西日本豪雨1年 ダムが水が怖い 愛媛・西予、緊急放流で集落浸水 「再発防止策不安」残ったのは数世帯
昨夏の西日本豪雨では野村ダムの緊急放流によlり、肱川が氾濫し、西予市野村町地区で5人が亡くなりました。「「天災ではなく人災だ」との思いは被災者から今も消えない。ダムの操作規則が変更されるなど、ハード・ソフト両面で対策が進んだが、不安を拭えずにいる」という被災者の声を伝える記事を掲載します。
西日本豪雨1年 ダムが水が怖い 愛媛・西予、緊急放流で集落浸水 「再発防止策不安」残ったのは数世帯
(毎日新聞大阪夕刊2019年7月8日) https://mainichi.jp/articles/20190708/ddf/007/040/010000c
西日本豪雨でダムの緊急放流後に肱川(ひじかわ)が氾濫し、5人が亡くなった愛媛県西予市野村町地区。「天災ではなく人災だ」との思いは被災者から今も消えない。ダムの操作規則が変更されるなど、ハード・ソフト両面で対策が進んだが、不安を拭えずにいる。【中川祐一】
三島町集落
四国地方が梅雨入りした6月26日。久しぶりに雨が降る中、小玉由紀さん(60)は自宅の前を流れる肱川を見つめていた。「また、どばっと雨が降ったらどうなるんやろう」
昨年7月7日午前6時20分。集落上流にある野村ダムが貯水の限界に達し、国土交通省野村ダム管理所は流入量とほぼ同量を放流する「異常洪水時防災操作」を実施した。川の水位は急上昇して集落はあっという間に濁流にのみこまれ、小玉さんの母ユリ子さん(当時81歳)も亡くなった。
(写真)新たに設置された危機管理型水位計。橋の向こうに三島町の集落がみえる。豪雨以前は川沿いに家が建ち並んでいた=愛媛県西予市野村町地区で2019年6月28日、中川祐一撮影
国は6月、野村ダムなどについて大雨の初期段階で放流量を増やすなど操作規則を変更。小玉さんの家の前の橋には同月、ダム管理所などがきめ細かく水位を把握するため新型の水位計が設置された。
ただ小玉さんは「電光掲示板などで放流量をもっと簡単に分かるようにしてほしい」と話す。どれだけ川の様子に気を配っていても、大規模放流があれば一気に水位は高くなる。それが西日本豪雨から得た最大の教訓だ。
小玉さんの家がある三島町集落ではすべての家が浸水被害を受けた。国の「防災集団移転促進事業」を使い全住民が高台などへまとまって移ることも検討されたが、反対意見もあって立ち消えになった。
集落に残ると決めているのは数世帯にとどまる。仕事場のある別の町に妻と引っ越すことを考えている建築業の男性(67)は「ダムがあるから安心と思って家を建てたが、もう水が怖い。住民説明会に行ってもダム管理所は言い訳ばかり。聞いてもしょうがない」と胸の内を明かす。
多くの人が今も仮設住宅で暮らしているため、集落には更地や空き家が目立つ。「以前は夏の夕方になると、風が通る橋に自然と人が集まってみんなで涼んだ。ずっと続くと思ったのに……」。小玉さんがさみしそうに言った。
(写真)更地が目立つようになった三島町集落を歩く小玉由紀さん=愛媛県西予市野村町地区で2019年7月8日午前9時53分、中川祐一撮影
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