諫早干拓問題の最近の記事
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諫早干拓問題について最近の記事を掲載します。
先行きが厳しい状況になってきました。
諫早干拓、基金案による漁業再生へ 3県足並みそろえ沿岸漁協トップ会談
(産経新聞2018年4月7日)http://www.sankei.com/region/news/180407/rgn1804070006-n1.html
国営諫早湾干拓事業(長崎県)をめぐり、福岡、熊本、佐賀3県の有明海沿岸漁協・漁連のトップが、7日に会談することが分かった。開門しない代わりに漁業振興基金を創設する福岡高裁の和解案受け入れで、意見一致を目指す。開門派の反対で和解協議が決裂したとしても、基金案による有明海の漁業再生に向け、足並みをそろえる。 (村上智博)
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福岡高裁(西井和徒裁判長)は3月5日、開門を強制しないように国が開門派漁業者側に求めた請求異議訴訟で、和解を勧告した。開門に代わり、国が創設する100億円の基金などで、漁業振興を図る内容だった。西井裁判長は「混迷した状況を打開する唯一の現実的な方策」とした。
諫早問題では、長引く混迷にうんざりする漁業者側に、現実的な解決法として基金案を受け入れるムードが出てきた。
特に福岡、熊本の両県漁連は、基金案の早期実現を求める。タイラギなど高級二枚貝の漁業再生には、一刻の猶予もならないという危機感からだ。
福岡有明海漁連の西田晴征会長は「漁業再生は、今やらないと手遅れになる。いつまで裁判をするのかという思いがある」と語った。
福岡、熊本両県漁連は、水面下で佐賀側との接触を重ねた。
佐賀県有明海漁協の徳永重昭組合長はこれまで、開門派漁業者の側に立ってきた。だが、ここにきて基金案容認へ舵(かじ)を切った。
3月14日には、同漁協所属の15支所の総意として、勧告に沿って和解協議を続けるよう求めることを申し合わせた。
徳永氏は同19日に「(基金案を)受け入れざるを得ない」と表明した。佐賀県の山口祥義知事も基金案に理解を示した。
ただ、佐賀県有明海漁協や佐賀県は、今回の訴訟当事者ではない。
開門派弁護団の馬奈木昭雄団長は、3月20日の佐賀県議会で「基金案をのんでも、有明海は再生しない」「今後は開門を求める(干拓地の)営農者も増える。裁判は積極的に起こしたい」などと語った。
福岡高裁の和解勧告に対し、国は今月4日、勧告を受け入れる回答書を提出した。
一方、開門派の漁業者側は3月19日、勧告を拒否すると回答した。
今月10日に和解協議があるが、決裂する可能性が大きい。その場合、7月30日に判決が言い渡される。福岡高裁は「開門を強制しない」という国の請求を認める判決になることを示唆している。
諫早湾干拓、見えぬ解決の道筋 和解決裂へ 高裁の協議勧告、4日に期限
(日本経済新聞 電子版2018/4/2 20:30)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28886970S8A400C1ACYZ00/
国営諫早湾干拓事業(長崎県)を巡り、潮受け堤防排水門を開門せず、国の漁業振興基金による解決を図る案を示した福岡高裁の和解勧告が4日、当事者の回答期限を迎える。漁業者側は拒否する意向を既に示しており、和解は決裂する見通しだ。対立解消のメドが立たない中、漁業者、営農者双方で内部の足並みの乱れも表面化し始めており、事態は混迷の度合いを一段と深めつつある。
「事業は膠着した状況となっている」「関係者に深刻な対立をもたらしている」。福岡高裁が3月5日に出した和解勧告には、現状を憂慮する厳しい言葉が並んだ。
勧告は、営農者に大きな影響を与えることなどを理由に「開門が紛争解決に有効とは認められない」と指摘。開門はせず、国が創設する100億円規模の漁業振興基金で解決を図る方向性を提示し、これが「唯一の現実的方策だ」として関係者に和解協議のテーブルにつくよう求めた。
だが、基金案による和解協議は長崎地裁でも昨年決裂したばかり。漁業者側は長年にわたってあくまで開門を求め続けており、今回も「到底受け入れることはできない」(馬奈木昭雄弁護団長)として、3月19日には拒否する内容の書面を高裁に提出した。
回答期限の4月4日を過ぎれば、高裁は「和解は決裂した」と判断し、国が開門を強制しないよう求めた請求異議訴訟についての判決を7月30日に言い渡す見通し。その場合は漁業者側に不利な内容になることが見込まれており、国が開門しない代わりに漁業者側に支払い続けている1日90万円の制裁金が止まる可能性もある。
(写真)諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門(長崎県諫早市)
もっとも、制裁金の支払いが止まったとしても、開門命令と開門差し止め命令という矛盾した司法判断が並立する従来の「ねじれ」の状態に変わりはない。漁業者側弁護士によると、開門を巡る訴訟はほかにも複数件が係争中といい、統一的な司法判断が見込める状態ではない。
原告の漁業者とともに開門を求めてきた佐賀県や同県の漁協は最近、「国の基金案受け入れが現実的選択肢」との姿勢を強めている。山口祥義知事は3月28日、斎藤健農相との会談で基金案の受け入れを伝達。原告らと足並みが乱れる事態になっている。
