水源連:Japan River Keeper Alliance

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流水型川辺川ダムの建設をメインとする球磨川河川整備計画の策定と流域住民の抗議行動

2022年8月14日
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九州地方整備局と熊本県は8月9日、流水型川辺川ダムの建設をメインとする球磨川水系河川整備計画を策定しました。

河川整備計画の内容は九州地方整備局のホームページ http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/site_files/file/news/r4/20220809kisya.pdf に掲載されています。

河川整備計画の主な治水事業の位置図を次に示します。

多くの方が 公聴会や意見書で球磨川水系河川整備計画原案の根本的な問題点を指摘したけれども、ほとんど変わることなく、流水型川辺川ダムの建設をメインとする球磨川水系河川整備計画があっという間につくられてしまいました。

公聴会・パブリックコメントは河川管理者が市民の意見を計画に反映したことにするためのセレモニーにすぎませんでした。

この策定に対して、流域の市民団体が8月10日、国土交通省、熊本県に抗議文を提出しました。

抗議文提出の記事と整備計画策定の記事を掲載します。

必要性が希薄で、環境に多大な影響を与える流水型川辺川ダムの計画が進められていくことは腹立たしい限りです。私たちはこれからも球磨川水系河川整備計画の問題を指摘し、流水型川辺川ダムの建設を阻止するための行動を続けていかなければなりません。

ダムの完成予定が2035年度ですので、反撃の余地はまだまだあると思っています。

 

流水型ダム整備含む熊本・球磨川の河川計画 反対市民団体ら抗議文

(西日本新聞2022/8/11 11:30)https://www.nishinippon.co.jp/item/n/971071/

流水型ダム建設を盛り込んだ河川整備計画への抗議文を手渡す市民団体のメンバー

抗議文を手渡す豪雨被災者の住民有志(右)

球磨川の支流川辺川への流水型ダム整備を含んだ河川整備計画の策定を受け、ダム建設に反対する市民団体が10日、国土交通省や熊本県に対する抗議文を提出した。人吉市の豪雨被災者ら住民有志も同日、県庁に提出した抗議文で「ダム反対の民意を無視する暴挙だ」などと訴えた。

国交省八代河川国道事務所では「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」(中島康代表)など6団体が斉藤鉄夫国交相と蒲島郁夫知事に宛てた抗議文を提出。河川整備計画を断固拒否するとした上で「ダム計画の中止を勝ち取るまで闘い続ける」と強調した。

中島代表(81)は「流域の意見が計画に反映されていると思えない。民主主義の根幹に関わる問題だ」と憤った。抗議文を受け取った同事務所の寺師浩二事務副所長は「意見や文書は担当部署に伝える」と述べるにとどめた。

一方、人吉市で被災した住民有志5人は、蒲島氏が整備計画案に「異存なし」と回答したことへの抗議文を提出。同市や球磨郡の住民計93人分の署名も添え、整備計画の撤回を求めた。

豪雨で自宅が全壊した同市の林通親さん(73)は「(策定手続きが)こんなに早く進められて納得いかない。被災者の声を聞くべきだ」。同市の関根喜美子さん(75)は「災害では命だけでなく住まいや財産全てを失う。住民の声を聞いて計画をゼロから考え直してほしい」と声を上げた。 (梅沢平、鶴善行)

 

計画策定「住民無視の暴挙」 国、県に抗議文提出 

(人吉新聞20220810) https://hitoyoshi-sharepla.com/news.php?news=5573

川辺川への流水型ダム建設を含む球磨川水系河川整備計画を9日に策定、公表した国土交通省、熊本県に対し、市民団体の「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」(中島康代表)は10日、「住民無視」の同ダム建設に反対するとともに、流域住民への丁寧な説明を求める抗議文を提出した。

抗議文によると、同計画原案に寄せられた住民意見の7割が流水型ダムに反対したことを無視した異挙であり、国交省、県ともに「丁寧に説明しながら事業を進める」という姿勢に反する。流域住民の多くは過去の体験からダムに強い拒否感情、疑問がある中で住民無視の計画は到底受け入れられないと訴えている。

国交省八代河川国道事務所に中島代表ら賛同する団体の9人が訪れ、寺師浩二副所長に抗議文を手渡した。

中島代表は「住民の意見が全く反映しておらす、丁寧な説明をするというが、何度も行っている抗議活動に対する回答は一度もない」、瀬戸石ダム周辺に喜らす男性は「荒瀬ダム、瀬戸石ダムを建設する際、国交省は今回と同じことを言っていたが、全くのうそだった」「穴あきダムがある清流の河川はない。命も清流も守れない」と抗議した。

寺師副所長は「窓口として受け取り、上司に適切に伝え、対応していく」と詳細な回答を控えた。

 

豪雨災害から2年熊本・球磨川水系の治水策本格始動へ

(西日本新聞2022/8/10 6:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/970447/

川辺川への流水型ダム建設で10年に1回程度の大雨で水没することが想定される熊本県五木村の旧中心部=9日午後

国土交通省九州地方整備局と熊本県は9日、2020年7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川水系の河川整備計画を策定したと発表した。発災から2年超。河川法に基づく整備計画には支流川辺川への新たな流水型ダム整備も盛り込まれ、河道掘削や宅地かさ上げ工事などを含めた、今後約30年間の治水策が本格的に動き出す。

流水型ダムは、旧川辺川ダム計画と同じ同県相良村に建設予定。高さ107・5メートル、総貯水量約1億3千万トンで、治水専用ダムとしては国内最大となる。今後は環境に与える影響調査を進め、27年度に着工。完成は35年度を見込む。

整備計画では、遊水地の整備や河道掘削などにより、同県人吉市の地点で洪水時の最大流量を毎秒7600トンに設定。「50年に1度」の洪水を安全に下流に流すことを目標に掲げる。

蒲島郁夫知事は流水型ダムについて「命と環境の両立が図れているか確認する仕組みを立ち上げる。(ダム建設の影響を受ける)五木村、相良村の振興にも全力で取り組みたい」とのコメントを出した。

球磨川水系では、08年の旧川辺川ダム計画「白紙撤回」後の治水策がまとまらず、全国109の1級水系で唯一、整備計画が策定されていなかった。今回の整備計画を巡っては、蒲島氏が今年7月下旬、国が示した案に「異存なし」と回答。流域市町村からも変更を求める意見はなかったが、五木村と相良村はダムへの賛否を明言していない。

