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横浜市も悩む「水道の老朽化問題」の行方は?

2018年6月7日
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横浜市では、水道管の更新がなかなか進まず、現在の進捗速度であると、全域の更新に80~90年かかるという論考記事を掲載します。
横浜市水道の経営が厳しいのは、2000年に完成した宮ケ瀬ダムとその関連水道施設の巨額負担があるからだと推測されます。
この問題については「横浜市 水道料金値上げを検討 原因は宮ヶ瀬ダム」https://yamba-net.org/41185/ をお読みください。

他の都市も同様だと思います。必要性がなくなったダム事業に参画している余裕はありません。「水道の老朽化問題」に真剣に取り組むべきです。

なお、下記の記事の終わりの方で、東京大学大学院工学系研究科の滝沢智教授が登場します。
滝沢氏は石木ダム予定地を強制収用するための事業認定で、佐世保市水道の架空水需要予測にお墨付きを与える意見書を出しました。
昨年12月、この事業認定取消訴訟の裁判で証人として出廷することが求められましたが、滝沢氏は出廷を拒否しました。

 

横浜市も悩む「水道の老朽化問題」の行方は?
水道インフラ民営化、熱い理想と冷たい現実
(東洋経済2018年06月04日)https://toyokeizai.net/articles/-/223419

(写真)横浜市では過去に埋設した水道管が次々に耐用期限を迎えるているが、更新工事が追いついていない(記者撮影)

一井 純 : 東洋経済 記者
5月中旬、横浜市の閑静な住宅街で、古い水道管の更新工事が行われていた。細い路地に重機が入り、アスファルトを剥がして地面を1メートルほど掘り返している。
現場監督は「1年の工期中に約1.4キロメートルの水道管を取り替えていく」と話す。
水道管の更新に80~90年?
水道管の法定耐用年数は40年。老朽化する水道管を放置すれば、漏水や断水、赤さびなどの原因となる。高度経済成長時代に水道が普及した横浜市では、水道管の総延長約9200キロメートルに対し、更新時期を迎えた水道管が約2400キロメートルに達している。
だが、水道管の更新はなかなか進まない。水道局の予算約850億円に対し、水道管の取り替え費用は約200億円に達するが、それでも更新できるのは「市内全体で年間110キロメートル」(横浜市水道局の木村正紀氏)にすぎない。単純計算で、全域の更新には80~90年かかる計算だ。
こうした状況を受けて、5月に横浜市が開催した「水道料金等在り方審議会」では、委員か事業の将来性を危ぶむ声が上がった。「今後、経営危機は加速度的に増していく」(委員)状況をふまえ、料金体系の抜本的な改定などが議論されたものの、活路は見いだせていない。
横浜市は維持更新費負担のため、この30年で2度の料金値上げに踏み切ったが、節水機器の普及などで料金収入の減少に歯止めがかからない。水道料金(約20立方メートルで2750円)の半分以上が維持更新費や設備投資の借入金の返済に消えているのが現状だ。
水道インフラの老朽化にあえぐのは横浜市だけではない。日本水道協会によれば、耐用年数を超えた水道管の割合は2015年に13.6%と、10年間で倍以上に増加した。他方で、全国の料金収入の合計は2015年時点で約2.6兆円と、10年間で2000億円以上も減少した。料金収入だけでは水の供給原価を賄えない自治体も多く、一般会計からの繰り入れで赤字を補塡している。

そこで、上水道を所管する厚生労働省が打ち出しているのが、水道事業の運営権を民間に売却する「コンセッション方式」の導入だ。
水道事業は公共性が高いため、これまで自治体が経営の中心となり、民間企業はポンプ場の運営や検針、料金徴収といった一部の業務を受託するにとどまっていた。
一方、コンセッションでは民間企業が水道事業の企画から実施まで一貫して行う。民間のノウハウを使い、運営を効率化する狙いがある。
水道料金は地域ごとの差が大きい
実は、水道料金は地域によって10倍近い差がある。豊かな水源や水利権を抱えていたり、効率的な送配水ができる自治体は安価に水を提供できる一方、維持・更新費がかさんだり、 水利権を持たず広域企業団(複数の自治体が設立した公営企業)から水を購入している自治体は、料金が高くなる。

