水源連:Japan River Keeper Alliance

水源開発問題全国連絡会は、ダム建設などと闘う全国の仲間たちのネットワークです

ホーム > ニュース > 報道

ニュース

報道

茨城県常総市の水害、国に4千万円賠償命令 河川管理めぐり水戸地裁 喜びと悔しさ交錯

2022年7月23日
カテゴリー:

7月22日、茨城県常総市の鬼怒川水害訴訟において国の責任を認める判決が水戸地裁でありました。その記事、ニュースを掲載します。

水害裁判で国に賠償を命じる判決は極めて異例で、画期的であり、弁護士の皆様の頑張りに深く感謝いたします。

一方で、上三坂の堤防決壊については国の瑕疵を認めておらず、このことについては全く合点がいかない判決です。

鬼怒川水害は若宮戸地区の溢水と上三坂地区の堤防決壊によって引き起こされました。

(「鬼怒川水害裁判で明らかになったこと」https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2022/05/00a2675c4ac76a03d218c5d7664eab66.pdf )

判決は若宮戸地区の溢水について国の責任を認めたものの、上三坂地区の堤防決壊については認めませんでした。

判決文と判決要旨は鬼怒川水害訴訟のHP  https://www.call4.jp/info.php?type=items&id=I0000053に掲載されています。

判決文 https://www.call4.jp/file/pdf/202207/8413adfe5ad05c96310473ba8ce807fd.pdf

判決要旨 https://www.call4.jp/file/pdf/202207/5241bf9999c5e4e917f54ce102874199.pdf

 

賠償額などを不服とする勝訴原告と敗訴原告の計25人が控訴する考えを示しています。

なお、この訴訟を進めていくうえで、費用がかかりますので、パタゴニアから2回助成金をいただきました。パタゴニアに御礼を申し上げます。

 

茨城・常総水害訴訟判決 喜びと悔しさ交錯 居住地、分かれた明暗 画期的勝利も控訴視野

(茨城新聞2022年7月23日(土))https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=16584874652326

賠償請求が認められ、記者会見で喜びを語る若宮戸地区住民の高橋敏明さん(左)=水戸市緑町の県立青少年会館

茨城県の常総水害訴訟で水戸地裁は22日、国の河川管理の問題を指摘し、住民側31人のうち若宮戸地区の9人に対する賠償を命じた。「画期的判決」「国は結果を受け止めよ」。住民側は、国との対決に勝利したことを喜びつつ、上三坂地区の住民の請求は退けられた。常総市の約3分の1が浸水した未曽有の災害から約7年。居住地で分かれた明暗に、住民側は「完全勝利ではない」と大半が控訴の方針を示し、高裁での「第2ラウンド」を見据えた。
「被告は、砂丘を含む区域を河川区域として指定するべきを怠っていた」。午後2時過ぎ、水戸地裁301号法廷。阿部雅彦裁判長が主文を読み上げると、傍聴席から「おっ」と驚きの声が上がった。地裁前では「勝訴」の幕を掲げ、拍手が沸き起こった。
原告共同代表の片倉一美さん(69)は「若宮戸を見れば、国に責任がないなんてことは絶対にありえなかった」と国を非難した。昨年8月に阿部裁判長ら裁判官3人が被災地を直接視察したことを振り返り、「裁判所は被害のひどさを熱心に聞いてくれた。だからこの判決につながった」と、提訴から約4年にわたった戦いの達成感をかみしめた。
只野靖弁護士は「原告が力を合わせてきたから認められた」と、住民の結束を強調。「国は緊張感を持って河川管理に当たってもらいたい」と注文を付けた。
一方で、上三坂の地区住民の請求は棄却された。判決が読み上げられる間、傍聴席からは「ええー」と落胆の声も漏れていた。
若宮戸地区に住む原告共同代表の高橋敏明さん(68)は、「主張した通りの結果が得られた」と喜びを示しつつ、「若宮戸を襲った水は、上三坂と水海道も襲った」と、複雑な表情を浮かべた。請求が認められなかった住民に対しても「救済を」と求めた。
片倉さんも自らの請求は退けられた。「被害を見れば、上三坂も絶対におかしいと思うべき所」と、控訴する方針を示した。
国側は閉廷後、国土交通省関東地方整備局長のコメントをホームページに掲載。「国の主張が認められなかったものと認識している」と記した。控訴については言及しなかった。

■「意義大きい」住民安堵
住民側勝訴の判決を受け、越水が起きた常総市若宮戸地区の住民からは安堵(あんど)の声が漏れた。
「当時のことは鮮明に覚えている。恐怖の一言だった」。同地区の女性は7年前を振り返る。同市が鬼怒川と小貝川に挟まれた地域であることを踏まえ、「国は安全管理をきちんと進めるべきだった。裁判所が認めてくれた意義は大きい。よかった」と安心した様子だった。
一方、堤防が決壊した同市上三坂地区について、判決は改修計画が「格別不合理ではない」と判断した。同地区に住む60代男性は「近年の豪雨は昔とは比べものにならない。(国や自治体の)防災計画は進んでいると思うが、追い付かないのが現状ではないか」と危惧した。
鬼怒川の氾濫などを踏まえた国の治水対策「鬼怒川緊急対策プロジェクト」は昨年5月末に完了した。上三坂地区内では堤防を1・4メートルかさ上げしたのに加え、幅も6メートルに広げた。国土交通省は、関東・東北豪雨で記録した24時間雨量551ミリにも「耐えられる」としている。
■常総・神達市長 地域防災力を強化
常総市の神達岳志市長は、関東・東北豪雨による水害から今年で7年を迎えるのを踏まえ「被害に遭われた市民の方々の思いをしっかりと受け止め、市と地域全体が一体となって地域防災力の強化を図る。今後も防災先進都市にふさわしいまちづくりを進めていきたい」とコメントを出した。
■筑波大の星野豊准教授(法律学)の話 計画、適切に実施せず
本判決で国の責任が認められたのは、自然堤防となる砂丘付近の土地を河川区域に指定しなかったためであり、計画に問題があったというよりもむしろ、計画を適切に実施しなかった点にあると言える。従って、従来の判例の基準を変更するものではなく、管理者である国の裁量をより合理的に行使することを求めている。それらの裁量には本件で問題となった河川区域の指定のほか、地方自治体と協力して住民への警告、避難経路や被災後の安全確保を行うことなども含むと考えられる。
★常総水害
2015年9月、台風18号や前線の影響で関東と東北の広域が豪雨に見舞われた。鬼怒川が増水し、常総市では10日午前6時ごろに若宮戸地区であふれ(溢水=いっすい)、同日午後0時50分には上三坂地区で堤防が決壊した。同市全域の約3分の1に当たる40平方キロが浸水。5千棟以上が全半壊した。避難指示対象は3万1千人。死者2人のほか、13人が関連死と認定されている。重症5人、中等症21人、軽症20人。

