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川辺川のダム、国が緊急放流巡る試算を公表 当初「破棄」と回答

2021年5月11日
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2020年7月の九州豪雨の1.3倍以上の雨が降れば、川辺川ダムは緊急放流することになるという計算を九州地方整備局が行っていて、しかも、その計算結果を公表せず、破棄したという毎日新聞のスクープ記事を5月2日に掲載しました。

「「九州豪雨の1.3倍で緊急放流」 国が公表せず破棄 検討中のダム」(毎日新聞2021年05月02日)https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/mainichi/nation/mainichi-20210502k0000m040151000c

九州地方整備局はこれはまずいとみて、廃棄したはずの計算結果を急きょ発表しました。毎日新聞、熊本日日新聞、西日本新聞の記事を掲載します。

九州地方整備局http://www.qsr.mlit.go.jp/index.htmlの発表は

「球磨川における「令和2年7月洪水を上回る洪水を想定したダムの洪水調節効果」について」http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/site_files/file/bousai/gouukensho/sankousryou/sankousiryou-tyousetu.pdf

で見ることができます。

しかし、この発表を見ると、川辺川ダムがあってもかなり氾濫することになっており、川辺川ダムが本当に必要な治水対策なのかと思ってしまいます。

西日本新聞の二つ目の記事で九州大の小松利光名誉教授のコメントが記されていますが、小松氏は根っからの川辺川ダム推進論者で、2000年代の川辺川ダム住民討論集会でも会場からダム推進の意見を度々述べていました。

今回のような問題ならば、今本博健先生や大熊孝先生のコメントをなぜ取らないのか、記者の姿勢に強い疑問を持ちます。

 

川辺川のダム、国が緊急放流巡る試算を公表 当初「破棄」と回答

(毎日新聞2021/5/11(火) 19:14)https://news.yahoo.co.jp/articles/b662ba30f54981fb2ab48e68b2a286818e9052c3/images/000

辺川ダムの水没予定地。予定地にあった民家は高台や村外に移転した=熊本県五木村で2020年11月19日、吉川雄策撮影

2020年7月の九州豪雨被害を受けて国が熊本県の川辺川に建設を検討しているダムについて、国土交通省九州地方整備局が九州豪雨の1・3倍以上の雨が降れば異常洪水時防災操作(緊急放流)をすることになるとの試算を公表せず、資料を破棄していた問題で、整備局は11日、一転してホームページで試算を公表した。

整備局は取材に「当時の資料は破棄したが、その後に業務委託先のコンサルタント会社から出された報告書を基に今回の資料を作った」と説明した。

整備局は20年12月に流域の市町村長らに試算結果を示したが、流域住民を含む一般には公表していなかった。毎日新聞が関係文書を開示請求したところ、3月31日に「破棄した」と回答。一連の経緯を本紙が5月3日付で報道していた。

整備局が「参考資料」としてホームページで公表した文書は、09年に中止された従来の川辺川ダム計画と同規模のダムを造る前提で試算。九州豪雨の1・3倍以上の雨で緊急放流に移行し、緊急放流しなければ1・4倍の雨でダムの水があふれるとした。

整備局は試算結果を公表したことについて、取材に「データの整理ができたので公表した。報道とは関係ない」と答えた。

九州豪雨では球磨川が氾濫し、流域で50人が死亡。治水対策として事実上建設が決まった川辺川のダムについて、流域住民の間には「緊急放流で一気に水位が上昇して下流の被害が拡大する」との懸念が根強い。

京都大の今本博健(ひろたけ)名誉教授(河川工学)は「ダム建設の方向性が固まってから資料を出すのでは遅きに失しており、説明責任を果たしたと言えない」と批判。「緊急放流のデータは住民の不安をあおると考えて隠したのだろうが、逆に他にも隠していることがあるのではとの疑念を生むだけ。初めからオープンにして丁寧に説明すべきだった」と話した。【平川昌範、城島勇人】

 

「棄した」緊急放流の試算、一転公表 国交省、川辺川の流水型ダム

(熊本日日新聞 | 2021年05月11日 19:15) https://kumanichi.com/news/id225577流水型ダムの「緊急放流」の試算について公表したことを知らせる九州地方整備局のホームページ

国土交通省九州地方整備局は11日、熊本県の球磨川支流の川辺川に建設を検討している流水型ダムについて、「資料を廃棄した」としていた異常洪水時防災操作(緊急放流)に関する試算を一転、公表した。