(注)口径13ミリメートル、10立方メートルあたりの水道料金 (出所)総務省「2016年度地方公営企業年鑑」より東洋経済作成
上水道は手続きが煩雑で、これまでにコンセッションの導入実績がない。厚労省は昨年、今年と手続きを緩和する水道法改正案を国会に提出。コンセッション導入の道を開こうとしている。
コンセッションはすでに仙台空港や愛知県の有料道路といった一部の公共施設で採用されている。前者は東京急行電鉄、後者は前田建設工業が中心となって運営。いずれも利用者数は堅調に推移し、公営時代よりも収益を上げている。
民間企業も水道事業のコンセッションに熱い視線を送る。水道インフラ最大手の水ing(スイング)は、2012年に広島県企業局との共同出資で「水みらい広島」を設立。県と民間の合弁会社として県内3地域で水道の供給を請け負い、収支は4年連続で黒字を達成した。
「自治体は設備の老朽化度合いやスペックにかかわらず、規定どおりの調達をするためコストがかかる。民間なら予算や調達で柔軟な対応ができる」(水ingの倉持秀夫・総合水事業本部長)。今後はコンセッションも視野に入れるという。
今年4月に浜松市の下水処理施設の運営を仏水道会社の大手ヴェオリアらと受託した中堅ゼネコンの東急建設も「土木工事で培った技術を水道の維持・更新に生かしたい」とコンセッションへの関心を示す。
コンセッション参入を計画しているある事業者はこう打ち明ける。「日本の漏水率(浄水場から給水管までの間で漏れた水の比率)は5%と世界屈指の低さで多額の維持費がかかっている。漏水率が10〜20%になっても、結果的に維持費が浮くなら事業として十分に成り立つはず」。民間運営ならば、水道料金の値上げもしやすくなる。


財政難の自治体から水道運営を切り離し、民間の創意工夫で現状の水道インフラを維持する──。関係者はバラ色のシナリオを描くが、現実は甘くない。
コンセッションによって空港や道路の運営が収益を上げられるのは、サービス向上により利用客数や客単価が増加したため。人口減少や節水の普及で料金収入が減る水道では品質を上げても収益が増える見込みは立たない。
水道事業に詳しい東京大学大学院工学系研究科の滝沢智教授は「水道事業は、サービスに見合った対価を支払える利用者のみを対象にできる空港や有料道路とは異なる」と指摘する。
海外では多くの地域で水道事業の民間開放が行われたものの、収支計画が狂い頓挫した例も少なくない。
たとえば、米アトランタ市では1999年に民間企業が水道事業の運営を開始したものの、施設の老朽化が想定以上に激しく維持費がかさんだ。初年度にいきなり赤字を計上し、人員削減と水質悪化という悪循環に陥り、2003年に水道事業は再び公営へと戻された経緯がある。
ある水道事業者は「コンセッションを導入しても、料金収入だけではとても維持費を負担できない。水道管の更新は引き続き自治体が行うなら、収支が成り立つ」と話す。
魔法の杖は存在しない
民営化に対する住民側の合意形成もハードルになる。水道法改正を見込んで、2016年に奈良市が、2017年に大阪市がそれぞれ上水道へのコンセッションの導入を提案。だが、議会側は料金値上げや水質低下を警戒し、奈良は反対多数で否決、大阪は廃案となった。
とはいえ、公営のままでも将来的に料金値上げやサービスの低下は避けられない。日本政策投資銀行は、水道事業の継続には2046年度までに約6割の自治体で値上げが必要で、その金額は全国平均で2014年度の1.6倍にも上ると試算している。

滝沢教授は「コンセッションという言葉に踊らされている。官か民かではなく、どこまでコストを許容するかの議論が必要だ」と警鐘を鳴らす。
民営になれば状況が好転するというのは、いささか楽観的に過ぎるだろう。民間の“創意工夫”は決して魔法の杖ではない。日本全国を網羅する安心・安全でおいしい水をどう守っていくか。いま一度考え直す時期に来ている。
当記事は「週刊東洋経済」6月9日号 <6月4日発売>の転載記事に一部加筆したものです…

