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県は強硬姿勢をやめよ 石木ダム計画 長崎新聞社説

2015年7月11日
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7月10日の長崎新聞の社説を掲載します。
石木ダム問題についてまさしく正論を述べた社説です。

地元新聞が長崎県に対して「強硬姿勢をやめよ」という見解を突き付けた意味はきわめて大きいと思います。

県は強硬姿勢をやめよ 石木ダム計画

長崎新聞社説 2015年7月10日

県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で県は8日、反対地権者13世帯が現住する家屋などを含む土地(約12万平方㍍)の裁決申請などを実施。
これで未買収地すべてが強制収用に向けた手続きに入ったが、県はこの強硬姿勢をやめるべきだ。
1982年5月、県は土地収用法に基づく測量を計画地で実施したが、反対住民の抵抗に遭い、県警機動隊を出動させた。
現場では、道路に座り込んだ住民が実力で排除される事態に。以降、反対住民は態度を硬化させ、このダム計画が数十年も迷走する端緒となった。
県は、反対住民の理解を得ようと説得を続けたが、有効な対話は成り立たないまま、今日に至る。途中、公共事業削減の嵐が吹き、ダム不要論も台頭したが、この計画は生き残った。
今も公共事業に対する国民の視線は厳しい。
国民生活に資する基盤整備は今後も必要だが、無駄な出費は厳しくチェックされなけれぱならないし、過剰な環境破壊や政官業による不正が疑われる事業も当然許されない。
そのうえで、個々の必要性に対する国民の理解と支持がなければ、事業が持ちこたえることはできない。
事業主体は、慎重に丁寧に穏当に手順を進める必要がある。法に従って粛々と進めるだけでは不十分だ。
石木ダム計画は、その悪い見本のような経過をたどっている。
まして今後、強制収用という手法で、自分の家で生活を営んでいる住民たちを無理やり引きはがしてまで作業をするなど、現代の日本においてまともな光景ではない。
県は立ち止まってほしい。そして、出直してほしい。
佐世保市はどれぐらい水が足りていないのか、人口減少局面で水需要は将来どれぐらい増大するのか、本当に他の解決策はないのか、治水効果はどう発揮されるのか、反対住民と有効な対話ができないまま何十年も過ぎた責任はいずれにあるのかー。
40年の時間とコストをかけて完了しない公共事業が、それでも必要であることの説得力のある説明をし直したほうがいい。
「もう十分説明してきた」という答えが返ってくるのかもしれない。だが現実はどうか。

「石木ダムとは必要なのか」と疑問に思っている県民がいかに多いことか。県民にこれほど理解されない不幸な県事業をほかに知らない。
県は強硬手段をとる構えをやめるべきだ。手法の誤りは将来に禍根を残す。利害関係者との対話に失敗する代償の大きさは、国営諌早湾干拓事業を見れば分かる。
形は完成しても泥沼の裁判闘争が続き、対立がどこまでも終わらない悲劇の典型だ。
このダム計画でも、そうなることが分かっていて、手順だけを進めるのは合理的でない。(森永玲)

長崎)裁決申請、地権者反発 石木ダム用地巡り再び

2015年7月9日
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長崎県が石木ダム予定地で4世帯の家屋を含む土地の強制収用を可能とする裁決申請をしました。その記事とニュースを掲載します。

