アワビ漁不振「ダム放流との因果関係ただちに認められない」漁協の訴え棄却 和歌山地裁
海の漁協が和歌山県を訴えた椿山ダム裁判の一審判決は請求の棄却でした。
椿山ダムの放流による濁流で、海藻などが枯死する「磯焼け」が発生し、アワビ漁などが被害を受けたことを専門家が証言しましたが、残念ながら、認められませんでした。
「磯焼けとダムの濁水との因果関係をただちに認めることはできない」という常とう文句で、切り捨てるのですから、司法の壁はとてつもなく厚いです。
三尾漁協の磯焼け訴訟 地裁が原告の請求棄却
(日高新報2015年4月 1日) http://www.hidakashimpo.co.jp/news/2015/04/post-3409.html
(写真)判決を受け記者会見する村尾組合長㊧と由良弁護士
アワビなどの漁獲量が激減したのは、日高川上流の県営椿山ダムから排出され、河口から海に流出、堆積した濁質が原因として、美浜町の三尾漁協(村尾敏一組合長)と組合員58人が県を相手に損害賠償等を求めた訴訟の判決が30日、和歌山地裁であった。橋本眞一裁判長は「ダムの設置と三尾の(海藻が枯れる)磯焼けとの因果関係は認められない」とし、漁協側の訴えを全面的に退けた。村尾組合長は「不当な判決で承服しかねる」と話し、控訴するか組合員と相談するという。
三尾地先のアワビなど貝類の水揚げは、椿山ダムが竣工した翌年の平成元年をピークに年々減少。漁協は知事との間で交わした覚書と付帯事項(土木部長名)に基づく有効な対策が講じられていないとし、16年に県に対して濁水対策と漁業の損害賠償を求め、公害紛争処理法に基づく調停を申請。22年には調停案が示されたが、双方の主張に隔たりが大きく、23年1月の第15回調停で打ち切りとなった。
漁協は4年前の23年2月10日、組合員58人とともに県を相手取り、ダム貯水池に堆積している濁質の薄層浚渫による撤去などを請求、さらに採貝漁業被害と慰謝料など計約5億7000万円の損害賠償を求める訴えを起こした。
今回の判決で、橋本裁判長は漁協側が請求したダム貯水池の堆積微細濁質の撤去に対し、「ダムへの濁質の流入、出水が繰り返されるなか、微細濁質も絶えず流動しているため、取り除く対象が特定できない」として請求を却下。三尾の磯に堆積している微細濁質の撤去についても同じく、「海水の流れ等で常に流動しているため撤去する対象が特定できない」とし、訴えを退けた。
磯焼け問題に詳しい荒川久幸東京海洋大教授が指摘した濁質が海藻の生育に与える影響については、「その内容は不合理ではないが、磯焼けの経過、高水温、野島沿岸との差異からすれば、三尾の磯焼けがダムの懸濁粒子・基質堆積粒子によるものとはただちに認めることはできない」と結論。損害賠償等の請求も棄却した。
閉廷後、村尾組合長(81)は「意外な不当判決を受けてびっくり仰天している。これまで10年ほどいろんな資料を基に(磯焼けとダムの因果関係を)立証してきたが、判決はとても承服しかねる」と述べ、控訴するかどうかについては「判決文を持ち帰り、他の組合員や弁護士とも相談して決めたい」とした。
原告側の由良登信弁護士は「こちらの主張を認定している点はたくさん散見されるが、『それだけでは認めることはできない』ということがいくつも出てくる。では、それがいくつあればいいのかという答えも出ていないし、荒川教授の証言も不合理ではないといいながら、結局は同じような言い方で逃げている。裁判官として、県が相手で、ダム行政に影響を与えるということもあるかもしれないが、そこは司法として責任を持ち、勇気を持って判断を下してほしかった。このような逃げの判断をいつまでも下していては、司法はだめになる」などと述べた。
県河川課の尾松智課長 県の主張が認められ、妥当な判決であると考えている。県としては今後も県民の安全と安心を確保するため、椿山ダムの適切な管理に努めたい。
アワビ漁不振「ダム放流との因果関係ただちに認められない」漁協の訴え棄却 和歌山地裁
主な争点は、磯焼けの原因がダムの放流によるかどうかだったが、橋本裁判長は、降水量の増加によって濁水が発生した可能性なども否定できないとし、「磯焼けとダムの濁水との因果関係をただちに認めることはできない」などと結論づけた。
原告側は裁判で、河川や海域の環境調査業務を行う「流体環境研究所」の本田健二氏や、磯焼けについて研究している荒川久幸・東京海洋大教授らを証人に、科学的データを提示。
本田氏は、三尾沿岸には海水を濁らせる粒子が多く、その粒子を構成する鉱物の種類と比率がダム湖底の泥粒子と同じと指摘。荒川教授は、海水の濁りによって磯焼けが発生することなどを主張した。
判決などによると、椿山ダムは昭和63年に日高川町の初湯川に完成。漁協側は、ダムから放出される濁水により下流の漁場で磯焼けが発生し、漁獲高が激減したと主張。平成9年に県に濁水対策を要請し、覚書を交わした。
しかし、県が有効な対策を取らなかったため、16年に公害紛争調停を申請。18年には漁協側が国の公害等調整委員会に原因裁定(原因の究明)を申請したが、22年6月に放流と磯焼けの因果関係が認められないとして、申請が棄却された。同漁協は23年2月に、損害賠償などを求め県を提訴していた。