ただ、ある漁協幹部は「和解が決裂すれば、国の有明海再生事業が縮小されるのではとの不安があった」と苦しい胸の内を明かし「開門要求の旗を完全に降ろしたわけではない」とも話す。原告側は「開門を求め続ける漁業者を孤立させるような姑息(こそく)なやり方は許せない」と、国への不信感を一段と募らせている。
さらに事態を混迷させかねないのが、この4月で営農開始10年を迎えた営農者側でも足並みの乱れが表面化したことだ。
干拓農地では昨年4月時点で40の経営体が入植していたが、このうち2つの農業生産法人が、農産物の野鳥による食害被害を受けたなどとして、農地を所有する長崎県や国などを相手取り、損害賠償や開門を求めて長崎地裁に提訴したのだ。
「開門を求める営農者」というこれまでにない立場の当事者の登場に、開門派の漁業者側も連携を模索。この訴訟に利害関係者として補助参加を申し立てる方針という。様々な立場の関係者が複雑に入り交じり、全体像を見通しにくいほどの状況に陥っている。
開門棚上げ現実対応 確定判決〝無効化〟公算で
諫早和解協議県と漁協容認
(佐賀新聞2018/4/2 10:30)www.saga-s.co.jp/articles/-/199912
国営諫早湾干拓事業(長崎県)を巡り、開門調査を求めている佐賀県と県有明海漁協は開門しない前提での訴訟の和解協議を容認することを表明した。開門を求める声が根強い中での判断の背景には、開門のよりどころの確定判決が“無効化”する公算になった状況がある。有明海再生の道筋はいまだ見えない中、確定判決を履行しない国を不問にする司法の決着が現実味を増している。
「紙に書いてあることがすべて」。3月中旬、漁協がまとめた「有明海再生に向けた考え方」の趣旨について報道陣に問われた徳永重昭組合長は、そう繰り返した。文書は、福岡高裁が国の主張に沿って開門しないことを前提とする和解勧告を示したのを受け、訴訟当事者の開門を求める漁業者と国に和解協議を進めるよう求めている。
▼方針支持
有明海再生事業の継続や潮受け堤防内の調整池の小まめな排水、堤防の排水ポンプ増設の3項目も、従来の漁協要望事項として明示した。一方、「開門調査を含む有明海の環境変化の原因究明が必要」との主張を堅持することも付記している。県も「現実的な対応」として漁協の方針を支持し、山口祥義知事が3月28日、農水省を訪れて斎藤健農相に直接報告した。
開門関連訴訟で、和解協議に入った福岡高裁の訴訟はとりわけ重要視されていた。確定判決に基づく開門を強制しないよう国が求めていて、認められれば確定判決の効力が事実上失われるからだ。高裁は勧告で、開門せずに国が示す基金案によって解決を図る方向性を示した。開門派の漁業者側には和解協議が決裂しても国に有利な判決になることを示唆し、司法の「非開門」の流れが決定的になった。
▼徹底抗戦
基金案は100億円規模で漁業振興を目的とし、国が和解協議前に漁協に対して受け入れを求めていた。漁協は回答を見送る一方で基金案と別に有明海再生事業の継続など3項目を要望した。国は高裁へ提出した文書でそれらの要望を示し、「和解協議が進展すれば検討する」「引き続き有明海再生が重要な政策課題であるとの認識に立つ」と前向きな意向を示した。
高裁も国に呼応する形で「(漁協は)現状を踏まえて苦渋の決断や検討に至ったと思われ、その要望は尊重されるべき」との見解を和解勧告に加えた。漁協が「開門」と「非開門」の矛盾するような考え方をあえて示したのには、和解協議が漁業者側の拒否で決裂する見通しの中、訴訟にかかわらず要望に応えるよう訴える狙いがうかがえる。
国は福岡高裁の和解勧告に関して4日までに回答する。「和解に至れるようあらゆる努力を行っていく」としているが、協議決裂によって基金案や漁協の要望を議論する場がなくなって立ち消えになる可能性があり、漁業者の反発も予想される。当事者の漁業者側弁護団は既に訴訟で上告する意向を示すなど徹底抗戦の構えを見せており、問題の行方は依然として混沌(こんとん)としている。
国の訴訟進行に関する上申書の一部要旨(2月23日付)
排水ポンプの増設は現時点では費用負担の在り方などに課題があるが、和解に向けた協議が進展すれば検討する。小まめな排水の実施はこれまでと同様に努力していく。有明海再生事業の継続は、毎年度の予算編成過程で取り組みの成果を踏まえ検討するが、引き続き有明海の再生が重要な政策課題であるとの認識に立って検討する。
福岡高裁の和解勧告の一部要旨(3月5日付)
佐賀県の漁業団体は執行部において一定の要望をすることで基金案受け入れの可否を検討している状況にあり、佐賀県も漁業者に寄り添う姿勢と見受けられる。本来は開門を求めるところ、現状を踏まえて苦渋の決断をし、または検討するに至ったと思われ、その要望は尊重されるべき。
岡、熊本、佐賀3県の有明海沿いの漁協は、7日の会合で、今後は足並みをそろえて、有明海再生事業の実施を訴えるよう申し合わせる。
高裁による判決後も見据え、歩調を合わせ、基金案実現を目指す。
佐賀県有明海漁協が表明した有明海再生に関する考え方の文書
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