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ダム事業検証検討・有識者会議

脱ダムは遠のく 5年で予算2割増 「継続」続出、中止5件

2015年12月29日
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12月24日、2016年度予算案発表に伴い、直轄ダム・水資源機構ダムの予算案も公表されました。

この直轄ダム・水資源機構ダムの予算の推移について12月28日の東京新聞夕刊に、
「脱ダムは遠のく 5年で予算2割増 「継続」続出、中止5件」という記事が掲載されました。
今年の夏まで東京新聞特報部におられた篠ケ瀬祐司記者の記事です。
この記事にあるように、直轄ダム・水資源機構ダムは30ダムが検証の対象になり、18事業が推進、5事業が中止になりました。残り7事業が検証中です。
中止の5事業は吾妻川上流総合開発、荒川上流ダム再開発、利根川上流ダム群再編、七滝ダム、戸草ダムであり、そのうち、3事業はダム事業として明確なものではありませんでした。
私たちが注目している直轄ダム・水資源機構ダムのうち、検証の結果が出たものは、推進のゴーサインが出てしまいました。腹立たしい限りですが、屈することなく頑張りたいと思います。
そして、検証中の7ダムは利賀ダム、大戸川ダム、筑後川水系ダム群連携、城原川ダム、思川開発 [南摩ダム]、丹生ダム、木曽川水系連絡導水路です。
これらの事業を何とか中止にもっていきたいものです。

脱ダムは遠のく 5年で予算2割増 「継続」続出、中止5件

(東京新聞夕刊 2015年12月28日)http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201512/CK2015122802000216.html

 

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 安倍政権下で、国や独立行政法人「水資源機構」が建設するダム事業の予算が増え続けている。

「できるだけダムに頼らない治水」を掲げた民主党政権下の二〇一〇年九月にダム事業の是非の検証が始まったが、多くが「継続」と判断され工事が本格化したためだ。 (篠ケ瀬祐司)

 検証は事業者が自治体関係者などから意見を聞きながら行い、国土交通省の有識者会議がその手続きを点検する。事業中止をめぐり注目を集めた八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)は国交省関東地方整備局が検証して「継続」と判断した。

国の機関が国の事業を点検する仕組みに疑問の声も上がった。

 検証の対象となったダム事業は三十で、これまでに判断が下されたのは二十三事業。うち八割近い十八事業が「継続」で、「中止」は五事業にとどまる。

 検証対象のダム事業は着手した工事は続けるが、新たな段階に入らなかった。八ッ場ダムは水没予定地住民向けの道路や橋などの工事は進める一方、検証結果が出るまでダムサイト本体の工事を始めなかった。

 検証が始まった翌年度となる一一年度当初予算のダム事業費は約千二百三十九億円。自公政権が組んだ〇九年度当初予算(約二千二百三十六億円)の半分近くに減った。

 しかし、検証で「継続」が増え、ダム予算も積み上がった。第二次安倍内閣発足後の一三年度当初予算は約千二百七十五億円。二十四日に閣議決定された一六年度当初予算案では約千四百五十三億円と、一一年度と比べ二割近く増えた。

 ダム問題に取り組む市民団体「水源開発問題全国連絡会」の嶋津暉之共同代表は「八ッ場ダムの場合、実情に合わない過大な水需要を前提にするなど、検証が形式的だった」と指摘。結果の出ていない七事業は、より科学的な検証を進めるよう求めている。

淀川水系の丹生ダム計画が中止へ(2014年1月16日)

淀川水系の丹生ダム計画が中止になる見通しになりました。

思えば、長い道のりでした。このダム計画が浮上したのは1972年、淀川水系フルプランに組み込まれたのは1982年です。その頃、私(嶋津)は「河川・湖沼と海を守る全国会議」の一員として現地に行ったことがあります。当時のダム名は高時川ダムでした。
そして、1992年にダム計画が決定し、96年に水没予定地40世帯の移転が完了しました。大半は同じ余呉町の集団移転地に移転しました。

