2024年度の一日最大給水量の上記試算値85,878㎥/日(ケースⅠ)、89,535㎥/日(ケースⅡ)に84%を乗じると、2040年頃の一日最大給水量はそれぞれ約72,000㎥/日,約75,000㎥/日になる。
この将来値は佐世保市が安定水源としている水源量をも下回る水量である。佐世保市水道の安定水源〔注1〕は取水量ベースで77,000㎥/日で、これに利用量率の実績値97%〔注2〕を乗じると、給水量ベースでは約75,000㎥/日であり〔注2〕、2040年頃以降の一日最大給水量はそれを下回るようになる。
〔注1〕安定水源について
佐世保市は安定水源が77,000㎥/日しかないとしているが、で述べるように不安定水源とされているけれども、実際には安定水源である水源が少なからずある。
〔注2〕利用量率について
利用量率=給水量/取水量×100%=100%-浄水場ロス率)
佐世保市水道の2007~2011年度の利用量率の実績値は97.2~97.8%(浄水場ロス率2.2~2.8%)である。佐世保市の新水需給計画では利用量率として90%(浄水場ロス率10%)が使われているが、これは浄水場でのロス率を実際の3倍以上も見込んだ実績無視の数字である。

 ④ 小括

以上のように、佐世保市が長崎市のように実績を比較的重視した予測を行えば、佐世保市水道の一日最大給水量はいずれは、安定水源の公称値をも下回るようになるから、石木ダムの新規水源は全く不要である。
しかも、次ので述べるように保有水源の評価を長崎市のように行えば、安定水源は公称値より大幅に増加するから、石木ダムの不要性は一層明白になる。

 4 長崎市の保有水源の評価との違い

 ① 長崎市の保有水源の評価

表2は長崎市水道の取水計画である。この取水計画の水源評価で注目すべきことが二つある。一つは東長崎浄水場の矢上水源は許可水利権ではなく、慣行水利権であるが、この慣行水利権12,000㎥/日を2025年度でも使う水源として評価していることである。
もう一つは統合した香焼町の水源である小ケ倉浄水場の落矢ダムを長崎市の水源に加えていることである。このことはごく当然のことであるが、佐世保市の場合は後述のとおり、そうではない。

② 慣行水利権の扱い

佐世保市による水道水源の評価を見ると、表3のとおり、安定水源は77,000㎥/日だけであって、その他の水源は不安定水源と見なされ、将来使う水源から除外されている。その中に相浦川の慣行水利権22,500㎥/日も含まれている。
この慣行水利権と川棚川暫定水利権、岡本水源は不安定水源とされているものの、実際には渇水時にも十分に利用されており、安定水源と変わらない。
長崎市のように慣行水利権を将来とも使用する水源として評価するだけで、佐世保市の水道水源は大幅に増加する。

③ 統合地区の固有水源の扱い

佐世保市は水道を将来統合する小佐々地区と鹿町地区は表4のとおり、固有の水源をそれぞれ約4,200㎥/日,約2,800㎥/日保有している。ところが、市の予測では統合に当たって、両地区の水需要は佐世保地区に算入するが、水源の方は算入しないことにしている。
両地区で実際に使っている水道水源をなぜカウントしないのか、不可解である。水需要を膨らます口実として統合の話を使っているように思えてならない。

④ 小括

上記のとおり、佐世保市も長崎市のように利用の実態に合わせて保有水源を正しく評価すれば、佐世保市水道の保有水源は大幅に増加する。
相浦川慣行水利権と統合地区固有水源を加算すれば、3万㎥/日近い増加になる。控え目に見ても、2万㎥/日以上はある。
その他に川棚川暫定水利権、岡本水源も実際には渇水時にも使える水源であるから、佐世保市水道の安定水源は77,000㎥/日(取水量ベース)とされているけれども、実際には給水量ベースで10万㎥/日程度の安定水源を保有している。 

