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ウナギに関して危惧するいくつかのこと(山本喜浩(東京鮎毛バリ釣り研究会会員))

2018年3月16日
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シラスウナギの歴史的不漁が深刻な問題になっています。ウナギやアユ等の生態について造詣の深い山本喜浩さんから論考「ウナギに関して危惧するいくつかのこと」をご寄稿いただきましたので、掲載します。ニホンウナギ、ヨーロッパウナギ、アメリカウナギも含めてウナギに関して一般に知られていない重要な事実が書かれていますので、是非、お読みください。

ウナギに関して危惧するいくつかのこと

             山本喜浩(東京鮎毛バリ釣り研究会会員)

~生態系の端っこにぶらさがっていました~
ウナギが不漁とメディアが騒いでいます。今頃になって乱獲のツケが回っただの、河川環境の悪化だの、鬼の首を捕ったがごときのもの云いです。ぼくは永いことアユとウナギにお付き合いを願ってきましたので、なにをいまさらと腹立たしいのは、みなさまと同じです。

 お付き合いとは、アユは子供の頃からの遊び仲間でした。お隣のお兄ちゃんと千曲川(長野県下、上山田温泉地の下流)でのアユのドブ釣り(毛鉤釣り)に夕暮れ時に出かけます。
ぼくが6歳、魚籠(びく)持ちです。お兄ちゃんに遅れまいと早足で7月の暮れなずむ土手道を付いていきます。当時も今もアユは漁協のお宝で、入漁券収入の招きネコです。その頃は日釣り券(入漁料の一日券)などなく年券でした。今のお金で3千円はしたでしょうか。
お兄ちゃんはこの3千円をけちって密漁です。近所のお兄ちゃんの3m下流に釣り座を構えます。人気のスポットに釣り人がずらりと並び、懐中電灯の明かりがちらほら灯りはじめ、すっかり闇が川面を包む頃がアユの入れ食いタイム。漁協の監視員にとっても入れ食いタイムです。年券を持っていない釣り人にはプラス千円のペナルティがついて4千円。この千円が監視員の懐にはいりますから、見回りにいやでも力が入ります。
カンテラ下げた監視員のお爺さんは上流からやってきます。「鑑札、見せてもらいます」と背中から釣り人に声を掛けます。釣り人は鑑札(年券)をちらりと見せます。ちらりです。入れ食いで忙しいからです。
近所のお兄ちゃんにも「鑑札を・・」の声が掛かります。近所のお兄ちゃんはチラリと鑑札を見せてから、背中の監視員を振り返り、「どうだい、上のほうではデッカイのが釣れているかい?」と声をかけ、監視員が指さされた上流に視線を移した瞬間に鑑札を水面に落とします。心臓が破裂しそうにドキドキしているぼくの目の前を木札の鑑札が流れ、ぼくのお兄ちゃんのサッと木札を拾う手が視界を横切りました。

 そうだった、あの頃はまだ、生態系の端っこにお兄ちゃんもぼくもぶら下がっていた・・いたのだなと、今になって思います。
ヒトが地球上の生態系の頂点から転がり落ちるというか、はじき出され、またはみずから飛び出して、妙な動物に変わってしまったのは19世紀末から20世紀初頭にかけてでしょうか。近代化の波は循環型の社会から大量生産、大量消費社会へと移行。
自然の中にごく普通に存在していたヒトは生態系の外へはみ出し、「自然を守ろう」などと妙なことを言い始めます。自然がヒトの外側に立ち現れたからです。

 木札のおかげで、3千円分のアユを密漁したお兄ちゃんとぼくの千曲川には、天然アユが黒い帯となって上ってきました。当然のことながら放流アユなどという奇妙なアユはいませんでした。サケやマスも上ってきました。サケやマスを遮る堰もすくなく、まだ手付かずの生態系が残っていたのです。
アユを釣りあげるという行為が辛うじて生態系の端っこにぶら下がっているかごときの錯覚を覚えさせます。釣り人が川に立ち込み陶然とするのはこの生態系に立ち返えったかのような疑似体験の幻覚です。
明治の文豪にして釣り人の幸田露伴がこのことを軽妙な筆致で描いています。
メルビルが1851年に書き下ろした「白鯨」のエイハブ船長は、地球上の生態系のど真ん中で巨大な自然の象徴と死闘を演じていました。
そしてヘミングウエーの老人は、すでに海の生態系に戻れなくなった20世紀漁師のシンボルでしょう。