ダム建設に反対する市民団体「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」の中島康代表は「説明会やパブリックコメント(意見公募)での住民の意見が反映されていない。ダム頼みの治水策は危険であり、改めて検証するべきだ」と訴えた。 (鶴善行、松本紗菜子)

 流水型ダム、環境への影響どう低減

球磨川水系河川整備計画の柱は、環境への影響を最小限に抑えることを目指す支流川辺川への新たな「流水型ダム」の整備だ。旧ダム計画を白紙撤回しながら、今回計画を容認している熊本県の蒲島郁夫知事は「命と清流を守る」として環境への配慮を求めているが、実効性を確保できるかが問われている。

新ダムの特徴は、放流口に開閉式のゲートがあり、平常時は「流水型」として運用し、豪雨時はゲート操作により放流量を制御し「貯水型」としての機能を兼ね備えられる点だ。平常時はダムの下部に設けた穴から川の水を流すことになっており、魚類や土砂の移動は確保されやくなる。そのため、土砂の堆積などによる生態系や水質などへの影響は小さいとされる。

球磨川の治水策を検討する学識者懇談会委員を務める熊本大の大本照憲特任教授(河川工学)は「平常時は生態系への影響が小さく、貯水容量も大きいため安全性を確保するには効果的だが、有事の際は下流に土砂を押し流すことになる」と指摘。その上で「今後は実験を重ねた上で、治水効果と生態系維持とのバランスがとれる形にすべきだ」と話した。 (松本紗菜子)

 

 流水型ダム決定「球磨川治水本格的に」国が意義

(読売新聞2022/08/10 05:00)https://www.yomiuri.co.jp/local/kumamoto/news/20220809-OYTNT50163/

(写真)計画について記者会見で説明する宗所長(中央)ら

国土交通省が九州豪雨で氾濫した球磨川の河川整備計画を策定した9日、担当者が県庁で記者会見を開き、「遊水地や 引堤(ひきてい)などの治水対策に本格着手できる」と意義を語った。支流・川辺川への流水型ダム建設を含め、「丁寧に説明し、住民の理解を深めたい」と強調した。振興策を示すよう求める声も上がった。(内村大作)

ダム本体の工事は2027年度に着手し、35年度の完成を目指す。着工前に環境影響評価(環境アセスメント)や設計を進め、用地買収や漁業権を巡る漁協との補償交渉にも取り組む。

計画には、気候変動による降雨量の増大を踏まえ、関係者が協力して流域全体で被害を軽減させる「流域治水」の観点を盛り込んだ。会見した国交省八代河川国道事務所の宗琢万所長らは、支流や森林などにも目を向けたとする特徴を説明した。

国は計画策定を受け、球磨村や人吉市などで進める遊水地の用地取得に取り組む。球磨村神瀬地区などが対象となる宅地かさ上げは盛り土の工事に本格着手する。県も管理区間の整備計画を公表し、支流の治水対策を進めるとした。

蒲島知事は「流水型ダムが命と環境の両立が図れるか確認する仕組みを出来るだけ早くつくる」との談話を出した。

水没予定地がある五木村の岡本精二議長は「計画ができたというだけで、村も議会もダムを容認したわけではない。村づくりが先決で、国、県には今後の振興の形を早く示してほしい」と注文した。

◆反対市民団体が批判

球磨川の河川整備計画を巡り、ダム建設に反対する市民団体「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」(熊本市)の中島康代表は「計画案に対する説明会はなく、多くの反対の意見も聞き入れていない。水害の被害者にも失礼だ」と批判した。

団体は5日、蒲島知事が国の計画案に「異存なし」と回答したことについて、撤回を求める抗議文を提出していた。他に5団体が賛同した。

抗議文では、整備計画の原案の段階で国、県が行った意見公募や公聴会で、約7割が建設反対の意見だったと分析。「豪雨災害を経た後でも流域の民意は圧倒的にダム反対」とした。

 

川辺川のダム整備計画策定 国交省と熊本県

(毎日新聞 2022/8/10 西部朝刊 )https://mainichi.jp/articles/20220810/ddp/041/040/008000c

国土交通省と熊本県は9日、2020年7月豪雨で氾濫した球磨川水系の河川整備計画を策定した。治水対策として、支流の川辺川に流水型ダムを建設するのが柱。今後、遊水地の整備や河川工事を含め、本格的な作業に移る。

流水型ダムは35年度に完成予定で、水路を設け、平時は水を流して増水時だけためる仕組み。環境負荷が少ないとされる。蒲島郁夫知事は「命と環境の両立が図られているか確認する仕組みをできるだけ早く立ち上げる」とコメントした。

整備計画は、今後約30年間にわたる河川整備の目標や、河川工事の場所などを明記。流水型ダムによる「緑の流域治水」を進めるとしている。県は順次、宅地かさ上げや河川整備の現地測量に向けた住民説明会を開催する予定。国交省は用地取得などを進める。

 

流水型ダム盛り込んだ河川整備計画、国と熊本県決定 球磨川水系

(熊本日日新聞  2022年8月9日 13:13)  https://kumanichi.com/articles/754010

国が流水型ダムの建設を計画している川辺川の峡谷。中央右は下流側の排水路トンネル=2月14日、相良村四浦(高見伸、小型無人機で撮影)

国土交通省九州地方整備局と熊本県は9日、2020年7月豪雨災害で氾濫した球磨川水系の河川整備計画を策定し、治水対策の柱として支流・川辺川への流水型ダム建設を盛り込んだ。河川整備計画の期間はおおむね30年。人吉市で「50年に1度」の大雨でも洪水被害が出ないようにすることを掲げた。

ダム以外に、遊水地の整備や河道掘削といった河川工事も本格的に進める。蒲島郁夫知事は「命と環境を守る『緑の流域治水』を推進し、流水型ダムは命と環境の両立が図られるか確認する仕組みを早く立ち上げる」とコメント。ダムの影響が及ぶ五木村と相良村の振興に全力で取り組む姿勢を改めて強調した。

流水型ダムは旧川辺川ダム計画と同位置の相良村四浦の峡谷に建設。高さ107・5メートル、総貯水量約1億3千万トンで、国内最大の治水専用ダムとなる。

35年に完成予定で、普段は水をためず、洪水時は下部のゲートを閉めて水をためて水位が上がれば中段のゲートを操作し放流量を調節する。河川整備計画では20年7月豪雨の実績の1・4倍の雨が降った場合、流入量を下流へ流す異常洪水時防災操作に移行する可能性があることを言及。環境への影響については「最小化を目指す」とした。