反対地権者の家屋、土地を暴力的に奪おうとする長崎県の動きにストップをかけるため、世論を大いに盛り上げていかなければなりません。

石木ダム 本体工事で裁決申請
(NHK 2015年07月08日 23時49分) http://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/5033176691.html?t=1436383914459
石木ダム
川棚町に計画されている石木ダムについて長崎県は8日、ダム本体の工事に必要な3万平方メートルあまりの土地や家屋を強制的に取得するための「裁決申請」を行うとともに、ダムに水没する地域のおよそ9万平方メートルについても「裁決申請」に向けた手続きを始めました。
県と佐世保市が川棚町に計画している石木ダムは建設に反対する一部の地権者との用地交渉が難航していて、県は土地収用法に基づいて強制的に土地を取得するための手続きを進めています。
先月には収用委員会が道路用地としておよそ5500平方メートルの田んぼや畑を10月30日までに明け渡すよう地権者に求める裁決をしたのに続き、長崎県は8日、ダムの本体工事に必要な3万平方メートルあまりの土地や家屋についても、強制的に取得するため収用委員会に「裁決申請」を行いました。
県は裁決の日から180日以内に土地や家屋を明け渡すよう求めていて、応じない場合には「行政代執行を行うことも選択肢としてある」としています。
またこれとは別にダムに水没するおよそ9万平方メートルの土地や家屋、公民館などについても裁決申請のための手続きを始めました。
石木ダムは、建設計画からおよそ40年が過ぎ、これまで買収した土地は81.1%にとどまっていましたが、これですべての土地を取得するための手続きが始まったことになります。
石木ダムの本体工事に向けても「裁決申請」に踏み切ったことについて、長崎県の中村知事は「全ての地権者の理解を得ることが出来ず残念だが、ダムは川棚町の治水対策や佐世保市の慢性的な水不足を解消するためには必要不可欠な事業だと考えている。完成に向けてしっかり取り組んでいかなければいけない」と述べました。
また石木ダムの完成予定が計画上、来年度に迫っていることについて、「現実的に時間が足りない状況になっている。ダム建設で水没する現在の道路に代わる道路用地への裁決が先月出たこともあり、建設計画の見直しに着手しなければいけない」と述べ、今年度中に建設計画を見直す考えを示しました。
裁決申請の対象となった家屋に住む地権者、川原房枝さん(74)は、「もっと地権者に『どうして反対なのか』と聞いて進めるべき話です。家を取り上げるつもりならそれでも結構ですが、私たちは計画が白紙撤回になるまで闘います。みんなが住んでいるところを取り上げてまでダムを造る時代ではない。県外の皆さんにも私たちの気持ちをわかってほしい」と話していました。

「なぜ議論拒むのか」 石木ダム、地権者ら怒り [長崎県]

(西日本新聞 2015年07月09日 00時11分)http://www.nishinippon.co.jp/nnp/nagasaki/article/180803