~ウナギ 旅路のはてについて~
さてウナギです。ウナギとの本格的な付き合いは15年前、仕事で2年間ほどウナギを追いかけることになりました。アユのような牧歌的な話ではありません。ウナギの密漁組織の一端を明るみに出そうというテレビのドキュメンタリー番組の目論みでした。
その話のまえに、ちょっと現在のシラスウナギの不漁の謎解きに挑みましょう・・しょうと云ってもぼくはウナギの研究者ではありませんから、正直、見当はずれな推論の展開とあいなるやもしれません。
でも、好意的にお読みください。これは証拠データがないために、研究者が喉まで声がせりあがってきた思いを、ぼくが代弁していると思ってください。

 ウナギ(ニホンウナギ)の産卵場所はみさまご存知の通り、マリアナ諸島の西方、マリアナ海嶺(海底山脈)の上。北緯14度、東経142度の辺りです。
産卵は新月の2~3日前。水深は150~200m。闇夜に細い三日月がかすかに霞みます。なぜ新月なのか? 生まれた赤ちゃんが他魚に捕食されないように闇夜を選ぶのだろうと想像されています。また、ほぼ1億年前に深海魚から進化したウナギですから、光の差し込まない闇夜を選ぶのだろうとも推論されています。
出自が深海魚です。産卵のために利根川の河口を旅立ったウナギは昼間1000mもの深海に潜り、夜は100mまで浮かび黒潮に流されて、一端は黒潮の消滅点までくだります。そこからユーターンして2700㌔超の道のりをクネクネとマリアナ海域を目指します。なんでそんな遠方までわざわざ産卵に行くのよ、と声を掛けたくなりますが、とにかく、産卵場所だけは出自の思いでから抜けだせない ようです。いずれ進化してもっとラクチンな産卵場に移動するのかもしれません。
さて北緯14度、東経142度、新月の2~3日前、水深150~200mでしたね。実は、

 産卵場所にはもう一つ条件があります。塩分濃度の低い海域と塩分濃度の高い海域との東西にのびる境目、塩分フロント【注1】と呼ばれる場所が必要です。そのフロントの塩分濃度の低い海域(南側の赤道より)で産卵します。なぜウナギが塩分フロント近辺を選んで産卵するのか? 分かりません。分かりませんとは研究者にも分からないという意味です。
この塩分フロントはいつも北緯14度の同じ海域にできるわけではありません。エルニーニョが発生するとフロントが南に移動【注2】しやすいことが分かっていますが、エルニーニョに関係なく塩分フロントは移動します。この塩分フロントの移動にともなって産卵場所も移動するということが、大変に重要です。
ここまで書くと、ぼくが言いたいことがほぼ察しがついたことでしょう。そうです。産卵場所が北緯14度より南にずれると大変なことになります。
海流は風によって起きる風成循環(表層流)と塩分濃度の違いで起きる熱塩循環(深層海流)がありますが、卵から孵化したアユの仔魚は北東貿易風によって起きる北赤道海流に乗って西に流れます。
西に流れた北赤道海流は黒潮に飲み込まれ、昼は300m夜間100mほどの水面下を流れ極東に向かいます。そうです。これもまたみなさま御存じの通り、黒潮に飲まれない南側は反時計回りに反流して、ミンダナオ海流にと分かれます。

ニホンウナギの産卵場所が、もし南に1度(110㌔)ずれて北緯13度、東経142度であったならば、仔魚はミンダナオ海流に向かい、死滅回流を旅することになってしまいます。

(*上図の産卵場所の赤●が南にずれると死滅回流に。図は東京大学・大気海洋研究所より)

