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各地ダムの情報

秋田県東成瀬村(雄物川水系成瀬川)に建設中の成瀬ダムは2026年度完成予定で工事進行

2022年6月29日
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残念な情報ですが、国土交通省が秋田県東成瀬村(雄物川水系成瀬川)に建設中の成瀬ダムが2026年度完成予定で、工事が進行しているという記事を掲載します。

成瀬ダムは昨年(2021年)6月に工期が2024年度から2026年度に延長され、事業費が1530億円から2230億円へと、700億円も増額されることになりました。 https://suigenren.jp/news/2021/06/06/14684/

完成予定まであと4年というところで、700億円も増額するのですから、ダム事業者がやりたい放題という感じがします。

成瀬ダムは治水利水の両面で必要性がないダムです。「成瀬ダムは本当に必要ですか?」https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2012/09/naruse.pdf

成瀬ダムを中止させるべく、地元住民が2009年に工事差し止めを求める住民訴訟を起こして闘い続けました。水源連もこの裁判に関わりました。https://suigenren.jp/news/2014/06/04/5802/

しかし、2015年4月に仙台高等裁判所秋田支部で、住民側敗訴の判決が出ました。

まことに残念なことですが、裁判で成瀬ダムを中止させることができませんでした。

末尾に成瀬ダム予定地の「赤滝と能恵姫伝説」を記しておきます。

 

成瀬ダム工事現場ツアー 55トントラックや無人重機

(読売新聞2022/06/28 05:00)https://www.yomiuri.co.jp/local/akita/news/20220627-OYTNT50379/

発破ツアーで訪れる展望台から望む成瀬ダムの本体工事現場(11日、東成瀬村で)

作業が休みの日は、巨大重機の前で記念撮影ができる場合もある

東成瀬村で4年後の完成に向けて建設が進む成瀬ダムの工事現場を見学する無料のバスツアーが行われている。先端技術を駆使して巨大なダムを造り上げる様子を間近で見る、迫力いっぱいの45分間だ。

国土交通省成瀬ダム工事事務所が「なるせダムアドベンチャーバスツアー」と題して企画した。

同ダムは国直轄事業で総事業費は2230億円。工事が本格化し、現場では普段見ることができないような大型重機が稼働しているという。

ツアーは、ダム上流の展望台を発着し、同事務所職員の説明を受けながら通常は立ち入りできない工事現場を巡る。巨大動物のような55トントラックとすれ違ったり、重機が遠隔操作で無人走行する様子を見たりし、非日常的な冒険気分を味わえる。

工事中の今しか見ることができない光景とあって、県外から参加するダムファンも。新潟市の男性(50)は「ここは規模がすごい」と満喫した様子。現場の様子は日々変わるため、同事務所は「何度でも参加して見てほしい」としている。

一般向けツアーは今月11日に始まった。隔週土曜の開催で、来月は9、23日に予定している。10月まで。出発時間は午前9時半、同10時半、同11時半、午後1時半、同2時半、同3時半の計6回。定員は各回10人で先着順に受け付ける。

参加希望者は、同事務所ホームページに掲載されている申込書に記入し、メールかファクスで送る。

問い合わせは同事務所(0182・23・8450)へ。

 

赤滝と能恵姫伝説

成瀬ダム建設予定地の区域内には、古くから県南地方の住民に「雨乞いの神様」として崇められている「赤滝」があります。江戸時代後期の民俗学者、菅江真澄が栗駒山に向かう道すがら立ち寄って、「駒形日記」に記録したという由緒ある場所です。
かつての赤滝神社は、日照りの年にはお参りにくる農家の人たちが、村の中から延々の列を作っていたほど厚い信仰を集めていた場所だと聞きます。赤滝神社の由来は、今を遡ること280年余り昔の伝説の女性、能恵姫に源を発しています。能恵姫は、農民たちを渇水と洪水の不安から救うために、竜神と化して赤滝に住みついたと言い伝えられています。赤滝は、この地域の昔を偲ばせる貴重な文化遺産です。

『どうかダムを止めて』という能恵姫の涙声が、聞こえてくるようです

 

 

第1回 球磨川水系学識者懇談会(2022年6月24日)の資料と報道

2022年6月27日
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第1回 球磨川水系学識者懇談会が6月24日に開かれました。