判決をうけて、原告代表の村尾敏一組合長は「不当な判決で承服しかねる。
海で生活している我々の体験と専門家の意見を織り交ぜてわかりやすく説明してきたが通じなかった」と話し、「覚書を交わして20年近く経過し、その間生産性が落ち込んで生活が苦しいなかで今日まできた」と憤りを見せた。
原告は控訴について「判決を持ち帰って、組合で話し合って決めたい」としている。
県は「県の主張が認められ妥当な判決であると考える」とコメントした。
椿山ダム:「磯焼け」賠償を棄却 因果関係認めず 地裁 /和歌山
(毎日新聞和歌山版 2015年03月31日)http://mainichi.jp/area/wakayama/news/20150331ddlk30040517000c.html
日高川上流にある県管理の椿山ダムから流出する泥で貝の餌となる藻が枯れる「磯焼け」が起きているとして、美浜町の三尾漁協(村尾敏一組合長)と組合員ら58人が県を相手取り、
漁業被害に対する約5億7100万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が30日、和歌山地裁であった。橋本真一裁判長は「ダムの設置により、磯焼けが生じたことについて因果関係は認められない」として損害賠償請求を棄却、その他の請求については訴えを却下した。
原告側は、椿山ダムが建設された1988年以降、磯焼けによりアワビなどの貝類の水揚げ量が落ち込んだとして、県に対して、椿山ダムの貯水池に堆積(たいせき)している粘土などの撤去▽濁水対策をとるまでの水揚げ減少に伴う損害賠償?などを求めていた。
判決後、村尾組合長は「不当な判決で承服しかねる。今後については控訴も含めて組合員らと協議していきたい」と話し、県の尾松智河川課長は「主張が認められ妥当な判決だ」などとするコメントを出した。【倉沢仁志】
椿山ダムの濁水訴訟 原告側全面敗訴
日高川上流の椿山ダムから流れ込む濁水が、河口の美浜町三尾の磯にたい積し、アワビやナガレコのエサとなる海藻が枯れて漁が出来なくなったとして、
地元の漁協が和歌山県を相手取って損害賠償などを求めていた裁判で、和歌山地方裁判所の橋本眞一(はしもと・しんいち)裁判長はきょう(30日)、原告側の請求を全面的に退けました。
(写真)裁判後、会見を行う原告と弁護団(3月30日 和歌山弁護士会館にて)
この裁判は、和歌山県が管理する椿山ダムからの濁水が原因で、1990年(平成2年)頃から三尾地区の磯に茂っていたアラメやカジメなどの海藻が枯れ果てる「磯焼け」現象が起きたために海藻をエサにするアワビやナガレコが餓死し、水揚げ量が20年前のおよそ30分の1にまで減少したとして、美浜町の三尾漁協に所属する漁師ら58人が損害賠償や精神的苦痛などの保障費などあわせておよそ5億7千万円余りを和歌山県に対して支払うよう求めていたものです。
きょうの判決で橋本裁判長は「ダムが竣工した1988年(昭和63年)3月以前からアラメやカジメの藻場に関する衰退傾向は徐々に始まっており、
三尾沿岸の磯焼けが主にダムの濁水によるものであるとは考え難く、磯焼けとダムの濁水との因果関係は認められない」として原告側の請求を全面的に退けました。
裁判終了後、三尾漁協の村尾敏一(むらお・としかず)組合長は会見で「意外な不当判決でびっくりしている。不当で承服しかねる」と述べました。
また、村尾組合長は控訴するかどうかについて「組合で話し合って結論を出したい」と述べました。
一方、被告の和歌山県は、尾松智(おまつ・さとし)河川課長が「和歌山県の主張が認められ、妥当な判決と考えています。県としては、今後とも、県民の安全と安心を確保するために、椿山ダムの適切な管理に努めてまいります」とコメントしています。
(動画)
ダムから海に流れた濁った水の影響でアワビやサザエなどの漁獲量が減ったとして、美浜町の漁業者が和歌山県に損害賠償などを求めた裁判で、和歌山地方裁判所は、「漁獲量の減少が濁った水によるものとはただちに認めることはできない」として、訴えを退ける判決を言い渡しました。
この裁判は、日高川の上流にある椿山ダムから流れ出した濁った水の影響で下流の美浜町周辺の海で海藻が枯れ、アワビやサザエなどの漁獲量が減ったとして、地元の漁協と組合員など58人が和歌山県に5億7000万円あまりの損害賠償などを求めていたものです。
和歌山地方裁判所の橋本眞一裁判長は、「漁獲量の減少が濁った水によるものとただちに認めることはできない」などとして、原告側の訴えを退ける判決を言い渡しました。
判決について、原告側の由良登信弁護士は、「原因がダムの建設であることは明白であり、不当な判決だ」と述べ、控訴を検討する考えを示しました。
和歌山県は、「主張が認められ、妥当な判決だと考えている。今後もダムの適切な管理に努めていく」というコメントを出しました。
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