 

 茨城・常総水害 国の責任認める「河川管理に不備」 水戸地裁判決、賠償命令 住民9人に3900万円

(茨城新聞2022年7月23日(土))https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=16584874652256

常総水害訴訟の判決を受け「勝訴」と掲げる原告団=22日午後2時57分ごろ、水戸地裁

2015年9月の関東・東北豪雨で鬼怒川の堤防決壊などによる浸水被害が起きたのは国の河川管理の不備が原因だとして、茨城県常総市の住民ら約30人が国に約3億5千万円の損害賠償を求めた訴訟で、水戸地裁は22日、「若宮戸地区で河川区域指定を怠った」として国の責任を認め、同地区の住民9人に計約3900万円の賠償を命じた。水害を巡る裁判で国に賠償を命じる判決は極めて異例。
常総市では当時、鬼怒川沿いの上三坂地区で堤防が決壊し、若宮戸地区など7カ所で水があふれるなどして、市の総面積の約3分の1に当たる約40平方キロが浸水、5千棟以上が全半壊した。判決を受け、原告の上三坂地区の住民ら25人が控訴する方針。
裁判は、国の河川管理や改修計画の進め方の合理性が争点となった。原告側は若宮戸地区で砂丘が自然の堤防になっていたが、国が河川区域に指定しなかったため、太陽光発電事業者による掘削で堤防としての機能が失われたと主張。さらに上三坂地区で決壊した堤防は高さが不十分だったのに、国が改修を急がなかったためと訴えた。一方、国側は計画的かつ段階的に進めたと主張した。
阿部雅彦裁判長は判決理由で、若宮戸地区の砂丘について「堤防の役割を果たしていた。治水上極めて重要」と指摘。砂丘が掘削されれば、災害の発生が具体的に予見できたとして、「国は開発許可が必要な河川区域に指定すべきだったのに怠り、掘削によって危害を及ぼす危険性を生じさせた」とした。その上で、水があふれ、住民に損害が生じたと結論付けた。
一方、上三坂地区については「国は流域の状況を考慮し、できる場所から改修していた」と指摘。治水安全度の評価方法についても一定の合理性を認め、「安全性を欠いていたとはいえない」として、訴えを退けた。
閉廷後、住民側は水戸市内で記者会見し、只野靖弁護士は「ほんの一部かもしれないが、人災と認められたことは裁判所の優れた判断。若宮戸について真正面から(国の管理が)駄目だと言ってくれたことは意義がある」と話した。
国土交通省関東地方整備局は「判決内容を慎重に検討し、適切に対処する」とのコメントを出した。
住民側は18年8月、水戸地裁下妻支部に提訴。19年2月、受理した事件の担当裁判所を移す「回付」があり、同地裁本庁で弁論が開かれていた。
■常総水害訴訟を巡る経過
・2015年9月 関東・東北豪雨で鬼怒川堤防が決壊するなど、常総市を中心に大規模な浸水被害
・ 18年8月 国の河川管理に不備があったとして被災住民らが損害賠償を求め水戸地裁下妻支部に提訴
・ 19年2月 水戸地裁下妻支部が訴訟を水戸地裁本庁に回付
・ 21年8月 裁判官3人が決壊現場周辺を視察
・ 22年2月 訴訟が結審
・ 7月22日 水戸地裁判決、請求を一部認める

  

鬼怒川水害、国に賠償命令 河川管理不備と水戸地裁

(日本経済新聞2022年7月22日 22:04) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF225BW0S2A720C2000000/

判決後、水戸地裁前で「勝訴」と書かれた紙を掲げる原告ら(22日、水戸市)=共同

2015年9月の関東・東北豪雨で、鬼怒川の氾濫などによる浸水被害が起きたのは河川管理の不備が原因だとして、茨城県常総市の被災住民ら約30人が国に約3億5千万円の賠償を求めた訴訟の判決で、水戸地裁は22日、「一部で河川区域指定を怠った」として国の責任を認め、このうち9人への計約3900万円の賠償を命じた。

水害を巡る訴訟で国に賠償を命じる判決は異例。常総市では当時、鬼怒川沿いの上三坂地区で堤防が決壊、若宮戸地区など7カ所で水があふれた。原告の一部は控訴する方針。

原告側はこのうち若宮戸地区で、砂丘が自然の堤防になっていたのに、河川区域に国が指定しなかったため、太陽光発電事業者による掘削で堤防としての機能が失われたと主張。さらに上三坂地区で決壊した堤防は、高さが不十分だったのに国が改修を急がなかったと訴えていた。