その懇談会の資料が下記の通り、九州地方整備局 八代河川国道事務所のHP掲載されました。

 

令和4年度 第1回 球磨川水系学識者懇談会 令和 4  624日開催 http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/river/gakusiki_kondankai/20220617.html

議事次第委員名簿座席表設立趣旨規約公開方法資料1資料2資料3資料4-1資料4-2資料5資料6資料7資料8資料9参考資料1参考資料2参考資料3参考資料4参考資料5

 

関係住民様より寄せられたご意見 (500近い意見が出されました。因みに私の意見は436~450ページに載っていました。)

 

この会議をZOOMで傍聴しました。今回のような会議を数回重ねるかと思っていたら、球磨川水系河川整備計画案の案の審議はこれで終わりで、河川整備計画策定に向けて一挙に進むことになりました。

多くの方が 公聴会や意見書で球磨川水系河川整備計画原案の根本的な問題点を指摘したけれども、今回示された河川整備計画案の案は、河川管理者の考えに抵触しない、無難な意見だけがほんの少し盛り込まれただけのものでした。

河川整備計画原案の公聴会及びパブリックコメントは当初から心配されていた通り、河川管理者が市民の意見を計画に反映したことにするためのセレモニーにすぎませんでした。

多く方は球磨川の河川整備のあり方を根本から変えなければと思って、力を振り絞って原案の問題点を指摘したけれども、ほとんど反映されませんでした。

本当にむなしいですね。

 

会議の大半が事務局側の説明でした。委員の発言もありましたが、有益な発言はゼロという感じでした。

懇談会の座長の小松利光・九州大名誉教授は、前から川辺川ダム推進派の人です。

2000年代に川辺川ダムの住民討論集会が熊本で開かれ、私たち住民側と国土交通省が喧々囂々の議論を行いました。その集会で小松氏はほぼ毎回、会場からダム推進の立場で発言していました。

そのような人が座長を務めているのですから、会議の方向は最初から分かっています。

 

この会議では、球磨川水系河川整備計画案だけではなく、川辺川ダム建設事業の再評価なども議題になりました。

費用対効果は、資料9 川辺川ダム建設事業の再評価 、資料8 球磨川直轄河川改修事業の再評価 に掲載されています。川辺川ダムの費用対効果のページを末尾に掲載しておきます。

旧ダム計画で支出した事業費も加えると、川辺川ダムの費用対効果が0.4であるが、流水型ダム計画単体では1.9になるという話です。

所詮は作り上げた数字でしかありませんが、過去の投資も含めた川辺川ダム事業全体の費用対効果は0.4ですから、意味のある事業であるとは思われません。

 

今回の会議の記事は次の通りです。  

川辺川流水型ダム、費用対効果1.9倍 九地整試算

(西日本新聞2022/6/25 6:00] https://www.nishinippon.co.jp/item/n/946059/

国土交通省九州地方整備局は24日、2020年7月の熊本豪雨で氾濫した熊本県の球磨川の治水策で支流川辺川に整備する流水型ダムについて、完成予定の35年度までの14年間で、投入する事業費と得られる便益の比率を示す費用対効果が1.9倍となるとの試算を公表した。旧川辺川ダム計画で執行された用地補償などを含めると、0.4倍に下がるとした。1を下回ると投資効果が低いとされるが、九地整は「試算に計上できない人的被害の軽減効果がある」と強調した。

球磨川の治水策を検討する学識者懇談会(委員長・小松利光九州大名誉教授)で九地整が提示した。九地整は、整備計画規模の洪水の「想定死者数」は、ダムがない場合は120人で、ダムがあれば1人に減らせるとの試算も説明。懇談会は、住民の命や生活を守る効果を考慮し、事業継続を了承した。(古川努)

 

川辺川流水型ダム「投資見合う効果」国試算事業継続の方針案

(読売新聞2022/06/24 15:00)  https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20220624-OYTNT50079/

2020年7月の九州豪雨で氾濫した熊本県・球磨川の治水対策を巡り、国土交通省は24日、支流・川辺川で計画される流水型ダム事業の費用対効果が1・9となり、投資に見合うとされる「1」を上回ったとの試算を公表した。従来の「川辺川ダム」計画で実施済みの整備費を含めた場合は0・4とした。国側は、人的被害の軽減効果も確認されているなどとして事業継続の対応方針案を示した。

