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報道

アマゾンの巨大ダムが7割の動物を絶滅させる恐れ 水力発電用の巨大ダムは誰のため?

2015年7月10日
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アマゾンなどでの水力発電の巨大ダム建設が哺乳類や鳥類等の生息に深刻な影響を与えているという報告を掲載します。

 

アマゾンの巨大ダムが7割の動物を絶滅させる恐れ

水力発電用の巨大ダムは誰のため?

(NATIONAL GEOGRAPHIC 2015.07.10) http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/070900178/?bpnet
ブラジルのバルビナダム建設により、かつては一続きの熱帯雨林だったこの地が、3546の島に分かれてしまった。そのほとんどが小さな島で、周囲の陸から孤立している。(PHOTOGRAPH BY EDUARDO M. VENTICINQUE)
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 世界の国々が水力発電施設の建設計画を推し進める中、巨大なダムによって哺乳類や鳥類、カメなどが絶滅の危機に直面していると警告する最新の研究報告が出された。少なくともアマゾンでは、その不安が現実になっているという。(参考記事:特集「ダム建設に揺れるメコン川」

 今月1日に英国イーストアングリア大学の研究グループが「PLOS ONE」に発表した論文によると、ブラジルに建設されたバルビナダムは、かつて手つかずの森林が広がっていた地域を、3546の島々が浮かぶ人工湖へと変貌させた。その結果、そこに生息していた数多くの脊椎動物が姿を消してしまった。

「私たちのまさに目の前で、動物が次々に絶滅しているのです」。論文を共同執筆したカルロス・ペレス氏はブラジル出身で、同大学環境科学部の教授だ。「現地では、非常に高い確率で局所絶滅が起きていることが明らかになりました」と語る。しかもそれは、禁猟区や生物保護区域でも起きているという。

 2年に及ぶ調査をまとめた論文が発表された前日、ブラジルは米国との共同声明を出し、イングランドの面積にほぼ匹敵する1200万ヘクタールの森林を2030年までに回復させると誓約した。また、太陽光、風力、地熱発電の利用を大幅に拡大することも約束した。すでに、ブラジル北西部の熱帯雨林を流れるウアトゥマ川のバルビナダムにも、水上に浮かべるフロート式の太陽光パネルを設置する計画がある。

 ブラジルは現在、電力の大半を水力発電に頼り、増え続けるエネルギー需要を満たすために数百という新規ダムの建設を計画している。他の多くの発展途上国同様だ。水力発電はしばしば、「グリーンな」エネルギーとして称えられ、再生可能エネルギーのなかでは発電量が世界中で最も多い。(参考記事:「アマゾンでダムの建設ラッシュ、今後も数百カ所に」

 ペレス氏は、「多くの場所において、水力発電は効果的な発電方法です」としながらも、その効果のほどは地形に大きく左右されることも指摘する。ブラジルの低地では、落差のある水流を作るために水位を上昇させる必要があり、すなわち巨大なダムが必要となる。一方急峻な山地であれば、小さなダム湖で事足りる。

 つまり、水没面積に対する発電量は、平地にある水力発電所の方が、山の中の発電所よりもはるかに少ない。おまけに、ダム湖が大きくなれば二酸化炭素を吸収する樹木や植物も多く失われてしまうため、支払われる環境的代価も大きい。

「地域社会ではなく、大手エンジニアリング会社のため」

 これまでも、漁業の収入減や先住民立ち退き問題などを含め、ダム建設で引き起こされる様々な影響が調査されてきたが、今回のペレス氏らの研究は、より広い範囲を対象に、多様な脊椎動物への影響を調べたものだ。

VIRGINIA W. MASON, NG STAFF SOURCES: INTERNATIONAL RIVERS; FUNDACIÓN PROTEGER; ECOA; RED AMAZÓNICA DE INFORMACIÓN SOCIOAMBIENTAL GEORREFERENCIADA
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 調査対象となった生物は36種。「1ポンド(450グラム)以上の生物は全て調べた」という。250メガワットの発電能力を持つバルビナダムは、1989年に操業を開始した。その結果、3129平方キロの原生林が湖底に沈み、3000以上の小島が誕生した。

 その中で、今も多様な生物が生息している島はわずかである。研究チームは36の比較的面積の広い島へ調査に入り、そこに生息する動物の絶滅率が42%にもなっていることをつきとめた。ダム湖全体では、その数字は70%に達すると推定する。

 米カリフォルニア大学バークレー校の再生可能・適正エネルギー研究所所長ダニエル・カメン氏は、調査結果について「驚くべき内容ではない」としながらも、大規模ダムが生物多様性に与える実際の影響を「綿密に検証したすばらしい」研究であると評価する。

 カメン氏自身も、マレーシア東部に建設中の大規模水力発電ダムが、ボルネオの鳥類や哺乳類の多くを脅かそうとしているという調査結果をまとめており、論文が今月発表される。また、6月に発表された別の共同研究では、低コストの代替エネルギーとして、水力を利用した小規模な発電プロジェクトやバイオガス発電について報告している。(参考記事:「マレーシアのダム建設、抗議活動が激化」

 カメン氏は、巨大水力発電計画が次々に出てくる背景について、「国際的な投資を呼び寄せることに関心が集まってしまっているためです」と説明した。発展途上国は、規模の大きなプロジェクトの方が、小規模なものよりも投資を集めやすいと考えているのだという。

 ペレス氏も同意見だ。大規模ダムは「地域社会ではなく、大手エンジニアリング会社のためにあるようなものです」。こうしたメガダムはしばしば、遠くへ電力を送る送電線が必要となるが、これも非効率的であると指摘する。

 中には、地域社会が巨大ダムの計画に反対して勝利したケースもある。昨年、チリ政府は国民の強い反対に遭った結果、パタゴニアの最も豊かな自然を誇る2本の川に計画されていた5基のダム建設を中止した。(参考記事:「チリ、パタゴニアのダム計画を白紙に」

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