阿部雅彦裁判長は判決理由で、若宮戸地区の砂丘が「上流と下流の堤防と接しており、堤防の役割を果たしていた。治水上極めて重要」と指摘した。

砂丘が掘削されれば災害が発生することが具体的に予見できたとして「砂丘を維持するため、開発に管理者の許可が必要な河川区域に指定する義務があったのに国が怠り、掘削によって危険な状態になった」と述べた。その上で、水があふれたことで損害が生じたと結論付けた。

一方、上三坂地区については「国は流域の状況を考慮し、できる場所から改修を進めていた」と指摘。国が用いた治水安全度の評価方法も一定の合理性があるとし「上三坂地区の堤防も国の改修計画に含まれており、改修がされていないからといって安全性を欠いていたとは言えない」として訴えを退けた。〔共同〕

 

「歴史的判決」目を赤くした住民 鬼怒川氾濫、国の管理不備認定

(毎日新聞 2022/7/22 21:34)   https://mainichi.jp/articles/20220722/k00/00m/040/353000c

国の河川管理の瑕疵を認めた判決に喜ぶ原告団=水戸市大町1の水戸地裁前で2022年7月22日午後2時55分、森永亨撮影

2015年9月の関東・東北豪雨で浸水被害を受けた茨城県常総市の住民ら31人と1法人が、鬼怒川が氾濫したのは国の河川管理に不備があったためだとして、国に総額約3億5870万円の損害賠償を求めた訴訟で、水戸地裁は22日、国の責任を一部認め、9人に計約3927万円を支払うよう命じた。

「歴史的な判決だ」――。2015年9月の関東・東北豪雨での鬼怒川氾濫を巡り、茨城県常総市の住民らが国に損害賠償を求めた訴訟。河川管理の不備を認めた22日の水戸地裁判決に、地裁前では原告や支持者らの拍手が鳴り響いた。

「確信していた国の責任が認められた」。集まった報道陣などの前に掲げられた「勝訴」と書いた紙の脇で、原告で同市若宮戸地区に住む園芸農家、高橋敏明さん(68)は目を赤くしていた。

水害で自宅は床上浸水し半壊した。家財道具は使い物にならなくなり、怒りを支えに提訴から4年間、訴訟を戦い続けてきた。21年夏には、訴訟を担当する阿部雅彦裁判長らが被災地を視察。22日は、判決言い渡しに耳を傾けながら当時を思い出し、判決後に「『現地を見て分かってくれたんだ』と、胸がいっぱいになった」と振り返った。

水害訴訟は、大阪府大東市の浸水被害を巡る「大東水害訴訟」の最高裁判決(1984年)を契機に大きな曲がり角を迎えた。同判決では行政の責任を限定的に解釈し、これが行政の瑕疵(かし)の基準となり、被災した住民側に不利な司法判断が続く流れとなっていた。

そうした中で出された今回の判決は、国の河川管理の不備を明確に認めた。弁護団の只野靖弁護士は「他の水害においても、それぞれの河川管理のまずさを指摘できる可能性がある。この判決は全国(の水害被災者)に勇気を与える」と述べた。

25人が控訴の意向

しかし敗訴部分もあり、主張を一部認められた原告も含め、既に25人が控訴の意向を示しているという。

「苦しみながら亡くなった女房のことを考えると、これで終わりにはできない」。主張が認められなかった常総市水海道地区の赤羽武義さん(82)も控訴する意向だ。水害から5カ月後に死亡した妻芳子さん(当時75歳)が災害関連死に認定された。「妻が水害で亡くなったことに対する国の責任を認めてほしい。このままでは女房に申し訳ない」と、訴訟続行に向けた決意を口にした。【宮崎隆、森永亨、宮田哲、長屋美乃里】

 

鬼怒川豪雨水害 国に賠償命令 河川管理で住民訴え 水戸地裁

(NHK茨城 2022年07月22日 17時32分)https://www3.nhk.or.jp/lnews/mito/20220722/1070017827.html

(4分近くの映像)

7年前の2015年、「関東・東北豪雨」で鬼怒川が氾濫し大規模な浸水被害が出た茨城県常総市の住民などが国を訴えた裁判で、水戸地方裁判所は、国の河川管理に問題があったと認め、原告の一部に賠償するよう命じる判決を言い渡しました。
水害に関する裁判で国の河川管理の責任が認められるのは異例です。

2015年9月の「関東・東北豪雨」では、茨城県常総市で鬼怒川の堤防が決壊するなどして、茨城県内で3人が死亡し、13人が災害関連死に認定されたほか、住宅およそ1万棟が水につかりました。
住宅が浸水する被害を受けた常総市の住民など31人は、決壊や越水した2か所について「国の河川管理が不適切だった」などとして、国に対して3億5800万円余りの賠償を求めていました。
これに対し、国は「上流と下流のバランスを総合的に考えながら計画的、段階的に整備を進めていた。河川管理に問題があったとは言えない」などとして、訴えを退けるよう求めていました。
22日の判決で、水戸地方裁判所の阿部雅彦裁判長は、2か所のうち越水した若宮戸地区について国の河川管理に問題があったと認め、原告のうち9人にあわせて3900万円余りを賠償するよう命じました。
若宮戸地区では川沿いの砂丘が業者の開発にともなって掘削されていましたが、判決では、砂丘が堤防の役割を果たしていたと認めたうえで「国は安全上重要な砂丘が掘削されないよう河川区域に指定する義務があったがそれを怠った」と指摘しました。
一方で、決壊した堤防の整備計画が適切だったかが争われた上三坂地区については「国の計画が格別不合理だったとまではいえない」として訴えを退けました。
水害に関する裁判で国の河川管理の責任が認められるのは異例です。