同日、熊本市で開いた球磨川水系学識者懇談会に提示した。懇談会は事業再評価の役割を担っており、整備が妥当かどうかを判断する。同省が川辺川ダムを巡る費用対効果を示すのは2001年以来。

試算によると、流水型ダムの事業費(約2680億円)を基に算出した費用と、数十年に1度の大雨による住宅や公共施設、農作物などへの被害軽減効果とを比較した場合、費用対効果は1・9になるとした。

一方、09年に中止となった川辺川ダム計画で実施済みの整備費も加えた総事業費(約4900億円)を基にした費用対効果は「1」を下回った。同省はダム整備によって、費用対効果には含まれない想定死者数や想定孤立者の大幅な軽減効果が見込めるとして、事業継続を求めた。

 

川辺川ダム、新計画は「投資に見合う」 人的被害考慮 国交省

(毎日新聞 2022/6/24 21:200)https://mainichi.jp/articles/20220624/k00/00m/040/302000c

川辺川ダムの水没予定地。予定地にあった民家は高台や村外に移転した=熊本県五木村で2020年11月19日、吉川雄策撮影

2020年7月の九州豪雨で氾濫した球磨川(熊本県)の支流・川辺川に建設する流水型ダム計画について、国土交通省は24日、白紙になった旧ダム計画で支出した事業費も加えて試算すると費用対効果が0・4になり、投資に見合うとされる1・0を下回ると明らかにした。しかし、流水型ダム計画単体では1・9になり、国交省は人的被害の軽減なども含めると投資に見合う効果があるとした。

熊本市で国交省と県が開いた球磨川水系学識者懇談会で示された。

費用対効果は数十年に1度の豪雨を想定し、ダムによって免れる家屋や農作物の被害額を基に試算。旧ダム計画では1967年度以降、既に用地買収費など約2220億円を支出しているため、流水型ダム計画で見込まれる事業費約2680億円と合わせると費用対効果は0・4にとどまる。しかし旧ダム計画分を除くと1・9で、ダム以外の河川改修事業も合わせると3・4に上昇するとした。

また、費用対効果には含まれないものの、流水型ダムができることによって流域の孤立者数は最大約2万7000人から約4300人に、想定死者数も190人から5人に減るとした。

試算結果を踏まえ、懇談会は事業継続を認めた。小松利光委員長(九州大名誉教授)は報道陣に「過去にさかのぼると費用対効果は苦しいがベネフィット(利益)も多い」と述べた。【野呂賢治】

 

 川辺川の流水型ダムの費用対効果、1上回る 国交省が説明

(熊本日日新聞  2022年06月24日 15:20 ) https://kumanichi.com/articles/702322

国土交通省が流水型ダム事業の費用対効果を示した球磨川水系学識者懇談会=24日、熊本市中央区

国土交通省は24日、球磨川支流の川辺川に建設する流水型ダムについて、費用対効果を示す「費用便益比」は、完成予定の2035年度までの14年間で1・9となり、国の予算化の目安となる1を上回るとする分析結果を明らかにした。

20年7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川の治水策を議論する学識者懇談会で説明した。数値化できない人的被害や交通の不便を軽減する効果を含めると、さらに費用対効果が見込まれるとして、流水型ダム建設を進める方針案を示し、懇談会も了承した。

流水型ダムの事業費約2680億円と、人吉市で「50年に1度」、八代市で「80年に1度」の大雨が降った場合に想定される住宅や公共施設、農作物などへの被害の軽減効果を比較した。河道掘削や輪中堤、宅地かさ上げなどの河川改修事業約1570億円を加えた場合の費用対効果は、3・4と示した。

ただ、旧川辺川ダム計画で実施済みの事業費を加えた場合の総事業費は約4900億円に上り、費用対効果は0・4と予算化の目安の1を下回った。

懇談会では、球磨川水系の河川整備計画原案に対する公聴会とパブリックコメント(意見公募)で寄せられた延べ488件の意見を踏まえ、アユの生息環境の確保や森林再生の取り組みなど34点を計画に反映させたと説明した。