・・なってしまいます。と書きましたが、ぼくは死滅海流に向かってしまったのだ! と思います。 今回のシラスウナギ大不漁は、他の要因では説明が難しくなるからです。
過去の不漁で何度か海流原因説が囁かれました。5年前の2013年もシラスウナギが不漁。この年はエルニーニョが発生、これが原因だろうと言われていました。
2017年はどうでしょう。エルニーニョは発生していません。ラニーニャの年でした。しかし、何らかの海洋変異の影響で塩分フロントが南に大きく移動、大半の仔魚が死滅回流に向かってしまったのではないでしょうか。
ウナギの絶対量が多くて産卵場所も広く、産卵期も長く続いた時には、塩分フロント移動の影響で大不漁ということはあまり起きなかったはずです。絶対数の減少はちょっとした海洋変異で絶滅危惧にみまわれます。
もしも産卵期が遅れていただけで、これから続々とシラスウナギが接岸してくれるなら、こんな推論はただの杞憂だったと、笑い話で終わります。そうなってほしいものですが・・

【注1】 塩分フロント: 北太平洋の中緯度域は表面水温が高いため、海水の蒸発が盛んで塩分濃度が高くなります。蒸発した水分は積乱雲を形成、その積乱雲が低緯度域に流れて降雨となり、低緯度域の塩分濃度を低くします。濃度の境目「塩分フロント」の位置は北緯11~16度付近を変動しています。

【注2】南に移動する:エルニーニョが発生すると降雨の源となる積乱雲が東へ
と移動するために塩分フロントは南側に移動します。

~不漁がまきおこす不都合なこと~
原因がなんであれ、シラスウナギの不漁は密漁に拍車をかけます。4年前にドンブリ一杯100万円だったものが今年は300万円以上するのではないでしょうか。世界中のシラスウナギの値段は日本の価格に連動して高騰します。
そうです。世界中の零細漁民が密漁に走ります。
新聞各紙はこの夏の土用の丑の日は大丈夫だが、来年(2019年)の夏はウナギが食べられないかもしれないと報じていますが、そんなことはありません。来年も再来年も夏になるとスーパーや牛丼店にウナギがニョロ~っと登場します。怖しいことですが、世界中の密漁ウナギが日本に集められるからです。

(原図は米のウナギ研究者Willem Kepper氏作成のグラフより)

上の図を見て、1980年頃からヨーロッパとアメリカの河川環境が日本と同様に悪化したと思いますか? 違いますよね。 日本に輸出、また密輸するためにウナギが乱獲された結果です。1980年代日本人は多い時には世界の80%のウナギを食べ、現在まで世界のほぼ70%のウナギを食べ続けてきたと言われています。
その結果2009年にヨーロッパウナギは絶滅危惧種に。2014年に日本ウナギが絶滅危惧種に国際自然保護連合(IUCN)から指定されました。
この図にはアジアの熱帯ウナギの資源量がグラフ化されていません。なぜでしょう? 答えは簡単明瞭、なんのデータもないからです。

 15年前(2003年)に、追いかけたのはウナギの密漁シンジケートでした。 密漁と書くと、決まってソニー・ロリンズの大ヒット曲「Airegin」【注3】の出だしのメロディーが耳奥を駆けあがります。
最初に白状しておきます。密漁組織の実像をカメラの前で喋ってくれる人間を捕まえられずに、ただのウナギ漁の番組を2本作って終わりました。しかしその取材で分かったことは、アジアのウナギシンジケートの拠点は香港にあり、主にヨーロッパとアジアの密漁シラスウナギを香港に集め、多くは中国大陸に送られ中国で蓄養されていました。残りは日本に流れてきたようです。
この時、シンジケートを牛耳っていたのはナイジェリア・マフィア【注4】でした。ナイジェリア人は日本、台湾、中国に配下を置き、配下のナイジェリア人はその国の女性を妻にして国籍を取得。きちんとした商社を設け。立派なビジネスマンの顔を持っています。
日本在住のナイジェリア人に関しては、2008年に出版された岩波新書「アフリカレポート壊れる国、生きる人々」【注6】にきちんと描かれています。
2003年頃、実はウナギよりもアワビ、ツバメの巣、ナマコの密漁が中心でした。これらはすべて中国人の胃袋に流れ込んでいました。

【注3】「Airegin」: ソニー・ロリンズの祖祖父がナイジェリア出身だったことから、曲想がうまれた曲です。Aireginを逆から読んでください。Nigeriaになります。曲の出だしがいきなりサビから始まるようなモダンジャズの名曲。聴けばみなさんご存知のはずです。

