最上小国川ダム 漁業権問題で本体着工不透明(読売新聞山形版2012年10月16日)
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最上小国川ダム 漁業権問題で本体着工不透明(読売新聞山形版2012年10月16日)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/yamagata/news/20121015-OYT8T01162.htm
作業用道路建設のため切り倒された杉。真新しい看板も設置されている(15日、最上町富沢で)
県が建設を計画する最上小国川ダム(最上町)で、本体工事に先立ち、作業用道路の取り付け工事が始まった。流域の漁業権を持つ地元漁協は反対しており、事業の先行きは不透明な状況になっている。(宮本清史、影本菜穂子)
最上町富沢の現場付近では15日、関係者が県道沿いに「工事中」の看板を設置したり、下草を刈ったりする作業に追われた。工事は13日から始まり、すでに約150本の杉を伐採。今月下旬には重機が投入され、積雪期も除雪しながら、来年2月まで作業を続ける。
県河川課によると、同ダムは予定地から約2キロ下流の赤倉地区などを、50年に一度の洪水から守るのが目的。県は2006年、「自然への影響が少ない」などとして、通常時は水をためず川の流れを残す「穴あきダム」での建設を決めた。
総事業費約64億円で、15年度の完成を目指す。今年3月末現在で用地取得などに約17億5400万円を投じ、今年度は作業用道路建設などで5億7200万円を予算計上している。
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ダム建設を要望しているのは、川岸まで温泉旅館が立ち並ぶ赤倉地区の住民。洪水被害にたびたび見舞われ、1974年7~8月の集中豪雨では、死者こそ出なかったものの、278戸が床下浸水し、被害総額は約23億円に上った。
赤倉地区でダム建設を推進する期成同盟の早坂義範会長は「今も数年に一度、旅館が床上浸水したり、温泉に川の水が逆流したりする被害が出ている。ダムが完成するまでは、枕を高くして眠れない」と訴える。
一方、「ダムが造られれば、川の環境は大きく崩れ、アユに影響は避けられない」として反対するのは、地元の小国川漁協(沼沢勝善組合長、組合員約1100人)。同川は体長25センチを超える大型アユが釣れる川として知られ、シーズン中は全国から釣り客が訪れる。
同漁協によると、アユやヤマメなどの漁獲による売り上げ額は、「組合員全体で年間約2~3億円。組合の遊漁料収入は同約2000万円」と説明する。
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こうした中、漁業権を巡る問題が焦点になっている。
県議会9月定例会予算特別委員会で、ダム反対派の草島進一議員が「漁協が同意しない限り、ダム本体の着工はできないことを認めるか」と質問。岡邦彦・県土整備部長は「今年度発注した工事は、漁業権の及ばない陸地部の範囲で実施するものだ」と直接答えず、「漁協から同意が得られるよう誠心誠意努力する」と4回繰り返した。
本体着工には漁業補償が必要になるが、漁協は任意の交渉に一切応じていない。土地収用法では、漁業権も関係者に補償した上で収用できると定めているが、国土交通省土地収用管理室によると、実際に漁業権を強制収用したケースはないという。
県は現時点で、同法の適用については明言していないが、沼沢組合長は「仮に強制収用となっても、裁判で争う」としており、県が今後、どのような対応を示すか注目される。
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