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事務局からのお知らせ

「川辺川ダム問題」球磨川の人吉における危機管理型水位計の異常な観測値(熊本豪雨)

2020年8月7日
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7月上旬の熊本豪雨で、球磨川が大氾濫し、凄まじい被害をもたらしました。

この豪雨を受けて、菅義偉官房長官までがテレビ番組で川辺川ダムについて「今回のこうした被害に遭われると、そういう問題を課題に載せなければ、まずい思いがある」と述べており(朝日新聞7月21日)、

中止されたはずの川辺川ダム計画が再登場してくることが強く懸念されます。川辺川ダム抜きの球磨川水系河川整備計画は10数年経過していまだに策定されておらず、川辺川ダムそのものに毎年度、4億円程度の予算が付いてきています。

球磨川の治水計画を考える上で最も重要なことは今回の球磨川洪水がどの程度の規模の洪水であったかです。未曽有の洪水でしたが、問題はその洪水規模です。

本洪水では、人吉地点の常時水位観測所の観測は7月4日の午前7時30分までで、その後は欠測になってしまいました。球磨川の観測所で水位をずっと測れたのは下流部の萩原、横石、支川・川辺川の四浦、柳瀬だけです。

人吉地点については数年前から危機管理型水位計が取り付けられていますが、その観測値の精度に問題があります。

下記の図1は人吉の危機管理型水位計と常時水位観測所の観測値の時間変化を図示したものです。前者は国会議員事務所を通じて国交省から入手したデータで、後者は国交省の水文水質データベースからダウンロードしたものです。

7月4日の0時における危機管理型水位計の観測値を常時水位観測所の観測値に合わせて表示すると、その後は前者と後者の差が次第に大きくなり、7時半時点で、前者が後者を0.7~0.8m上回っています。その後、危機管理型水位計の観測値が急上昇し、常時水位観測所は観測を停止しています。危機管理型水位計のピーク時の9時50分に両者の差がどれくらいに拡大していたかはわかりませんが、この図の傾向から見て1.5m以上の差になっていたと考えられます。

この危機管理型水位計の観測値が過大になっていることについて、九州地方整備局に電話したところ(河川部河川計画課)、担当官はこれは疑問のある数字であって見直す必要があり、1m以上下がる可能性があることを認めました。

危機管理型水位計の観測値の精度に問題があったようなので、今後検討するということでした。

球磨川水系の水位観測所で7月4日7時30分より後の観測ができたのは、球磨川下流の横石と萩原、川辺川の四浦と柳瀬ですが、下記の図2のとおり、横石と萩原は7時30分以降はほとんど横ばいで、水位の上昇があっても小さいです。

川辺川の四浦と柳瀬は8時を過ぎると、横這い又は低下の傾向になっています。

人吉の危機管理型水位計の観測水位のみが下記の図1の通り、8時以降、急上昇しています。

7月4日朝の状況については矢上雅義衆議院議員(熊本4区)がツィートで人吉市の水の手橋(人吉観測所の近く)を撮った録画を流されています。7月4日8時40分の映像を見ると、川の水位は水の手橋の路面を少し下回るレベルになっています。

 https://twitter.com/masa_yagami/status/1279198183218769920?s=21

【水の出橋 8時40分】
この橋の路面は下記の写真のとおり、堤防高とほぼ同じ高さです。

【水の出橋(人吉市の資料)】

しかし、下記の図1を見ると、8時40分時点の危機管理型水位計の観測水位は堤防高を大きく超えており、1.5m以上高くなっています。

この後、この付近の水位は9時50分頃にピークになるのですが、近辺の観測値から見て、1時間程度でここの水位が堤防高を2m超えるところまで一挙に上昇したとは考えられません。

本洪水は堤防を超える未曽有の洪水でしたが、上の映像を見ると、図1の危機管理型水位計の観測水位が示すレベルまで、洪水位は上昇していません。人吉の危機管理型水位計の観測水

位がかなり過大であることは明らかです。

危機管理型水位計の観測値を使うと、本洪水は人吉で8000㎥/秒以上の規模の洪水になりますが、この規模の洪水になると、1/80の球磨川水系河川整備基本方針で2600㎥/秒の削減ができるとされている川辺川ダムが治水計画で必要なものになってしまいます。

川辺川ダムだけでは対応できない洪水規模であったとしても、少なくとも川辺川ダムは必要だという話になりかねません。もっとも、人吉で8000㎥/秒以上もの規模の洪水が発生した場合は、川辺川ダムがあったとしても、ダムが満杯になって緊急放流を行わなければならない可能性が高く、川辺川ダムによって球磨川が救われるという話には必ずしもなりません。

このように、この規模の洪水になると、川辺川ダム抜きの治水計画の策定は困難であって、人吉の危機管理型水位計の著しく過大な観測値を使ってはなりません。

2000年代、川辺川ダム反対運動は大きく盛り上がりました。2001年12月から始まった川辺川ダム住民討論集会での国交省との徹底討論、2006年4月~2007年3月の球磨川水系河川整備基本方針策定審議会での潮谷義子前知事への支援活動における中心テーマは、国交省が示す基本高水流量(長期的な目標の洪水想定流量)が過大ではないかということでした。すなわち、国交省は基本高水流量を大きくして川辺川ダムによる洪水調節が必要だという考えに固執しました。基本方針は策定されてしまいましたが、この運動の盛り上がりにより、川辺川ダムの計画は2009年に凍結になりました。

このような川辺川ダムに関する過去の長い闘いを振り返って、これから川辺川ダム計画復活の動きに対して闘っていかなければなりません。

 

 

 

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