【注4】ナイジェリア・マフィア: 第2次大戦終結に伴い、インドやビルマから帰還した兵士が大麻の種子を持ち帰り、大麻栽培が盛んになります。その後、ナイジェリアは中南米からのコカイン、ヘロインをヨーロッパとアメリカへ密輸する国際的な麻薬取引の中継地の役割を担い。ナイジェリア・アマフィアが誕生しました。現在、香港を牛耳っているかどうかは不明です。しかし、これだけ世界のウナギ資源が枯渇すると世界のウナギ密漁シンジケートはすべて繋がっていることでしょう。

【注5】松本仁一著、「アフリカレポート壊れる国、生きる人々」岩波新書:にはウナギの密漁は書かれていません。確か南アフリカからのアワビの密輸ルートなどを暴いていたと思います。それと日本人と結婚して家庭を持ち、シンジケートを支える独特のナイジェリア人マフィア社会を活写しています。

 2003年当時、日本に入ってきたウナギはニホンウナギ(台湾や中国産)、ヨーロッパウナギ、アメリカウナギ、そしてアジアの熱帯ウナギの4種でした。
この中でもっとも多かったのはヨーロッパウナギです。スーパーの棚にパック詰めされたウナギのかば焼きが大量に出回り始めた時代でもあります。
1990年代に日本人が食べていたウナギの半分はヨーロッパウナギでした。2009年にワシントン条約付属書Ⅱに指定されましたが、それでも日本にヨーロッパウナギは入ってきます。ワシントン条約付属書Ⅱはパンダやゴリラほど厳格な輸出入規制を受けません。管理当局の許可書があれば輸出が認められます。偽造された許可書が添えられて密漁ウナギが流れこみ続けたのです。
2010年、EU加盟12ヶ国はウナギの輸出を全面禁止しました。それでもEU非加盟国を経由した密漁ウナギが香港経由で入り続けています。
現在、ヨーロッパウナギは1980年時の資源量のたった5%ほどまで激減しました。ほぼ95%を私たちが食べてしまったのです。
アメリカウナギがヨーロッパウナギの衰退を補うごとく入ってきます。アメリカ人はウナギを食べません。ウナギに無関心【注5】。しかしシラスウナギが沿岸の白いダイヤだと知って、もっぱら日本人の胃袋の愉悦のために乱獲され続けています。
現在日本産のシラスウナギの6割は密漁されたもので、日本に輸入されていシラスウナギのほぼ7割が密漁ウナギであると、中央大学法学部ウナギ保全研究ユニット・Kaifu Lab【注6】に記載されています。
とにかく、わたしたちはモンスター級のイールイーターなのです。

【注5】ウナギに無関心: 多くの州でウナギの輸出規制をしているが、密漁の取締にもあまり関心がない。アメリカウナギに関しては米のジャーナリスト・ジェイムス・ブロッセック著「ウナギと人間」(2016年築地書館)にアメリカのウナギ漁師が詳しくルポルタージュされています。

【注6】Kaihu Lab: ウナギの密漁に関して2015年現在の状態が記載されています。http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~kaifu/5igr.html

~危惧されるウナギとわたしたちのかかわり~
先の折れ線グラフにアジアの熱帯ウナギ【注7】の資源量が入っていませんでした。なんのデータもないからです。しかし現在アジアの熱帯ウナギがヨーロッパ、アメリカ,ニホンウナギの凋落とともに、その代替えウナギとして特にビガーラウナギ【注8】が注目され、渉猟され、乱獲されています。
乱獲のターゲットにされている国は主にフィリピンとインドネシア。その漁場は2万を超える大小の島々です。
インドネシアは150グラム以下のウナギ稚魚の輸出を禁止しています。いますが、1万3千を超える島々の密漁・密輸を捕捉するのは不可能です。今後アジアのあらゆる国のウナギが乱獲されていくでしょう。焼畑農業的な捕りつくしが危惧されます。