計画は人吉市の基準点で「50年に1度」の大雨を安全に流すことを目標にしており、既存の市房ダム(水上村)の再開発や複数の遊水地整備、河道掘削を進め、対応可能な流量を現状の約2倍の毎秒7600トンに引き上げるとした。

家屋への浸水を防ぐ輪中堤整備や宅地かさ上げは、球磨川中流域にある球磨村、芦北町、八代市坂本町の計6地区で実施。五木村を含む14支川でも取り組む。水田の貯留機能向上や森林整備など、流域全体で氾濫を防ぐ施策も進める。

河川整備計画は、全国に109ある1級水系のうち球磨川水系だけが未策定だった。策定を巡っては、ダムに反対する住民らが疑問を挟んでいた一方で、河川法が定める意見聴取で蒲島知事は被災地の復旧・復興を重視する県の方向と一致するとして計画案に同意。球磨川流域12市町村も変更を求める意見は出さなかった。(髙宗亮輔)

川辺川下流から見た流水型ダムの建設予定地=2021年12月、相良村四浦(小山智史)

 

石木ダム事業で反対住民と大石知事が初めての話し合い

2022年8月12日
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8月10日、長崎県の大石賢吾知事は、石木ダム建設を計画している東彼・川棚町を訪れ、水没予定地で暮らす反対住民約20人と意見を交わしました。その記事、ニュースを掲載します。

長崎放送のニュースが意見交換の様子を伝えていますので、動画も是非、ご覧ください。

しかし、石木ダム建設工事の関連工事が始まったので、反対住民が座り込みを8月17日に再開しました。そのニュース記事も末尾に掲載します。

大石知事は石木ダム建設工事を中断して話し合いをすることがなぜできないのでしょうか。

 

石木ダム事業で反対住民と大石知事が初めての話し合い

(長崎放送2022年8月11日(木) 12:44)https://newsdig.tbs.co.jp/articles/nbc/121376?display=1

(動画)

県と佐世保市が東彼・川棚町に計画している石木ダムをめぐり、事業に反対する住民と大石知事が10日、初めて事業について本格的な話し合いをしました。
大石知事からの要望で開かれた話し合いには、ダム建設に反対する住民およそ20人が参加しました。

知事と住民が事業について本格的に話し合うのは2014年7月以来8年ぶりで、住民らは佐世保市の水の需要予測を示すなどしてダムの必要性について議論を求めました。

(反対住民)「これを見てですよ、佐世保市が本当に水が要るかというのが考えられんでしょう?」
(反対住民)「石木ダムは本当に必要かどうかということを議論ばせんばでしょう、まず」
(大石知事)「必要性についての説明が必要だということは全くその通りだと思います。我々も隠れてやるつもりは全くありませんので」

ダムについて大石知事は住民の理解を得たうえで建設を進めたいとして、住民と面会したのはきのうで3回目となりました。

(反対住民)「知事と直接言い合うというのは今までなかったですよね、やっぱり納得いくまで話し合いを続けていきたいと思います」

住民を強制的に立ち退かせる行政代執行も可能な立場の大石知事ですが、当面、住民との話し合いを重ねる方針です。

 

大石知事、住民と対話継続を確認 石木ダム3回目訪問 工事中断には難色

(長崎新聞2022/8/11 10:30 )https://nordot.app/930271862148071424?c=174761113988793844

大石知事(手前)の説明を聞く反対住民ら=東彼川棚町東部地区コミュニティーセンター

長崎県の大石賢吾知事は10日、県と佐世保市が石木ダム建設を計画している東彼川棚町を訪れ、水没予定地で暮らす反対住民約20人と意見を交わした。両者はできるだけ早く次の対話の機会を設けることを確認したが、住民が求める工事中断について、知事は「県民の安心安全を守るのが行政の責任」として難色を示した。
両者の面会は4月以来3回目。知事は自然災害への備えや、地権者の8割が既に移転している現状を理由に、早期完成への理解を求めた。これに対し住民の岩下和雄さん(75)は「私たちの立場に県が立つことが必要。押さえつけるのではなく、ダムの必要性について納得いく話し合いを続けて」と要望。家屋などを強制撤去する行政代執行について、知事は「(ダムを)無理やりつくるのではなく、しっかり理解を得た上で進めたい」と述べた。
住民は、建設反対で同調する佐世保の市民団体との意見交換も求めたが、知事は「(工事差し止め)訴訟が継続中なので控えたい」とした。住民は県との公開討論会も提案したが、知事は明言を避けた。住民の岩下すみ子さん(73)は1982年の強制測量時に機動隊が出動した写真を知事に見せ、「私たちはこの地で住み続けたい」と建設中止を求めた。
終了後、知事は「意見の食い違いがあった。丁寧に対応し一つ一つ解決したい」と話した。

 

【長崎県】石木ダム 知事と地元住民の面会は平行線

(テレビ長崎2022年8月11日 木曜 午後0:20)https://www.fnn.jp/articles/-/401943

(動画)

東彼・川棚町の石木ダムをめぐり、大石 知事は10日、建設反対の住民と面会しました。
住民側は工事の中断を求めましたが、大石 知事は難色を示しています。

大石知事と石木ダム建設に反対する住民は10日夕方、川棚町で約2時間にわたり意見交換しました。

県民の安心・安全を守る責任があるとしてダムの早期完成を目指したいとあいさつした知事に対して、住民は工事の中断を迫りました。

石木ダム建設絶対反対同盟 岩下 和雄 さん 「話し合いを続けていきましょう。工事はしませんのでと言ってくれたら私たちも座り込みに出ていく必要がない」

大石 賢吾 知事 「しっかりと検討はしたいがこの場で約束はできない」

住民側は水需要予測を含めてダムの必要性に疑問があるとして公開討論会も提案しましたが、知事は明言を避けました。

その上で住民側は16日まで工事現場での座り込みを見送るとしていて、県側の対応が注目されています。

 

「石木ダム工事中断」を要請 反対派住民が知事に

(西日本新聞2022/8/12 11:30) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/971534/

石木ダム建設を巡って反対派住民と意見交換する大石賢吾知事(中央)