国交省は、学識者懇談会の議論を踏まえ、早ければ6月中にも河川整備計画案を公表する。(元村彩)

 

資料9 川辺川ダム建設事業の再評価

佐世保市水道の古いダムを改修するために石木ダムが必要という話の虚構

2022年6月5日
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佐世保市水道の古いダムを改修するためにも石木ダムが必要だという話がネット上でも見られるようになりました。

例えば、次のツィッターがそうです。

佐世保市北部のダム現況|星野夕陽|note  https://note.com/choidamnet/n/n81e9ce58978c

「佐世保市北部の水道用ダム、山の田ダム、転石ダム、菰田ダム、相当ダム、川谷ダムが非常に古くて、改修したいけど水に余裕がない、石木ダムが重要だ」という主張です。

しかし、この主張は佐世保市水道の現状を踏まえない誤った主張であって、石木ダム推進の世論を拡げていくために書かれたものです。

そこで、その誤りを指摘しておくことにします。

佐世保市の水道水源を整理した表を下記に示します。

上表において河川慣行水利権と湧水は許可水利権ではないということで、佐世保市は保有水源から除外しています。しかし、これらの水源は渇水時も安定取水が可能であって、実際に2007年度渇水でも許可水利権と同程度の取水がされていました。また、長崎市水道は河川慣行水利権(矢上水源12,000㎥/日)も水源として計上していますので、佐世保市による保有水源からの慣行水利権の除外は恣意的なものです。

上表の数字は取水量ベースなので、給水量と比較するためには利用量率〈1-浄水場ロス率〉を乗じなければなりません。佐世保市は現在の保有水源をなるべく小さくするために、利用量率を90%としていますが、実際は下図の通り、95%以上あります。

なお、下図の通り、佐世保市も2004年度予測では95%を使っていました。

佐世保市の一日最大給水量は下図の通り、減少傾向が続き、2021年度は69901㎥/日になりました。利用量率を実績を踏まえて95%とすれば、取水量ベースで73580㎥/日です(69901÷0.95)。現在の保有水源の計は100500㎥/日ですから、2.5万㎥/日以上の余裕があります。

古いダム(山の田ダム、転石ダム、菰田ダム、相当ダム、川谷ダム)の改修で、ダムの休止が仮に必要であったとしても、保有水源が最大の川谷ダムでも水源量は13300㎥/日ですから、現在の余裕水源の範囲で順次、改修を進めていけばよいのであって、その改修のために石木ダムが必要だというのは、根拠のない話です。

すなわち、佐世保市水道は水需要の減少傾向が続いてきていて、十分な余裕水源を抱えるようになったのですから、その余裕水源の範囲で古いダムの改修を順次進めていけばよいということです。

佐世保市水道の古いダムを改修するために石木ダムが必要という主張は、石木ダム推進の世論を拡げていくためにつくられた話でしかありません。

 

市房ダム、早めに警戒情報 緊急放流に備え避難促す(ダムがあるために下流住民は緊急避難)

2022年5月30日
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熊本県は球磨川上流の県営市房ダムについて、降雨によってダムの貯水容量が半分ほどになった段階で新たに警戒情報を出し、緊急放流せざるを得なくなる事態に備えて、下流域の住民に早めの避難行動を促す運用を6月から始めると発表しました。

2020年7月球磨川水害では市房ダムは緊急放流を行う直前の状態に陥り、下流住民に恐怖を感じさせました。

下流を水害から守るために設置されたはずのダムによって、下流住民はダムからの緊急放流に備えて避難行動をしなければならないのですから、まったくおかしな話です。

ダムがなければ、ダムを前提としない河川改修が行われてきたはずですが、ダムがあるためにそれが行われないため、下流住民は危険にさらされるのです。

ダムを前提とした河川行政に終止符を打つべきです。

市房ダムは球磨川の環境にも大きな影響を与えています。下記の写真は15年以上前の写真ですが、市房ダム下流の球磨川の河床を撮影したものです。市房ダムによって土砂の供給が遮られたため、市房ダム下流の河床は侵食が進んで、軟岩が露出しており、河川環境が悪化しています。