(写真)裁決申請について説明し工事現場に入ろうとする県職員に背を向け、抗議を続ける地権者や支援者たち

裁決申請について説明し工事現場に入ろうとする県職員に背を向け、抗議を続ける地権者や支援者たち
「議論を拒んで強行するのか」「本当に必要なら何度でも説明するべきではないか」-。県と佐世保市が計画する石木ダム事業をめぐり、県が4世帯の家屋を含む土地の強制収用を可能とする裁決申請をした8日、ダム予定地の付け替え道路工事現場で抗議活動をしている地権者や支援者の間には怒りが渦巻いた。
県が付け替え道路工事に着手した現場入り口には同日午前11時すぎ、県職員ら約10人が姿を見せ、今回の裁決申請について説明し、工事への協力を要請。
「この場所は法的に妨害が禁止されている」「こんなふうにしていてもお互いにいいことはない」などと理解を求めたが、住民や支援者たちは「工事強行より話し合いを」などと書いた横断幕を掲げ背を向け、無言で抗議を続けた。
道路工事の膠着(こうちゃく)状態が続くなかでの新たな裁決申請について、県石木ダム建設事務所の古川章所長は「ダムの必要性については(国の)判断が出ている。話し合いは平行線で溝を埋めるに至っていないが、総合的に判断して手続きを進めている」とした。
中村法道知事は同日の会見で、家屋の収用(行政代執行)に関し「そういった手法を排除するわけにはいかない」と強制的な手段も辞さない構えを見せた。
地権者の一人は「県がダムの必要性の議論をしないのは、私たちを納得させられる根拠がなくなっていることの表れだ」と反発。
今回の裁決申請の対象となった家屋に住む男性は「この地の自然を子どもたちに残すのか、無駄なダムと財政負担を残すのか。もう一度、市民も町民も一緒になって議論するべきではないか」と話した。
石木ダム:家屋も強制収用へ 県、3ヘクタールを裁決申請 /長崎
(毎日新聞長崎版 2015年07月09日)http://mainichi.jp/area/nagasaki/news/20150709ddlk42010308000c.html県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダム建設で、県は8日、反対地権者4世帯の住宅を含む約3ヘクタールの強制収用に向け、県収用委員会に裁決申請したと発表した。石木ダム事業で家屋が裁決申請の対象になるのは初めてで、住民は反発を強めている。
県河川課によると、対象はダム本体の建設予定地で、現在は住宅地や農地として利用されている。県収用委は、審理で県や地権者らの意見を聞いた上で、土地の補償額や明け渡しの期日などを決める。県は同日、9世帯の住宅を含む約9ヘクタールについても、裁決申請に向けた手続きを開始した。
中村法道知事は8日の定例記者会見で、石木ダムの必要性を改めて強調し「地権者の理解を得て土地を譲ってもらうのが理想だが、現実にはなかなか難しい状況だ」と申請の理由を説明した。
朝長則男市長は「これまで約40年間の経緯、現在の地元の状況、工事工程など事業を取り巻くさまざまな状況を総合的に判断されたものと思う」とのコメントを発表した。
一方、対象用地の家屋で暮らす岩下秀男さん(67)は「必要のないダムのためにどうして家を強奪されなければならないのか。我々は自然豊かな古里で暮らしたいだけ。反対活動を継続し、この土地からてこでも動かない」と語気を強めた。
石木ダム事業は1975年に事業採択されたが、反対派住民と行政の対立で本体着工のめどが立たない状況が続いてきた。県収用委は先月、県の申請を受け、予定地内の農地約5500平方メートルについて10月末(一部を除く)までの明け渡しを求める裁決を出している。【小畑英介、梅田啓祐】
石木ダム 県が土地収用裁決申請
(読売新聞長崎版 2015年07月09日)http://www.yomiuri.co.jp/local/nagasaki/news/20150708-OYTNT50133.html県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダム建設事業は、県が8日、反対地権者4世帯の家屋4棟を含む土地約3万平方メートルの収用に向けた裁決申請をしたことで、新たな局面に入った。県収用委員会による裁決後、地権者が明け渡しに応じなければ、家屋や土地の強制収用が可能になるが、地権者側は一歩も引かない構えを貫いている。
県河川課によると、申請内容は〈1〉土地所有権の移転は裁決から60日後〈2〉明け渡し期限は、家屋が同180日後、家屋以外は同60日後――など。補償額は約2億7000万円とした。
中村知事は記者会見で「地権者の理解を得て、円満な形で進めるのが理想」とする一方、ダム建設の必要性を強調し、「今後もしっかりと取り組んでいかなければならない」と述べた。行政代執行による強制収用の可能性については「現段階でその手法を排除するわけにはいかない」と含みを持たせた。
同市の朝長則男市長は裁決申請を受け、「事業の着実な進展につながると受け止めており、今後の状況を見守りながら、市の責務を果たしていく」とのコメントを発表した。
一方、反対地権者の1人で、今回の裁決申請の対象となった家屋で暮らす岩下秀男さん(67)は「ダムは利水、治水の両面で必要ない。反対運動を続け、何があろうとここに住み続ける。私だけでなく、地権者はみんな同じ気持ちだと思う」と語気を強めた。
地権者のリーダー格の岩下和雄さん(68)も「強制収用は許されず、内容を伴わないダム計画に反対していくことに変わりはない。ダムの必要性がなくなっていることは明白で、県はきちんと納得いく説明をするべきだ」と憤りをあらわにした。