宮ケ瀬ダムと相模大堰は必要であったのか ―神奈川県内四大水道の水需給の検討結果―

2015年8月2日
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宮ケ瀬ダムと相模大堰は必要であったのか
―神奈川県内四大水道の水需給の検討結果―

1 経過

宮ケ瀬ダムが 2000 年度に完成し、神奈川県内の四大水道の水源となった〔注 1〕。そして、この水源の 取水・導水・浄水施設を建設する相模川水系建設事業〔注 2〕が神奈川県内広域水道企業団により進められ
た。この取水施設が相模川下流部に建設された相模大堰である。
〔注 1〕神奈川県内四大水道:神奈川県営水道、横浜市水道、川崎市水道、横須賀市水道
〔注 2〕宮ケ瀬ダムの開発水量は約 120 万㎥/日であるが、その水源を取水・導水・浄水する施設をつくる相模川水系
建設事業は一期のみとなった。残り半分の二期事業は中止となり、相模川最下流部にある既設の寒川堰からの取水・
導水・浄水施設を使うことになった。なお、相模大堰からの取水は宮ケ瀬ダムの完成に先立ち、2008 年度から開始
されている。
宮ケ瀬ダムの開発と相模川水系建設事業の推進が必要だとして、神奈川県、横浜市、川崎市、横須賀
市は水需要が急速に増加していく予測を示してきた。
図 1 のとおり、1994 年 12 月の相模大堰水利権設定許可申請書(以下、「相模大堰水利申請書」という)
では四水道の一日最大配水量の合計は 2005 年度には 500 万㎥/日にもなり、既存の保有水源 471 万㎥
/日を大きく超えることになっていた。このような予測に基づいて、宮ケ瀬ダムの建設と相模川水系建
設事業が進められてきた。
なお、宮ケ瀬ダム建設事業の事業費は 3,993 億円、相模川水系建設事業(一期)の事業費は 7,329 億
円であるが、後者にはダム建設負担金 2,695 億円が含まれているので、その重複分を除く合計事業費は
8,627 億円にもなる。起債の利息も含めると、神奈川県民・国民の総負担額が 1 兆円を大きく超える巨
大公共事業であった。

詳しくは

宮ケ瀬ダムと相模大堰は必要であったのか

をお読みください。

 

 

宮ケ瀬湖、想定以上の土砂堆積 試験的に搬出へ

2015年5月30日
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神奈川県の直轄ダム「宮が瀬ダム」(2000年度末完成)は堆砂が計画よりかなり早いスピードで進行しているため、今年度から試験的に土砂搬出事業が始まります。この問題についての詳しい記事を掲載します。

宮ケ瀬湖、想定以上の土砂堆積 試験的に搬出へ

(神奈川新聞 2015年5月30日)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150530-00001393-kana-l14