今回の球磨川河川整備計画原案では市房ダムは再開発することになっていますが、緊急放流問題と環境問題から考えて、市房ダムはむしろ撤去を検討すべきものです。

下記の熊本放送の記事に登場する、市房ダム管理所の塚本貴光 所長(当時)が記した当時のメモが熊本県の歴史公文書になっています。

「寸前で回避された緊急放流、緊迫の所長メモが歴史公文書に」https://suigenren.jp/news/2021/07/04/14774/

(読売新聞2021/06/29 08:59)https://www.yomiuri.co.jp/national/20210629-OYT1T50092

なお、現在の市房ダムは貯水容量4020万㎥、発電容量2880万㎥、洪水調節容量630~1830万㎥のダムです。

(静岡新聞2020.12.24)

 

市房ダム、早めに警戒情報 緊急放流に備え避難促す 6月から

(熊本日日新聞  2022年05月24日 18:51) https://kumanichi.com/articles/666726

下流域の住民に注意を促すため、早い段階で警戒情報を出す運用を始める県営市房ダム=24日、水上村

熊本県は24日、球磨川上流の県営市房ダム(水上村)について、降雨によってダムの貯水容量が半分ほどになった段階で新たに警戒情報を出す運用を、6月1日に始めると発表した。2020年7月豪雨の教訓を踏まえ、緊急放流せざるを得なくなる事態に備えて、下流域の住民に早めの避難行動を促したい考えだ。

市房ダムは20年7月4日に発生した豪雨災害で、未明の午前2時10分に「水をためる洪水調節を始めた」と関係市町村などに通知。その後も水位の上昇で満杯に近づいたが、午前6時半に河川からの流入量をそのまま下流に流す緊急放流(異常洪水時防災操作)の予告情報を出すまで、約4時間にわたって新たな情報発信がなかった。

緊急放流は寸前に回避されたものの、予告情報が出た時点で下流の人吉市などでは既に球磨川の氾濫で浸水被害が発生しており、住民から「(さらに水かさが増える)緊急放流に恐怖を感じた」との声が相次いだ。

県によると、新たな運用では20年豪雨と同規模の流入量になった場合、緊急放流の予告情報の約1時間前に警戒情報を出す。県河川課は「河川の水位や土砂災害などの情報と合わせて避難に役立ててほしい」と呼びかけている。

市房ダムは1960年に完成。これまでに梅雨や台風などの大雨に伴い71年、82年、95年の3回、緊急放流をしている。(髙宗亮輔)

 

市房ダム、放流前に早めの発信 熊本豪雨教訓、「貯留能力の半分」も

(西日本新聞2022/5/25 11:30 ) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/928626/

熊本県は6月1日から、球磨川上流の県営市房ダム(水上村)の防災情報を拡充し、緊急放流予告に至る前に、避難判断のきっかけにしてもらおうと「貯留能力の半分情報」の発信を新たに始める。2020年の熊本豪雨時は、緊急放流の予告の段階で既に浸水が始まっており、逃げ遅れた人たちが恐怖を感じたことを教訓とした。県によると、全国でも珍しい試み。

市房ダムの防災情報の提供は主に(1)予備放流開始(2)洪水調節開始(3)緊急放流2時間前(4)同1時間前-の4段階。県は「熊本豪雨で避難行動を支援する役割を十分に果たせなかった」との反省を踏まえ、貯留能力の半分に達した時点で住民に伝え、避難の準備や開始の判断材料としてもらう考え。

20年7月4日の豪雨時、市房ダムは午前2時10分に洪水調節開始を通知。緊急放流2時間前通知は午前6時半、1時間前通知は同7時20分だった。同8時45分に緊急放流の「見合わせ」、同10時半に「行わない」と通知。最終的に緊急放流は回避した。

一方、球磨川の氾濫発生情報が出された時刻は、球磨村渡地区で同5時55分、人吉市で同7時50分。先行して支流が氾濫し、地元消防の記録では同6時40分以降、人吉市では「逃げ遅れ」「車両水没」「床上浸水」の119番が増えた。

県河川課によると、市房ダムはこれまでに豪雨や台風で3回緊急放流している。熊本豪雨時に「半分情報」があれば発信は同5時半ごろ。過去99回の洪水の3割が「半分情報」を出す基準に達しているという。 (古川努)