「失うものは美しいもの」~パタゴニア辻井支社長が石木ダム反対訴え

2015年7月6日
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7月4日、長崎県佐世保市で開かれたシンポジウム「石木ダムの真実」についてNet IB Newsの記事を掲載します。
「失うものは美しいもの」~パタゴニア辻井支社長が石木ダム反対訴え
(Net IB News 2015年07月06日 15:28)http://www.data-max.co.jp/270706_ymh_2/
長崎県と佐世保市が同県川棚町に計画している石木ダム建設を考えるシンポジウムが7月4日、同市のアルカスSASEBOで開かれ、アウトドア衣料メーカーのパタゴニア日本支社長の辻井隆行氏が特別講演した。
辻井氏は、ダム建設計画地の川原(こうばる)地区など現地に月1回以上足を運んで、地元住民と意見交換するなど、ダム反対を支援してきた。
パタゴニア日本支社は同ダム反対運動の全面支援を決定し、5月から佐世保市内で「ダムはほんとうに必要か皆で考えましょう」というラッピング広告したバスの運行を開始。同支社初の新聞全面広告「失うものは美しいもの」を出して、ダムが不要だと問いかけた。
講演する辻井隆行・パタゴニア日本支社長
(写真)講演する辻井隆行・パタゴニア日本支社長
7月4日、長崎県佐世保市で開かれたシンポジウム「石木ダムの真実」
(写真)7月4日、長崎県佐世保市で開かれたシンポジウム「石木ダムの真実」
辻井氏は、パタゴニアが長くビジネスをするうえで大切な仕組みとして、「環境に負荷の小さい素材」「人権に配慮した生産」にこだわっていると紹介。
こだわりのある製品をつくって販売する先のミッション(使命)として、「ビジネスを使って、環境問題そのものを解決したいと思っている」「それが石木ダムに関わらせていただいている根底にある思いです」と語った。
東京生まれ東京育ちの辻井氏は、ダム建設計画地の川原地区を訪れ、春の小川のような自然、日本のふるさとのような場所に接し、「これが日本の自然なんだ」と思ったという。
「何かに反対することは、何かに賛成すること」という米国の環境活動家の言葉を引用して、石木ダムに反対することは、石木川の本来の姿に賛成している、生息している138種のレッドデータブックに載っている生き物に賛成している、ここに暮らす素晴らしい方々の暮らしに賛成している、「市民による民主主義」に賛成している、と述べた。
最後に、「失うものは美しい」に込めた気持ちを、「何を失うのか、何を守ろうとしているのか。多くの人が参加でき話し合いができる場をつくって、全員にとって納得できるお金の使い方を市民が決める世論をこれから醸成していきたい」と結んだ。
合唱する川原地区の住民たち=7月4日、長崎県佐世保市
(写真)合唱する川原地区の住民たち=7月4日、長崎県佐世保市
川原地区には、13世帯約60人が住む。1971年に県が川棚町に予備調査を依頼して以来住民らは約40年間、ダム反対の看板を立て、監視塔や団結小屋を設置し、1982年の強制測量反対などダム反対の運動を続け、強制測量反対当時の小学生が結婚し親の世代になった。
ダム建設計画地に住む岩下すみ子さんが「美しい山、村を破壊する必要があるのか」と問いかけ、住民約20人が「川原のうた」を合唱し、「ただ生まれ育ったこの土地に住み続けたいだけなのです。ダムの中止が決まったら、看板を撤去してそこに花を植えたい」と訴えた。
シンポジウムは、ダム計画地の住民や市民団体「石木川まもり隊」らでつくる「石木ダムの真実を考える集会実行委員会」主催。
ブックレット『石木ダムの真実 ホタルの里を押し潰すダムは要らない!』出版を記念して、同ダムの公共性について、行政を交えた討論を呼びかけるために開いた。約350人が参加した。
同ブックレット執筆者の1人で、石木ダム対策弁護団の板井優弁護士が、同ダムの問題点と公共事業のあり方を講演した。
長崎県は、中村法道知事が話し合いに1回応じたものの、ダム水没予定地の道路に代わる付け替え道路工事の強行や本体工事に必要な用地の強制収用の準備を進めている。
【山本 弘之】

長良川河口堰20年、止まらぬ論争 水利用低迷やアユ漁獲減少 減るシジミ 河口堰維持に239億円 

2015年7月6日
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7月6日で本格運用開始から丸20年となる長良川河口堰の問題を取り上げた中日新聞、日本経済新聞、毎日新聞の記事を掲載します。

 河口堰維持に239億円 「長良川」20年

(中日新聞2015年7月6日)http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2015070602000070.html

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 六日で本格運用開始から丸二十年となる長良川河口堰(ぜき)(三重県桑名市)の維持管理費が、来年三月末までに総額二百三十九億円に及ぶ見通しとなることが中日新聞社の調べで分かった。河口堰は約千五百億円で建設されたが、一九九五年の運用開始後も多額の税金が投じられている。造られると、莫大(ばくだい)な費用を必要とし続ける巨大公共事業の実態が浮き彫りになった。

 維持管理費二百三十九億円のうち、国を除く愛知、三重、岐阜の三県と名古屋市が全体の77%にあたる百八十三億円を負担。愛知、三重県と名古屋市は過去二十年間、河口堰で利用できるようになった工業用水や水道水をほとんど使っていないにもかかわらず、百七十四億円を払い、一部は水道料金に転嫁されている。