九地整が八代河川国道事務所のホームページで公表したのは、昨年12月の第2回球磨川流域治水協議会に先立ち、流域の市町村長らに示した資料を作った際の試算。資料自体は「最終的な意思決定に与える影響がない」として、協議会で公表しないまま終了後に廃棄したという。

資料では、新たなダムの洪水調節容量を現行の川辺川ダム計画に基づき1億600万トンと仮定した場合、昨年7月豪雨の1・3~1・5倍の雨量で「緊急放流」に移行すると示していた。

資料を巡っては行政文書の専門家から「適切に保存・公開して議論を喚起すべきだ」との声も上がった。

資料を廃棄した試算を、改めて公表したことについて九地整は「お示しできる準備が整ったため公表した。きちんとリスクを示していきたい」と説明。一方で「現行のダム計画を用いた仮定の試算だ」と強調した。今後は新たなダムの検討を進め、洪水調節効果と併せてダムの限界についても公表するという。(宮崎達也)

 

川辺川「ダムの限界」熊本豪雨の1.3倍 貯留型、初の試算結果公表

(西日本新聞2021/5/12(水) 10:56)https://news.yahoo.co.jp/articles/872624095b5935c6fc16173cf7eddb32db77d6b6

昨年7月の豪雨で氾濫した熊本県の球磨川流域の治水対策を巡り、国土交通省九州地方整備局は11日、熊本豪雨を超える洪水時に、最大支流の川辺川にダムがあった場合の効果と限界を示す試算結果を公表した。現行計画の貯留型ダムは熊本豪雨の1・2倍の降雨量まで持ちこたえる一方、1・3倍以上で緊急放流に移行するという。

九地整によると、川辺川ダムが緊急放流に移行する条件や下流域への影響を公表するのは、1966年に建設省(当時)が計画を発表して以来初めて。九地整は、検討中の流水型ダムについても「設計や洪水調節ルールが定まった段階でダムの効果と限界を公表する」としている。

 

試算は、現行計画の利水容量と洪水調節容量を合わせた1億600万トンを治水に使う設定。貯水量の8割の8800万トンに達した段階でダムへの流入量と同量を緊急放流する。

熊本豪雨の1・2~1・5倍の降雨量4パターンを想定したところ、いずれもダムが1億トン近く貯水し、減災効果はあるという。ただ、1・3倍になると、毎秒1083トンを緊急放流。1・4倍で同1733トン、1・5倍で同2724トンと放流量が増えていく。

熊本豪雨で広範囲に浸水した人吉市地点で、緊急放流時のピーク流量も解析。ダムがあったとしても、1・3倍の降雨量では熊本豪雨時を上回る同7905トンに達し、1・4倍で同8756トン、1・5倍で同9578トンとなるという。 (古川努)

川辺川ダム建設予定地

 

ダムの限界知り備え可能に 川辺川・試算公表 識者「避難に活用を」

(西日本新聞2021/5/12 11:30 )  https://www.nishinippon.co.jp/item/n/737174/

国土交通省九州地方整備局が11日に公表した川辺川ダムの「限界」の試算。どの程度の降雨量で緊急放流に移行し、下流にどんな影響を及ぼすのか、1966年の計画発表以来初めて数字で示された。検討中の「新たな流水型ダム」との比較はできないが、識者は「ダムの限界を理解することで、命を守る備えができる」と訴える。

九地整は昨年7月の熊本豪雨後、県や流域市町村との治水協議で、川辺川ダムがあった場合に浸水範囲が減り、安全性が高まるとする「効果」を強調してきた。

一方、今回の試算が示したのは「限界」だ。熊本豪雨の1・2倍の降雨量までは、ダムの治水効果は最大限発揮されるが、1・3倍以上になると貯水の限界を迎え、流入量と同じ水量を下流へ流す「緊急放流」へと移行する。

さらに、1・5倍の豪雨が降った場合、緊急放流後に人吉市地点では、安全に流下できる流量の2倍以上が押し寄せることになるという。水位は急激に上昇し、逃げ遅れれば命に危険が及ぶ可能性もある。

九州大の小松利光名誉教授(防災工学)は「(熊本豪雨でも)線状降水帯が少しずれていれば1・5倍の降雨量はあり得た」と指摘し、「気候変動の影響で線状降水帯が大きくなっている。九州では、どの1級河川で起きてもおかしくない」と警鐘を鳴らす。

その上で「ダムはある程度の豪雨から命と財産を守る。限界を超えれば緊急放流するが、コントロールはできる。この仕組みを理解し、避難に生かすことが非常に大事」と訴える。 (古川努)

映画の詳細・署名・私も一声 のサイト

2021年5月7日
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「プロテクターズ・オブ・ファイアフライ・リバー(ほたるの川のまもりびと)」を観て、署名と一声を!

