水源連:Japan River Keeper Alliance

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復活・川辺川ダム /上 「命と環境両立」知事葛藤 撤回から容認「流水型」もいばらの道

2020年11月28日
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蒲島郁夫・熊本県知事の川辺川ダム建設容認の表明について毎日新聞東京版の連載記事(上)を掲載します。

この記事では蒲島知事が苦渋の選択で川辺川ダム建設容認に踏み切ったというニュアンスで書かれていますが、私の見方は異なります。

蒲島氏は川辺川ダムの白紙撤回を求めた知事として評価されていますが、もともと、蒲島氏は決して脱ダム派の知事ではありません。

蒲島氏は前にも書きましたが、全く不要な熊本県営の路木ダム事業を強引に推進し(住民が路木ダムへの公金支出停止を求めた裁判の一審判決では住民側が勝訴したが、二審では住民側が敗訴)、阿蘇の自然を壊す直轄・立野ダムの検証で事業推進を求める意見を出し、また、荒瀬ダムに続いての撤去が熱望されていた瀬戸石ダム(電源開発(株))の水利権更新に同意しました。

荒瀬ダムについても潮谷義子前知事が決めた撤去方針を変えようとしましたが、その方針を変えるためには球磨川漁協の同意が必要となっていたことから、やむなく撤去することにしたようです。

川辺川ダムについては、蒲島氏は2008年、就任早々「川辺川ダム事業に関する有識者会議」を設置しました。有識者会議の答申は、委員8人の意見が5対3で分かれ、推進の方向が強い内容でした。

この答申を受けて、蒲島氏は推進の方向に舵を切ろうと考えていたと思われますが、その見解を発表する前に、ダムサイト予定地の相良村長と、ダムの最大の受益地とされていた人吉市長が川辺川ダムの白紙撤回を表明したことにより、蒲島氏は予定を変え、「球磨川は県民の宝であるから、川辺川ダムの白紙撤回を求める」との見解を発表したと、私は推測しています。

川辺川ダムに対して懐疑的な姿勢をとり続け、荒瀬ダム撤去の路線を敷いた潮谷義子前知事は信念の人であると思いますが、蒲島氏はそうではなく、所詮はオポチュニストではないでしょうか。

  

復活・川辺川ダム

/上 「命と環境両立」知事葛藤 撤回から容認「流水型」もいばらの道

(毎日新聞東京夕刊2020年11月26日) https://mainichi.jp/articles/20201126/dde/041/040/015000c

(写真)川辺川ダムの建設容認を表明する蒲島郁夫知事=熊本市中央区で2020年11月19日、矢頭智剛撮影

熊本県南部が記録的な豪雨に襲われた7月4日、蒲島郁夫知事は早朝から県庁新館10階の防災センターに詰め、球磨川に設置された監視カメラから送られてくる映像を信じられない思いで見つめていた。モニターには、氾濫した球磨川の濁流にのみ込まれていく人吉市や球磨村などの様子が刻々とリアルタイムで映し出されていた。

一緒にいた幹部の一人は、蒲島知事のつらそうな表情を覚えている。「知事は川辺川ダムを白紙撤回した責任者であり、当事者だから」。豪雨により県内では65人が死亡し、2人が今も行方不明のままだ。「重大な責任を感じている」。11月19日の県議会全員協議会でダム建設容認を表明した蒲島知事はそう語った。

球磨川の治水対策として国が支流の川辺川に計画したダム建設を、知事が白紙撤回したのは2008年9月。翌年に旧民主党政権が中止を決めた後、国や県はダムによらない治水策を模索したが、実現しないまま、今回の豪雨で甚大な被害を受けた。ただ知事は、豪雨翌日の段階では「改めてダムによらない治水を極限まで検討する必要を確信した」と述べ、ダムなしでの治水をあきらめない姿勢を示していた。

