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二風谷ダム判決25年 先住権回復足踏み 沙流川での有害無益なダム建設 平取ダムも完成へ

2022年3月28日
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アイヌ民族を司法の場で初めて先住民族と認めた二風谷ダム(北海道平取町)訴訟の札幌地裁判決から今日(3月27日)で25年目になります。

そこで、北海道新聞が二風谷(にぶたに)ダム判決を大きく取り上げた記事を掲載しています。その記事を掲載します。

二風谷ダムは沙流川(さるがわ)の河口より約21キロメートの位置に1998年に造られました。下図の通り、その上流の額平川(ぬかびらがわ)に現在、平取(びらとり)ダムが建設中で、完成しつつあります。

(沙流川総合開発事業hhttps://www.hkd.mlit.go.jp/mr/sarugawa_damu/tn6s9g0000000zll.html

平取ダムの建設に対して反対運動が進められました。(「虚構に基づくダム建設」(北海道自然保護協会編)(2013年05月05日)http://suigenren.jp/news/2013/05/06/4242/ 。同著はサンルダム、平取ダム、当別ダム等のダム建設の虚構にメスを入れた、なかなかの力作です。)

現在も「流域の自然を考えるネットワーク」が平取ダムの問題点を指摘しています。http://protectingecology.org/

沙流川におけるダム建設の重要な問題は、土砂供給量が非常に大きい河川であるので、ダムが速いスピードで流入土砂で埋まっていくことです。

二風谷ダムは総貯水容量3150万㎥に対して、2019年度末の堆砂容量がすでに1317万㎥にもなっています(国土交通省の数字)。

まもなく完成する平取ダムも同じ運命をたどることは確実です。

北海道の沙流川にはアイヌ民族の先住権問題とともに、有害無益なダム建設の問題があります。

  

二風谷ダム判決25年 先住権回復足踏み 原告「変わると思ったが…」

(北海道新聞2022/03/27 08:01 )https://www.hokkaido-np.co.jp/article/661651

建設が進み、4月にも運用開始となる見通しの平取ダム。アイヌ民族の聖地がダム建設で損壊を余儀なくされた=23日

アイヌ民族を司法の場で初めて先住民族と認めた二風谷ダム(日高管内平取町)訴訟の札幌地裁判決から27日で25年を迎えた。判決はアイヌ民族の文化や価値観がいかに軽視されたかを明らかにし、国の政策に影響を与えた。だが、先住権回復は足踏みしたままだ。社会で判決の記憶が薄れつつある中、関係者はいま一度、判決が問うたアイヌ民族の現状に目を向けるよう願っている。

「できてしまったものは仕方ない。ただ、ダム建設がアイヌの文化や権利にどんな影響を及ぼしたのか、国はきちんと研究して総括すべきだ。あの判決で終わりではない」。原告の一人、貝澤耕一さん(76)は二風谷ダムそばにある自宅で、1997年3月の判決を振り返り、こう強調した。

98年に完成した二風谷ダム建設は地域のアイヌ民族が神に祈りをささげる聖地「チノミシリ」と位置づけていた複数箇所の岩山を破壊し、水没させた。訴訟では貝澤さんとアイヌ民族初の国会議員となった故萱野茂さんの地権者2人がダム建設は聖地を奪うとして土地収用の取り消しを請求。判決はダム本体が完成しているとして請求は棄却したが、建設は先住民族であるアイヌの文化享有権などを「軽視ないし無視」し、違法だと認定した。

だが、ダム建設はその後も続いた。二風谷ダムとセットで計画された平取ダムは2013年に着工し、間もなく完成する。同ダム建設でもチノミシリは損壊を余儀なくされた。国は判決を踏まえ、平取アイヌ協会と事前に協議し、チノミシリの一部をコンクリートなどで復元する工事を施したが、貝澤さんは「復元はアイヌ文化を保存しているというアリバイづくりでしかない」と批判する。