宮ケ瀬湖、想定以上の土砂堆積
(写真)宮ケ瀬湖に流入する早戸川に堆積した土砂 =相模原市緑区鳥屋
首都圏最大のダム貯水池である宮ケ瀬湖は、国が建設、運用開始してから14年目を迎えた。堆砂量が想定を上回るスピードで進行しているため、本年度から試験的に土砂搬出事業に着手する。6月に作業に入り、早戸川と中津川からの流入部2カ所で計約3万立方メートルを運び出し、今後の浚渫(しゅんせつ)方法や頻度などを検討する。
ダムは自然の川をせき止めて建設するため、流下する土砂が湖底に堆積する。洪水調整や給水などのダム機能を維持するため、堆砂の進み具合によって浚渫が必要になる。
国土交通省相模川水系広域ダム管理事務所によると、2013年度時点での堆砂量は約300万立方メートルで、計画値の130万立方メートルの2倍を超え、想定より早いペースで土砂がたまっている。
そこで、同管理事務所は15年度予算に堆積土砂搬出事業費として数千万円を新規計上。早戸川で約2万立方メートル、中津川で約1万立方メートルの土砂をそれぞれ流入部のすぐ上流で浚渫してトラックで搬出し、湖畔の用地に借り置きする。工期は6月~10月。その後、浚渫効果を検証し、今後のスケジュールや搬出土砂の活用法を検討する。一般的なケースよりは早い時期での事業着手だが、効率的な浚渫方法を探るためという。
相模川水系のダムは、集水域の支川が急勾配なため、流入土砂が比較的多いと考えられている。運用が半世紀を超える相模、道志、沼本の3ダム(すべて相模原市緑区)は堆砂の進行が著しい。相模ダムでは1993年度から大規模な浚渫事業が続いている。
同管理事務所は「宮ケ瀬湖は比較的新しいが、堆砂のペースが早い理由は台風による出水の影響などが考えられる。堆砂傾向は個々のダムによって違うので、本年度から検証しながら土砂の搬出を行うことにした」と話している。
近年、台風による相模川水系の土砂災害は2007年、11年と相次いで起きた。11年9月の台風12号では山梨県大月市で大規模な深層崩壊が発生して周辺の支川にも大量の土砂が流れ込んだ。
ダムの堆砂問題は、土砂供給の不連続性を生む原因となっている。河床低下や海岸浸食、生態系への悪影響の改善を図るため、土砂管理の新たな視点から国・県により流域全体の計画策定が進められている。
◆宮ケ瀬ダム
相模原市、愛川町、清川村にまたがる中津川の上流に旧建設省が建設した多目的ダム。洪水防止、河川環境の維持、水道水の確保、発電の機能を持つ。宮ケ瀬湖の広さは460万平方メートル、貯水量は約1億9千万立方メートル。計画から30年余を経て2001年4月より本格運用を始めた。

土丹層露出の相模川・三川合流点 被覆工事が完了(相模ダム、宮ケ瀬ダム等の影響)

2015年3月9日
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相模川の三川合流点で土丹層(軟岩)が露出し、その被覆工事が行われてきています。
土丹層露出の主因は、相模ダム、宮ケ瀬ダム等で土砂の流下が遮られたことにあると思います。これらのダムの堆砂は、茅ヶ崎海岸の砂浜喪失も引き起こしています。
土丹層露出の相模川・三川合流点 被覆工事が完了
(カナロコ by 神奈川新聞 2014年3月9日) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150308-00130047-kana-l14
(写真)土丹の被覆工事が完了した厚木市側右岸
土丹層露出の相模川・三川合流点
厚木市内を流れる相模川の三川合流点付近の右岸で再露出した土丹層への応急措置として、県厚木土木事務所が進めてきた土砂の被覆工事がこのほど完了した。工事の実施は2度目。
前回の失敗を繰り返さないよう、新たにバイパス河道を設けて本川の流れを弱め、覆った土砂の定着を目指す。
同事務所は2012~13年度、土丹層が露出した厚木市側の河原、長さ約340メートル幅約40メートルの範囲に土砂約1万立方メートルを搬入して復旧工事を実施したが、昨夏以降、台風による増水などで半分程度が流出してしまった。
そのため、アユ漁が終了した昨年10月下旬から再度工事に着手。前回の教訓を生かして本川と並行する形で海老名市側に長さ約750メートル、幅約20メートル、深さ1~2メートルのバイパス河道をまず掘削。本川の水量を約3分の2に減らして浸食力を軽減させた。
今年1月からは、対岸の堆積土やバイパス河道掘削で発生した土砂など約8500立方メートルを土丹層の露出箇所に運び、覆った。費用は前回を上回る約4300万円を要した。
同事務所の相模川環境課は「今回は被覆土砂の流出対策を強化した。自然相手の工事なので試行錯誤の取り組みにならざるを得ない。効果の程度は今夏の台風の通過頻度にもよるが、引き続き保全状況を注視していく」と話している。
◆土丹層の露出問題
相模川、中津川、小鮎川が合流する地点から神川橋下流付近にかけて1998年以降、砂利の下にある土丹層(粘土層)が露出。過去の砂利採取、洪水による河床低下、ダム建設による流況の変化など複合的な要因とされる。
アユなど生態系への悪影響、景観や滑りやすいなど河川利用上の問題が懸念されているが、川岸の浸食が進行すれば堤防の安全性にも影響する可能性がある。抜本的な対策の実施に向けて国、県などが3月末までに土砂管理計画を策定する。