 

プロテクターズ・オブ・ファイアフライ・リバー(ほたるの川のまもりびと)

朝、子どもたちが学校に行く、父と娘がキャッチボールをしている、季節ごとの農作業、おばあちゃんたちがおしゃべりをしている。それは一見、ごく普通の日本の田舎の暮らし。昔ながらの里山の風景が残る、長崎県川棚町こうばる地区にダム建設の話が持ち上がったのが半世紀ほど前。50年もの長い間、こうばる地区の住民たちは、ダム計画に翻弄されてきました。現在残っている家族は、13世帯。長い間、苦楽を共にしてきた住民の結束は固く、54人がまるで一つの家族のようです。ダム建設のための工事車両を入れさせまいと、毎朝、おばあちゃんたちは必ずバリケード前に集い、座り込みます。こんなにも住民が抵抗しているのに進められようとしている石木ダム。この作品には「ふるさと=くらし」を守る、ぶれない住民ひとりひとりの思いがつまっています。

現在は劇場公開が一段落し、自主上映については下記「作品情報」に記載があります。

DVDが販売されています。下記、映画「ほたるの川のまもりびと」DVDに記載されています。

 

長崎県への署名

石木ダムの建設予定地には13世帯50余名の住民が今なお生活しています。しかし、石木ダムの建設のために、長崎県は住民を強制的に追い出すことができます。

実際、長崎県は2019年に13世帯50余名の皆さんのすべての所有地と家屋を収用してしまいました。13世帯皆さんは明渡しを拒否し、毎日毎日、工事現場で「石木ダムの必要性について一からの話し合」を求める抗議要請行動を続けています。

長崎県は、石木ダムの必要性を説明することができず、工事を続けています。「13世帯皆さんと支援者の皆さんが疲れきるのを待つ、」という人格権侵害そのものの卑劣な対応しかできないのです。

このような事態を一刻でも止めさせるため、全国の皆さんから「中村法道 長崎県知事と県議会議員45名に声を届けよう。」とchange.org上で署名活動が行なわれています。

署名にぜひご協力ください!

税金538億円を費やす石木ダム建設は説明不足。
長崎県は一度立ち止まり、
公開討論会を開いてください。(Change.org)

ほかにも、こうばるを守るためやっていただけることがあります。→あなたにできること (石木川守りたいホームページ)

 石木ダムNO! の声を

石木ダム現地は急を告げています。

 「不要な石木ダムのために、生活の地を明け渡すことはできない。ズウッと住み続けたいだけ」と石木ダム事業地に居住する13世帯の皆さんが工事現場で毎日「工事を停止しての話合い」を求める抗議・要請行動を続けています。長崎県と佐世保市は「ご理解願うだけ!」と石木ダムの必要性についての話合いを拒否し続けるとともに、本体工事へ向けての準備工事・抗議行動排除を強行に進めています。工事現場はきわめて危険な状況に陥っています。

 私たちも長崎県と佐世保市、そして国に対して「石木ダム、ノー!」、「工事を停止して、一からの話合いを!」の声を発しましょう。

詳しくは  石木ダムNO!の声を!

「九州豪雨の1.3倍で緊急放流」 怒る九州豪雨の被災者 緊急放流の試算を国が破棄 川辺川ダム建設

2021年5月2日
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川辺川ダム問題に関する記事を掲載します。

2020年7月の九州豪雨の1.3倍以上の雨が降れば、川辺川ダムは緊急放流することになるという計算を九州地方整備局が行っていて、しかも、その計算結果を公表せず、破棄したという記事です。

「都合の悪い情報だから隠しているのではないか」、九州豪雨の被災者から怒りの声が上がっています。

2020年7月の九州豪雨において球磨川流域で雨量がひどく大きかったのは川辺川流域ではなく、他の支川流域であって、川辺川ダムが当時あっても氾濫による死者をなくすことにはあまり寄与しなかったとされています。