長崎県と佐世保市が川棚町川原地区で進める石木ダム建設事業を巡り、大石賢吾知事は10日夜、同町を訪れ、今も建設予定地に住む13世帯の反対派住民と面会し、意見交換した。住民らは県との協議継続と、その間の建設工事を中断するよう改めて要請。知事は終了後の取材に、協議は続けるものの、工事中断には応じない考えを示した。

冒頭、知事は「一刻も早くこの問題を解決したい。皆さまのお気持ちを聞かせてほしい」とあいさつした。その後の意見交換では、住民から「ダムの必要性を住民にも分かりやすく説明する機会を設けてほしい」「話し合いはパフォーマンスではないか」などという怒号が飛ぶ一方、「(建設予定地で毎日行っている)座り込みを一時中断して様子を見たい」との声も出た。

約2時間にわたった面会後、住民の岩下すみ子さん(73)は「話せただけでもよかった。今後の話し合いの中で、(ダム建設)中止に持っていきたい」。大石知事は「皆さまのふるさとへの思いを聞けたのと同時に、多くの宿題をもらった。近いうちに次の話し合いの機会を設けて、対応していきたい」と述べた。 (才木希)

 

石木ダム 知事が反対住民と対話 「県は強行策ばかり」批判噴出 /長崎

(毎日新聞 2022/8/12) https://mainichi.jp/articles/20220812/ddl/k42/040/257000c

大石知事(左)に県への不信感をあらわにする住民

県が川棚町に建設を進める石木ダムを巡り大石賢吾知事は10日夜、同町を訪れ、建設に反対する水没予定地に暮らす13世帯の住民約20人と約2時間対話した。住民からは半世紀に及ぶ県への不信感が噴出し、県が防戦に回るやり取りとなった。

大石知事が現地を訪れ反対住民と会うのは3回目だが、本格的な意見交換は初めて。知事は冒頭「住み慣れた故郷を思う気持ちから事業に協力できないお考えは十分理解している」としながらも「渇水、洪水という自然災害から県民の安全を守ることは行政に課せられた責任」と述べた。

住民はダム建設着手について県と住民間で交わした覚書(1972年)がほごにされたこと、82年の機動隊を使った強制測量など、県の行動を列挙。岩下和雄さん(75)は「県は住民をいじめる強行策ばかり。強行手段は伝統なのか」と怒りをあらわにした。住民は建設現場に連日座り込んでおり「行政代執行するならやればいい。座り込む必要がなくなる」という声や「工事の排水が田んぼにつながる用水路に流れ込んでいる。嫌がらせではないか」などの意見が相次いだ。

知事「丁寧に対応」

大石知事は「心苦しく思っており丁寧に対応していきたい」「今後も話し合いを続けていきたい」と守勢を強いられた。対話を終えた知事は「厳しい意見もあったが、話し合いを続けたいと言ってもらえたことがありがたかった。誠意を持って理解を得られるよう進めていきたい」と語った。【綿貫洋】

〔長崎版〕

 

【長崎】大石知事と石木ダム反対住民3回目話し合い

(長崎文化放送2022年08月11日) https://www.ncctv.co.jp/news/104802.html

(動画)

長崎県と佐世保市が東彼・川棚町で進める石木ダム建設事業について大石知事は10日夜、水没予定地で暮らす「反対住民」と意見を交わしました。

反対住民と大石知事の面会は3月以降3回目です。知事は13世帯約20人にダムの「早期完成」への理解を求めました。

これに対し反対住民は「工事の中断」を要望、「私たちが納得できる話をしてほしい」と訴えました。

住民の岩下すみ子さん(73)は「本当にもううんざりです。この問題を早く片付けて石木ダムの建設がいらないということがはっきりしている訳です。中止してほしいと思います」と話しました。

大石知事は「我々のなぜ、続けなきゃいけないかという考えもしっかりともう一度改めて説明しなくてはいけないと思いますし、どういった形で折り合いをつけられるかというのは今後取り組んでいきたいと思います」と話しました。知事は反対住民との話し合いは続けたいとしています。

 

石木ダム反対の住民と意見交換 川棚で知事

(読売新聞2022/8/12 05:00) https://www.yomiuri.co.jp/local/nagasaki/news/20220811-OYTNT50109/

県と佐世保市が川棚町に建設を計画している石木ダムについて、大石知事は10日、建設に反対する地元住民と同町内で意見交換した。

住民約20人が出席し、「話し合いの間は絶対に工事を強行しないと約束してほしい」「住民の同意を得られない場合は行政代執行してでも造るのか」などと要望、質問した。

大石知事は「皆さんと話し合いを続け、どうやったら折り合いをつけられるかしっかりと検討したい」「行政代執行は最終的な手段。私は皆さんの理解を得た上で解決を目指したい」と回答。「いただいた指摘は、しっかりと県庁内で精査する」と述べた。

県は2025年度の完成を目指しているが、事業用地には今も13世帯が暮らしている。大石知事は3月にダムの予定地で反対派の住民と面会し、4月に反対派の住民と現地を視察。7月には佐世保市と川棚町で建設を求める団体と意見交換した。

 

川棚町の石木ダム建設工事 住民による座り込み再開

(テレビ長崎2022年8月17日 水曜 午後7:32 )https://www.fnn.jp/articles/-/404611

(映像)

東彼・川棚町の石木ダムをめぐり、建設に反対する地元住民は、知事に工事の中断を求めました。
ただ知事は要望に応じておらず、住民による座り込みが「再開」しました。

東彼・川棚町の石木ダム建設予定地です。

午前8時前から重機が運び込まれ、関連工事が始まりました。

これに対し建設に反対する住民やその支援者たちは、抗議の意思を示すため座り込みを「再開」しました。

福岡の支援者「無理やり、強引に進めるやり方そのものを変えていかないといけない。お金の無駄遣いです」

石木ダムの建設工事をめぐり大石 知事は先週地元住民と意見交換し、今後も話し合いを続ける方針を示しました。

一方、住民側が話し合いの条件として求めた「工事中断」には応じておらず、今後の話し合いの予定も明らかになっていません。

地元住民 「どこも行くところない。ここが一番、いいもんね。川原が一番、よかもんね。どこさ出ていくね、今さら」

ダム建設をめぐる県と住民側の溝は埋まっていません。

石木ダム問題に対する1万人の声を「手紙」で長崎県議会に届けよう!

