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球磨川治水 広い視点での対策検討を

2020年9月21日
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7月の豪雨で球磨川が大きく氾濫し、川辺川ダム建設計画が再浮上しています。この問題について熊本日日新聞のを社説を掲載します。

傾聴すべき意見であると思います。

9月18日、熊本県議会で球磨川の治水対策についての質疑が行われました。その様子を伝える記事も掲載します。


球磨川治水 広い視点での対策検討を

(熊本日日新聞2020年9月19日 07:11) https://kumanichi.com/column/syasetsu/1611334/

7月の豪雨が流域に大きな被害をもたらした球磨川の治水について、蒲島郁夫知事が11月中にも新たな対策を示すとしている。近年、豪雨災害が甚大化する中、予想を超える事態に対処するためにも、ダムや堤防だけに頼らぬ「流域治水」の考え方をベースに、広い視点で対策を検討すべきだ。

流域では7月豪雨の後、中止されていた川辺川ダム建設計画が再浮上した。12市町村でつくる同ダム建設促進協議会が8月、「ダム建設を含む抜本的な治水対策」を求める決議を採択。知事もダム計画を治水対策の「選択肢の一つ」として復活させることを表明した。被害の大きさを考えれば、治水のためダム建設を再検討するのは自然な成り行きだろう。

ただ、川辺川ダムがあったとしても、7月の水害を十分防げたかは分からない。国土交通省は今回の球磨川の最大流量を人吉市で毎秒8千トンだったと推計したが、専門家には異論もある。加えてどれだけ流量をカットできるかについても見解が分かれ、治水効果の見立ては異なっている。さらに緊急放流の危険性も考慮する必要がある。ダムは、治水の全てを解決する全能のカードではない。

近年の日本列島は毎年のように甚大な風水害に見舞われてきた。気候変動の影響で、自然災害は頻発・大規模化しているとされ、過去の常識の通用しないリスクに備えていかなければならない。

1級河川を管理する国交省も、新たな方針として「流域治水」を打ち出している。従来のようにハード面のダムや堤防だけでは限界があるため、民間を含め流域のあらゆる力で治水にあたるという考え方だ。被災の恐れのある住宅の移転促進や開発規制などのほか、有効な避難体制づくりなど、ソフト面も組み合わせた対策が重要になる。ある程度の浸水を前提にした減災・防災の視点も必要だ。

人吉市は浸水想定を記した防災マップを住民に配布していたが、最新の降雨基準に基づいたものではなく、7月豪雨の浸水は深さも広さもマップの想定を大きく上回っていたという。こうした情報周知などのソフト面にも欠点はなかったか。ハード面と同様に検証した上での対策検討が必要だろう。

2008年に蒲島知事が川辺川ダム計画を白紙撤回した後、国・県・流域市町村はダムによらない治水対策を検討してきた。残念ながら今回の災害までに実行できなかったが、これまでの蓄積も無にすべきではない。議論を取り込み、さらに大きな構えで総合治水対策を構築すべきだ。

ダムを止めた知事の決断までには、住民の長い議論の積み重ねがあった。当時の世論調査で県民の85%、流域住民の82・5%が白紙化を支持。大水害後の現時点でも流域の首長には温度差があり、議員や住民の意見も一様ではない。

治水対策の策定にあたっては県がリーダーシップをとるべきだ。速やかな策定が求められるが、拙速にならないよう、民意を十分くみ取り慎重に検討してほしい。

 

川辺川ダム必要論、急拡大 自民「当然」野党は警戒 熊本県議会

(熊本日日新聞2020/9/19 09:25) https://this.kiji.is/679872507206091873?c=92619697908483575

(写真)県議会代表質問で球磨川の治水対策について答弁する蒲島郁夫知事=18日、県議会棟 ​

「川辺川ダムが一つの有力候補として再び浮上してきたのは至極当然だ」-。18日の9月熊本県議会代表質問。自民党県連幹事長の松田三郎氏(球磨郡区)は7月豪雨の甚大な被害を引き合いにダム建設の必要性を強くにじませた。

2008年9月の蒲島郁夫知事による白紙撤回表明を受け、民主党政権が09年に中止を宣言した川辺川ダム計画。国土交通省は特定多目的ダム法に基づく廃止手続きは取らず、計画は連綿と生き続けた。そして今回、球磨川流域で60人が犠牲となった被害を機に、支流川辺川の「ダムの是非」が県政最大の課題として再燃した。

県議会最大会派の自民党内には、「必要論」が急速に広がる。「ダム以外に現実的な治水対策はない」と複数の県議。自民は08年以降、4度の知事選で一貫して蒲島氏を全面支援してきた。ただ、着々と蜜月関係を築く中で、川辺川ダム問題は喉元に刺さった“とげ”だった。

近年は声高に主張してこなかったものの、自民県議団の見解は変わらず「ダムは必要」。過去の県議会では、所属県議が「流域住民の生命財産をどう考えているのか」と知事に詰め寄る場面も度々あった。

「知事に、まずは『中立』の立ち位置まで来てもらいたい」と語っていた松田氏。この日の代表質問では「気象状況や大災害を境に12年間で民意は大きく変わった。(ダムに反対した)人吉市長と相良村長も顔触れが代わった」と強調。知事が、流域の民意を主な撤回理由とした過去の判断に縛られないよう、“地ならし”をしてみせた。

一方、自民と共に蒲島県政を支え、知事の白紙撤回表明を尊重してきた公明党県議団の城下広作氏(熊本市1区)は「検証委の結果を踏まえて冷静に判断する。ダムによって洪水被害が抑えられることが明らかであれば、反対しない」と話す。

自民や流域首長らから日増しに強まる「必要論」に、県議会の野党系会派は警戒感を隠さない。この日代表質問に登壇した第2会派・くまもと民主連合代表の鎌田聡氏(熊本市2区)は「検証委ではダムによらない治水対策10案の効果も明らかにすべきだ。ダムに慎重な立場の専門家も含めて多様な視点で検証する必要がある」と検証委の在り方自体を見直すよう知事に迫った。

共産党の山本伸裕氏(熊本市1区)も「ダムには緊急放流などのリスクもある。拙速な議論は避けるべきだ」との立場だ。

代表質問の答弁で蒲島知事は川辺川ダムも含めた「あらゆる選択肢を排除せずに検討する」と重ねて表明した上でこう続けた。「将来にわたって球磨川流域の安全安心を確保することが、天命だと覚悟を持って取り組む」(内田裕之、野方信助)

球磨川の治水対策について蒲島知事は、7月豪雨の検証を経て年内に方向性を示す方針だ。止まったはずのダム計画は再び動き出すのか。県政界や流域関係者の思惑を探る。

 

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