関東・東北豪雨では2015年9月10日、発達した積乱雲が帯状に連なる「線状降水帯」が関東や東北にかかり、上流で記録的な豪雨となった鬼怒川が氾濫。
茨城県常総市では堤防が決壊するなどして被害が出ました。
逃げ遅れて救助された人は4000人を超え、茨城県内で3人が死亡、13人が災害関連死に認定されています。
被害が集中した常総市はおよそ3分の1が水没。
住宅地で1週間以上浸水が続くなど、生活への影響も大きなものとなりました。
被害から3年後、被災した住民たちは「鬼怒川の堤防が低く被害が出るおそれがあると知りながら、国は適切な対策をとらなかった」などとして3億円余りの損害賠償を求める訴えを起こしました。
国は、原告の主張はいずれも認められないとして全面的に争います。
新型コロナの感染拡大を受け、公開の弁論が開かれない時期もありましたが、去年8月には裁判官と原告側、それに被告の国側の3者で氾濫現場の視察が行われました。
裁判はことし2月に結審。
原告側が「国の堤防整備は、安全性が不足している場所を優先しないなど、進め方が不合理だった」と訴えたのに対し、国は「上流と下流のバランスを総合的に考えながら計画的、段階的に堤防の整備を進めていた」などと反論し、国の整備計画の合理性が争われました。

今回の訴訟で主な争点となったのは、茨城県常総市の主に2つの地区について、鬼怒川の堤防の整備計画などが適切だったかどうかです。
<上三坂地区>
決壊が起きた上三坂地区について原告側は、国が地盤沈下で堤防の高さが低くなっていたのを知りながら、堤防の整備をほかの地域よりも優先するなどの対策をとらなかったのは不合理だと主張していました。
これに対し国は、用地の調査など堤防の整備に向けて調査を進めていたほか、上流と下流のバランスを総合的に考えながら計画的、段階的に整備を進めていたと反論していました。
<若宮戸地区>
越水が起きた若宮戸地区については、この地区で行われた砂丘林の掘削作業について、国の責任などが争われました。
原告側は、業者が太陽光パネルを設置するために堤防の代わりになっていた砂丘林が削られたと主張。
そのうえで、国が砂丘林を河川区域に指定し業者による掘削などを自由にできない区間にするべきだったと訴えました。
これに対し、国は、砂丘林を河川区域に指定していないからといって整備計画が不合理であるとはいえず、堤防を造る計画を立てたうえで作業を進めていたなどと反論していました。

原告側が判決後に開いた会見で、弁護団の只野靖弁護士は「当初から人災と言われていたが一部でも認められたことは、裁判所によるすぐれた判断だと受け止めている。原告が力を合わせてきたから認められたと考えている」と話しました。
原告団の共同代表を務める片倉一美さんは「毎年のように水害が発生する時代にあって画期的な判決が出た。国土交通省は判決を真摯に受け止めて、河川管理においては、水害の危険性があるところから改修を進めてもらいたい」と話しました。
判決を受けて、原告のうち、これまでに、多くが控訴する意向を示しているということで、只野弁護士は「国に緊張感をもって河川管理にあたってもらいたいというのが原告の思いだ。控訴して国の責任を問い続けたい」と話しました。
原告の1人で、妻の芳子さんが「災害関連死」で死亡した赤羽武義さんは(82)は、訴えが認められず、「わたしにとってはとても残念な判決です。裁判所や国には妻の死の重みを受け止めてほしかったです」と話していました。

関東地方整備局の廣瀬昌由局長は「判決についてまだ詳細な内容を確認できていないが、国の主張が認められなかったものと認識している。今後、判決内容を慎重に検討し関係機関と協議のうえ、適切に対処したい」とコメントしています。
決壊現場に近く浸水の被害があった、茨城県常総市の石下地区に住む66歳の男性は「国の河川管理に問題があったと認める判決が出たことはよかったと思う。これを契機に、今後、水害対策が加速していってほしい」と話していました。
また、美容院を営む71歳の女性は「一部ではあるが、住民の訴えが認められたという結果にはほっとした。国には二度と同じような水害が起きないようにしてほしい」と話していました。

 

流水型ダム「反対」7割 市民団体が意見公募を独自分析 球磨川治水

2022年7月20日
カテゴリー:

球磨川水系河川整備計画原案に対する公募意見を市民団体「子守唄[うた]の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」が分析したところ、流水型川辺川ダムに反対する意見が7割を占めていました。その記事を掲載します。

市民団体が公開した抗議文、申入書、説明資料は次の通りです。

学識者懇談会への抗議文

意見書集計結果に基づく整備計画再作成を求める申入書

意見書集計結果の説明資料

なお、球磨川水系河川整備計画原案に対する公募意見は次のURLで見ることができます。

◇令和4年度 第1回 球磨川水系学識者懇談会 令和 4年 6月24日開催

http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/river/gakusiki_kondankai/20220617.html

◇関係住民様より寄せられたご意見 
http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/site_files/file/iken_itiran.pdf
(500近い意見が出されました。)

 

流水型ダム「反対」7割 市民団体が意見公募を独自分析 球磨川治水

(熊本日日新聞  2022年7月16日 )https://kumanichi.com/articles/728043

2020年7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川の治水対策で、国土交通省が支流の川辺川で建設を目指す流水型ダムに反対する市民団体「子守唄[うた]の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」は15日、球磨川水系の河川整備計画原案に対するパブリックコメント(意見公募)について、独自の分析結果を公表した。意見の7割強が「ダム反対」だったと集計している。

