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報道

埋まるダム、迫る危機 山梨・雨畑川、静岡新聞社ルポ

2019年7月31日
カテゴリー:

駿河湾産サクラエビの不漁問題で注目される日本軽金属の雨畑ダムの土砂堆積状況について静岡新聞社のルポを掲載します。
なお、この記事の「雨畑ダムの堆砂率の経年変化」のグラフは当方で作成したものです。


埋まるダム、迫る危機 山梨・雨畑川、静岡新聞社ルポ

(静岡新聞2019/7/30 07:53)https://www.at-s.com/news/article/social/shizuoka/663642.html

(写真)大量の土砂の堆積で干上がった雨畑ダムのダム湖。本村集落(右上)の住民は危機感を募らす=26日、山梨県早川町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
日本軽金属 雨畑ダムの堆砂率の経年変化

雨畑地区本村集落周辺の様子

駿河湾産サクラエビの不漁問題で、早川水系の濁りの一因として注目される日本軽金属の発電用貯水ダム「雨畑ダム」(山梨県早川町)。ダム下流の雨畑川では汚泥やコンクリートの産業廃棄物の不法投棄が発覚する一方、ダムそのものも堆砂率が93・4%(2016年度)に達し、ほぼ埋まった状態。著しい堆砂は昨秋、上流側の集落に浸水被害をもたらした。今月、上空から状況を確認し、現地を訪ね歩いた。
【動画】堆砂著しいダム上流部、えん堤…  https://www.at-s.com/news/article/others/663541.html

静岡市から北へ約50キロ。日本一人口の少ない町、早川町。山々の間に雨畑ダムが見えてくる。緑に濁ったダムの湖水はわずかで、上流は間もなく干上がる。辺り一面の土砂はフォッサマグナ西縁(糸魚川―静岡構造線)近くのもろい地質構造の山から流れ込む。
雨畑地区の中でも最も川からの影響を受けやすい場所にある本村集落(約40世帯)を訪ねた。土砂で河床が上昇し道路より川底が高くなった「天井川」。水害に対する危機感を募らせていた住民は昨秋、台風で集落の一部が床上浸水し、恐れていた事態を目の当たりにした。
「濁流とともに、大きな石がゴロンゴロンと転がる音が聞こえた」と70代女性。大雨のたびに町外の親戚宅に自主避難するといい、「ダムを誰が管理しているのか知らないが、早く安心して暮らせるようにしてほしい」と切実だ。集落と対岸を結ぶつり橋は土砂にのみ込まれる寸前。ダム湖には橋脚上部まで埋まった奥沢橋もあり、かつてそこが谷だったことは想像しにくい。
雨畑ダムから約5キロ上流。古くは修験者が往来し、竜神様をまつる“聖域”。ここに国土交通省が02年に整備し「東洋一の規模」と称された稲又第三砂防堰堤(えんてい)がある。この堰堤上流も上空から見ると大量の土砂に埋まる。
駿河湾に注ぐ濁り水の源をたどると、そこには、先代が「地域活性化のため」と受け入れたダムの負の遺産に耐え忍ぶしかない住民の姿があった。

<メモ>雨畑ダム 富士川水系雨畑川(山梨県早川町)に日本軽金属が所有する“自家発電”用のアーチ式ダム。同社「三十年史」によると、地元の陳情を背景に1965年着工。「困難な地質条件」のもと2年で完成。日本のアルミニウム製錬の一翼を担った同社蒲原製造所(静岡市清水区)に電力供給。一方、同社などによると、活発な土砂流入で100年分の設計堆積量にわずか10年で達し、総貯水量の9割以上が埋まる。

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