 2000年代に入ってから、利水予定者の大阪府・京都府・阪神水道企業団が水需要の低迷で撤退を表明して、淀川水系流域委員会が中止が妥当の意見を出し、さらに脱ダム派の嘉田由紀子滋賀県知事が登場するなどの経過があって、ようやく中止に至りました。
 情報収集と情勢分析、行政への働きかけに取り組んだ「関西のダムと水道を考える会」( 野村東洋夫さん)の粘り強い活動もありました。

丹生ダム建設中止へ 近畿地方整備局がコスト検証(京都新聞 2014年01月16日 22時40分) http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20140116000156

近畿地方整備局と水資源機構は16日、長浜市の高時川上流で計画している丹生(にう)ダム建設事業に関して、治水や渇水対策の目的別にコストなどを分析した結果、「ダムは有利ではない」との最終的な検証結果をまとめた。
同日、滋賀県や長浜市など関係自治体を集めた会議でも確認した。丹生ダム建設は計画から半世紀近くを経て、中止される見通しとなった。
整備局などは「治水」「流水機能維持」「異常渇水時の水の補給」の三つの目的別に、ダムを含む複数の対策案を検証した。戦後最大の洪水を基準とする治水では、ダムを建設せず、姉川と高時川の河道掘削や川幅の拡幅などを進める案が80~140億円で、ダム建設の246~339億円よりコスト面で優位だった。
川の流れが途切れる「瀬切れ」を防ぐ流水機能維持でもダム案はコスト面などで有利とならなかった。一方、異常渇水対策ではダムが有利となり、目的別に評価が分かれた。
最終的な評価では、下流の京都府、大阪府などが異常渇水対策を不要としている状況を踏まえ、「ダムを含む案は有利ではない」と結論を出した。
同日、大阪市内で開かれた会合で府県や市に説明があった。ダムだけに頼らない治水を重視してきた嘉田由紀子滋賀県知事は「国の判断で中止するなら、国直轄で治水対策を実施してほしい」と要請。早期建設を求めてきた藤井勇治長浜市長は「誠に無念」と述べた上で、「誠心誠意、地元が納得するよう対応し、国が河川改修に責任を持ってほしい」強調した。京都、大阪、兵庫各府県などは評価を了承した。
池内幸司整備局長は「意見は重く受け止める。ダムに代わる治水対策を直接実施するのは難しいが、改修事業などはできるだけの支援をする」と述べ、中止の方向で対応方針案をまとめる考えを示した。
国土交通省が進めるダム検証事業では、これまでに83事業中20事業が中止を決めている。12年に中止となった県営北川ダム(高島市)も含まれている。

<滋賀・丹生ダム>計画から半世紀 国交渉が建設撤回案

(毎日新聞 1月16日(木)20時57分配信)  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140116-00000103-mai-soci

滋賀県長浜市の高時(たかとき)川に計画された「丹生(にう)ダム」建設の再検討を進めていた国土交通省近畿地方整備局は16日、河川改修などの代案がダム建設よりもコストや効果の面で有利とする総合評価案を関係府県の知事らに提示した。
反対意見はなく、半世紀近くを経てダム計画は事実上中止される見通しとなった。
水没予定地の住民約40世帯は移転済み。国が検証対象とした全国83ダムで、移転完了後の中止となれば極めて異例。今後は有識者会議などを経て、国交省として方針を決める。
大阪市内であった会合で、治水▽高時川の流水確保▽下流府県の異常渇水時の緊急水補給の3目的ごとに、ダムを建設しない場合の代案を検討するとともに、計画を縮小したダムや穴開きダムの各案を比較。
治水では河川掘削と堤防かさ上げなどの案が有利とし、異常渇水対策は大阪府などから緊急性が低いとの意見が出ており「ダム建設を含む案は有利ではない」と結論づけた。
丹生ダムは1968年、治水や下流府県の利水を担う多目的ダムとして国が予備調査を開始。本体工事は未着工だが、用地取得や道路整備などで約560億円が投入された。民主党政権時代の2009年末に検証対象となった。【千葉紀和、石川勝義】