国交省と県は4~5月、河川法に基づき住民から意見を公募し、ウェブサイトで内容を公表している。県民の会は国交省と県に重複して寄せられた意見を除く439件を分析した。

分析によると、ダム反対は313件(71・3%)で、賛成の21件(4・8%)を大きく上回った。残る105件はダムへの賛否に言及がないか不明だった。集計には、同じ球磨川水系の瀬戸石ダムや五木ダムへの意見も含めた。

反対意見を地域別にみると、人吉市が最多で135件。八代市が32件、相良村が21件と続き、球磨川流域で約3分の2を占めた。反対理由は、環境への悪影響の懸念が最も多く、治水効果への疑問や緊急放流の危険性の指摘も目立った。

県庁で記者会見を開いた県民の会の南由穂美さん(70)=八代市=は「流水型ダムについて、これだけ多くの反対意見がある。国や県は正面から疑問に答えてほしい」と訴えた。

独自分析について、県河川課は「パブリックコメントなどは住民の意見を聞くのが目的で、多数決の性格はない。計画を作り直す予定はない」と話した。国交省と県は1日、河川整備計画案を公表している。(臼杵大介)

球磨川水系の河川整備計画原案に対するパブリックコメントについて独自の分析結果を公表する市民団体の南由穂美さん(右)ら=15日、県庁

川内川洪水から50年 ダム容量倍増も「自然は想定を超えてくる] という見方は妥当か?

2022年7月11日
カテゴリー:

鹿児島県の川内川(せんだいがわ)について南日本放送2022/07/07のニュース記事「川内川洪水から50年 ダム容量倍増も『自然は想定を超えてくる』」がありました。

2006年7月、川内川流域を未曾有の豪雨が襲いました。川内川の鶴田ダムは洪水調節ができなくなって、ただし書き操作を行い、計画最大放流量2400㎥/秒をはるかに上回る3600㎥/秒(最大)を放流しました。

鶴田ダム下流で氾濫被害の最も大きかったさつま町宮之城では計画高水位T.P.27.74mに対して、本洪水最高水位はそれを2.92mも上回る最高水位T.P.30.66mを記録し、大きな災害が発生しました。

その後、鶴田ダムの再開発事業が再度行われ、洪水調節容量が7500万㎥(当初は4700万㎥)から9800万㎥に増強されました(2018年度完了)。

しかし、昨年(2021年)7月10日の豪雨で鶴田ダムは下記のニュース記事(NHK2021年7月10日) のとおり、緊急放流直前の状態になりました。

この問題について、下記の記事は「ダム容量倍増も『自然は想定を超えてくる』」と報じていますが、このような問題のとらえ方が妥当なのでしょうか。

川内川水系河川整備基本方針の流量図(末尾に掲載)を見ると、川内川は鶴田ダムへの依存度がかなり大きい治水計画になっています。

ダム依存度が大きい治水計画であるために、鶴田ダムの緊急放流の事態が迫ると、危機的な状態になるのが川内川です。

川内川においては今後、ダム依存度を極力小さくする治水対策に転換していく必要があります。

  

川内川洪水から50年 ダム容量倍増も「自然は想定を超えてくる」

[南日本放送2022/07/07 19:45] https://www.mbc.co.jp/news/article/2022070700057468.html?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter

50年前の7月6日、局地的豪雨で川内川が氾濫し、死者・行方不明者8人の被害を出しました。ダムや河川の改修は進みましたが、水害はその後も繰り返し起きています。関係者は「自然は想定を超えてくる」と話し備えを訴えます。
(1972年の住民インタビュー)
「まさか家が流れるとは全然思わず、着の身着のままで船に乗ってようやくたどり着いた」
1972年7月6日。川内川流域では、現在の「特別警報」に匹敵する雨量の2倍以上の2日間で600ミリを超える雨が降りました。川内川は氾濫し、流域の広い範囲で浸水。
鹿児島県によりますと、死者・行方不明者8人、家屋の全壊や半壊、流失はあわせて472棟。浸水被害はおよそ2100棟に及びました。
(舟倉武則さん)
「川に行って魚をすくっていた。なにか流れてくるから何かなと思ったら、上流の建物が流れてきた」
舟倉武則さん(75)は、さつま町宮之城の川原集落で54年、衣料品店を営んでいます。
(舟倉武則さん)
「おいおい来たぞと、みんなそれぞれ三々五々自分の家に行って、何分もしないうちに、ここがどーんと。床から2メートル80センチきた」
50年前の大雨で舟倉さんが住む川原集落では、6棟が流され80棟が浸水しました。上流の湯田地区ではおよそ120棟が流され、宮之城温泉街は大きな被害を受けました。
国は、川内川の堤防を2メートルから3メートルかさ上げする工事を行ったほか、上流の鶴田ダムの容量を見直し、7500万立方メートルに増量しました。しかし…。
2006年、1972年を上回る5日間で1000ミリの雨が降り、再び川内川ははん濫。死者2人、およそ2300棟が被害を受けました。
下流への流量を抑えるため、2006年の災害後、鶴田ダムは大規模な工事を実施。1972年の災害以降1.8倍にした容量を、さらに1.3倍の9800万立方メートルに増量。ダム建設当初のおよそ2.3倍にしました。
鶴田ダムでは大雨が予想される場合、事前にダムを空にする「予備放流」を行っていますが、容量が7割を超え、その後、決壊のおそれがある場合「緊急放流」を行います。過去に行われたのは、大きな水害のあった1972年と2006年の2回で、去年7月の大雨でも一時、検討されました。
国は水害が起こるたびに対策を打ってきましたが、担当者は、ハード面の整備が進んだとしても「自然は想定を超えてくることを理解していて欲しい」と話します。
(鶴田ダム 廣松洋一所長)
「地域住民とともに意見交換、情報の発信の仕方を勉強してきて、地域の方の理解が深まっている地域だと思う。安全度がすごく向上したのは間違いない。しかし、それを上回る洪水は想定しておくべきもの」
去年7月の大雨で、舟倉さんの住む川原集落は、80世帯230人全員が高台にある公民館や知人宅などに避難しました。
(舟倉武則さん)
「ダムが放流するかもという情報が来たから。握り飯を持って昼飯も車の中で食べた」
50年前の水害以降、ダムや堤防などハード面の整備は進みましたが、舟倉さんは「自分たちが住む地域のリスクを知った上で、いざという時の避難行動に結びつけることが大切」と話します。
(舟倉武則さん)
「空振りでもいい。空振りでもいいから情報をもらって、早く避難することが大事。命があればまた再生、復興できます」
50年前の大水害は今も住民の記憶に残り、自ら学び、避難に繋げることの大切さを教えてくれています。