東南アジアの島々の零細漁民は持続可能な生態系のなかで漁をして暮らしています。密漁に走ることによって彼らは大量消費社会に巻き込まれます。地域の資源を食いつぶす行為は生態系からいやでもはみ出し、その労働は地域社会から疎外される孤独な行為になりはてるでしょう。
零細であることは貧しいことではありません。持続可能な漁を営むことは多様な自然との交流がある豊かな生活の営みです。

私たちが利根川水系のウナギの保全、増殖に傾注することはアジアのウナギを守り、アジアの零細漁民と連帯することに繋がります。日本のウナギ資源の枯渇がアジアのウナギ資源の収奪になってははかないことです。

【注7】熱帯ウナギ: ビガーラウナギ、ボルネオウナギ、セレベスウナギなど10種類ものウナギがいます。食品加工されたらニホンウナギと区別できません。いずれも産卵場所は不明。海洋開発研究機構が調査船を出して産卵場所を探していますが、これはウナギを食い尽くす日本人のエクスキューズ調査と言われても仕方がないでしょう。

【注8】ビガーラウナギ:グリンピース・ジャパンがインドネシアのビーガラ種の捕りたい放題の乱獲を告白。また、日本の大手商社と大手スーパーがインドネシアに養殖加工場を設け、インドネシア中のビーガラ種を集めていることを危惧しています。 グリンピース・ジャパンのHP「代替えウナギも赤信号・インドネシアからの報告」に詳細リポートが記載されています。http://www.greenpeace.org/japan/ja/campaign/ocean/seafood/SaveUnagi/report3/#report

2018・3・4記

荒川中流部に巨大な第二・第三調節池を造る事業

2018年3月15日
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3月5日、国土交通省の社会資本整備審議会・河川分科会・事業評価小委員会が開かれました。

主たる議題は埼玉と東京を流れる荒川の中流部に荒川第二・第三調節池を造る事業の新規事業採択評価でした。

この委員会の配布資料が国土交通省のHPに掲載されました。
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/r-jigyouhyouka/dai10kai/index.html

資料2 荒川直轄河川改修事業(荒川第二・三調節池) 新規事業採択時評価 説明資料
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/r-jigyouhyouka/dai10kai/pdf/2-1.shiryou.pdf

2016年3月策定の荒川水系河川整備計画に荒川第二・第三・第四調節池を造る計画が盛り込まれました。彩湖がある既設の第一調節池の上流に治水専用の調節池を三つも造ろうというものです。

今回の新規事業採択評価はこのうちの荒川第二・第三調節池に関するものでした。
13年間かけて荒川中流部の非常に広い河川敷に長い堤防を築き、池内の掘削を行って洪水調節池をつくろうというものです。総事業費は約1,670億円となっています。

荒川上流では新規のダム事業が中止されており、それに代わる大型河川事業としてこの荒川調節池の事業が具体化してきたと考えられます。

しかし、荒川第二・三調節池はこのような巨額の公費を投じるだけの意味がある事業なのでしょうか。荒川には他に優先すべき治水対策があります。

荒川で最も心配されているのは、下流部の鉄道や道路の橋梁付近の堤防が周辺よりぐっと低くなっていて、大洪水時にはそこから市街地に荒川の洪水があふれてくることです。
荒川下流部は高い堤防が整備されていますが、過去に地盤沈下が進行しました。堤防は沈下に対応する嵩上げ工事が行われてきましたが、鉄道や道路の橋梁部分は別です。橋梁部分の堤防を嵩上げするためには、橋梁とともにそれにつながる鉄道や道路も高くする必要があり、巨額の費用がかかるので、後回しにされてきました。必要性が定かではない荒川第二・第三調節池の事業よりも、これらの橋梁の架け替え工事を急ぐべきではないでしょうか。

3月6日の国土交通省・水資源開発分科会 役割が終わったフルプランの延命策

2018年3月15日
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3月6日、国土交通省で国土審議会第18回水資源開発分科会が開かれました。その配布資料が国土交通省のHPに掲載されました。