権利回復の動きも鈍い。国は19年、法律で初めてアイヌを先住民族と位置づけるアイヌ施策推進法を制定したが、伝統的資源の優先使用など先住権を認める法律はなく、儀式で使うサケの漁も許可制だ。北欧など諸外国と比べると先住民族政策は遅れ、十勝管内浦幌町のアイヌ民族団体がサケ漁を行う権利の確認を求めた行政訴訟も進行中だ。貝澤さんは「あの判決で状況が変わると思ったが、四半世紀たっても権利回復は進んでいない」と嘆く。

萱野さんの次男志朗さん(63)も「アイヌ施策推進法に基づく国の交付金は箱物ばかりに使われ、権利回復につながるような人材育成に振り向けられていない」と指摘する。ただ先住権回復が簡単ではないことも認識しており、「父は『一本の毒矢や切れ味の良い刀より、話し合うことが大事だ』と言っていた。権利回復には、社会に共感してもらえるような活動を進めることが重要だ」と話した。(田鍋里奈、杉崎萌)

 <ことば>二風谷ダム訴訟 ダム建設地の地権者2人が道収用委員会に土地収用の裁決取り消しを求めた行政訴訟。札幌地裁の一宮和夫裁判長(当時)は判決で、原告の請求は棄却したが、アイヌ民族について「わが国の統治が及ぶ前から北海道に居住し、わが国の統治に取り込まれた後も経済的、社会的打撃を受けつつ、なお独自の文化を喪失しない社会的集団であるから先住民族に該当する」と認定した。

その上でダム建設について「国は事業の達成で得られる公共の利益が、失われるアイヌ民族の文化享有権などの価値に優劣するか判断するための必要な調査を怠り、アイヌ文化への影響を可能な限り少なくする対策を講じないまま事業を認定し、裁量権を逸脱した」として違法性を認めた。

 

二風谷ダム判決25年 判決の原点忘れず議論を 原告弁護団長・田中宏弁護士に聞く

(北海道新聞2022/03/27 08:03 )https://www.hokkaido-np.co.jp/article/661652

たなか・ひろし 1946年、小樽生まれ。北大法学部卒業。72年司法試験合格。札幌弁護士会会長、日本弁護士連合会副会長などを歴任。札幌在住。75歳。

二風谷ダム訴訟で原告弁護団長を務めた田中宏弁護士に判決の意義や先住民族政策の課題を聞いた。(聞き手・田鍋里奈)

今振り返っても画期的な判決です。アイヌ民族が征服者の日本の法律をたてに、日本の裁判所で自分たちは先住民族だと認めさせ、民族固有の文化を享有する権利を認めさせました。

原告2人の裁判の目的はアイヌ民族の復権でした。損害賠償請求などお金が目的ではなかったので、かえって難しく、最初は途方に暮れました。

訴訟の準備では2人から話を聞き、アイヌ民族の誇りをどう取り戻すか弁護士13人で議論しました。その結果、国は当時、立法、行政、司法のいずれもアイヌを先住民族と認めたことがないと気づき、まず司法の場で先住民族と認めさせることを目標にしました。

訴訟では北海道の歴史を掘り下げ、アイヌ民族が今のような状況に置かれるようになった歴史的な経緯を明らかにしました。さらに国際的な動きも伝えました。オーストラリアでは1992年、先住民の伝統的な土地所有権を認める判決があったほか、国連でも当時、先住民族権利宣言の起草作業が進んでいました。こうした国際的な潮流も追い風になったと思います。

2007年に宣言が採択された時、日本政府はアイヌを先住民族と認めていませんでしたが、採択に賛成しました。あの判決から変化が生まれたと思います。

アイヌ施策推進法はアイヌを先住民族と位置づけましたが、政策の目指すべき姿が見えず、先住権にも触れていない点が問題です。政府は先住権を認めるのか、認めるならどこまで認めるのか、基本的な考え方について何も議論していません。早急に議論を始めるべきです。

ただ、長い目で見ればアイヌ政策は進展するでしょう。米国での黒人差別の解消も長い年月がかかっています。判決の原点を忘れず、進むことが大切です。

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