2022年8月10日
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ダム予定地の人たちの生活を奪い、かけがえのない自然を喪失させる「石木ダム」、利水治水の両面で必要性がない「石木ダム」の建設を中止させるために、

「石木ダム問題に対する1万人の声を「手紙」で長崎県議会に届けよう!」の活動が始まりました。

https://rescuex.jp/project/12232 をお読みください。

「石木ダム問題を知る会」の呼びかけページから一部を転載します。

あなたの声を県知事・県議会に届けよう!

手紙でダム建設を止めたい

「手紙」を届ける理由

「直接的」かつ「継続的」に声を届けたい

これまで「石木川まもり隊」や「#いしきをかえよう実行委員会」など、さまざまな活動団体が啓発活動や署名活動を行ってきましたが、今もなお解決されていません。

そこで、今回のプロジェクトではよりダイレクトに声が届くよう、「意思決定者に直接送付」する“手紙”という手段にこだわりました。

また一瞬のムーブメントで終わらせないことも重要です。そのため皆さんの声を「継続的」に送り続けます。

プロジェクトで集まった手紙を運営スタッフが発送のスケジュールを組み、県知事と県議会議員の事務所に「直接」そして「継続的」に送ります。

いただいたメッセージは、マスコミにも届け、メディアを巻き込んでこの問題をひろめていきます。

あなたの声が現地・こうばるの方々の支えになる

集まったメッセージを冊子にして、ダム建設予定地で反対運動を続ける13世帯の方々にもお送りします。

40年という月日が経ち住民の方の高齢化や長期化による疲弊や苦悩が増す中、あなたの声がこうばるの方々を支える大きな力になります。

ダム建設を止めるための鍵は、一人でも多くの「民意」が集まること。あなたの声が手紙となり届くことが何よりも大切です。

40年にわたるこの問題を終わらせるため、私たちの仲間になっていただけないでしょうか。

 

目指すは1万人の声を届けること

私たちのプロジェクトのゴールは、1万人の声をお手紙にして、一方的に進む石木ダム建設を止めることです。

その最初の一歩として、このクラウドファンディングを通して200人の声を集めます。

今後、上映会の定期開催、意見広告などを通して、この活動を広め、1万人の声を県議会議員に届けます。

 

【このプロジェクトに協力いただいた企業・団体】

・株式会社ボーダレス・ジャパン

・パタゴニア 日本支社

・石木川守り隊

・#いしきをかえよう実行委員会

 

詳しくは、https://rescuex.jp/project/12232 をお読みください。

 

 

「埼玉の川と水を考える会」の活動経過とこれからのこと

2022年8月3日
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18年間活動を続けてきた「埼玉の川と水を考える会」(旧名「八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会」)が、7月31日に解散総会を開きました。

18年間はかなり長い期間です。幹事の高齢化による健康問題も出て来て、この状況で活動の継続が困難と思われ、埼玉の会としての活動は終了することになりました。

ただし、「埼玉の川と水を考える会」のブログ https://watersaitama.blog.fc2.com/ は「ダム・河川行政・無駄な公共事業を考える」と名称変更して、これからも継続していきますので、

河川・ダム問題等の情報サイトとしてご利用いただければと思います。

河川・ダム問題等の情報サイトは、「八ッ場あしたの会」https://yamba-net.org/ もありますので、ご利用ください。

解散総会の報告は埼玉の会のブログhttps://watersaitama.blog.fc2.com/blog-entry-1971.html に掲載されています。

この総会で、「河川行政の現状と私たちが注視してゆくべきこと(「埼玉の会」の活動経過と今後)」というタイトルで、嶋津が次のテーマについて話をしました。

Ⅰ 八ツ場ダム問題への取り組み

  • 八ッ場ダムの公金支出差し止め住民訴訟
  • 八ツ場ダム問題の経過
  • 八ッ場ダムの運用開始でこれから危惧されること、
  • 八ツ場ダムは必要であったのか?

Ⅱ その他の河川・ダム問題への取り組み

  • 荒川のダム問題
  • 荒川の第二~第四調節池の問題
  • 荒川の橋梁問題
  • 荒川・江戸川のスーパー堤防問題

Ⅲ 全国の河川・ダム問題の現状

  • 中止されたダム、継続となったダム
  • 石木ダムの問題
  • 流水型川辺川ダムの問題

Ⅳ 今後の河川行政のあり方として望まれること

  • 耐越水堤防工法の推進
  • 流域治水の推進で模範となるのは滋賀県の取組み
  • 河川浚渫事業

今回の話で使用したスライドを https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2022/08/e4a69f5096732e5c5499b8210a0c91c9.pdf

にアップしました。

上記のテーマについての情報をできるだけ入れましたので、112枚もありますが、お読みいただければと思います。

茨城県常総市の水害、国に4千万円賠償命令 河川管理めぐり水戸地裁 喜びと悔しさ交錯

2022年7月23日
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7月22日、茨城県常総市の鬼怒川水害訴訟において国の責任を認める判決が水戸地裁でありました。その記事、ニュースを掲載します。

水害裁判で国に賠償を命じる判決は極めて異例で、画期的であり、弁護士の皆様の頑張りに深く感謝いたします。

一方で、上三坂の堤防決壊については国の瑕疵を認めておらず、このことについては全く合点がいかない判決です。

鬼怒川水害は若宮戸地区の溢水と上三坂地区の堤防決壊によって引き起こされました。

(「鬼怒川水害裁判で明らかになったこと」https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2022/05/00a2675c4ac76a03d218c5d7664eab66.pdf )

判決は若宮戸地区の溢水について国の責任を認めたものの、上三坂地区の堤防決壊については認めませんでした。

判決文と判決要旨は鬼怒川水害訴訟のHP  https://www.call4.jp/info.php?type=items&id=I0000053に掲載されています。

判決文 https://www.call4.jp/file/pdf/202207/8413adfe5ad05c96310473ba8ce807fd.pdf

判決要旨 https://www.call4.jp/file/pdf/202207/5241bf9999c5e4e917f54ce102874199.pdf

 

賠償額などを不服とする勝訴原告と敗訴原告の計25人が控訴する考えを示しています。

なお、この訴訟を進めていくうえで、費用がかかりますので、パタゴニアから2回助成金をいただきました。パタゴニアに御礼を申し上げます。

 

茨城・常総水害訴訟判決 喜びと悔しさ交錯 居住地、分かれた明暗 画期的勝利も控訴視野

(茨城新聞2022年7月23日(土))https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=16584874652326