 

 鹿児島 さつま町 鶴田ダム 緊急放流見送り 国交省

(NHK2021年7月10日 12時39分)  https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210710/k10013131641000.html

国土交通省は、鹿児島県さつま町の川内川にある鶴田ダムについて「午前11時半ごろから緊急放流の可能性がある」としていましたが、現時点では見送ることを決めました。

今後の雨の状況によって再び実施する可能性が出てきた場合は、すみやかに周知するとしています。
川内川の水位は依然としてかなり高い状態にあり、洪水や氾濫のおそれがあるとして引き続き厳重に警戒するよう呼びかけています。

 

川内川水系河川整備基本方針〈2007年8月〉

 

秋田県東成瀬村(雄物川水系成瀬川)に建設中の成瀬ダムは2026年度完成予定で工事進行

2022年6月29日
カテゴリー:

残念な情報ですが、国土交通省が秋田県東成瀬村(雄物川水系成瀬川)に建設中の成瀬ダムが2026年度完成予定で、工事が進行しているという記事を掲載します。

成瀬ダムは昨年(2021年)6月に工期が2024年度から2026年度に延長され、事業費が1530億円から2230億円へと、700億円も増額されることになりました。 https://suigenren.jp/news/2021/06/06/14684/

完成予定まであと4年というところで、700億円も増額するのですから、ダム事業者がやりたい放題という感じがします。

成瀬ダムは治水利水の両面で必要性がないダムです。「成瀬ダムは本当に必要ですか?」https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2012/09/naruse.pdf

成瀬ダムを中止させるべく、地元住民が2009年に工事差し止めを求める住民訴訟を起こして闘い続けました。水源連もこの裁判に関わりました。https://suigenren.jp/news/2014/06/04/5802/

しかし、2015年4月に仙台高等裁判所秋田支部で、住民側敗訴の判決が出ました。

まことに残念なことですが、裁判で成瀬ダムを中止させることができませんでした。

末尾に成瀬ダム予定地の「赤滝と能恵姫伝説」を記しておきます。

 

成瀬ダム工事現場ツアー 55トントラックや無人重機

(読売新聞2022/06/28 05:00)https://www.yomiuri.co.jp/local/akita/news/20220627-OYTNT50379/

発破ツアーで訪れる展望台から望む成瀬ダムの本体工事現場(11日、東成瀬村で)

作業が休みの日は、巨大重機の前で記念撮影ができる場合もある

東成瀬村で4年後の完成に向けて建設が進む成瀬ダムの工事現場を見学する無料のバスツアーが行われている。先端技術を駆使して巨大なダムを造り上げる様子を間近で見る、迫力いっぱいの45分間だ。

国土交通省成瀬ダム工事事務所が「なるせダムアドベンチャーバスツアー」と題して企画した。

同ダムは国直轄事業で総事業費は2230億円。工事が本格化し、現場では普段見ることができないような大型重機が稼働しているという。

ツアーは、ダム上流の展望台を発着し、同事務所職員の説明を受けながら通常は立ち入りできない工事現場を巡る。巨大動物のような55トントラックとすれ違ったり、重機が遠隔操作で無人走行する様子を見たりし、非日常的な冒険気分を味わえる。

工事中の今しか見ることができない光景とあって、県外から参加するダムファンも。新潟市の男性(50)は「ここは規模がすごい」と満喫した様子。現場の様子は日々変わるため、同事務所は「何度でも参加して見てほしい」としている。

一般向けツアーは今月11日に始まった。隔週土曜の開催で、来月は9、23日に予定している。10月まで。出発時間は午前9時半、同10時半、同11時半、午後1時半、同2時半、同3時半の計6回。定員は各回10人で先着順に受け付ける。

参加希望者は、同事務所ホームページに掲載されている申込書に記入し、メールかファクスで送る。

問い合わせは同事務所(0182・23・8450)へ。

 

赤滝と能恵姫伝説

成瀬ダム建設予定地の区域内には、古くから県南地方の住民に「雨乞いの神様」として崇められている「赤滝」があります。江戸時代後期の民俗学者、菅江真澄が栗駒山に向かう道すがら立ち寄って、「駒形日記」に記録したという由緒ある場所です。
かつての赤滝神社は、日照りの年にはお参りにくる農家の人たちが、村の中から延々の列を作っていたほど厚い信仰を集めていた場所だと聞きます。赤滝神社の由来は、今を遡ること280年余り昔の伝説の女性、能恵姫に源を発しています。能恵姫は、農民たちを渇水と洪水の不安から救うために、竜神と化して赤滝に住みついたと言い伝えられています。赤滝は、この地域の昔を偲ばせる貴重な文化遺産です。