 堰を管理する水資源機構中部支社(名古屋市)によると維持管理費は定員二十二人の管理所職員の人件費や設備更新費など。年によって変動はあるが、年間八億~十六億円程度かかる。

 河口堰には治水と利水の目的があり、国と東海三県、名古屋市が負担を分け合う。治水分は二〇一〇年度まで国55%、愛知、岐阜、三重県が15%ずつで、一一年度以降は国が全額負担。利水分は愛知、三重県と名古屋市が分担している。

 だが、堰建設で新たに使えるようになった最大毎秒二二・五〇立方メートルの水のうち、実際の利用は、愛知県知多半島地域の水道に毎秒二・八六立方メートルと三重県中勢地域の水道に毎秒〇・七三立方メートルの毎秒計三・五九立方メートルで、全体の16%にとどまる。計画時の過大な需要予測が原因で大幅な水余りになっている。

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長良川河口堰20年、止まらぬ論争 水利用低迷やアユ漁獲減少

(日本経済新聞2015/7/4 2:07  ) http://www.nikkei.com/article/DGXLASFD29H3G_T00C15A7CN8000/

三重県桑名市の長良川河口堰(ぜき)が運用を始めて6日で20年の節目を迎える。4、5日に市民団体が今までを振り返るイベントを開くほか、開門調査を求めてきた愛知県も28日に有識者による検証委員会を実施する。
推進派と反対派の対立はその後の公共事業のあり方を見直す契機にもなったが、事業そのものの是非は結論が見えない。
「日本には大型公共事業を後で検証するシステムがない。我々は今後も粘り強く検証していく」。愛知県の大村秀章知事は有識者委を1年ぶりに開く意義をそう語る。
愛知県は1月、開門調査に向けて国に質問状を提出した。これに対し国は今年5月、400ページにのぼる回答を寄せた。7月末の検証会合では有識者が回答を検討し、今後の対応を話し合う。
河口堰の総工費は1500億円。国と愛知県や名古屋市、三重県、岐阜県が負担した。さらに毎年、維持費が約10億円かかる。そのコストに見合う事業なのか、今なお大きな争点になっている。
河口堰の目的の一つは利水だ。河口堰で毎秒最大22.5立方メートルの水資源が生まれた。しかし使われているのは同3.6立方メートルと16%にすぎない。
国が河口堰の構想を作ったのは1960年代の高度経済成長期。愛知や三重は日本を支える重工業地帯として発展し、水需要も大きく拡大するはずだった。その後、産業構造の変化や各企業の節水の取り組みで、もくろみは大きくはずれた。
一方で「夏の水不足を緩和させる効果は高い」との声も自治体の間では根強い。2005年の渇水時には長良川の水を愛知に供給し、悪影響の緩和に一役買った。
環境に与える影響でも意見が分かれる。
「魚道を流れる5センチほどの小さな魚がアユです」。河口堰を管理する水資源機構は5月下旬、報道陣向けに魚道の見学会を開いた。「今年のアユの遡上は多い。河口堰のアユへの影響はほぼない」と機構は胸を張る。
ただ、この20年をみると、河口堰の運用前の93年に激減し、その後回復がみられない。機構は「全国的にアユの漁獲は減った。長良川に限ったものではない」と説明するが、長良川市民学習会の武藤仁事務局長は「悪影響は明白だ」と反論する。
事実、岐阜市は今年天然アユを「準絶滅危惧」に選定した。「放流などの手助けがなければアユは絶滅の可能性すらある」(武藤氏)。双方の主張はかみ合っていない。
20年前、旧建設省の官僚として現場で河口堰にかかわった宮本博司氏(62)は言う。「事業の推進側は20年前に言っていたことがどこまで正しかったか検証し、逆に反対派は河口堰が生んだメリットを語らなければ、次の世代に何の教訓も残せない」。お互いの主張を繰り返すだけでは風化が進むだけだと危惧する。
河口堰問題をきっかけに、国は1997年に河川法を改正し、環境保全や住民参加の仕組みを取り入れた。公共事業への国民の目は厳しさを増し、政府の投資額は20年で半分近くに減った。国の財政が厳しい中でどう有用な社会インフラを整備するか。長良川河口堰は今も大きな問いを投げかけている。