5 総括 

佐世保市水道の新水需要予測は、一日最大給水量が今後急増し、2024年度には105,461㎥/日、2011年度実績(80,461㎥/日)の1.31倍になるとしている。しかし、佐世保市が長崎市のように実績を比較的重視する水需要予測を行えば、2024年度の一日最大給水量は約85,900~89,500㎥/日、2011年度実績の1.07~1.07倍にとどまる。
そして、長崎市は今後の人口の減少傾向を反映して将来の一日最大給水量は次第に縮小していくとしている。水需要の長期的な縮小傾向は佐世保市も同様に言えることであるので、佐世保市の一日最大給水量が2024年度以降、人口に比例して推移していくとすれば、2040年度頃には約72,000~75,000㎥/日になる。いずれは現在の一日最大給水量を大きく下回るようになるのである。
一方、佐世保市水道の保有水源は市の評価では安定水源は77,000㎥/日(取水量ベース)とされているが、長崎市のように利用の実態に合わせて保有水源を正しく評価すれば、佐世保市水道の保有水源は大幅に増加する。実際には給水量ベースで10万㎥/日程度の安定水源を保有している。
上記の将来の水需要と実際の保有水源量を比較すれば、佐世保市水道は石木ダムがなくても十分な余裕水源を抱えている。
佐世保市が石木ダム先にありきの水需給計画を抜本から見直して、長崎市のように現実に即した水需給計画を策定し、長崎市が本明川ダム計画から撤退したように、佐世保市も石木ダム計画から撤退すべきである。

  

 

 

 

 

 

 

  • 市民団体からのSSK水需要予測に関する公開質問書

2013年78

佐世保市水道局長
川久保 昭 様 

石木川まもり隊
水問題を考える市民の会

 佐世保重工業の使用水量の将来予測に関する公開質問書 

佐世保重工業㈱(SSK)は5月17日に2015年度を目標とする「新中期経営計画」を発表しました。この計画は、昨年10月25日発表の「向こう3ヵ年の経営方針」を達成することが早くも困難になり、見直しを行ったものです。人員を250名削減して、770名体制にするという厳しい内容になっています。

一方、佐世保市水道局が今年1月に発表した新需要予測において、将来の予測値を大きく引き上げる最大の要因となっているのは、SSKの使用水量の急増です。修繕船の売上高を2倍にするSSKの経営方針があることを理由にして、SSKの使用水量が2015年度以降は2011年度実績値の約5倍に急増するというものです(3ページの図1と図2を参照)。修繕船の売上高2倍がなぜ、SSKの使用水量5倍に結びつくのか、全く不可解な市の予測ですが、今回発表されたSSKの「新中期経営計画」で、その疑問がさらに鮮明になってきました。

以下、この問題について質問しますので、真摯にお答えくださるよう、お願いします。7月22日までに文書でご回答ください。

1 SSKの経営計画と市の水需要予測との関係

今回発表の「新中期経営計画」では2015年度の艦艇・修繕船の売上高を95億円に下方修正しました。昨年10月の「向こう3ヵ年の経営方針」では2014年度の艦艇・修繕船の売上高は100億円でした。2011年度の艦艇・修繕船の実績売上高は86億円(総売上高661億円×13%)ですから、「新中期経営計画」の2015年度見込みは実績の1.10倍、「向こう3ヵ年の経営方針」の2014年度見込みは1.16倍です。
ところが、佐世保市水道局の水需要予測の資料では「SSKでは経営方針変更に伴い、修繕船の売上高を約2倍見込んでいる。」(「佐世保市上下水道事業経営検討委員会(石木ダム再評価第1回目)」の配付資料2の56ページ)とし、それを理由に2015年度以降、SSKの使用水量を急増させています。
1.10から1.16倍と2倍とではきわめて大きな違いがあります。SSKの経営計画では修繕船の売上高は1.10から1.16倍であるのに、なぜ市の予測では2倍に大きく膨れ上がるのか、その理由を明らかにしてください。

2 佐世保市水道局が使用したSSKの経営計画

佐世保市水道局が新水需要予測を行うにあたって、上記の「向こう3ヵ年の経営方針」や「新中期経営計画」以外で使用したSSKの経営計画があるならば、その経営計画の名称と内容と策定年月日を明らかにしてください。

3 修繕船の売上高2倍がSSK使用水量の5倍急増に結び付く理由

上述のとおり、修繕船の売上高が2倍になるという佐世保市が想定する根拠が不明ですが、問題はそれだけではありません。冒頭で述べたように、佐世保市水道局の新水需要予測では修繕船の売上高を2倍にするSSKの経営方針があることを理由にして、SSKの使用水量が2015年度以降は2011年度実績値の約5倍に急増するというまことに不可解な予測が行われています。「佐世保市上下水道事業経営検討委員会(石木ダム再評価第1回目)」の配付資料2の56ページに書かれている計算過程だけでは到底納得できませんので、修繕船の売上高2倍がSSK使用水量の5倍急増になぜ結び付くのか、その理由を明瞭且つ平易に説明してください。
また、修繕船の売上高2倍がSSK使用水量の5倍急増に結び付くという予測はSSKの同意を得たものかどうか、市の一方的な見解による予測であるかどうかも明らかにしてください。