第18回 水資源開発分科会 配付資料  www.mlit.go.jp/policy/shingikai/water02_sg_000078.html

00_議事次第・配付資料一覧
01_(資料1)分科会委員名簿
02_(資料2)変更の進め方について
03-1_(資料3-1)次期水資源開発基本計画策定に当たっての検討事項(一覧表)
03-2_(資料3-2)次期水資源開発基本計画策定に当たっての検討事項(説明用資料)
04-1_(資料4-1)水資源開発基本計画の一部変更(案)(新旧対照表)
04-2_(資料4-2)一部変更について

この水資源開発分科会は水資源開発基本計画(フルプラン)の延命策を審議するものでした。

フルプランは利根川・荒川・豊川・木曽川・淀川・吉野川・筑後川の7水系について水需給計画をつくり、ダム等の水源開発事業が利水面で必要であることを示すものです。利水面でのダム等水源開発事業の上位計画になります。

しかし、水需要が減少の一途をたどり、水余りが一層進行していく時代において水需給計画で新規のダム等水源開発事業を位置づけることが困難になってきました。

これらの指定水系では、八ッ場ダム、思川開発、霞ケ浦導水事業、設楽ダム、川上ダム、天ヶ瀬ダム再開発、小石原川ダムといった事業が進められ、木曽川水系連絡導水路が計画されています。

国土交通省、水資源機構はこれらの事業を何としても推進するため、「リスク管理型の水の安定供給」が必要であるなどの新たな理由をつけて、これらの事業をフルプランに位置付けることを考えました

今回の水資源開発分科会はこのフルプランの延命策を審議するものでした。

例えば、資料のうち、
03-1_(資料3-1)次期水資源開発基本計画策定に当たっての検討事項(一覧表) http://www.mlit.go.jp/common/001224391.pdf を見ると、次のように書いてあります。

水需給バランスの総合的な点検

不確定要素を考慮した需要量の見通し・供給可能量の検討
① 水需要予測
② 安定供給可能量の点検
▷ 10箇年第1位相当の渇水年の安定供給可能量
▷ 既往最大級渇水年の安定供給可能量

リスク管理の視点による評価
▷ 起こり得る渇水リスクを幅広に想定した評価
▷ 実際に発生した渇水を対象として水資源開発施設の効果検証

従来の水需給計画では新規の水源開発事業の必要性がなくなっても、万が一の大渇水等のリスクに備えるために、上記の水源開発事業が必要だとするために、各水系のフルプランを変更していくというものです。

水需要減少の時代においてフルプランはその役割が終わっているのですから、フルプランを廃止し、新規のダム等事業は利水面の必要性がなくなったことを明言すべきなのですが、国土交通省はフルプランの延命策を図っています。困ったものです。

水道法改正案の再上程

2018年3月15日
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水道法改正案が本通常国会に3月9日付けで再上程されました。昨年の通常国会に上程され、衆議院解散に伴って廃案となった水道法改正案と同じものです。

改正法案の案文や要綱は次のように厚生労働省のHPに掲載されています。

水道法の一部を改正する法律案(平成30年3月9日提出)
概要
法律案要綱
法律案案文・理由 
法律案新旧対照条文

この水道法改正について厚労省が3月9日の全国水道関係担当者会議で説明しています。その資料も掲載されています。
全国水道関係担当者会議資料
全国水道関係担当者会議資料【資料編】

今回の水道法改正案において特に重要であるのは①都道府県がリーダーシップをとって市町村水道の広域化を推進することと、②民間事業者に水道施設の運営権を譲渡できるようにすることの2点であると思います。

① は人口減少等によって経営が厳しくなってきている中小の水道事業体を都道府県の主導で広域化していくことです。

この広域化によって水道経営が統合されれば、その受皿の一つとして、②の民間業者への運営権の譲渡が想定されていて、この点で、①と②がセットになっているようにも思います。

再上程された水道法改正案の問題点を明確にしていく必要があります。

浜松市下水道事業の運営権譲渡についての情報

2018年3月14日
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浜松市は既報のとおり、今年4月から西遠流域下水道事業(処理場とポンプ場)を民営化します。水処理世界最大手の仏ヴェオリアと日本の会社が設立した浜松ウォーターシンフォニー株式会社と契約締結を行いました。
市はこの会社に下水道事業の運営権を譲渡します。期間は2018年度から20年間です。運営権対価は25億円です。
http://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/suidow-s/gesui/seien/pfi.html