九州地方整備局の上記の計算ではもっと雨量が大きかったら、今度は川辺川ダムが緊急放流する事態になっていたというのですから、球磨川では川辺川ダムなしの真っ当な治水対策が推進されるべきです。

 

「九州豪雨の1.3倍で緊急放流」 国が公表せず破棄 検討中のダム

(毎日新聞2021年05月02日18時32分)https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/mainichi/nation/mainichi-20210502k0000m040151000c

2020年7月の九州豪雨被害を受け、国が熊本県の川辺川に建設を検討しているダムについて、国土交通省九州地方整備局が九州豪雨の1.3倍以上の雨が降れば異常洪水時防災操作(緊急放流)をすることになると計算していたことが関係者への取材で判明した。整備局は計算結果を公表しておらず、毎日新聞の開示請求に関係文書を「破棄した」と回答した。流域住民の間では「緊急放流で一気に水位が上昇すれば下流の被害が拡大する恐れがある」との懸念が根強く、専門家はリスクを公表して議論すべきだと指摘する。

九州豪雨では熊本県の球磨川が氾濫し、流域で50人が死亡。国や県、流域自治体でつくる「球磨川流域治水協議会」が支流の川辺川でのダム建設を含む治水対策を議論している。

関係者によると、20年12月18日の第2回協議会に先立ち、整備局は「【参考】今次洪水を上回る洪水を想定した場合におけるダムの洪水調節効果の推定について」と題した文書を流域の市町村長らに提示。川辺川に建設するダムの洪水調節容量を1億600万トンと仮定した上で、計算上、今回の九州豪雨の降り方の1.3倍以上でダムの容量の限界に近づき、その場合は緊急放流に「移行する」としていた。

文書は、仮に緊急放流をしたとしても、下流の流量はダムがない場合のピーク流量に比べれば少ないと強調する内容だった。しかし、整備局が数日後の協議会で配布した資料には盛り込まれず、現在まで公表もしていない。

文書の有無について整備局が取材に「コメントできない」と答えたため、毎日新聞は情報公開法に基づき文書の開示請求をした。これに対し、整備局は3月31日付で「破棄している」と回答。理由は「意思決定の途中段階で作成したもので、当該意思決定に与える影響がないものとして長期間の保存を要しないと判断し」たとしている。

ダム建設は正式に決まったわけではないが、国交省が21年度予算に調査・検討費を含むダム事業費5億5500万円を計上するなど、事実上建設に向けて動き始めている。

九州豪雨では24時間に489.5ミリの雨が降った球磨川沿いの湯前(ゆのまえ)町など熊本県内9地点で24時間雨量の観測史上最多を更新。川辺川が流れる五木村は9地点に含まれず413.5ミリだった。京都大の今本博健(ひろたけ)名誉教授(河川工学)は「九州豪雨ではダム予定地の下流域に線状降水帯がとどまったが、仮に上流域にとどまれば、今回の1.3倍以上の雨になることは十分あり得る。ダム建設の意思決定に影響がないはずはなく、住民にリスクを知らせずダム建設の議論を進めるのは許されない」と批判する。【平川昌範、城島勇人】

◇川辺川のダム計画

従来計画は貯水型の多目的ダムだったが旧民主党政権が2009年に中止。九州豪雨後に熊本県の蒲島郁夫知事がダム容認に転じたことで、普段はダム底部の穴から川の水がそのまま流れ、大雨時だけ水をためる流水型で新たに検討が始まった。流水型ダムは水をためきれなくなると上部から自然に越流する仕組みが多いが、国土交通省は洪水調節効果を上げるため開閉操作ができるゲート付きにする方向で検討している。

◇国土交通省九州地方整備局の文書の内容(抜粋)

・今次洪水を上回る洪水として、今次出水の雨量を1.20〜1.50倍したケースを想定し、新たな流水型ダムが存在した場合の各地点流量の推定を実施

・1.30、1.40、1.50倍のケースにおいて、ダム下流各地点にてピーク流量の低減効果が確認されたものの、ダム地点の流量がピークから下降する段階で洪水調節容量が不足し、異常洪水時防災操作へ移行

 

