玉川浄水場廃止問題
玉川浄水場廃止問題とは
東京都は今年(2021年)、2021年3月に策定した「東京水道施設整備マスタープラン~東京を支える強靭で持続可能な水道システムの構築~」p.36(PDF 471kb)で、一方的に玉川浄水場の廃止を明らかにしました。
その具体的工程については公表されていないようですが、多くの問題が山積していると思われます。例えば、水利権の扱い、調布取水堰の扱い、調布取水所から玉川浄水場までの原水導水管の扱い、浄水所から工業用水を三薗浄水場まで送水していた送水管の扱い、玉川浄水場敷地の扱い・・・・等です。
この問題の本質は、上記「東京水道施設整備マスタープラン p.36」に記されている「玉川浄水場は、多摩川の水質悪化によリ休止していますが、これまでの間、浄水場、給水所、送水管等の水道施設が充実してきたことや、今後浄水場のダウンサイジングが見込まれていることなどを踏まえ廃止します。」に尽きます。
「もう水が足りているから、多摩川調布取水堰地点の水質が悪いので停止していた玉川浄水場を廃止する」=「自己水源を放棄する」ということです。「もう水が足りている」とは、「利根川・荒川水系に多くのダム等を造って水源開発をし、それに見合う浄水場も造り終えた。」「水需要が峠を越えて久しい」を意味しています。
自己水源の水質改善は東京都の責務であり、多摩川を水道水源として甦らせ、玉川浄水場を上水浄水場として復帰させることが東京都の水循環の仕上げでした。それは、活き活きとしたおいしい鮎の復活、泳げる多摩川の復活、多摩川の復活です。玉川浄水場が上水浄水場として再開した暁には、その水利権分の水量を利根川・荒川水系に戻して、利根川・荒川水系の自然復活に寄与させるのが至当です。
東京西南部には主として、利根川・荒川水系から原水を引き込んだ遠くの浄水場から配水されています。玉川浄水場の再開は、この東京西南部の手薄な水道配水システム強化に不可欠なことです。とりわけ首都直下型地震への備え・気候変動への備え、として、人口90万人を擁する世田谷区にとって、玉川浄水場の再開は待たれていたはずです。水道水源・浄水場が身近なところにあることは、危機管理上、極めて重要なことです。
「玉川浄水場廃止」を何とか食止めるとともに、多摩川をおいしい鮎が棲息する川にする活動の継続が必要です。
玉川浄水場問題経過(東京都水道局)
- 玉川浄水場稼働時代(1970年まで)の施設能力は152,500m³/日、水利権は2.04m³/秒(日量換算で約17.6万m³/日)でした。
- 1970年 多摩川の調布取水堰すぐ上流左岸から浄水場に引き入れている原水に、「カシンベック病の疑い」(「No.802 水道水とカシンベック病」、「NHKアーカイブス高度成長の陰 日曜特集「多摩川」」)がもたれ、玉川浄水場は稼働を停止しました。後日、調査の結果、「カシンベック病の疑い」は否定されました。
- 1972年 調布取水堰地点の水質悪化の改善には相当時間を要することから、玉川浄水場を上水浄水場としての施設能力から除外しました。無期限の上水浄水場としての機能停止で、現在も続いています。
- 当時は東京への人口集中により、水需要が極度に増加し、水不足状態に陥り、地方への水源開発と浄水場等の施設能力増加にテンヤワンヤの時でした。
- 当時の水道配水量と水道施設能力の変遷を示すグラフです。
- 1979年からは、三薗浄水場へ工業用水として最大で1万m³/日程度送水する工業用水浄水場として機能しています。
- 2018年10月には、東京都議会が工業用水廃止を議決しています。
- 東京都は「 八ッ場ダムが必要」としていましたが、玉川浄水場についてはひと言も触れていませんでした。八ッ場ダムが運用開始したことで、玉川浄水場廃止を決定したことになります。
- 2021年3月 「東京水道施設整備マスタープラン~東京を支える強靭で持続可能な水道システムの構築~」p.36で玉川浄水場廃止を記述
玉川浄水場問題経過(市民活動「多摩川を飲める水にする会」・都議会)
- 「多摩川を飲める水にする会」は、「玉川浄水場再開」と、「多摩川を水道水源としてふさわしい川」にすることを目的に、「甦えれ多摩川」を合い言葉にして、毎年1回、「多摩川施設の見学会・学習会+多摩川河川敷の清掃」を行なってきました。
- あわせて、東京都水道局と都議会への働きかけを行ないました。
- 1991年当時の都議会議員であった池田敦子議員は、都議会において、「玉川浄水場を上水浄水場として再開」という下記回答を受けました。
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- 水利権確保を継続。
- 原水水質が水質環境基準B類型達成することが再開の第一条件
- 2000年度に水質環境基準B類型を達成することを目標とする
- 玉川浄水場内に、再開に向けた調査・実験施設を設けることに適時適切な予算措置をする
- 現在、上記ⅱ~ⅳの条件は達成されています。
- 1993年都議会で、東京都は玉川浄水場を上水浄水場として再開するための3条件を明らかにしました。
- 原水取水地点である多摩川中流域の水質が環境基準B類型を満足すること
- 下水混入率が高い原水に対する浄水処理方式の確立
- 再開に対する都民からのコンセンサス
- 現在は上記 ⅰ~ⅱ の条件は達成されていますが、ⅲについては未達成です。
玉川浄水場再開に向けての勉強会資料等
- 070529玉川浄水場の再開を求めて (NXPowerLite) PPT 1112kb
- 多摩川パンフ100913 PDF 3240kb
- 甦えれ多摩川 PDF 11529kb (「どうなっているの?東京の水」抜粋)
最近の玉川浄水場関係の水道局資料
2022年1月28日用
- 玉川浄水場廃止問題に関する世田谷区長要請 pdf
- 20220128玉川浄水場廃止問題懇談会スライド pdf
- 20220128玉川浄水場廃止問題懇談会 ppt
- 玉川浄水場 2002パンフ & 2003事業年表
- 東京の工業用水道
2022年1月28日 玉川浄水場問題に関する世田谷区長との懇談会 記録
- 玉川浄水場廃止問題に関する世田谷区長要請にあたって pdf
- 20220128玉川浄水場廃止問題懇談会スライド pdf (上記 スライドpdfと同じ)
- 2022年1月28日玉川浄水場廃止問題懇談会速記録 pdf
- ビデオ: 20220128 玉川浄水場問題世田谷区長保坂展人氏との懇談会.mpeg 45分