衆議院総務委員会の議事録 立野ダムの問題 2016年5月24日
田村議員の質疑の部分を下記に転載します。
○田村(貴)委員 通知の徹底と通知どおりの実践に、ぜひしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
次に、熊本地震を引き起こした活断層、断層について伺いたいと思います。
新たな断層、断層帯の発見が相次いで報告されています。広島大学の中田高名誉教授らの研究グループが、益城町中心部で新たな断層を発見したと報道されています。また、京都大学の林愛明教授らは、布田川断層帯が従来の認識よりも北東に七キロから八キロ長いことを突きとめたというふうにも報じられています。
お手元配付の資料1でありますけれども、この資料は、国立研究開発法人産業技術総合研究所、産総研による熊本地震に伴う地表地震断層の調査結果であります。この産総研から観測データを受ける政府地震調査研究推進本部にお伺いします。
この調査では、地表地震断層がたくさん確認されているわけですけれども、この点について御説明をいただけるでしょうか。
○白間政府参考人 お答え申し上げます。
今御指摘のございました地震調査研究推進本部の、地震調査委員会においての評価についてのお尋ねでございます。
まず、地表地震断層でございますけれども、地震の発生時に断層のずれが地表まで到達をして地表にずれが生じたものを言っておりますが、この分布を調べることで、断層運動が地表のごく浅いところまで達している範囲を知ることができるものでございます。
この調査委員会におきましては、現地調査の結果によりまして、布田川断層帯の布田川区間沿いなどで長さ約二十八キロメートル、及び日奈久断層帯の高野―白旗区間沿いで長さ約六キロメートルにわたって地表地震断層が見つかっている、このように評価をされているところでございます。
○田村(貴)委員 今まで私たちに知らされてきた活断層に加えて、新たな活断層がこれから発見される、それが確認されるという可能性もあるということでしょうか。
○白間政府参考人 お答え申し上げます。
活断層の存在する可能性についてでございますけれども、活断層の可能性につきましては、過去の活動履歴の調査がさらに必要になってまいります。
熊本地震後に地表地震断層が確認された範囲に新たに活断層が存在する可能性につきましては、過去の活動履歴の調査がさらに必要なことから、現時点で活断層であるか否かといった確定的なことを申し上げることはできないところでございます。
○田村(貴)委員 今回の地震を踏まえて、政府地震調査委員会は、ことし予定していた調査を変更して、布田川それから日奈久断層について再調査を行うというふうにお伺いしました。
その理由と調査の意義について御説明いただけるでしょうか。
○白間政府参考人 地震調査委員会におきましては、全国の主要な活断層の調査をこれまでも行っておりまして、その調査結果などを活用して、長期的な地震の発生の確率、また規模などの評価を行ってきております。
今回の熊本地震では、布田川断層帯と日奈久断層帯のそれぞれ一部の区間の活動によるものと評価をされておりますけれども、この一連の地震活動は、今回活動したと評価される区間の周辺の区間にも及んでおり、引き続き地震活動の推移を注視しなければならない、こういった状況にございます。
こういったことから、今後の地震活動の長期評価に活用することを目的といたしまして、可能な限り早急に過去の地震活動などを調査して、改めて地震発生確率または規模の評価を行う必要がある。こういったことから、地震調査委員会におきましては、これらの断層帯について重点的な再調査を今年度から実施する予定にしているところでございます。
○田村(貴)委員 非常に重要であるということがわかりました。再調査をしなければわからない、そして、調査をしないとその断層がどういう状態であるのかということも、わかりました。
資料の2は、地理院地図にある航空写真判読による布田川断層帯周辺の地表の亀裂分布図から、南阿蘇村立野付近をとったものであります。
国土地理院にお伺いをいたします。
この赤いドットと線の状態になっているところの亀裂というのは、地表地震断層なのでしょうか。御説明いただけるでしょうか。
○越智政府参考人 お答えいたします。