怒る九州豪雨の被災者 緊急放流の試算を国が破棄 川辺川ダム建設

(毎日新聞 2021/5/2 22:02)https://mainichi.jp/articles/20210502/k00/00m/040/189000c

九州豪雨で氾濫し、重機での川底の土砂撤去が進む球磨川を見つめる鳥飼香代子さん=熊本県人吉市で2021年4月27日午後0時20分、城島勇人撮影

「都合の悪い情報だから隠しているのではないか」。2020年7月の九州豪雨で氾濫した熊本県の球磨川の治水対策として、支流の川辺川で検討されているダム計画を巡り、国土交通省九州地方整備局が九州豪雨の1・3倍以上の雨で緊急放流に踏み切ることになるとする文書を作成しながら公表していなかった。ぎりぎりで回避された球磨川上流の市房ダムの緊急放流におびえた被災者からは公表しない国への不信の声が上がった。

 「データがなければ必要かどうか選べない」

「私たちは7月4日に緊急放流への警戒を呼びかけられ、不安でいっぱいになった。データを出さないなんて、怒り以外にない」。熊本県人吉市の鳥飼香代子さん(72)は話す。

豪雨が発生した7月4日の午前6時半、県は市房ダムが貯水容量を超える恐れがあるとして2時間後の同8時半に緊急放流を予定していると発表。結果的に放流はされなかったが、下流の住民らは警戒を強いられた。

自宅が1・8メートル浸水し、半壊の認定を受けた鳥飼さんは20年11月、県がダム建設についての意見を住民から聴くため開いた聴取会に「7・4球磨川流域豪雨被災者の会」の共同代表として出席。仮に市房ダムが緊急放流されていれば被害が拡大していたのではと疑い、緊急放流した場合の水位上昇などの数字を出すよう県に求めたが回答はないままだ。

ダムを含む球磨川の治水対策の議論が交わされている「球磨川流域治水協議会」に参加できるのは国、県、市町村長や専門家だけ。住民が参加できないままダム建設が既定路線になりつつある現状にいらだちを募らせる鳥飼さんは「最悪の事態を想定したデータを出してもらわなければ、ダムが必要かどうかも選びようがない」と訴える。

九州地方整備局は緊急放流に関する文書を「破棄した」としている。熊本県球磨村で被災した市花保さん(50)は18年の西日本豪雨で緊急放流が実施された愛媛県の肱川(ひじかわ)の例を挙げ「緊急放流は住民が一番知りたい情報だ。破棄したなんてとんでもない」と憤慨。川辺川のダムの緊急放流に関する文書を見た流域自治体の関係者も「まさに我々の関心事だった。万が一、緊急放流で被害が出れば責任問題になる。はっきりしないままでは進めない」と語った。

国は球磨川流域の治水対策としてダムのほか、遊水地や田んぼダムの整備なども打ち出している。地元で遊水地案が浮上している人吉市中神町城本の町内会長、林茂さん(71)は「ダム建設に賛成でも反対でもない」と前置きし「都合の悪い情報も隠してほしくないし、ガラス張りであってほしい。都合のいい情報しか出さないなら治水事業にも協力できなくなる」とくぎを刺した。

 専門家「誤解を招きやすいからこそ説明を」

ダム建設や緊急放流に理解を示す専門家も「丁寧な説明が必要だ」と指摘する。京都大防災研究所の角哲也教授(水工水理学)は「ダムはブラックホールではなく、水は無限にはためられない。ダムが満水に近づいた場合、ダムの水があふれて急激に川の水が増えないよう計画的に緊急放流することが必要だ」と説明。さらに「下流の流量を見ながら洪水が重ならないように放流する」と述べる。

角教授は国が川辺川に検討している規模の貯水容量があれば、九州豪雨を上回る大雨が降っても洪水のピーク後まで緊急放流には至らず、十分な洪水調節機能を発揮するとも分析。その上で「誤解を招きやすい問題だからこそ、分かりやすい説明をしてほしい」と国に注文する。

 そもそも「緊急放流」とは

緊急放流は大雨でこれ以上水がたまり続けるとダムの容量をオーバーし、最悪の場合決壊しかねない状況になった時に、ダムのゲートを人為的に開けて水位を下げる操作を指す。東日本各地で記録的な大雨となり広範囲に被害をもたらした2019年10月の台風19号の際は六つのダムで実施された。

緊急放流自体はダムの運用に元々織り込まれた操作で、専門家も過度に危険視すべきではないと言う。とはいえ、放流直後は下流の水位が一気に増えるため、住民が不安に思うのは当然だ。九州豪雨の際は球磨川の上流にある市房ダム(熊本県水上村)が緊急放流寸前まで追い込まれた。結果的に雨が弱まり緊急放流は回避されたものの、放流を始める水位まであと10センチに迫り、球磨川の氾濫で既に浸水被害を受けていた下流の住民からは被害拡大を心配する声が上がった。