熊本・川辺川ダム予定地

ところが、ダム建設の復活を目指す国などの急速な動きに知事ものみ込まれていく。国土交通省は豪雨当日、同省OBの天下り先でもあるコンサルティング会社に、氾濫した球磨川の流量解析などの業務を依頼し、後日、約2000万円で契約。国はコンサルの分析などを基に、豪雨被害検証委員会の第1回会合(8月25日)で「川辺川ダムがあれば、人吉地区の球磨川のピーク流量を約4割減らせた」、第2回会合(10月6日)では「人吉地区の浸水面積を約6割減らせた」と、ダムの効果を強調する推計を次々と提示した。

呼応するようにダム建設を求める流域市町村長や自民党県議らの声が高まる中、知事の発言もダム容認に傾いていく。第1回検証委の翌日に開かれた記者会見では「新しい水害により私自身も熊本県政も変わらなければならない」と述べ、川辺川ダムを「選択肢の一つ」と明言。第2回検証委の当日には、国の推計を「科学的、客観的に検証してもらった」と手放しで評価し、ダムによらない治水策を「非現実的な印象を受けた」とまで言い切った。

「民意を確認する旅に出よう」。この頃、蒲島知事と県幹部はそう話し合っていた。政治学者で、08年4月の就任前は東京大教授だった知事は「世論調査の専門家」を自任する。10月半ばから約1カ月かけて30回にわたって住民らの意見を聞く「意見聴取会」が始まった。県幹部らにとって予想外だったのが、球磨川の氾濫で住まいを失うなどした被災者の間にも「ダム反対」の声が多かったことだ。

ダムによる環境破壊を懸念する流域の世論も踏まえ、知事がたどり着いたのが、利水用の水をためる貯水型のダムではなく、普段は川の水をそのまま流し、大雨時だけためる治水専用の「流水型ダム」だった。「命と環境の両立が流域住民に共通する心からの願い。流水型ダムを加えることが現在の民意に応える唯一の選択肢だと確信するに至った」。県議会で知事はそう説明した。

知事の決断の背景には、国交省との関係の変化も大きい。就任5カ月後に白紙撤回した当時、知事は「ダムによらない治水の努力を極限まで行っていない」と批判するなど、国交省への不信感をあらわにしていた。しかし、16年に起きた熊本地震からのインフラ復旧で国交省に頼らざるを得なくなったことで関係が変化。19日の記者会見では「国交省の技術力を深く信じている」と持ち上げた。

その知事は容認表明から一夜明けた20日、早速、赤羽一嘉国交相と面会し、流水型でのダム建設を要請。「スピード感をもって検討する」との言質を引き出し、川辺川に流水型のダムが建設されることが事実上決まった。

もっとも、知事が目指す「流域治水」はダムができれば完成ではない。農地を遊水地とすることへの農家からの反対なども予想され、課題は山積している。ある県幹部が言う。「これはゴールではなくてスタート。これからが本当のいばらの道だ」

地域を二分した長年の反対運動の末、一度は計画の中止が決まった川辺川でのダム建設が復活に向けて再び動き始めた。背景や課題を追う。

 

石木ダムによる権利侵害がないとは言わせない! 

2020年10月11日
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石木ダム工事継続差止控訴審第1回口頭弁論報告

2020年10月8日14時半、福岡高等裁判所で石木ダム工事継続差止控訴審第1回口頭弁論が開かれました。コロナ禍の中、傍聴席の数に厳しい制限の付く中、多くの皆さんが裁判所前に結集されました。

この日は、弁護団から鍋島典子弁護士が「失われる権利」について、高橋謙一弁護士が「佐世保市による2019年度水需要予測が禁じ手を駆使したデタラメ予測であること」を簡単に陳述、コウバルに生活する岩下すみ子控訴人がコウバルの歌詞を朗読して紹介、「先代から受け継いだこの素晴らしいコウバルを時代に引継ぐことが自分たちの役割」と説きました。