滋賀・丹生ダム、建設中止の方針…国の再検証( 読売新聞大阪版 2014年1月17日)http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20140117-OYO1T00245.htm?from=main3
住民移転後では初
滋賀県長浜市の1級河川・高時川に計画されていた丹生(にう)ダムについて、国土交通省近畿地方整備局と独立行政法人・水資源機構は16日、ダム建設を中止する方針を決めた。
国が建設継続の是非を再検証している全国の31ダムのうち、住民の立ち退き移転後に中止となるのは初めて。
国は2009年秋から再検証を進めており、中止が決まるのは5例目。この日、大阪市内で、同整備局の池内幸司局長が嘉田由紀子・滋賀県知事らに説明。
嘉田知事は中止を了承し、「長浜市ではダムで人生を翻弄された人も少なくない。県としてしっかり河川整備に取り組んでいくが、国も積極的な支援をしてほしい」と述べた。
丹生ダムは、高時川の治水と利水の能力を高めるため、旧建設省が1968年に多目的ダムとして予備調査に着手。94年に水資源開発公団(現・水資源機構)が事業を引き継ぎ、96年までに40世帯が立ち退いた。
しかし、2000年以降、琵琶湖下流の京阪神地域で水需要が低下し、国が09年、同ダムに利水機能を担わせないことを決定。さらに、今後必要な費用を試算し、治水ダムの246億~339億円に対して、河川整備なら80億円程度で済むなどとして、「ダムは有利でない」と結論づけた。
丹生ダムは本体工事にまだ入っていないが、これまでに調査や用地取得、周辺工事などで、国のほか、滋賀、大阪、京都、兵庫の各府県などが計567億円を費やした。

丹生ダム建設中止へ 滋賀・長浜市長ら「誠心誠意説明を」(産経新聞滋賀版2014.1.17 03:05) http://sankei.jp.msn.com/region/news/140117/shg14011703050002-n1.htm

■河川改修は県事業で
 建設中止の可能性が強まった長浜市余呉町の丹生ダム。中止が決まれば、その代わりに高時川などの河川改修が必要となるが、大阪市内で16日に開かれた国交省近畿地方整備局の会合では、姉川、高時川の改修について国事業ではなく県事業として行うよう求められた。
 嘉田由紀子知事や地元・長浜市の藤井勇治市長は「住民の理解を得られるよう誠心誠意説明を尽くしてほしい」と国に求めた。
 近畿地方整備局は「ダム建設は有利ではない」とする総合評価に合わせ、河川改修は県が直轄事業で行うべきだとした。
藤井市長や嘉田知事は、国による事業実施を求めたが、同整備局は「現行制度上、国が進めるのは難しい」との見解を示し、国が一定程度支援を行うものの、県が主体となる方向となった。
会合で、藤井市長は「国や下流の求めで、水没予定地の住民は集落から撤退した」と指摘。「移転後の中止という事態は、これを最初で最後にしてほしい。地元には誠心誠意、説明を尽くすべきだ」と述べた。
 嘉田知事は「下流のみなさんにも水源地に思いを寄せてほしい」と呼びかけ、終了後、「建設予定地はダム計画があったため治水対策が進まなかった。国の支援を受けながら河川改修の計画をつくりたい」と語った。
 総合評価に対し、住民から憤りの声が上がった。地元住民でつくる丹生ダム対策委員会の丹生善喜委員長(66)は「ダム計画によって愛する地元が荒れた。ダムは本来命を守るものなのに、政治の材料にされているようで国に強い不信感を感じた」と話した。
 同整備局は今後、学識経験者や住民に評価に対する聞き取りなどを行い、今回の評価と合わせて本省に報告。その後本省が正式に決定するが、時期の見通しは立っていないという。