18年の西日本豪雨で氾濫した愛媛県の肱川(ひじかわ)では、上流の野村ダム(西予(せいよ)市)と鹿野川(かのがわ)ダム(大洲(おおず)市)で緊急放流が実施された。両市では氾濫で8人が死亡しており、被災者や遺族は国の不適切なダム操作が浸水被害を招き、住民への周知も不十分だったなどとして国と両市に損害賠償を求めている。西予市で避難指示が出たのは緊急放流の約1時間前、大洲市では5分前だった。

NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「地域住民の生命や生活に関わる問題で都合の悪いデータを出していないと思われれば行政の信頼性を損ない、将来に禍根を残す」と指摘する。豪雨を機に一度は中止になった川辺川でのダム建設が「復活」したが、賛否は今も割れている。住民がこれ以上ダムに翻弄(ほんろう)されることがないようオープンな議論が求められる。【城島勇人、平川昌範】

 

「緊急放流」試算、国交省が廃棄 川辺川流水型ダム資料

(熊本日日新聞 | 2021年05月07日 07:10) https://kumanichi.com/news/id219617

国土交通省九州地方整備局は6日、熊本県の球磨川支流の川辺川に建設を検討している流水型ダムについて、昨年7月豪雨の1・3倍以上の雨量で異常洪水時防災操作(緊急放流)に移行すると試算した資料を廃棄していたことを明らかにした。

「緊急放流」は、ダムが満水に近づき決壊などの危険性があると判断した時に、上流からの流入量をそのまま下流に流す操作。資料では新たなダムの洪水調節容量を、現行の川辺川ダム計画の洪水調節容量に利水分も加えた1億600万トンと仮定。7月豪雨の1・3~1・5倍の雨量では下流のピーク流量を減らす効果は発揮するものの、容量が不足して緊急放流に移ると試算していた。

九地整は昨年12月18日の第2回球磨川流域治水協議会に先立ち、流域の市町村長ら関係者に資料を示していた。しかし、協議会の配布資料には含めず、終了後すぐに廃棄したという。熊本日日新聞は関係者への取材から同日付の朝刊で、雨量が1・3倍以上で緊急放流に移行する試算を報じていた。

九地整は「協議の途中段階で作成した資料で、最終的な意思決定に与える影響がないものとして長期間の保存は必要ないと判断した。資料にあったデータを隠そうとした意図はない」と説明。今後、新たなダムの緊急放流についても検討を進め、公表していく考えを示した。

行政文書の管理に詳しい熊本大法学部の原島良成准教授は「市町村長に示した試算が公開に適さないほど未熟とは考えにくい。ダムのリスク評価と密接に関わるデータが『意思決定に与える影響がない』との説明は不合理だ。適切に保存・公開して議論を喚起すべきだ」と指摘した。(宮崎達也、高宗亮輔)

 

佐世保市水道の給水量の渇水年との比較 石木ダムは全く不要

2021年4月27日
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長崎県川棚町では治水利水の両面で必要性がない石木ダムの建設を阻止する闘いが続けられています。

石木ダムの利水の最新資料(2020年度のデータ)を入手できましたので、最新のグラフを掲載します。下記の通りです。

図1は佐世保市水道(佐世保地区)の一日最大給水量の実績と市予測です。実績は2000年代に入ってから、ほぼ減り続け、最近20年間で3割近く減り、2020年度は71927㎥/日になりました。

しかし、市予測では一日最大給水量が106549㎥/日まで増えることになっています。架空予測であることは明白です。

給水量の減少が続いてきたことにより、最近20年間で最大の渇水年「2007年度」と2020年度の毎日の給水量を比較すると、図2の通り、2020年度は2007年度をかなり下回っています。2007年度は10年に1回程度の渇水年とされていますが、その程度の渇水が再来しても特段の対応は必要ありません。

 

過去最大の渇水年とされているのが1994年度です。西日本で最大の渇水年でした。

その1994年度と2020年度を比較したのが図3です。1994年度の水道給水量は月単位の数字しか残っていないので、月平均値の比較になります。

1994年度の最も厳しい渇水月でも2020年度の給水量はほぼ同程度ですから、現在、過去最大の渇水が再来しても、多少の措置で対応することができます。

1994年度渇水は市の対応がお粗末で、長時間の断水が行われましたが、今ならば、給水量が大きく減少していますので、断水になることはありません。多少の減圧給水で十分に対応できると思います。