国土地理院では、地震による被害規模の早期把握を行うため、地震の発生後に撮影しました地上解像度約二十センチの航空写真を用いまして、布田川断層帯の周辺を中心に、地震により生じたと推定されます地表の亀裂を判読したところでございます。
その判読した亀裂には、今回の地震による断層のずれが地表にあらわれたものだけではなく、斜面の崩落等により生じたもの、地震の揺れや地盤の液状化によって生じたものなどがございます。
そして、航空写真による判読は、発災状況の迅速な把握には有効であるものの、その精度には一定の限界があることや、詳細な現地踏査を行っていないことから、全ての亀裂について、それぞれを、断層のずれが地表にあらわれたものかどうかを明確に区別することは難しいものと考えているところでございます。
○田村(貴)委員 それでは、こうした亀裂が地表地震断層であるのか、断層の種類はどう突きとめていくのか、今後これをどうやって判別していくのか、分析していくのかということについて教えていただきたいと思います。
○越智政府参考人 お答えいたします。
亀裂の判読につきましては、航空写真の活用に加えまして、無人航空機、いわゆるドローンでございますが、それが撮影した画像を用いることによりまして、さらに詳しく判読をすることができます。
例えば、国土地理院が南阿蘇村河陽地区及び黒川地区において判読した事例では、亀裂が平たんな農地や道路を縦断して並んでいるもの、また道路や土手などで明らかに横ずれが起きているもの、あるいは亀裂が幾つも斜めに並んでいるものは斜面の崩落によって生じた亀裂ではないものと考え、地表にあらわれた断層のずれとして判断したところでございます。
一方、平たんでない場所につきましては、判読されました亀裂が斜面崩壊によるものか地表にあらわれた断層のずれによるものかを見きわめることは容易ではなく、航空写真や無人航空機の画像などでこれらを明確に区別することは難しいと考えているところであります。
また、その亀裂が活断層であるか否かは、今後、専門家による詳細な調査によって判断されるものと考えております。
○田村(貴)委員 今後、専門家による詳細な調査が待たれるといったことが確認できました。
震度七を二回記録して未曽有の被害が広がった熊本地震。今後の防災のためにも、地震のメカニズムの解明、原因となる活断層、断層群の調査はこれからだ、大変重要であることがよくわかりました。
そこで、国土交通省に、国土交通省が建設を進めようとしている立野ダムとの関連でお伺いをいたします。
新たな活断層の可能性が指摘される中で、国土交通省は、これまで、布田川断層帯は立野ダム建設予定地の近くまで連続していないとしてきました。熊本地震の後に活断層等々についての調査は行われたんでしょうか。いかがでしょうか。
○野村政府参考人 お答えをいたします。
立野ダムにつきましては、まず、従前の現地調査などにより、いわゆる活断層を含めた約二百六十万年前以降に活動した根拠のある断層、すなわち第四紀断層がダム本体直下に通っていないことを確認しています。
具体的には、布田川、日奈久断層帯の中で最もダム本体に近い北東部に位置する北向山断層がダム本体から約五百メートル離れた位置に存在しますが、しかしながらダム本体方面には向かっていないことを把握してございます。
さらに、今先生お尋ねございましたとおり、今回の熊本地震の発生を受け、地震発生直後からこれまでに、ダムサイト及び周辺の目視による現地調査、さらにはドローンによる上空調査等を実施してきているところでございます。
これらの調査によりまして、まず、ダム本体から上流側約五百メートル離れた位置で、既知の北向山断層に沿って、つまりダム本体には向かわない方向に約七十センチメートル程度のずれが生じている、ダム本体部分にはずれは生じていないとの状況を把握しておりますが、これらの状況は先ほど申し上げた従前の調査結果と矛盾するものではないと考えてございます。
○田村(貴)委員 今、文科省それから地理院の方から御説明いただいたんですけれども、詳細な調査がやはり現地において行われる、それは一定の日数を要するものだということであります。
被災後、地震後に、航空写真、それからドローン、目視、これで見た、大丈夫だったと。それで本当に私たちを説得し得ると言われるんでしょうか。納得できるでしょうか。
資料3は、立野ダム建設現場付近の写真であります。ちょうど左下の部分、ここの部分にダムサイトが建設されるわけなんですけれども、この写真を見ていただいて、えらいことになっているなと。ここに本当にダムなんかつくって大丈夫なのかと、多くの方がこの地震後指摘されています。