滋賀・長浜の「丹生ダム」中止へ 住民移転後は初 国交省が方向性示す
(産経新聞2014.1.16 21:11) http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140116/waf14011621140038-n1.htm
滋賀県長浜市に計画され、国が事業の再検討を進めている多目的ダム「丹(に)生(う)ダム」をめぐり、国土交通省近畿地方整備局は16日、ダム建設を中止すべきだとする方向性を示した。
治水などの目的では、河川改修などと比べて有利でないと判断したため。今後、国交省が正式に方針を決める。すでに住民の集団移転を終えており、国のダム事業で移転完了後の中止決定は初のケースとなる。
同整備局がこの日、地元や下流域など関係自治体の首長らを集めて大阪市内で会合を開き、丹生ダム建設の総合評価を示した。
治水対策や流水機能の維持、渇水対策などの目的別に、ダム建設と河川改修などの手段について安全度やコストの面を考慮した有効性を検討した結果、河川改修が有効な手段とした。
渇水対策についてはダム建設が望ましいとしたが、現在の水需要を踏まえると優先順位が低いと判断。総合評価で「ダム建設は有利でない」と結論づけた。
丹生ダムは、完成すれば国内屈指の多目的ダムとして計画。総事業費は約1100億円。昭和43年に予備調査が始まり、平成8年には水没予定地の家屋40世帯の移転が完了。
しかし、人口減などによる水需要の低迷で下流自治体などが利水事業から撤退した。その後、事業再検討の対象になり、18年には嘉田由紀子知事がダム事業の凍結・見直しを掲げて当選。23年から国が関係自治体との間で検討を進めてきた。


滋賀・丹生ダムの建設中止へ 国が方針
(日本経済新聞 2014/1/16 22:19 ) http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF1600G_W4A110C1EE8000/

近畿地方整備局と水資源機構は16日、同機構が計画していた丹生(にう)ダム(滋賀県長浜市)について関係自治体と会合を開き、建設を事実上中止する方針を伝えた。3年をかけて治水や利水の面でダムと代替案を比べてきたが、必要性やコストの点でダムが劣ると判断した。
国が事業の必要性を検証していたダムは全国に83カ所あり、20カ所が中止を決定済み。ただし丹生ダムのように建設予定地の住民が移転を終えたダムで中止の方針を決めた例は少ないとみられる。今後、国土交通省が住民の意見聴取などを経て方針を正式に決める。
丹生ダムは1968年に建設省(現国土交通省)が予備調査を始め、96年までに住民の移住が完了した。だが淀川下流の水需要が減って利水の目的が変わり、09年に計画が凍結されていた。

全国のダム事業の検証状況(検証対象外を含む)

2010年10月から始まったダム事業の検証により、問題ダム事業のほとんどは事業継続の方針が示されてきています。

事業推進の結論が先にある虚構の検証によって、必要性が希薄なダム事業に推進のお墨付きが次々と出ることは腹立たしい限りです。

今年度全国で事業中・計画中のダムについて検証対象外ダムも含めて、2013年1月26日現在の検証状況をまとめてみました。

直轄ダム・水資源機構ダムの検証状況

補助ダムの検証状況

立野ダム 国交相は慎重に判断、説明を (熊本日日新聞社説 2012年11月26日)