三重・長良川河口堰:稼働20年 減るシジミ、嘆きの漁師 「自然はむちゃ微妙や」
(毎日新聞 2015年07月06日 中部朝刊)http://mainichi.jp/area/news/20150706ddq041040004000c.html

長良川河口堰(ぜき)(三重県桑名市)のゲートが閉められ、本格運用が始まって6日で20年。建設を巡って反対運動が起こり、運用後も河川水の利用が最大取水量の2割に満たない中で、生態系への悪影響やその必要性を問い直す声は今も絶えない。
この間、河口堰を日々見つめながら、シジミ漁などで生計をつないできたのが地元の漁師たちだ。劣化する漁場、変化する生態系??。「造ってくれと頼んだわけやないのに」。複雑な思いを抱きながら、節目を迎える一人の漁師を追った。【松本宣良】

6月22日午前5時過ぎ。朝日が川面を照らす中、赤須賀漁協(同市)に所属する漁船十数隻が次々とシジミ漁へ出ていく。「最初の頃は異様に映った。今は見慣れたけどな」。漁師歴50年のベテラン、伊藤順次さん(67)は眼前の河口堰を見やった。
向かう先は長良川と並行して流れる揖斐(いび)川だ。元々、堰の上下流は海水と淡水が混じる汽水域でシジミ漁の好漁場だった。が、堰建設に伴うしゅんせつで泥がたまるなどして、稼働後3年目ぐらいから極端に取れなくなったという。「もうあかん、と見切って川を変えたんさ」
網の付いた鉄棒を巧みに操って川底を引き、一定の量がたまると船に引き上げ、選別機にかけてかごへ入れる。資源保護などのため、漁協が漁獲量を1日140キロまでに制限しているが、「最近はそれだけ取るのに以前より時間がかかる」とこぼす。砂利やごみが多く、実入りが悪いのだ。
「絶対量が減ってきている気がする。そりゃ、木曽三川(揖斐・長良・木曽川)のうち1本(長良川)がなくなったような状態で20年やろ。繁殖する分より取る分が徐々に勝り、利息どころか元金まで消えつつある感じや」
長良川と揖斐川を隔てるヨシ原の変化も気になる。「堰の下流で段々削られている。昔はもっと河口部まであったんや」。伊藤さんは堰の影響と考え、「自然はむちゃ微妙や。川に人工物を造れば何か起こるわな」。深いため息をついた。
ただ、堰を管理する独立行政法人・水資源機構は「治水、利水のため人為的に河川を改修し、構造物を造ったことは事実」と述べるだけで、因果関係には言及しない。
午前8時半ごろ、約3時間の漁を終え、港に戻った。「この先、漁がどうなるか……恐らく好転は望めんやろ。おいらは年金もあるでボチボチやればいいけど、若い衆は困ると思うよ」。伊藤さんは堤防から見慣れた光景を見つめながら、うらめしそうにつぶやいた。
◇河口堰開門調査求める宣言採択 市民グループ
愛知、岐阜県の長良川流域の約20の市民グループでつくる「よみがえれ長良川実行委員会」は5日、岐阜市でシンポジウムを開き、河口堰の開門調査を求める宣言を採択した。
宣言は「川の恵みを未来につなぐためにも海とつながる豊かな川に再生しなければならない」と強調。「一日も早い開門調査の開始を切望する」としている。
開門調査を巡っては、愛知県の大村秀章知事が2011年の初当選時に開門調査を公約に掲げ、県が調査方法などの検討を続ける一方、岐阜、三重両県は海水の遡上(そじょう)による塩害を懸念し、開門に難色を示している。【岡正勝】
==============
■ことば
◇長良川河口堰
長良川河口から約5・4キロ上流の三重県桑名市にある全長661メートルの国内最大級の可動式堰。水資源開発公団(現・水資源機構)が建設し、1995年7月6日、10あるゲートを全閉して本格運用を始めた。大規模なしゅんせつによる治水、堰上流の淡水化による愛知・三重両県と名古屋市の利水開発、塩水遡上(そじょう)防止を目的としている。総事業費は約1500億円。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失うものは美しいもの」 石木ダムシンポに350人 )「声を上げ、世論喚起を」