国内初となる下水道の長期運営権の譲渡です。運営権者は維持管理、改築更新工事、計画立案、浜松市は認可取得、モニタリングを行うことになっています。
西遠流域下水道は元々は静岡県の事業でしたが、2005年の市町村合併に伴い、対象流域が浜松市のみとなり、合併特例法の適用により2016年3月末に浜松市に移管されました。管理は移管前は静岡県下水道公社を通して民間会社に委託し、移管後は市が直接、民間会社に委託していました。

今回の民営化で、20年間で約86億円のコスト縮減効果が見込まれるということですので、その根拠資料を入手しました。

浜松市下水道民営化の効果86億円縮減の資料-3

1枚の表だけの資料ですが、参考までに添付します。この資料には、馴染みのない略語がありますので、略語の意味を記します。
VFM( Value For Money):特定事業の選定に当たって行われる「支払に対して最も価値の高いサービスを供給する」評価
PSC( Public Sector Comparator):公共が自ら実施する場合の事業期間全体を通じた公的財政負担の見込額の現在価値
PFIのLCC(Life Cycle Cost):PFI事業(民間資金等活用事業)として実施する場合の事業期間全体を通じた公的財政負担の見込額の現在価値
要するに、PSCは公共が事業を続けた場合、PFIのLCCは民間に運営権を譲渡した場合で、それを比較して評価したのがVFMです。
コスト縮減効果の約86億円はPSCと、PFIのLCCとの差で、赤枠で囲ったところです。前者の約600.5億円と後者の約513.9億円の差として、86.6億円になっています。
これは現在価値化といって、将来の価値を20年国債の利率で割り引いて20年間の効果を現在価値に換算した金額だということです(割引率1.59%/年)。

資料の内訳をみると、前者に比べて、後者の人件費が2.5倍に増えているのは意外ですが、これは現状では民間会社に委託していたものを、運営権譲渡後は一部を運営権者が直営で行うからだということです。
また、修繕費が大幅に減っているのは、修繕をあまり要しない設備を導入していくからだということでした。なお、ユーティリティは電気代、薬品費、消耗品費等です。

民営化するのは、西遠流域下水道事業の処理場とポンプ場だけであって、下水管の部分は譲渡されません。
この資料を見ると、料金のうち、2割強が市に、8割弱が運営権者に行くようになっていますが(市(使用料)と運営権者(利用料金)の比)、これは処理場とポンプ場についての数字です。
下水道事業費のうち、処理場とポンプ場にかかる分は約4割ですので、実際には市民が払う下水道料金のうち、下図の通り、市(下水道使用料)が受け取るのが76%、運営権者(下水道利用料金)が24%になります。

 

 

 

 

 

 

 

浜松市は西遠流域下水道事業の運営権譲渡についてそのHPwww.city.hamamatsu.shizuoka.jp/suidow-s/gesui/seien/koubo.html
に示されているようにかなりの手順を踏んできており、予想される問題について検討がされてきているように思われます。

ただ、浜松市の西遠流域下水道事業は前述のように静岡県の事業でしたが、2016年3月末に浜松市に移管され、その運営方法を思案したところ、PFI法の適用で運営権を譲渡することになった特別な例であって、他の下水道事業においても運営権の譲渡がどんどん進んでいくとは思われません。

しかし、水道に関しては民営化を可能にする水道法改正案が今国会に再上程されます。さらに、水道・下水道等の民営化を進めるため、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)の改正も行われようとしています。この法案はすでに国会に上程されており、政府の方針として水道・下水道等の民営化が推進されようとしています。

この民営化は次のような問題が危惧されますので、十分な議論が必要だと思います。
〇 特に外国資本が入った民間企業の場合、企業の利益を上げるために経営の効率化が行われ、その利益が外国資本の株主に回され、水道・下水道の利用者に還元されないのではないのか。
〇 経営効率化といっても、その多くは人件費の削減によることになり、合理化で、働く人々にしわ寄せがいくのではないのか。正規職員から非正規職員への転換が進むのではないのか。
〇 水道、下水道という生活に身近な施設の運用を民間企業に丸投げするのは危険ではないのか。利益を追求するために様々なサービスが低下していくのではないのか。

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