『どうかダムを止めて』という能恵姫の涙声が、聞こえてくるようです

 

 

「人柱だったのか」豪雨被害怒り 集団訴訟、原告団長立石さん訴え (岡山県・小田川真備水害訴訟)

2022年6月29日
カテゴリー:

2018年の西日本豪雨で被災した倉敷市真備町地区の住民ら49人が、国などに損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が6月22日、岡山地裁でありました。その記事を掲載します。

真備水害訴訟について2020年、2021年のニュース記事も掲載しておきます。

この水害で家族の命、財産を失った原告の方々の文章を読むと、怒りと悲しみで胸が一杯になります

真備水害訴訟については弁護団のHP http://mabisuigai.starfree.jp/index.html もご覧ください。

 

 「人柱だったのか」豪雨被害怒り 集団訴訟、原告団長立石さん訴え

(山陽新聞2022年06月22日 18時29分)https://www.sanyonews.jp/article/1276114

岡山地裁前で横断幕を掲げて行進する原告団=22日午前10時45分

2018年の西日本豪雨で被災した倉敷市真備町地区の住民ら49人が、決壊した河川を管理していた国などに損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が22日、岡山地裁(上田賀代裁判長)であり、原告団長で岡山民俗学会名誉理事長の立石憲利さん(84)=総社市=が、自身の被害について意見陳述した。
立石さんは00年ごろに倉敷市真備町辻田の2階建て住宅を購入し、書庫や書斎として活用していたと説明。豪雨で1階が水没し、民俗や民話に関する資料など5千点以上を廃棄せざるを得なくなり「極度に落ち込んだ」と述べた。
その上で「大きな被害を出してようやく、堤防の補強工事など対策が進んだ。私たちは人柱だったのか」と怒りをにじませ、「国などの責任をはっきりさせないと被災者は浮かばれない」と訴えた。
原告側弁護団によると、立石さんは5月に原告団長に就任した。岡山地裁では、別の被災者や犠牲者の遺族計215人も国などに損害賠償を求めて係争中。

 

 

西日本豪雨で大規模な水害 住民と遺族ら国などに損害賠償求め提訴 岡山・倉敷市真備地区

(KSB瀬戸内海放送 2021/6/25 18:50)https://news.ksb.co.jp/article/14380926

2018年7月の西日本豪雨で岡山県倉敷市真備町を流れる小田川が決壊するなどして、大規模な水害が起きたのは治水対策が不十分だったためとして、住民とその遺族らが国などに対して損害賠償を求める訴えを起こしました。

訴えを起こしたのは、倉敷市真備地区で被災した住民と遺族ら84世帯、215人です。

西日本豪雨で娘の遥さん(当時27歳)と孫の愛ちゃん(当時5歳)を亡くした三宅常男さんも参加しています。

2018年7月の西日本豪雨で倉敷市の真備地区では、小田川の堤防が決壊するなどして地区の4分の1が浸水。51人が亡くなりました。

訴えによると小田川の付け替え工事を行ってこなかったことや河川内の樹木を伐採してこなかったことなどが水害につながったなどとして国、岡山県、倉敷市に約6億4000万円の損害賠償を求めています。

(り災者の会/吉田勤 会長)
「尊い命が50何名奪われた、家が崩壊した責任が倉敷市にも県にもあると思います」

(娘と孫を亡くした/三宅常男さん)
「まだ3年経っても踏ん切りはつきません。国も県も本当のことを言わないからもう何してもふたをしてしまうから」

岡山河川事務所は「訴状が届いておらず、コメントは差し控えさせていただきます」とコメントしています。

 

西日本豪雨の被災者ら、河川管理巡り国など提訴 岡山

(日本経済新聞2021年6月25日 19:48 ) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF258920V20C21A6000000/

提訴後、記者会見する原告の三宅常男さん㊨と吉田勤さん(25日午後、岡山県倉敷市真備町地区)=共同

2018年の西日本豪雨で岡山県倉敷市真備町地区の河川が氾濫し、甚大な浸水被害が出たのは、河川などの管理が不十分だったのが原因だとして、地区住民ら215人が25日、国や県、市に計約6億4000万円の損害賠償を求め、岡山地裁に提訴した。

原告は、地区の被災者らでつくる任意団体「り災者の会」の会員ら。岡山地裁では、同会とは別に「真備水害訴訟原告団」の約40人が国や県、市、中国電力に計約8億6千万円の損害賠償を求めて既に提訴している。

訴状によると、地区を流れる小田川と支流の堤防が決壊。地区の4分の1が浸水し、災害関連死を除き51人が死亡した。住民側は、国と県が堤防を改修せずに低いまま放置したと主張。堤防の切れ目にあり、増水時に閉める必要がある「陸閘(りっこう)」と呼ばれるゲートを、県と市が閉鎖しなかったとしている。

さらに国に対し、増水時の小田川の水位を低下させるため高梁川との合流地点を下流に移す工事を先送りにしたと批判。高梁川水系にある新成羽川ダム(岡山県高梁市)の放流量の調整を設置者の中国電力に指示するのを怠ったとしている。

提訴後、「り災者の会」会長の吉田勤さん(75)らは真備町地区で記者会見。「訴訟を通じて行政の災害への考えを改めてほしい」と話した。

豪雨で娘(当時27)と孫(同5)を亡くした倉敷市の会社員、三宅常男さん(62)は「3年たっても(心が)安定しない。同じ思いをする人が出ないよう、一歩を踏み出さないといけないと思った」と述べた。〔共同〕