4 佐世保市水道の新水需要予測の見直しについて

で述べたとおり、SSKが今回発表した「新中期経営計画」によって、佐世保市が新水需要予測で前提とした「SSKでは経営方針変更に伴い、修繕船の売上高を約2倍見込んでいる。」が事実ではないことが明らかになりました。SSKの「新中期経営計画」に基づいて、佐世保市は新水需要予測の見直しをする責務があります。このことについて市の見解を明らかにしてください。

以上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平瀬ダム本体工事着手に対する抗議と要請(2013年7月5日)

平瀬ダムで山口知事に要請書(中国新聞2013年7月6日) http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201307060049.html

「美しい錦川を未来へ手渡す会」(吉村健次代表)などは5日、本年度、本体工事に着工する錦川上流の平瀬ダムの再検証を求める山本繁太郎知事宛ての要請書を提出した。
要請書は「ダムが建設されれば県民の宝ともいうべき錦川の清流が大きなダメージを受ける」と指摘。約210億円もの事業費にも疑問を呈し、
河川改修や住宅のかさ上げ、既存ダムの活用などの代替案を含めて検証し直すよう求めている。
山口県河川課は「既に適正な手続きに基づいて結論を出しており、再検証する考えはない」としている。

 

平成25年7月5日

山口県知事 山本繁太郎 様  平瀬ダムを推進する関係者様

美しい錦川を未来へ手渡す会  代表 吉村健次

水源開発問題全国連絡会  共同代表 嶋津暉之  共同代表 遠藤保男

 平瀬ダム本体工事着手に対する抗議と要請

 山口県が平瀬ダムの本体工事を今年度から着手するとの情報が流れています。

平瀬ダムがもし建設されれば、県民の宝というべき「錦川」の清流が大きなダメージを受けることになり、私たちは本体工事の着手を容認することができません。

本体工事の事業費は約210億円と聞いていますが、このように巨額の公費を必要性の希薄な平瀬ダムに投入することがあってよいのでしょうか。県財政が逼迫している状況においてこのように巨額の無駄遣いをしてよいのでしょうか。県民の生活の向上に本当に役に立つことに使うべきです。

2年前に行われた平瀬ダム検証は、ダム事業推進の結論が先にありきのダム事業者の自作自演の検証であって、平瀬ダムには真の必要性はありません。平瀬ダム計画が始まったのは約40年前であり、今だに完成していないことはその必要性が希薄であることを物語っています。

山口県はなぜ、手前味噌のダム検証で平瀬ダムの必要性を作り上げ、かけ替えのない「錦川の清流」を台無しにしようとするのでしょうか。一部の利益集団のための平瀬ダムの建設であるといっても過言ではありません。

その行為は、到底許されるものではなく、恥ずべきことです。

人は自然と共存しないと生きて行けません。

必要性の希薄な平瀬ダムの本体工事に巨額の公費を使って、県民の生活の向上を後回しにし、さらに、県民の宝である「錦川の清流」を台無しにしようとする山口県に対して私たちは強く抗議します。

さらに、山口県が流域住民の命と県民の「真の利益」を考えた治水対策を進めるよう、以下のことを要請します。

 1 ダムに懐疑的な意見を持つ有識者を加え、平瀬ダムとダムに頼らない治水・利水対策を真剣に議論する場、中立性と透明性の高い議論の場を改めて設けること。

 2 再検証の結果が出るまでは、平瀬ダム本体工事の着手を取りやめること。

 3 平瀬ダムに頼らない治水対策として、河川改修や住宅の嵩上げ、緑のダム案を取り上げ、それらの代替案について仕事とお金を生める仕組みも合わせて具体的に検討すること

 最後に憲法15条22項において、

「すべての公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」

と記されている事を紹介しておきます。

連絡先 美しい錦川を未来へ手渡す会   代表 吉村健次

0827-76-0303

二風谷ダム土砂堆積なのに新たなダム事業 「治水効果あるのか」 毎日新聞 2013年07月01日)

二風谷ダムは1998年3月に竣工したダムですが、土砂堆積量はすでに総貯水容量3150万㎥の半分、1584万㎥(2010年度末)に達しています。
土砂供給量が非常に大きい沙流川にさらに平取ダムがつくられようとしています。

2013参院選の現場:二風谷ダム土砂堆積なのに新たなダム事業 「治水効果あるのか」( 毎日新聞 2013年07月01日 東京朝刊 )http://mainichi.jp/select/news/20130701ddm041010143000c.html