次回(12月10日(木)14時30分~)は、裁判所から「具体的に侵害される法的権利を具体的に知りたい」ということで、控訴人側はその用意をします。

10月8日の様子は、「石木川まもり隊」のブログ、「私はこうばるで生き続ける」 をご覧ください。

10月8日に陳述された内容、交わされた文書、マスコミ報道等については、水源連HP上のこちらを参照ください。

球磨川治水 広い視点での対策検討を

2020年9月21日
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7月の豪雨で球磨川が大きく氾濫し、川辺川ダム建設計画が再浮上しています。この問題について熊本日日新聞のを社説を掲載します。

傾聴すべき意見であると思います。

9月18日、熊本県議会で球磨川の治水対策についての質疑が行われました。その様子を伝える記事も掲載します。


球磨川治水 広い視点での対策検討を

(熊本日日新聞2020年9月19日 07:11) https://kumanichi.com/column/syasetsu/1611334/

7月の豪雨が流域に大きな被害をもたらした球磨川の治水について、蒲島郁夫知事が11月中にも新たな対策を示すとしている。近年、豪雨災害が甚大化する中、予想を超える事態に対処するためにも、ダムや堤防だけに頼らぬ「流域治水」の考え方をベースに、広い視点で対策を検討すべきだ。

流域では7月豪雨の後、中止されていた川辺川ダム建設計画が再浮上した。12市町村でつくる同ダム建設促進協議会が8月、「ダム建設を含む抜本的な治水対策」を求める決議を採択。知事もダム計画を治水対策の「選択肢の一つ」として復活させることを表明した。被害の大きさを考えれば、治水のためダム建設を再検討するのは自然な成り行きだろう。

ただ、川辺川ダムがあったとしても、7月の水害を十分防げたかは分からない。国土交通省は今回の球磨川の最大流量を人吉市で毎秒8千トンだったと推計したが、専門家には異論もある。加えてどれだけ流量をカットできるかについても見解が分かれ、治水効果の見立ては異なっている。さらに緊急放流の危険性も考慮する必要がある。ダムは、治水の全てを解決する全能のカードではない。

近年の日本列島は毎年のように甚大な風水害に見舞われてきた。気候変動の影響で、自然災害は頻発・大規模化しているとされ、過去の常識の通用しないリスクに備えていかなければならない。

1級河川を管理する国交省も、新たな方針として「流域治水」を打ち出している。従来のようにハード面のダムや堤防だけでは限界があるため、民間を含め流域のあらゆる力で治水にあたるという考え方だ。被災の恐れのある住宅の移転促進や開発規制などのほか、有効な避難体制づくりなど、ソフト面も組み合わせた対策が重要になる。ある程度の浸水を前提にした減災・防災の視点も必要だ。

人吉市は浸水想定を記した防災マップを住民に配布していたが、最新の降雨基準に基づいたものではなく、7月豪雨の浸水は深さも広さもマップの想定を大きく上回っていたという。こうした情報周知などのソフト面にも欠点はなかったか。ハード面と同様に検証した上での対策検討が必要だろう。

2008年に蒲島知事が川辺川ダム計画を白紙撤回した後、国・県・流域市町村はダムによらない治水対策を検討してきた。残念ながら今回の災害までに実行できなかったが、これまでの蓄積も無にすべきではない。議論を取り込み、さらに大きな構えで総合治水対策を構築すべきだ。

ダムを止めた知事の決断までには、住民の長い議論の積み重ねがあった。当時の世論調査で県民の85%、流域住民の82・5%が白紙化を支持。大水害後の現時点でも流域の首長には温度差があり、議員や住民の意見も一様ではない。

治水対策の策定にあたっては県がリーダーシップをとるべきだ。速やかな策定が求められるが、拙速にならないよう、民意を十分くみ取り慎重に検討してほしい。

 

川辺川ダム必要論、急拡大 自民「当然」野党は警戒 熊本県議会

(熊本日日新聞2020/9/19 09:25) https://this.kiji.is/679872507206091873?c=92619697908483575

(写真)県議会代表質問で球磨川の治水対策について答弁する蒲島郁夫知事=18日、県議会棟 ​

「川辺川ダムが一つの有力候補として再び浮上してきたのは至極当然だ」-。18日の9月熊本県議会代表質問。自民党県連幹事長の松田三郎氏(球磨郡区)は7月豪雨の甚大な被害を引き合いにダム建設の必要性を強くにじませた。