 

早期避難につなげる 熊本県の市房ダムで新たな情報発信 2020年豪雨を教訓に

(RKK熊本放送2022年05月24日18時45分)  https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/rkk/region/rkk-53196

球磨川(くまがわ)の上流にある市房(いちふさ)ダム。2020年7月の豪雨で緊急放流の予告が出された際、川は既に一部で氾濫していました。
そこで、今後住民の早期避難につなげられるよう、今回新たな情報発信の基準が設けられました。
その基準は「貯留能力の半分まで水がたまった」というもので 2020年7月の豪雨で言えば、球磨川が氾濫する30分ほど前のタイミングで出されます。

市房ダム

当時 市房ダムの管理事務所は、氾濫の4時間ほど前、ダムへの水の流入が一気に増えだした時に流域の自治体に通知を出しました。

熊本県市房ダム管理所 塚本 貴光 所長(当時)
「異常洪水時防水操作(緊急放流)に入る可能性がある。時間はまだ未定」

塚本 貴光 所長(当時)

ただ、次の通知は基準がなかったため、球磨川が氾濫した30分後に「緊急放流の予告」というタイミングでした。

緊急放流の通知前に球磨川は氾濫していた

これでは流域住民の早期避難につながらないと、今回ダムを管理する県が新たな基準を設けました。

新基準を設ける

また、当時 球磨川が氾濫した後に「緊急放流」という言葉が出てきたため、恐怖を感じた住民がいたことも基準を設けた背景とされています。
この情報発信は6月から始まります。

 

「皆さんと同じような普通の暮らしをしたい」石木ダム強制測量から40年【長崎・川棚】

2022年5月29日
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石木ダム問題の40年間を振り返った長崎放送のニュース記事を掲載します。

なかなかの力作で、素晴らしい記事だと思います。31枚の写真で経過も知ることができます。

この記事を読んで、事業者に対して心底からの怒りが込み上げてきます。

40年間という本当に長い間、地元の人たちは、必要性が乏しい石木ダム事業によって苦しめられ続けてきました。

無意味な石木ダムは、何としても事業を中止させなければなりません。

 

「皆さんと同じような普通の暮らしをしたい」石木ダム強制測量から40年【長崎・川棚】

(長崎放送2022/5/24(火) 12:41) https://news.yahoo.co.jp/articles/0b9f624e3e295c40d3414b2c2cdd653342f7a681

長崎県川棚町に計画されている石木ダム事業で、40年前に県が行った機動隊を伴う現地測量は反対住民と行政との間に大きな溝を作る結果となりました。

今も続く反対運動の起点ともなった強制測量について振り返ります。

【写真を見る】「皆さんと同じような普通の暮らしをしたい」石木ダム強制測量から40年【長崎・川棚】

(31枚の写真を見ることができます。https://newsdig.tbs.co.jp/articles/gallery/52729?station=nbc )

今年3月、石木ダム建設予定地を訪問した大石 賢吾 知事。 ダム反対派の住民に就任の挨拶するためでした。

大石 知事「ダム建設では皆様に本当に大変な思いをさせてしまっていることに、私も知事として心苦しく思っております」

 

「話し合いをせずに強制執行した」刻まれた県に対する”不信感”

なぜ知事が心苦しく思うのか。

それは住民によるダム反対運動を激化させた要因が県の側にもあるからです。

「強制測量、阻止~」 強制測量が始まったのは1982年5月21日。 その1週間前に知事と話し合いをしたばかりでした。

「帰れ、帰れ」 県はおよそ150人の機動隊員を動員。ダムの測量を目指す県職員はバスの中にいました。

機動隊員「どきなさい、諸君の行為は違法行為だ」 道路に座り込み、行く手を阻む住民。 激しいもみ合いが続きながらも、県の測量班がじわじわとダム予定地に近づきます。 県職員「押していけ、押していけ」 反対住民との話し合いが進まず、業を煮やした県側の強硬策でした。

測量用の杭を打ち込む音「カンカンカンカン」 岩下 和雄さん(当時35)「県の方が自分たちから話し合いを言い出しておいて、話し合いをせずに強制執行してきたわけだから、県の方が話し合いを断ってしまったわけです。私達じゃなくて」 抗議活動に参加した岩下すみ子さんは、当時33歳。佐世保から嫁いで10年目でした。