◇アイヌの聖地、水没危惧
公共事業に重点を置く安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」。民主党政権下で凍結されたダム事業も、政権交代後に再開されつつある。
かつてアイヌ民族の地元住民がダム建設の是非を法廷で争った北海道平取(びらとり)町でも、新たなダム建設が始まろうとしている。地元では建設を支持する声が上がる一方で、アイヌの人たちからはダムの効果に懐疑的な声が上がっている。【前谷宏】
日高山脈から流れ出る雪解け水で満たされた平取町の二風谷(にぶたに)ダム。6月初め、ダム湖の上流部に向かうと水面に顔を出した土砂の上に若草が茂っていた。
「水が少ない夏になれば、湖面の3分の2は土砂になるよ」。地元に暮らすアイヌ民族の農業、貝沢耕一さん(67)が肩をすくめた。
治水・利水目的で建設されたダムで異変が目立ち始めたのは2003年夏の水害の頃から。大雨が降るたびにダム湖に大量の土砂が堆積(たいせき)した。
国の当初の計画では、ダムの容量3150万立方メートルのうち、土砂は100年間で550万立方メートルたまる想定だったが、国土交通省北海道開発局によると、昨年度末までの約15年間で予想を大幅に上回る1670万立方メートルがたまった。
開発局は土砂の計画量を1910万立方メートルまで上方修正し、工業用水に回す水量を減らすなどの措置をとった。「最近は堆積が落ち着き、問題はない」としているが、治水能力は低下したとの見方もあり、貝沢さんは「造る意味があったのか」と憤る。
二風谷ダムの約20キロ上流には工事のための足場が組まれている。国が今年度から本格着工する平取ダム建設のためだ。
民主党政権時代の09年10月に建設が凍結されたが、安倍政権下の今年1月に建設継続が決まり、約33億円の予算がついた。7年程度で完成予定という。道内では、国直轄の他の3ダムも本体工事に向けた事業費が計上された。
平取ダムの建設を支持してきた元農協組合長、楠木初男さん(89)は「木材の乱伐や川砂利の採取が進んだ結果、鉄砲水が増えている。多くの町民が治水対策を望んでいる」と話す。
一方、貝沢さんは「平取ダムも土砂に埋まるのではないか」と疑問を投げかける。アイヌ語で沙流(さる)川は「シシリムカ」。「本当に大地を詰まらせる」という意味だ。
アイヌ初の国会議員だった故・萱野(かやの)茂さんの次男、志朗さん(55)も「昔から砂がよく流れる川ということ。土砂がたまるのも不思議ではない」と指摘する。
貝沢さんの調査では、平取ダムの建設で「チノミシリ」(我ら祈るところ)と呼ばれるアイヌの聖地が新たに3カ所水没する。開発局の担当者は「アイヌ文化に配慮する」と言うが、貝沢さんの不信は消えない。
「国は過去の公共事業の失敗を検証せず、新たな事業を起こすことしか考えていない。荒れた山林を再生させる方が、よほど防災につながる」
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■ことば
◇二風谷ダム
北海道平取町の中心を流れる沙流川の治水や工業用水の確保を理由に1987年に着工、96年に貯水を開始。
建設地にアイヌ民族の「聖地」が含まれ、地権者だった貝沢耕一さんと元参院議員の萱野茂さん(2006年死去)が土地収用の取り消しを求めて93年に提訴。
札幌地裁は97年に「国がアイヌ文化への配慮を怠った」として建設の違法性を認めたが、既にダムが完成していたため撤去までは求めない「事情判決」を出した。

石木ダムによる川棚川治水受益予定者数1,697人?

2013年6月30日
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石木ダム事業認定申請書 想定洪水浸水人口1,697人

表-2 浸水想定区域内の状況 
対象洪水 項目 数量
  計画規模の洪水  浸水想定区域面積(ha)  109
浸水想定区域内棟数(棟) 1,448
浸水想定区域内人口(人) 1,697

石木ダム事業認定書では、上記表-2として浸水想定区域内人口を1,697人としています。
石木川流入地点以降下流域は左右両岸とも山が近いので、このように浸水想定区域内区域人口が少なくなります。
参考として、川棚川洪水避難地地図を掲載致します。
川棚川洪水避難地図 pdf 11.9MB
この下流域の浸水はそもそも川棚川の氾濫ではなく内水氾濫ですが、長崎県の言い分をそのまま認めたとしても、石木ダムによる治水上の受益予定者は1,697人でしかありません。
ちなみに、石木ダム事業による現在の水没予定世帯は13世帯・約60人です。長崎県の言い分をそのまま認めたとしても、「受益予定者数1,697人のために約60人が居住地を失う」。おかしいですね。
計画策定時の水没予定家屋は67戸、土地所有者および関係人は460名でしたから、治水上の受益予定者数は水没予定・土地所有者および関係人の3.7倍でしかない、という、もともととんでもない計画です。

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