2012年11月26日
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立野ダム 国交相は慎重に判断、説明を(熊本日日新聞社説 2012年11月26日)
http://kumanichi.com/syasetsu/kiji/20121126001.shtml
 ダム事業の見直しに関する国土交通省の有識者会議は、白川の洪水防止を目的とした立野ダム(南阿蘇村、大津町)建設事業について、事業主体の同省九州地方整備局が継続と判断した方針を追認した。これを受け国交相が建設の是非を決定する。事業は大きな岐路に差し掛かった形だが、流域住民の間で推進論と反対論が交錯している上、ダム計画自体を知らない県民も少なくないことを踏まえ、国交相には慎重な判断と丁寧な説明を求めたい。
国交省が2002年に策定した白川水系河川整備計画は、20~30年後を目標に熊本市街地での流量を現在の毎秒1500トンから2000トンに増やす。さらに立野ダムと黒川遊水地群で合わせて300トンをカットすることで、基準地点の代継橋付近を2300トンの洪水に対応できるようにする。
立野ダムは、最下部に三つの穴を設ける穴あきダム。関連工事は1983年に着手し、本体工事を残す。総事業費は当初425億円としていたが、現在は917億円に膨らみ残事業費は491億円。民主党政権に交代後、検証対象とされた全国83ダムの一つで、九地整が県や流域市町村などと検証作業を実施。河道掘削や輪中堤などのダム以外案に比べダム案が最も有利と結論付けた。
特に、今年7月12日の豪雨で熊本市北区の龍田地区が甚大な浸水被害に遭ったことを受け、行政側の動きは加速した。知事と熊本市長がダムに期待する姿勢を明確にし、県議会と同市議会も9月定例会で建設推進を求める意見書を可決した。
龍田地区などに「ダムを含め早期の治水対策を」という強い声がある通り、対応にはスピード感が不可欠だ。ただ、気になるのは賛否の議論が流域全体で熟しているかどうか。国交省とダムに反対する市民団体の間には多くの見解の相違がある。
まず、費用対効果をめぐって同省は「完成までの費用はダム以外の案よりダム案が一番少なく、10年後に最も効果が期待できる」と結論付けている。それに対し市民団体は「ダム以外の事業費を過剰に見積もった結果であり、完成まで10年かかるのは即効性を欠く」と反論する。
安全度に関して同省が「整備計画に掲げた目標達成にはダムが最も有利」としているのに対し、市民団体からは「熊本市ではダムによって20センチほど水位が下がる程度で、効果は限定的」との指摘もある。
環境面では同省が「通常は水を流す穴あきダムのため生態系への影響は少ない。環境保全措置も実施する」と強調。市民団体は「穴あきダムでも堆砂による水流の遮断は避けられない。予定地の原始林や阿蘇の景観も損なう」と批判する。
公聴会を済ませたとはいえ、こうした議論を置き去りにしたままの判断は禍根を残しかねないことを、国交相には念頭に置いてもらいたい。
仮にただちに着工したとしてもダム完成までの10年の間に、「7・12」級の豪雨がいつ発生するか分からない。ダムの判断とは別に、中下流域の河道変更、川幅拡張、河床掘削、橋の架け替えといった総合的な河川改修は、国と県が待ったなしの姿勢で取り組んでほしい。

公共事業削減 対象83ダム 中止は15 民主、相次ぎ転換(東京新聞2012年11月24日

公共事業削減 対象83ダム 中止は15 民主、相次ぎ転換 (東京新聞2012年11月24日)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012112490070328.html

民主党政権が「脱ダム」方針の下に進めてきたダム検証で、本体工事に入っていない検証対象の国や道府県の八十三事業のうち、中止を決めたのはわずか十五事業にとどまっていることが分かった。
政権交代後、無駄な公共事業の削減を目指す目玉政策だったが、推進の判断が相次ぎ、ダム利権が温存される結果となっている。
八十三事業のうち、国土交通省や独立行政法人水資源機構が事業主体なのは三十事業。このうち熊本県・七滝ダムと群馬県・吾妻川上流総合開発に続き、今月に入り長野県・戸草ダムが中止となった。いずれも調査や地元説明の段階だった。
逆に、北海道・サンルダムや福井県・足羽川ダムなど四事業が推進となり、残る二十三事業が検証中だ。
一方、道府県が事業主体だが国が建設費の約七割を負担する「補助ダム」は五十三事業あり、九県の十二事業が中止に。田中康夫・元長野県知事の「脱ダム宣言」で休止していた黒沢生活貯水池など続行の見通しがなかった事業の中止が目立つ。
補助ダムは道府県の検証結果を国の有識者会議に諮り、国は中止か推進を判断する。十七道府県が「推進が妥当」とした事業のうち、有識者会議が判断を保留しているのは島根県の二事業で、二十三事業は追認した。十八事業は検証が続く。
検証の対象となったダムの総事業費は約五兆円に及び、中止分は約四千五百億円。事業費四千六百億円の八割が投じられた群馬県・八ッ場(やんば)ダムなど事業費の多くが既に支出された事業もある。
ダム検証の行方について国交省治水課は「いつまでに終えられるかは分からない」としている。
公共事業問題に詳しい五十嵐敬喜法政大教授は「衆院選後、もし自民党政権に戻れば、ダム検証が中止されたり、中止の事業が復活される可能性もある。
不要なダムを造り続けてよいのか。このままでは膨大な借金とダムの残骸が積み上げられていく。真剣に考える必要がある」と話す。

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