賠償請求が認められ、記者会見で喜びを語る若宮戸地区住民の高橋敏明さん(左)=水戸市緑町の県立青少年会館

茨城県の常総水害訴訟で水戸地裁は22日、国の河川管理の問題を指摘し、住民側31人のうち若宮戸地区の9人に対する賠償を命じた。「画期的判決」「国は結果を受け止めよ」。住民側は、国との対決に勝利したことを喜びつつ、上三坂地区の住民の請求は退けられた。常総市の約3分の1が浸水した未曽有の災害から約7年。居住地で分かれた明暗に、住民側は「完全勝利ではない」と大半が控訴の方針を示し、高裁での「第2ラウンド」を見据えた。
「被告は、砂丘を含む区域を河川区域として指定するべきを怠っていた」。午後2時過ぎ、水戸地裁301号法廷。阿部雅彦裁判長が主文を読み上げると、傍聴席から「おっ」と驚きの声が上がった。地裁前では「勝訴」の幕を掲げ、拍手が沸き起こった。
原告共同代表の片倉一美さん(69)は「若宮戸を見れば、国に責任がないなんてことは絶対にありえなかった」と国を非難した。昨年8月に阿部裁判長ら裁判官3人が被災地を直接視察したことを振り返り、「裁判所は被害のひどさを熱心に聞いてくれた。だからこの判決につながった」と、提訴から約4年にわたった戦いの達成感をかみしめた。
只野靖弁護士は「原告が力を合わせてきたから認められた」と、住民の結束を強調。「国は緊張感を持って河川管理に当たってもらいたい」と注文を付けた。
一方で、上三坂の地区住民の請求は棄却された。判決が読み上げられる間、傍聴席からは「ええー」と落胆の声も漏れていた。
若宮戸地区に住む原告共同代表の高橋敏明さん(68)は、「主張した通りの結果が得られた」と喜びを示しつつ、「若宮戸を襲った水は、上三坂と水海道も襲った」と、複雑な表情を浮かべた。請求が認められなかった住民に対しても「救済を」と求めた。
片倉さんも自らの請求は退けられた。「被害を見れば、上三坂も絶対におかしいと思うべき所」と、控訴する方針を示した。
国側は閉廷後、国土交通省関東地方整備局長のコメントをホームページに掲載。「国の主張が認められなかったものと認識している」と記した。控訴については言及しなかった。

■「意義大きい」住民安堵
住民側勝訴の判決を受け、越水が起きた常総市若宮戸地区の住民からは安堵(あんど)の声が漏れた。
「当時のことは鮮明に覚えている。恐怖の一言だった」。同地区の女性は7年前を振り返る。同市が鬼怒川と小貝川に挟まれた地域であることを踏まえ、「国は安全管理をきちんと進めるべきだった。裁判所が認めてくれた意義は大きい。よかった」と安心した様子だった。
一方、堤防が決壊した同市上三坂地区について、判決は改修計画が「格別不合理ではない」と判断した。同地区に住む60代男性は「近年の豪雨は昔とは比べものにならない。(国や自治体の)防災計画は進んでいると思うが、追い付かないのが現状ではないか」と危惧した。
鬼怒川の氾濫などを踏まえた国の治水対策「鬼怒川緊急対策プロジェクト」は昨年5月末に完了した。上三坂地区内では堤防を1・4メートルかさ上げしたのに加え、幅も6メートルに広げた。国土交通省は、関東・東北豪雨で記録した24時間雨量551ミリにも「耐えられる」としている。
■常総・神達市長 地域防災力を強化
常総市の神達岳志市長は、関東・東北豪雨による水害から今年で7年を迎えるのを踏まえ「被害に遭われた市民の方々の思いをしっかりと受け止め、市と地域全体が一体となって地域防災力の強化を図る。今後も防災先進都市にふさわしいまちづくりを進めていきたい」とコメントを出した。
■筑波大の星野豊准教授(法律学)の話 計画、適切に実施せず
本判決で国の責任が認められたのは、自然堤防となる砂丘付近の土地を河川区域に指定しなかったためであり、計画に問題があったというよりもむしろ、計画を適切に実施しなかった点にあると言える。従って、従来の判例の基準を変更するものではなく、管理者である国の裁量をより合理的に行使することを求めている。それらの裁量には本件で問題となった河川区域の指定のほか、地方自治体と協力して住民への警告、避難経路や被災後の安全確保を行うことなども含むと考えられる。
★常総水害
2015年9月、台風18号や前線の影響で関東と東北の広域が豪雨に見舞われた。鬼怒川が増水し、常総市では10日午前6時ごろに若宮戸地区であふれ(溢水=いっすい)、同日午後0時50分には上三坂地区で堤防が決壊した。同市全域の約3分の1に当たる40平方キロが浸水。5千棟以上が全半壊した。避難指示対象は3万1千人。死者2人のほか、13人が関連死と認定されている。重症5人、中等症21人、軽症20人。

 

 茨城・常総水害 国の責任認める「河川管理に不備」 水戸地裁判決、賠償命令 住民9人に3900万円

(茨城新聞2022年7月23日(土))https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=16584874652256