今も反対派の櫓が残るこの道を歩いて現場に向かいました。

岩下 すみ子 さん「(当時の)写真を見てわかるごと、悲壮感溢れてますよね。何しろ初めてのことでしょ」 機動隊と向き合うのはこの日が初めてでしたが、強気の姿勢は崩しませんでした。 (当時の音声)「私たちを妨害しないでください」

岩下 すみ子 さん「怖かったですよ、みんな。どういうことが起きるんだろうかっていうような恐ろしさがありましたね」

自分たちの住む土地に県職員を入れないためのギリギリの抵抗が ”道路での座り込み” でした。

岩下 すみ子さん「人が途絶えないようにずっと並んでいましたね。排除されても排除されても、またやってくるっていう感じですね。私たちがね」 のべ7日間続いた強制測量。 抜き打ちだったうえ、年寄り・子どもにも容赦のない対応。 行政への不信感は一気に高まり、負の歴史として住民の心に深く刻みこまれました。

岩下 すみ子さん「かわいそうやったですね。子供たちにも小さい時から大変な思いをさせたねと思いますね。今思えばね」

ダム反対を訴える住民の中で最高齢の松本マツさん95歳です。

反対運動の拠点の1つ『団結小屋』に今も通い、ダム反対の意思を示しています。

松本マツさん「みんなは山でも頑張りよらすけん、(私も)頑張らんばねと思って、来れる間ですね。気持ちだけでもしっかりしていかんばねと思って」

40年前の強制測量の際には体を張って闘った松本さん。その時の痛みは今も忘れていません。

松本さん「機動隊って荒かもんね、いっぱい(人が)並んどるとに、踏みつけたごとして通って行きよったですもんね」

団結小屋の窓からは、県が去年からはじめた本体関連工事の現場が見えます。

徐々に削られていく山の姿を見て、怒りがこみ上げてくるといいます。

松本さん「コンクリート塀(堰堤)ばはめるとかねと思って、でもどこさん出ていくですね」

 

「普通の暮らしがしたい」反対活動を続けて40年

岩下さんも毎日、石木ダム関連の工事現場で座り込みを続けています。強制測量から40年、住民らはずっと反対運動を続けているのです。

岩下すみ子さん「私たちも普通の暮らしができてないですもんね、皆さんと同じような普通の暮らしをしたいと思いますね」

ダム予定地内にある住民らの土地・建物は、3年前、県に強制収用されました。

しかし住民らは補償金の受け取りを拒否。立ち退くことなく、そのまま住み続けています。

岩下すみ子「もう強制、強制で権力をかざしたような、こういう事業のあり方っていうのはね、考え直して欲しいですね。考え直す時期が来てると思います」

こうした中、今年、12年ぶりに新しい知事が誕生しました。

就任後、すでに2回、現地を訪れています。

住民「ここからずっとですよ、ホタルだらけ。ホタル川なんです」

大石知事「子供たちにもホタルが思い出ですね」

選挙の際は、石木ダム推進の立場を明らかにしていた大石知事ですが、先月は反対住民とともに水没予定地域を視察しました。

これまでの知事には見られなかった行動だけに、周囲には “戸惑い” とともに “期待感” も広がっています。

大石知事「まずはしっかりと、この地域で川原の皆様方が守られていらっしゃるもの…それをまずしっかりと見て感じてですね。そこを拝見したうえでしっかりとお話し合いをさせていただきたいと思ってますので」

岩下すみ子さん「ここをそんなにまでして強制的に奪ってまでもダムが必要かっていうことですよね。何回も話し合いを続けるとおっしゃったから、それに期待したいと思います」

住民と行政との亀裂を生んだ強制測量から40年を迎えた今年、住民が望む「ダムの必要性」に立ち返っての話し合いが実現するのか。

今後の動向が注目されます。

 

※今回の記事のため、大石 長崎県知事へ取材を申し込みましたが「今は住民との関係を構築している途中の大事な時期なので、今回の取材は遠慮させてほしい」として、考えを個別に聞くことはできませんでした。

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