2008年9月の蒲島郁夫知事による白紙撤回表明を受け、民主党政権が09年に中止を宣言した川辺川ダム計画。国土交通省は特定多目的ダム法に基づく廃止手続きは取らず、計画は連綿と生き続けた。そして今回、球磨川流域で60人が犠牲となった被害を機に、支流川辺川の「ダムの是非」が県政最大の課題として再燃した。

県議会最大会派の自民党内には、「必要論」が急速に広がる。「ダム以外に現実的な治水対策はない」と複数の県議。自民は08年以降、4度の知事選で一貫して蒲島氏を全面支援してきた。ただ、着々と蜜月関係を築く中で、川辺川ダム問題は喉元に刺さった“とげ”だった。

近年は声高に主張してこなかったものの、自民県議団の見解は変わらず「ダムは必要」。過去の県議会では、所属県議が「流域住民の生命財産をどう考えているのか」と知事に詰め寄る場面も度々あった。

「知事に、まずは『中立』の立ち位置まで来てもらいたい」と語っていた松田氏。この日の代表質問では「気象状況や大災害を境に12年間で民意は大きく変わった。(ダムに反対した)人吉市長と相良村長も顔触れが代わった」と強調。知事が、流域の民意を主な撤回理由とした過去の判断に縛られないよう、“地ならし”をしてみせた。

一方、自民と共に蒲島県政を支え、知事の白紙撤回表明を尊重してきた公明党県議団の城下広作氏(熊本市1区)は「検証委の結果を踏まえて冷静に判断する。ダムによって洪水被害が抑えられることが明らかであれば、反対しない」と話す。

自民や流域首長らから日増しに強まる「必要論」に、県議会の野党系会派は警戒感を隠さない。この日代表質問に登壇した第2会派・くまもと民主連合代表の鎌田聡氏(熊本市2区)は「検証委ではダムによらない治水対策10案の効果も明らかにすべきだ。ダムに慎重な立場の専門家も含めて多様な視点で検証する必要がある」と検証委の在り方自体を見直すよう知事に迫った。

共産党の山本伸裕氏(熊本市1区)も「ダムには緊急放流などのリスクもある。拙速な議論は避けるべきだ」との立場だ。

代表質問の答弁で蒲島知事は川辺川ダムも含めた「あらゆる選択肢を排除せずに検討する」と重ねて表明した上でこう続けた。「将来にわたって球磨川流域の安全安心を確保することが、天命だと覚悟を持って取り組む」(内田裕之、野方信助)

球磨川の治水対策について蒲島知事は、7月豪雨の検証を経て年内に方向性を示す方針だ。止まったはずのダム計画は再び動き出すのか。県政界や流域関係者の思惑を探る。

 

ものづくり拠点・豊田を水害から守れ 矢作川改修

2020年9月5日
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愛知県の矢作川で川幅が急に狭くなり、「鵜の首」と呼ばれている箇所について川底を掘って深くしたり、川幅を広げたりする工事が今年度から始まるという記事を掲載します。

治水対策の基本の一つは、流下能力が特に低い箇所について川底を掘ったり、川幅を広げたり、堤防を高くしたりすることですが、その基本的なことがなかなか実施されません。

この矢作川の「鵜の首」の場合も2000年9月の東海豪雨の際にその上流で氾濫があったのですから、もっと早く工事にかかるべきです。

国土交通省の河川工事の優先順位はどうなっているのでしょうか。

 

 

愛知)ものづくり拠点・豊田を水害から守れ 矢作川改修

(朝日新聞愛知版 2020年8月15日 11時00分)