 

最近は給水量の年間変動が小さくなっています。かつては見られた季節変動がかなり小さくなっています。

図4の通り、2020年度は一日平均給水量66134㎥/日に対して、一日最大給水量は71927㎥/日で、最大/平均は1.09にとどまっています。

しかし、佐世保市の給水量の予測では最大/平均が1.25です。これが将来の一日最大給水量予測値をひどく大きくする予測テクニックの一つになっています。

 

佐世保市水道の保有水源を正しく評価すれば、10万㎥/日以上ありますので、給水量の最近の動向を見れば、石木ダムの新規水源が必要であるはずがありません。

治水面の話は割愛しますが、石木ダムは治水面でも不要なダムです。

この無意味なダムの建設を阻止しましょう。

 

稚アユの放流ピーク 球磨川 川辺川ダムの環境アセスはどうなるのか

2021年4月27日
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球磨川での稚アユ放流がピークだという記事を掲載します。その下の記事は3週間前の記事ですが、「川をさかのぼる稚アユを捕まえて上流で放流する「稚アユすくい」が最盛期を迎えている」という記事です。

将来、もし川辺川ダムがつくられれば、球磨川におけるアユの生息はどうなるのでしょうか。

川辺川ダムはアユの生息など、球磨川の自然に大きな影響が与えるのですから、少なくとも、環境アセス法による川辺川ダムの環境影響評価を何年もかけて行わなければならないはずです。

今朝、熊本県球磨川流域復興局の担当者に電話して、川辺川ダムの環境アセスの手続きはどのような見通しなのかを聞きましたが、あいまいな返事でした。

川辺川ダムが流水型ダムになるならば、ダムの根拠法が特定多目的ダム法から河川法になって、新しく計画されるダムになり、環境アセス法施行後のダム事業となるのだから、環境アセス法の対象となることは必至であると説明しましたが、国がきめることだからというあいまいな返事でした。

昨年11月に蒲島郁夫・熊本県知事は環境アセス法に基づく川辺川ダムの環境アセスの実施を求めると明言したにもかかわらず、4月7日の衆議院国土交通委員会で国土交通省の水管理・国土保全局長は川辺川ダムは環境アセス法の対象外だと答弁しています。

蒲島知事はなぜ、黙っているのでしょうか。

 

稚アユの放流ピーク 球磨川

(西日本新聞2021/4/25 11:30 )https://www.nishinippon.co.jp/item/n/729162/

球磨川に放流される稚アユ

6月のアユ漁解禁を前に、アユ釣りの名所で知られる球磨川で稚アユの放流がピークを迎えている。球磨川漁協は23日、熊本県人吉市内の川岸から約3万2千匹を放流。稚アユは川の中へ勢いよく泳ぎだしていった。

アユの遡上(そじょう)を助けるため、漁協は下流で捕まえた稚アユや、天然アユから採卵して施設で育てたものを上流約30地点で放流している。この日は熊本市の施設で育てた稚アユを用意。タンク内からホースで一斉に放流した。

漁協によると、今年の放流予定数は約250万匹。昨年7月の豪雨の影響で産卵数の減少が心配されたが、成育は順調だという。 (中村太郎)

 

【動画】豪雨ニモ負ケズ、球磨川にアユ戻る

(西日本新聞2021/4/3 18:28) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/717913/

球磨川堰の魚道で跳ねる稚アユ=熊本県八代市(撮影・佐藤雄太朗)

熊本県八代市の球磨川堰(ぜき)で、川をさかのぼる稚アユを捕まえて上流で放流する「稚アユすくい」が最盛期を迎えている。同堰では、ダムなどがアユの遡上(そじょう)を妨げるため、球磨川漁業協同組合が毎年春に捕獲し、人吉市など約30カ所で放流する。前年の捕獲量は19万匹だったが、今年は3月末までに80万匹と大幅に増えた。昨年の熊本豪雨で球磨川堰上流にあるダムが開放され、多くのアユが下流域に向かったことなどが原因の一つとみられる。

堀川泰注組合長(73)は「アユは球磨川の象徴。豪雨の影響で今年はだめかもと言われていたが、想像以上に戻ってきたのでうれしい」。作業は4月末ごろまで続く。(佐藤雄太朗)

 

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