西予・野村 濁流おびえ数時間 愛媛県内豪雨災害 あっという間 水が (野村ダムの放流)(広島の野呂川ダム)
愛媛県肱川では国土交通省の野村ダムが放流量を増やしたあと、下流の流域で浸水する地域が相次ぎ、自宅付近や車で移動していた5人が死亡しました。
このことを詳しく伝える愛媛新聞の記事を掲載します。なお、野村ダムは総貯水容量1,600万㎥、洪水調節容量350万㎥、集水面積168㎢のダムです。
広島県の野呂川ダムでも満水になり、下流域の住民に対し、大至急避難するよう、呼びかける危機的な状況が起きました。
広島県の野呂川ダムについての記事も掲載します。なお、野呂川ダムは総貯水容量170万㎥、洪水調節容量105万㎥、集水面積13㎢のダムです。
西予・野村 濁流おびえ数時間 愛媛県内豪雨災害 あっという間 水が
(愛媛新聞2018年7月8日(日))https://www.ehime-np.co.jp/article/news201807080013
愛媛県西予市では野村ダムが放流量を増やした7日早朝から午前にかけ、下流の宇和川(肱川)流域で浸水する地域が相次ぎ、旧野村町中心部では自宅付近や車で移動していた5人が死亡。十数人が増水の速さに逃げ遅れ2階建ての屋根に上がり、濁流の恐怖におびえながら数時間救助を待った。
野村中学校に避難した女性(56)は、被害の激しかった東岸に住んでおり、午前6時10分ごろ川を確認したときには切迫感は感じなかったという。「ダム放流が始まる」との消防団の呼び掛けがあり、車で避難しようと準備していると一気に水が住宅街に流れ込み、車が流され始めた。
車での避難を諦めて夫(55)と里帰り中の娘(25)と急いで屋根に上がると、水位が2階天井近くに。「どこまで水位が上がるか分からず、生きた心地がしなかった」と振り返り「前日夜まで、こんな大災害になるとは思わなかった。避難指示や放流をもっと早く知らせてほしかった」と話した。
介護施設職員の女性(64)は、商店街付近の親族に声を掛け高台へ避難。「家や車が川に流されて橋脚にぶつかるのを見て、人が中にいなければいいと祈っていた。現実感がなかった」と振り返った。
野村ダムでは記録的降雨でダムが満水になり、7日午前6時20分にダムに入ってくる水量と同量の水を下流に放流する操作を開始。野村地区の男性(75)は「避難が間に合わなかった。もう少し段階を踏んで放流できなかったものか」。さらに下流に住む自営業男性(74)は「午前6時半ごろは水位に余裕があったが、30分後には冠水していた。代々100年以上ここで店をやっており1943年の大水害でも道路は冠水したと聞いていたが、今回は店の中まで漬かった」と驚いていた。
【宇和島・吉田 ごう音 声かき消す】
会話や防災無線もかき消すごう音―。7日明け方から、宇和島市を猛烈な雨が襲った。またたく間に川の水かさは増し、吉田地域を中心に土砂崩れや床上浸水などが発生。住民は体験したことのない甚大な被害に不安な一日を過ごした。
搬送された同市吉田町立間の男性の近所の男性(77)によると、男性は裏のミカン山から落ちてきたモノラックを取り除こうとしていて土砂にのみこまれた。男性の妻の助けを呼ぶ声を聞き、近所の男性らが駆け付けたが、次々と襲い来る水や泥に阻まれ救助は難航した。
近所の男性方も流木でふさがれ「外に出ようにも身動きがとれない。今朝の雨はすごく、あっという間に水が来た。こんなことは初めて」と不安をにじませた。
宇和島消防署や宇和島署は、宇和島海上保安部の巡視船や警察船も利用し救助に向かった。要請に対応が追いつかないとして、市を通じて自衛隊の派遣を要請。負傷者の搬送や行方不明者の捜索は終日続いた。
市中心部と吉田地域を結ぶ国道56号は、冠水や土砂流入で通行止めに。同市吉田町沖村では主婦の女性(67)がぼうぜんとしてた。女性によると、午前8時ごろから冠水。勢いは増し、最大1メートル以上の水が押し寄せた。1階は畳も浮き上がった。女性は「この土地に来て約50年だが、こんなひどい水害は初めて。大事にしてきた家具などが台無しになった」と肩を落とした。
吉田地域は広範囲で断水や停電が発生し、片付けや情報収集もできない状況。地域のスーパーも臨時休業し、女性(66)は、品薄のコンビニでなんとかおにぎり3個を買った。「市職員らも来てくれない。夜が過ごせるか心配」と不安を打ち明けた。
同地域中心部で午前9時ごろに1メートルに達したという水は夕方には引き、泥が残されていた。市立吉田病院(吉田町北小路)は自家発電などでしのいでいる状態といい、病院勤務の男性は「今日明日はなんとかしのげるが月曜以降もこの状態だと苦しい」と苦悶(くもん)の表情を浮かべた。
(写真)宇和川の氾濫で市街地に濁流が流れ込み、建物などを押し流す=7日午前8時50分ごろ、西予市野村町野村(2階建て住宅の屋根に避難した女性が撮影)村(2階建て住宅の屋根に避難した女性が撮影)
(写真)大雨で床上浸水した家屋。畳が浮き上がり家財道具が散乱していた=7日午後4時20分ごろ、宇和島市吉田町沖村
増水の川にダムから放流 歴史的大雨は治水能力を超えた
(ウェザーニュース2018/7/8(日) 15:39配信 ) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180708-00004259-weather-soci
ダムが調整できる量を上回る事態に
西日本の広いエリアで記録的な大雨となり、多くの川で氾濫危険水位を超過、一部では氾濫も発生しました。そんな中、川が増水している状況にも関わらず、7日(土)には京都府桂川上流の日吉ダムや広島県野呂川の野呂川ダムでは放流が行われ、下流の水位が上昇しました。
よく知られているダムの役割としては、水源としての貯水がありますが、それ以上に大きな役割としては治水があります。川に流れる水の量を調整し、洪水の発生を防ぐことです。
ダムだけで全ての洪水を防げるわけではない
今回は記録的な大雨で、ダムが調整できる量を上回る事態となりました。野呂川ダムでは7日(土)5時前にただし書き操作開始水位(※)を超えたため放流を開始。下流で浸水被害が発生しました。
想定以上の水位になることで、ダムそのものが決壊することを防ぐための措置で、行う場合は下流住民への周知などを含めた確認実施後と決められています。
ダムだけで全ての洪水を防げるわけではありませんので、こうした事態もありうるということは、知っておくと良さそうです。
(※)ただし書き操作開始水位とは…
洪水調節容量の8割程度に相当する水位であり、洪水調節を行うダムにおいて想定された計画洪水量を超える洪水が発生し、このままではダム水位がサーチャージ水位(洪水時にダムが洪水調節をして貯留する際の最高水位)を越えると予想されるときに行われるダム操作を開始する基準となる水位のことです。
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