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報道

【特集】清流を返せ! 世界遺産「熊野川」に異変

2017年6月1日
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ダムのために濁りが続く熊野川の濁水問題を取り上げた毎日放送のニュースを掲載します。

 【特集】清流を返せ! 世界遺産「熊野川」に異変

特集】清流を返せ! 世界遺産「熊野川」に異変
(毎日放送2017/ 5/30(火) 16:27配信) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170530-10000001-mbsnews-l27

和歌山県新宮市に河口がある熊野川。山間の清流を下る川舟は語り部による歴史や名所の案内もあって、人気の観光スポットのひとつです。しかし今、川は清流とは程遠い状況に。いったい何が起きているのでしょうか。取材班がその原因を探りました。

濁った熊野川

和歌山県新宮市を流れる世界遺産、熊野川。美しい山々の間を、小舟がゆっくりと下っていきます。この小舟は熊野三山を参る人々の足として、古くから親しまれてきました。語り部の案内を聞きながら過ごす「至福のひととき」。ところが、川に目を向けてみると…川の水はまっ茶色、濁っています。

「もっと透明度が高いグリーンのイメージを持っていた。それよりもすごく濁っているな」(東京から来た観光客)

川の中はどうなっているのか?何も見えません。透明度はほぼゼロです。川下りの船頭をしている88歳の打越保さん。大ベテランの打越さんもこれまでにない濁りだと困惑しています。

「景色は昔と変わらんけど、川だけの濁りが一番困る」(打越保さん)

最近は清流を求めてきた観光客に対し、申し訳ない気持ちで船を漕いでいるといいます。

「恥ずかしいというか。わざわざ遠いところまできてもらって、きれいな川を見てもらえないのは残念。川底見えたら魚が見えるが何にも見えない」(打越保さん)

異変は数年前から

川の水は「平成の名水百選」にも選ばれているとあって、2007年の熊野川は確かにきれいで、底にある石も見えました。しかし今では濁っていて、川底は全く見えません。比べると川の色の違いは歴然としています。

世界遺産「熊野川」の異変は数年前から起きたとのこと。川を眺めながら食事を楽しめるのが売りのレストランでも…

「(客から)『いつもこんな川?』と言われる。『いえ、もっときれいなときがあったけど、このごろこんなに濁って』と言ってる。つらいですよ。お客さんにそんな言い訳をしなあかんのは」(かあちゃんの店 竹田愛子さん)

本来の川の姿は壁に貼っているといいます。

「この写真を見ていただいたらわかるように、この川を予想して来てくれると思う」

濁流問題は海にも

熊野川の濁流問題は海にも広がっていました。シラス漁を営む中村竜彦さん。熊野川の河口付近で漁をしていますが、水の濁りによる影響は少なくないといいます。

Q.濁りの中でシラスはどう?
「とれないです。やっぱりすみにくいんじゃないですかね。ほとんど土色みたいになった海なので。僕の次の世代までも長くやっていきたい商売ですが、この状況が続けば厳しくなってしまうんじゃないかと思う」(中村竜彦さん)

多くの人の頭を悩ませる熊野川の濁り。地元・新宮市の市長も重大な問題だと認識しています。

「水道も熊野川から取水していますので、本当に多くのところに悪影響が出ている。世界遺産の熊野川ですから、昔のきれいな姿を一日も早く取り戻していただきたい」(新宮市 田岡実千年市長)

なぜ濁った?遡って確認

一体なぜ、川は濁ってしまったのか?取材班は原因を探るためボートに乗って、河口から川を遡ってみることにしました。

「このあたりでは水害対策のため川底を深くする工事が行われていますが、どうやらさらに上流から濁流が流れているように思われます」(吉川元基記者リポート)

さらに遡っていくと…

「このあたりにくると川も狭くなってきています。それにつれて濁りも強くなってきているように思います」(吉川元基記者リポート)

そして、河口から約4キロ地点。川の水はさらに濁って泥水のようです。この先は川が浅くてボートでは進めないため、取材班は車に乗り換えどんどん上流へと遡っていきます。

河口から約5キロ地点。支流の高田川と熊野川の合流地点では、きれいな水と濁った水が混ざっていってます。川の中を見てみると・・・境界がはっきりとしています。

さらに河口から約21キロ地点でも、支流が熊野川の濁流に合流しています。支流と熊野川の水をカップに入れて比べてみると色の違いは一目瞭然です。

ちなみにこの日(5月16日)の熊野川の水の濁りを表す「濁度」は48.5度。同じ日で比べると、大阪市などを流れる淀川は8.6度、堺市などを流れる大和川は6度でした。熊野川がダントツで濁っているのです。

原因はダムの水

さらに上流を目指すとついに…

「河口からおよそ25キロ地点にきました。放水口から濁流が流れていると思われます」(吉川元基記者リポート)

勢いよく流れ出る茶色い水。ここはダムの放水口。川の濁りの原因はダムからの水にあったのです。放水口の壁には・・・「電源開発」の文字。ダムを管理している会社です。

なぜ濁った水を放流しているのか?取材班は、電源開発の担当者に話を聞くことにしました。

Q.放水口から濁水が流れているという認識は?
「はい、ございます」(電源開発 西日本支店 斉藤文彦支店長代理)
Q.濁水の原因は?
「上流から流れ込んだ濁水がダムにたまってしまうという現象が起きています」

川の濁りの原因は6年前、和歌山や奈良を襲った紀伊半島大水害にあるとのこと。山肌がもろくなったため、少しの雨でも土砂がダムに流れ込むようになったといいます。その濁った水を発電に使うため、下流に放流せざるを得ない状況にあるというのです。

きれいな川はいつ戻るのか

電源開発も対策を取っていないわけではありません。ダムの水は土砂が沈殿する深い所のほうが濁っています。これまで、発電に使う水を深い場所からも取り込んで発電に使い、放水口から放流していました。そこで取水設備の工事をして、できるだけ水面に近いきれいな水を取るように改良中だといいます。工事は来年6月に終了する見込みで、川の濁りは改善されるということです。

「やむを得ず濁水が高くなる状況はあるのですが、少しでも対策を取って、きれいになる日数を増やすことが我々が求められていること」(電源開発西日本支店 斉藤文彦支店長代理)

また、水害でもろくなった山肌については、木を植えるなどして削れた部分を保護する工事が周辺の自治体などによって進められています。先週「熊野川」のほとりには、観光客を迎える準備をする船頭・打越さんの姿がありました。

「やはり不安はありますね。なかなか濁りは取れんね。私も年やから、ずっとはできないけど、まだ2、3年はいけると思いますけど、そのうちに濁りがなくなれば大変うれしいです」(打越保さん)

世界遺産「熊野川」に清流が戻る日は来るのか。地元住民たちは期待と不安に揺れています。

 

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