常総水害訴訟の判決を受け「勝訴」と掲げる原告団=22日午後2時57分ごろ、水戸地裁

2015年9月の関東・東北豪雨で鬼怒川の堤防決壊などによる浸水被害が起きたのは国の河川管理の不備が原因だとして、茨城県常総市の住民ら約30人が国に約3億5千万円の損害賠償を求めた訴訟で、水戸地裁は22日、「若宮戸地区で河川区域指定を怠った」として国の責任を認め、同地区の住民9人に計約3900万円の賠償を命じた。水害を巡る裁判で国に賠償を命じる判決は極めて異例。
常総市では当時、鬼怒川沿いの上三坂地区で堤防が決壊し、若宮戸地区など7カ所で水があふれるなどして、市の総面積の約3分の1に当たる約40平方キロが浸水、5千棟以上が全半壊した。判決を受け、原告の上三坂地区の住民ら25人が控訴する方針。
裁判は、国の河川管理や改修計画の進め方の合理性が争点となった。原告側は若宮戸地区で砂丘が自然の堤防になっていたが、国が河川区域に指定しなかったため、太陽光発電事業者による掘削で堤防としての機能が失われたと主張。さらに上三坂地区で決壊した堤防は高さが不十分だったのに、国が改修を急がなかったためと訴えた。一方、国側は計画的かつ段階的に進めたと主張した。
阿部雅彦裁判長は判決理由で、若宮戸地区の砂丘について「堤防の役割を果たしていた。治水上極めて重要」と指摘。砂丘が掘削されれば、災害の発生が具体的に予見できたとして、「国は開発許可が必要な河川区域に指定すべきだったのに怠り、掘削によって危害を及ぼす危険性を生じさせた」とした。その上で、水があふれ、住民に損害が生じたと結論付けた。
一方、上三坂地区については「国は流域の状況を考慮し、できる場所から改修していた」と指摘。治水安全度の評価方法についても一定の合理性を認め、「安全性を欠いていたとはいえない」として、訴えを退けた。
閉廷後、住民側は水戸市内で記者会見し、只野靖弁護士は「ほんの一部かもしれないが、人災と認められたことは裁判所の優れた判断。若宮戸について真正面から(国の管理が)駄目だと言ってくれたことは意義がある」と話した。
国土交通省関東地方整備局は「判決内容を慎重に検討し、適切に対処する」とのコメントを出した。
住民側は18年8月、水戸地裁下妻支部に提訴。19年2月、受理した事件の担当裁判所を移す「回付」があり、同地裁本庁で弁論が開かれていた。
■常総水害訴訟を巡る経過
・2015年9月 関東・東北豪雨で鬼怒川堤防が決壊するなど、常総市を中心に大規模な浸水被害
・ 18年8月 国の河川管理に不備があったとして被災住民らが損害賠償を求め水戸地裁下妻支部に提訴
・ 19年2月 水戸地裁下妻支部が訴訟を水戸地裁本庁に回付
・ 21年8月 裁判官3人が決壊現場周辺を視察
・ 22年2月 訴訟が結審
・ 7月22日 水戸地裁判決、請求を一部認める

  

鬼怒川水害、国に賠償命令 河川管理不備と水戸地裁

(日本経済新聞2022年7月22日 22:04) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF225BW0S2A720C2000000/

判決後、水戸地裁前で「勝訴」と書かれた紙を掲げる原告ら(22日、水戸市)=共同

2015年9月の関東・東北豪雨で、鬼怒川の氾濫などによる浸水被害が起きたのは河川管理の不備が原因だとして、茨城県常総市の被災住民ら約30人が国に約3億5千万円の賠償を求めた訴訟の判決で、水戸地裁は22日、「一部で河川区域指定を怠った」として国の責任を認め、このうち9人への計約3900万円の賠償を命じた。

水害を巡る訴訟で国に賠償を命じる判決は異例。常総市では当時、鬼怒川沿いの上三坂地区で堤防が決壊、若宮戸地区など7カ所で水があふれた。原告の一部は控訴する方針。

原告側はこのうち若宮戸地区で、砂丘が自然の堤防になっていたのに、河川区域に国が指定しなかったため、太陽光発電事業者による掘削で堤防としての機能が失われたと主張。さらに上三坂地区で決壊した堤防は、高さが不十分だったのに国が改修を急がなかったと訴えていた。

阿部雅彦裁判長は判決理由で、若宮戸地区の砂丘が「上流と下流の堤防と接しており、堤防の役割を果たしていた。治水上極めて重要」と指摘した。

砂丘が掘削されれば災害が発生することが具体的に予見できたとして「砂丘を維持するため、開発に管理者の許可が必要な河川区域に指定する義務があったのに国が怠り、掘削によって危険な状態になった」と述べた。その上で、水があふれたことで損害が生じたと結論付けた。

一方、上三坂地区については「国は流域の状況を考慮し、できる場所から改修を進めていた」と指摘。国が用いた治水安全度の評価方法も一定の合理性があるとし「上三坂地区の堤防も国の改修計画に含まれており、改修がされていないからといって安全性を欠いていたとは言えない」として訴えを退けた。〔共同〕

 

「歴史的判決」目を赤くした住民 鬼怒川氾濫、国の管理不備認定

(毎日新聞 2022/7/22 21:34)   https://mainichi.jp/articles/20220722/k00/00m/040/353000c

国の河川管理の瑕疵を認めた判決に喜ぶ原告団=水戸市大町1の水戸地裁前で2022年7月22日午後2時55分、森永亨撮影

2015年9月の関東・東北豪雨で浸水被害を受けた茨城県常総市の住民ら31人と1法人が、鬼怒川が氾濫したのは国の河川管理に不備があったためだとして、国に総額約3億5870万円の損害賠償を求めた訴訟で、水戸地裁は22日、国の責任を一部認め、9人に計約3927万円を支払うよう命じた。

「歴史的な判決だ」――。2015年9月の関東・東北豪雨での鬼怒川氾濫を巡り、茨城県常総市の住民らが国に損害賠償を求めた訴訟。河川管理の不備を認めた22日の水戸地裁判決に、地裁前では原告や支持者らの拍手が鳴り響いた。

「確信していた国の責任が認められた」。集まった報道陣などの前に掲げられた「勝訴」と書いた紙の脇で、原告で同市若宮戸地区に住む園芸農家、高橋敏明さん(68)は目を赤くしていた。

水害で自宅は床上浸水し半壊した。家財道具は使い物にならなくなり、怒りを支えに提訴から4年間、訴訟を戦い続けてきた。21年夏には、訴訟を担当する阿部雅彦裁判長らが被災地を視察。22日は、判決言い渡しに耳を傾けながら当時を思い出し、判決後に「『現地を見て分かってくれたんだ』と、胸がいっぱいになった」と振り返った。

水害訴訟は、大阪府大東市の浸水被害を巡る「大東水害訴訟」の最高裁判決(1984年)を契機に大きな曲がり角を迎えた。同判決では行政の責任を限定的に解釈し、これが行政の瑕疵(かし)の基準となり、被災した住民側に不利な司法判断が続く流れとなっていた。

そうした中で出された今回の判決は、国の河川管理の不備を明確に認めた。弁護団の只野靖弁護士は「他の水害においても、それぞれの河川管理のまずさを指摘できる可能性がある。この判決は全国(の水害被災者)に勇気を与える」と述べた。

25人が控訴の意向

しかし敗訴部分もあり、主張を一部認められた原告も含め、既に25人が控訴の意向を示しているという。

「苦しみながら亡くなった女房のことを考えると、これで終わりにはできない」。主張が認められなかった常総市水海道地区の赤羽武義さん(82)も控訴する意向だ。水害から5カ月後に死亡した妻芳子さん(当時75歳)が災害関連死に認定された。「妻が水害で亡くなったことに対する国の責任を認めてほしい。このままでは女房に申し訳ない」と、訴訟続行に向けた決意を口にした。【宮崎隆、森永亨、宮田哲、長屋美乃里】