2015年7月5日
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シンポジウム「石木ダム問題の真実~失うものは美しいもの」が7月4日、佐世保市で開かれました。350人の会場が満席になる盛況でした。

その記事を掲載します。

長崎新聞 2015年7月5日 (306KB)  「石木ダム反対」支援拡大を

 

「失うものは美しいもの」 石木ダムシンポに350人 パタゴニア日本支社長講演 [長崎県]

[西日本新聞2015年07月05日) http://www.nishinippon.co.jp/nnp/nagasaki/article/180040
石木ダム建設反対運動の意義について講演するパタゴニア日本支社の辻井隆行支社長
(写真)石木ダム建設反対運動の意義について講演するパタゴニア日本支社の辻井隆行支社長

 県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダムについて考えるシンポジウム「石木ダム問題の真実~失うものは美しいもの」が4日、佐世保市三浦町のアルカスSASEBOであった。

会場には350人が集まり、ダム事業反対運動を支援するアウトドアメーカー、パタゴニア日本支社の辻井隆行支社長の講演などがあった。

 ダム建設予定地に住む地権者や支援する市民団体でつくる実行委が主催した。

石木ダム対策弁護団の板井優弁護士がダム計画の問題点について話した後、辻井支社長が登壇し、自然保護運動を支援する同社の取り組みを紹介。

「貴重な自然や建設予定地に住む人たちの暮らしだけでなく、ダム建設を見直し、税金が正しく使われることにも賛成している」と述べた。

 ダム建設予定地に暮らす岩下すみ子さんは「生きていくために必要なものが全てそろっている。必要でもないダムのためにどうして犠牲になれるでしょうか」と話した。

石木ダム反対派が佐世保で集会
(読売新聞長崎版2015年07月05日)http://www.yomiuri.co.jp/local/nagasaki/news/20150704-OYTNT50213.html

県と佐世保市が川棚町に計画している石木ダム建設事業で建設反対派グループが4日、同市のアルカスSASEBOで、ダム建設問題への理解を深めてもらうための集会を開いた。

「石木ダム問題の真実~失うものは美しいもの~」と題した集まりには約350人が参加し、ダムの水没予定地で暮らす地権者や、支援活動を行っている団体、弁護団が現状を語った。
国営川辺川ダム(熊本県)事業の川辺川利水訴訟で弁護団長を務め、石木ダムでも副弁護団長を務める板井優弁護士は「ダムには限界がある。ダムを造れば全てがうまくいくというのは危険な考え」と指摘した。
また、反対地権者13世帯を代表し、岩下すみ子さん(66)が「必要のないダムのために、なぜ犠牲にならなければならないのだろうか。老朽化した水道管の改修など他にやるべきことがある」と訴えた。地権者たちは1982年に県が強制的に用地を測量した際の写真を掲げて建設反対を訴えた。
集会後、弁護団と支援者の意見交換会が非公開で行われた。馬奈木昭雄弁護団長によると、裁判など法的手段に頼らず、今後も世論を喚起していく従来の方針を確認したという。

石木ダム:反対集会 運動継続へ決意新た パタゴニア支社長が講演 /長崎

(毎日新聞長崎版 2015年07月05日)http://mainichi.jp/area/nagasaki/news/20150705ddlk42010213000c.html

県と佐世保市が川棚町で計画中の石木ダム建設事業を巡り、反対派の市民団体「石木川まもり隊」などは4日、同市三浦町のアルカスSASEBOでダム不要を呼びかける集会を開いた。反対地権者や市民ら約350人が参加し、事業見直しに向けた運動を継続する決意を新たにした。

集会で、石木ダム対策弁護団の板井優弁護士は、建設理由として県や市が主張する治水利水両面の必要性について、公開討論などの結果から「理不尽かつでたらめ」と指摘。
川辺川ダム(熊本県)問題に取り組んだ経験を基に「大型公共事業をやるかやらないかは行政ではなく住民が決めるというルール作りが大事だ」と語った。
今年4月にダム反対運動への支援を表明した米国アウトドア衣料メーカー「パタゴニア」日本支社の辻井隆行支社長は、水没予定地を「日本人のふるさとのような場所」と表現。
「失うものは美しいもの。大切な税金の適切な使い方について、誰にとっても一番良い方法を考えて実行しても遅くはない」と語った。【梅田啓祐】

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