3日前放流でダム容量2倍 農業・発電用、政府試算

2020年5月25日
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全国の一級水系ダムで農業、発電用にためている水を大雨が予想される三日前から放流し続ければ、雨をせき止める容量が全体で二倍になるとの試算を政府がまとめたという記事を掲載します。
しかし、そう簡単な話ではありません。ダム集水域の雨量を事前に定量的に予測することは難しく、空振りになることが多いです。
また、2018年7月の西日本豪雨では愛媛県肱川の野村ダム・鹿野川ダムではそれなりの事前放流をしていましたが、緊急放流を行う事態になり、肱川流域の住民に大変な災厄をもたらしました。
今回の試算の発表は「政府がまとめた」という表現になっているので、総理官邸の「既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議」https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kisondam_kouzuichousetsu/
からの情報であると推測されます。
この検討会議は菅義偉官房長官の肝いりで設置されたもので、議長は菅氏側近の和泉洋人内閣総理大臣補佐官ですが、どのような思惑で二人が関わっているのか、首を傾げるところがあります。

新聞記事のタイトルにある「3日前放流でダム容量2倍」は、上記の検討会議の資料をもとにしています。検討会議の「第3回 議事次第」を開けると、

参考資料「一級水系のダム一覧」https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kisondam_kouzuichousetsu/dai3/sankou.pdf
があって。955ダムについての試算結果の表が記されています。

955ダムの合計は事前放流により、洪水調節容量が約2倍になっていますが、しかし、これはあくまで機械的に計算した結果であって、実際にどれほど意味がある計算なのか不明です。

個々のダムの数字を見ると、事前放流後の洪水調節容量が有効貯水容量より大きくなっているダムが少なからずあります。これは発電等の放流管が有効貯水容量の下部にある場合、堆砂容量の方まで食い込んで放流を続ける場合であって、そのようなことが実際にできるのか、きわめて疑問です。

 

3日前放流でダム容量2倍 農業・発電用、政府試算
(東京新聞朝刊2020年5月24日)https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202005/CK2020052402000105.html

全国の一級水系ダムで農業、発電用にためている水を大雨が予想される三日前から放流し続ければ、雨をせき止める容量が全体で二倍になるとの試算を政府がまとめた。増える容量はダムによって異なるが、国土交通省は下流の氾濫リスクを低減できると判断。月内をめどに水系単位で国や自治体、農家などが協定を結んで放流体制を整え、梅雨期に備える。
ダムは、雨をためて洪水を防ぐ治水、農工業や発電、水道用にためておく利水の役割がある。政府は昨年、台風19号(東日本台風)の被害を教訓に、利水ダムでも大雨が降る前に水位を下げ、治水に活用する方針を決定。今回、国土保全や産業発展に重要な一級水系にある全国九百五十五ダムの能力を調べた。
治水ダム、治水と利水両方に対応する多目的ダムは計三百三十五カ所あり、治水向けの容量は最大計約四十六億立方メートル。底に堆積した土砂分を除くダムの有効容量に対する割合は30・1%だった。
これに、六百二十カ所ある利水ダムにたまった水と、多目的ダムの利水向けの水も大雨の三日前から放流しておけば、追加で計約四十四億立方メートルの治水容量を確保できることが判明。有効容量に対する割合は58・7%に上昇する。ただダムの放流設備は各地で異なり、事前放流で確保できる容量には差がある。
国交省は、実際の事前放流量は予想される雨量によって各地で調整すると説明。下がった水位は雨で回復し、農業などには影響しないと想定しているが、水不足になった場合は国の負担で代替水源を用意する。
協定には、放流を実施する降雨量や関係者間の連絡方法を明記。今後、自治体が管理する二級水系でも同様の体制整備を進める。

<増加容量の試算方法> 利水ダムと多目的ダムで農業、発電用にためた水を3日間(72時間)放流したと想定。各ダムの放流管の大きさなどを考慮し、事前放流で増やせる治水容量を試算した。3日前としたのは大雨の予測精度が高まるといった理由がある。対象は国、自治体、電力会社、土地改良区などが管理する計955ダム。一部ダムは放流管より低い位置にたまった「死水」も点検用の管などで放流する。十分な放流設備がなかったり、水をためずに発電したりするダムでは追加容量を確保できない。

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