 

鬼怒川豪雨水害 国に賠償命令 河川管理で住民訴え 水戸地裁

(NHK茨城 2022年07月22日 17時32分)https://www3.nhk.or.jp/lnews/mito/20220722/1070017827.html

(4分近くの映像)

7年前の2015年、「関東・東北豪雨」で鬼怒川が氾濫し大規模な浸水被害が出た茨城県常総市の住民などが国を訴えた裁判で、水戸地方裁判所は、国の河川管理に問題があったと認め、原告の一部に賠償するよう命じる判決を言い渡しました。
水害に関する裁判で国の河川管理の責任が認められるのは異例です。

2015年9月の「関東・東北豪雨」では、茨城県常総市で鬼怒川の堤防が決壊するなどして、茨城県内で3人が死亡し、13人が災害関連死に認定されたほか、住宅およそ1万棟が水につかりました。
住宅が浸水する被害を受けた常総市の住民など31人は、決壊や越水した2か所について「国の河川管理が不適切だった」などとして、国に対して3億5800万円余りの賠償を求めていました。
これに対し、国は「上流と下流のバランスを総合的に考えながら計画的、段階的に整備を進めていた。河川管理に問題があったとは言えない」などとして、訴えを退けるよう求めていました。
22日の判決で、水戸地方裁判所の阿部雅彦裁判長は、2か所のうち越水した若宮戸地区について国の河川管理に問題があったと認め、原告のうち9人にあわせて3900万円余りを賠償するよう命じました。
若宮戸地区では川沿いの砂丘が業者の開発にともなって掘削されていましたが、判決では、砂丘が堤防の役割を果たしていたと認めたうえで「国は安全上重要な砂丘が掘削されないよう河川区域に指定する義務があったがそれを怠った」と指摘しました。
一方で、決壊した堤防の整備計画が適切だったかが争われた上三坂地区については「国の計画が格別不合理だったとまではいえない」として訴えを退けました。
水害に関する裁判で国の河川管理の責任が認められるのは異例です。

関東・東北豪雨では2015年9月10日、発達した積乱雲が帯状に連なる「線状降水帯」が関東や東北にかかり、上流で記録的な豪雨となった鬼怒川が氾濫。
茨城県常総市では堤防が決壊するなどして被害が出ました。
逃げ遅れて救助された人は4000人を超え、茨城県内で3人が死亡、13人が災害関連死に認定されています。
被害が集中した常総市はおよそ3分の1が水没。
住宅地で1週間以上浸水が続くなど、生活への影響も大きなものとなりました。
被害から3年後、被災した住民たちは「鬼怒川の堤防が低く被害が出るおそれがあると知りながら、国は適切な対策をとらなかった」などとして3億円余りの損害賠償を求める訴えを起こしました。
国は、原告の主張はいずれも認められないとして全面的に争います。
新型コロナの感染拡大を受け、公開の弁論が開かれない時期もありましたが、去年8月には裁判官と原告側、それに被告の国側の3者で氾濫現場の視察が行われました。
裁判はことし2月に結審。
原告側が「国の堤防整備は、安全性が不足している場所を優先しないなど、進め方が不合理だった」と訴えたのに対し、国は「上流と下流のバランスを総合的に考えながら計画的、段階的に堤防の整備を進めていた」などと反論し、国の整備計画の合理性が争われました。

今回の訴訟で主な争点となったのは、茨城県常総市の主に2つの地区について、鬼怒川の堤防の整備計画などが適切だったかどうかです。
<上三坂地区>
決壊が起きた上三坂地区について原告側は、国が地盤沈下で堤防の高さが低くなっていたのを知りながら、堤防の整備をほかの地域よりも優先するなどの対策をとらなかったのは不合理だと主張していました。
これに対し国は、用地の調査など堤防の整備に向けて調査を進めていたほか、上流と下流のバランスを総合的に考えながら計画的、段階的に整備を進めていたと反論していました。
<若宮戸地区>
越水が起きた若宮戸地区については、この地区で行われた砂丘林の掘削作業について、国の責任などが争われました。
原告側は、業者が太陽光パネルを設置するために堤防の代わりになっていた砂丘林が削られたと主張。
そのうえで、国が砂丘林を河川区域に指定し業者による掘削などを自由にできない区間にするべきだったと訴えました。
これに対し、国は、砂丘林を河川区域に指定していないからといって整備計画が不合理であるとはいえず、堤防を造る計画を立てたうえで作業を進めていたなどと反論していました。

原告側が判決後に開いた会見で、弁護団の只野靖弁護士は「当初から人災と言われていたが一部でも認められたことは、裁判所によるすぐれた判断だと受け止めている。原告が力を合わせてきたから認められたと考えている」と話しました。
原告団の共同代表を務める片倉一美さんは「毎年のように水害が発生する時代にあって画期的な判決が出た。国土交通省は判決を真摯に受け止めて、河川管理においては、水害の危険性があるところから改修を進めてもらいたい」と話しました。
判決を受けて、原告のうち、これまでに、多くが控訴する意向を示しているということで、只野弁護士は「国に緊張感をもって河川管理にあたってもらいたいというのが原告の思いだ。控訴して国の責任を問い続けたい」と話しました。
原告の1人で、妻の芳子さんが「災害関連死」で死亡した赤羽武義さんは(82)は、訴えが認められず、「わたしにとってはとても残念な判決です。裁判所や国には妻の死の重みを受け止めてほしかったです」と話していました。

関東地方整備局の廣瀬昌由局長は「判決についてまだ詳細な内容を確認できていないが、国の主張が認められなかったものと認識している。今後、判決内容を慎重に検討し関係機関と協議のうえ、適切に対処したい」とコメントしています。
決壊現場に近く浸水の被害があった、茨城県常総市の石下地区に住む66歳の男性は「国の河川管理に問題があったと認める判決が出たことはよかったと思う。これを契機に、今後、水害対策が加速していってほしい」と話していました。
また、美容院を営む71歳の女性は「一部ではあるが、住民の訴えが認められたという結果にはほっとした。国には二度と同じような水害が起きないようにしてほしい」と話していました。

 

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