 

 

真備水害訴訟 第2回口頭弁論で原告が全国の河川改修計画などの提出求める 岡山

( KSB瀬戸内海放送 2021/7/7 18:31) https://news.ksb.co.jp/article/14389397

西日本豪雨で被災した岡山県倉敷市真備町の住民らが、行政の不備が水害を引き起こしたとして国などに損害賠償を求めた裁判です。7日の第2回口頭弁論で原告は、堤防工事の遅れを改めて指摘しました。

西日本豪雨(2018年7月)

倉敷市では西日本豪雨で災害関連死23人を含めた75人が犠牲になりました。
訴状によりますと原告49人が、国、岡山県、倉敷市ダムを管理する中国電力に、合わせて約10億2000万円の損害賠償を求めています。

真備水害訴訟 原告側会見

原告側は7日の第2回口頭弁論で小田川の堤防の改修工事が遅れていたと指摘し、国などに対して全国の一級河川の改修計画などの提出を求めました。

これまでの裁判で被告側は損害賠償の責任はないとして争う姿勢を示しています。

 

真備町水害訴訟 西日本豪雨での小田川の水位上昇 国へ責任追及

( KSB瀬戸内海放送 2021/10/27 19:32) https://news.ksb.co.jp/article/14469267

西日本豪雨で被災した岡山県倉敷市真備町の住民らが、行政の不備が水害を引き起こしたとして国などに損害賠償を求めた裁判です。原告側は、小田川の中洲の樹木を「伐採すべきだった」とし、責任は国にあると訴えています。

この裁判では西日本豪雨で被災した原告48人が国、岡山県、倉敷市、ダムを管理する中国電力に合わせて約10億2000万円の損害賠償を求めています。

小田川の中洲(2018年7月27日)

27日の第3回口頭弁論で原告側は、小田川の樹木が生い茂ったことで水位を最大で69センチ上げていたという国交省の元職員の試算を開示。国は伐採をしなければならなかったと主張しました。

これまでの裁判で被告の国側は小田川の樹木を伐採する義務はなかったと主張しています。

さらに原告側は被災者が情報公開請求に100万円以上を負担していることを明かし、国側へデータなどの開示に協力してほしいと呼び掛けました。

(真備水害訴訟弁護団/金馬健二 弁護士)
「基本的には本件は損害賠償請求の形になっているが、二度とこういうことが起こらないようにするという大きな目的なので両方とも事案を解明する責任がある。出すべきものは出してほしい」

 

西日本豪雨は「人災」か 国などを訴える被災者の主張 岡山・倉敷市

( KSB瀬戸内海放送2020/4/7 18:15 )https://news.ksb.co.jp/article/13851470

(映像)西日本豪雨は「人災」か 国などを訴える被災者の主張 岡山・倉敷市

2018年の西日本豪雨で大きな被害を受けた倉敷市真備町の住民が15日、国などに損害賠償を求める裁判を起こします。

訴状案が固まり、提訴前の4日、最後の弁護団の集会が開かれました。大きな主張の一つは約50年前から訴えがあった河川の工事の遅延です。

(真備水害訴訟弁護団/金馬健二 団長) 「今回の水害が自然災害として不可抗力のものではなく国や県、市、あるいはダム管理会社が瞬時に対応していば避けられた、いわゆる人災であるという思いを持つに至りました」

4日、「真備水害訴訟弁護団」が最後の集会を開き訴状の内容を確認しました。原告は真備町の被災者32人です。2018年の西日本豪雨で、倉敷市の真備地区では高梁川の支流の小田川などが氾濫したり堤防が決壊したりしました。

地区の4分の1にあたる約1200ヘクタールが浸水し4646棟が全壊、51人が亡くなりました。原告は行政などの対応の不備が被害の拡大につながったとして国、岡山県、倉敷市、ダムを管理する中国電力に対し6億6000万円の損害賠償を求めて15日、岡山地裁に提訴します。

この裁判ではダムの事前放流量が十分でなかったことや、倉敷市の避難態勢の不備など各被告の責任を追及します。そのうち大きな主張の一つが小田川の付け替え工事の遅延です。

国は川の氾濫の危険性を認識し、高梁川と小田川の合流点を付け替える計画を1971年に発表していました。しかし、構想から約50年間、工事は行われませんでした。

原告は付け替え工事が完了していれば、合流点の水位は約5メートル下がり、浸水被害は起きなかった可能性が高かったとして工事の実施を長年放置した国の責任を追及します。

また…

(真備水害訴訟弁護団/賀川進太郎 事務局長) 「樹林の伐採もされていないということが大きな原因の一つであろう、これも国の責任ということになります」

小田川の中に生い茂っていた大量の木や草が川を流れにくくしたことで、水位の急激な上昇を招いたとしています。

渡辺清裕さん(70)はこの樹林化の放置に疑問を持ち、原告に参加しました。渡辺さんの自宅は真備町箭田、小田川の近くです。

(渡辺清裕さん) 「あそこの線、あれが水浸かった場所ですね」

2階から1メートル80センチまで浸水し、自宅が全壊しました。 (渡辺清裕さん) 「ここは久しぶり歩くの、いつも散歩してた」

渡辺さんは小田川に生い茂る草木を見て、不安に思っていました。

(渡辺清裕さん) 「こんな木がずーっと、流れない。もう何回もしとんすよ、地元の人が昔からね。伐採してくれと。自分のためばっかりじゃない。長い長い裁判になるかもしれない、黙ってたらよくならない」

豪雨から1年9カ月。復興は進んでも被災者の戦いはまだ続いています。

↑ このページの先頭へ戻る