木下昌明の映画批評~自然に寄り添って生きる意味『流 ながれ』

ポレポレ東中野で上映中の『流 ながれ』の映画批評です。映画の上映期間と時刻は http://www.mmjp.or.jp/pole2/ をご覧ください。

なお、カワラノギクという野草は、http://d.hatena.ne.jp/Limnology/20111123/p1 によれば、「日本の川中流部は本来、洪水を起こして、その度に植生が一掃され、礫だけになります。カワラノギクはそういった攪乱が起こる河川に適応して生きてきた植物です。」ので、洪水が起こらなくなった河川では、進入してくる他の植物に負けてしま」う植物です。ダムで洪水を貯留して川の攪乱が起きにくくなると、カワラノギクは衰退していきます。
この映画批評に書いてあるように、「ダムができて形だけ川であってもそれは自然な流れではない』のです。各地で再びダム建設に向かう河川行政を何として変えていかなければなりません。

木下昌明の映画批評~自然に寄り添って生きる意味『流 ながれ」(レイバ-ネット 『サンデー毎日』 2012年11月4日号)

http://www.labornetjp.org/news/2012/1028eiga
●能勢広・村上浩康制作『流 ながれ』

老人二人の活動から川を知る―自然に寄り添って生きる意味

能勢広・村上浩康の映画『流 ながれ』は、神奈川県の中津川が舞台である。

中津川といえば、渓流釣りが好きだった仕事仲間がよく出かけていた川で、昨日は何を釣ったとか自慢していたが、この映画はその種の話ではなく、川が川として成り立っている基本を教えてくれるドキュメンタリーだ。

といっても、河原に野草のカワラノギクを植え続けている吉江啓蔵と、トンボやカゲロウなどの幼虫である水生昆虫を調査し続けている齋藤知一の二人の地道な活動を10年にわたって撮った、地味であるが貴重な作品である。

丹沢山地を源流とする中津川は、相模川の支流にあたり約30キロを蛇行しながら流れている。上空からの俯瞰(ふかん)撮影には、川にそって民家が並ぶ日本の原風景が広がっていた。

だが、2000年にダムができて、下流に環境の変化をもたらしている。そのことが二人の老人の活動から次第に見えてくる。

なぜ、吉江老人はカワラノギクを植えるのか。河川の整備や砂利採集などで石ころの河原が少なくなり、この花が絶滅危惧種となったからだ。

「生涯に一度しか咲かない」花は、かつて河原一面に咲き誇っていた。それが見られなくなるのを惜しんで、誰に頼まれたわけでもないのに、彼は一人で種を採り、家で育て、その株を移植している。

水生昆虫調査の齋藤老人は、石をひっくり返し、その生態を調べている。映画を見るまでは魚のエサにしか見えなかった幼虫なのに、流れに抗(あらが)い、石にしがみつき、必死に動き回っている姿を画面で見ていると、いとおしくなってくる。

昆虫はダムの突然の放水に適応できずに種類が極端に減ったと。彼は「ダムができて形だけ川であってもそれは自然な流れではない」と言う。

「コンクリートから人へ」の象徴だった八ッ場ダムでバタバタしている政府の河川環境への無策は、心ある人々の活動を逆なでするものだ――自然に寄り添って生きることの大切さを訴える映画を見ながら、静かな怒りがこみあげてくる。

(木下昌明)
*東京・ポレポレ東中野にて10月27日より公開。〔付記〕 この二人のように、人々の無関心な自然と向きあい、小さな生き物の生態から世の中の動きを観察していくことも、人間の一つの生き方であり、とても重要なことではないかとわたしは考える。

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