私も、現地まで、まだ下まで入り切れませんけれども、行って本当にびっくりしました。立野ダムの資材置き場や取りつけ道路は、土砂崩れで足を踏み入れることもできません。
それから、仮排水路の出口付近の重機それから工事車両は土砂に押し潰されているんですよ。これは、あの二回の地震が昼間だったら、国交省の関係者、建設従業員の方、確実に犠牲者が出ていたという状況であります。
ダムの貯水池を囲む右岸部の柱状節理が崩落しているのもうかがえます。表層の弱い部分を中心に崩落が発生していると国交省もこの間、大臣はお認めになりましたね。崩落している。
平時でも落下している非常に脆弱な地盤です。この柱状節理に、脆弱だからコンクリートを流し込んでそして強度を高めるというんですけれども、そんなもので本当にコンクリートの塊のダムを両岸から支えられるのか。私は、これは無理ではないか。多くの県民の方がそうおっしゃっています。
そこで、きょうは宮内国土交通大臣政務官にお越しいただいております。
多くの科学者や研究機関が、震災後熊本に入って地質調査、断層調査を行っています。新たな活断層の発見も指摘し、そして報道もされています。こうした布田川断層帯の新しい解明が今から望まれるときに、国交省は、そうした知見を無視して、これから工事を続行していこうとするんでしょうか。
ここは私は政治判断が求められると思うんですよ。ここはやはりじっくり調査をすべきだというふうに思いますけれども、政務官、いかがでしょうか。
○宮内大臣政務官 お答えをさせていただきます。
ダム建設に当たりましては、大規模な地震時にもダム本体直下の地盤に段差が生じるようなことがあってはならない、そういう観点から、ダム本体直下に、いわゆる活断層を含めた約二百六十万年以降に活動した根拠のある断層、すなわち第四紀断層が通っていないことを確認することといたしております。
立野ダムにおきましては、従来の現地調査等によりまして、第四紀断層がダム本体直下に通っていないことを確認いたしております。
さらに、地震発生後の調査により把握した状況は、従前の調査結果と矛盾するものではありませんでした。
立野ダムの安全性に問題はないと考えておりますが、今回の熊本地震の規模が大きかったことを踏まえまして、今後、有識者を交えました詳細な調査を行うこととしております。その中で、第四紀断層がダム本体直下に通っていないことについても改めて確認することといたしております。
○田村(貴)委員 今、政務官がおっしゃったことの、確認したことは、過去、地震前に確認したことを踏襲しているということと、それから、地震の直後にいわゆる簡単な調査によってまた確認できたというような状況であります。
そして、今政務官がおっしゃったように、この地震を踏まえて、新たに断層について調査をされる。これは大いにやっていただきたい。しかも、第三者的に、あらゆる知見、それから調査機関をやはり委嘱もして、地震対策本部が委嘱をして、そして専門の調査機関によって調べていただく、これをやっていくべきだというふうに思います。
それまでは、やはり一旦ダムの建設工事は凍結する、最低限凍結する、そういう立場で臨んでいただきたいと思いますけれども、工事は進めていくんですか。政務官、いかがなんですか。
○宮内大臣政務官 立野ダムにおきましては、今後、有識者を交えた詳細な調査を行うこととしておりまして、先ほど申し上げましたように、この中で、第四紀断層がダム本体直下に通っていないことにつきましても改めて確認することといたしております。
なお、地震調査研究推進本部による調査につきましては、結果が明らかになった時点で、その内容に応じまして適正に対応してまいりたいと思っております。
○田村(貴)委員 産業技術総合研究所の吉見雅行主任研究員らの調査グループが、西原村の大切畑ダムとそれから阿蘇大橋との関係において、立野ダム近くに活断層がある可能性が高いといったことを指摘し、報道もされています。
やはり日本を代表するこの知見にぜひとも耳を傾けていただきたい。そして、全ての事実が明らかになるまでは、こうした危険な建設はやめる、工事は凍結する、そして、ダムをつくるべきではないといったことを私は強く申し上げておきたいというふうに思います。
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