再々反論書追加分を提出 石木ダム
2021年4月3日
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石木ダム収用明渡裁決取消し裁決を求めて
2021年4月2日、106名の連名で、再々反論書追加分を国土交通省土地収用管理室宛に提出しました。
2019年7月3日付で113名が連名で提出した「石木ダム収用明渡裁決取消しを求める審査請求」に関して、審査請求人と処分庁である長崎県収用委員会との間で弁明・反論のやりとりが続いていることは2021年2月21日に水源連HPに「再々反論書提出」と題して報告いたしました。
その後、長崎県が「現地の皆さんと話し合いたい」としながら、既成事実化を図ることを目的に、本体工事着工の準備工事を重機を使って昼夜にわたって進めるようになり、13世帯と支援者の皆さんの抗議要請行動がきわめて危険な状況にさらされています。3月25日の工事継続差止訴訟控訴審第3回期日には、現地抗議行動を休むことができず、13世帯皆さんからお一人だけの参加となりました。
このような蛮行の背景には「覚書きを無視した土地収用法適用」があります。事業認定と収用明渡裁決の効果があるが故に、石木ダム建設工事を進めることができています。この審査請求で、事業認定と収用明渡裁決の違法性をさらに明らかにし、「収用明渡裁決取消し」の裁決を勝ち取るべく、「再々反論書追加版」と、治水目的の欺瞞性を整理するとともに川棚川の治水には田んぼダムも検討することを求める「(再々反論書追加版別紙)石木ダム治水目的と田んぼダム 検討の為に 」を4月2日に提出しました。
「再々反論書追加版」では、下記事項を記しました。
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現地の状況
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- 無駄な石木ダムに関連する工事は無駄であること
- 工事進捗の既成事実化は覚書き違反であること、
- 無駄な工事の夜間作業等による強行継続は、朝8 時から夜10 時まで14 時間もの長時間にわたる抗議要請行動を強いるだけでなく、重機稼働によるケガ等の危険性が極めた高いこと、
- このような工事強行は、13 世帯皆さんが疲れ果てて何もできなくなることを狙った、長崎県の人権破壊行為そのものであること、
- このような人権破壊行為は直ちに止めさせなければならないこと、を記述した。
- 特に治水面に関して、その手順を追って問題点を整理し、その手順すべてにおいて致命的な瑕疵、それも意識的なゴマカシがなされていること、それらのゴマカシの積み重ねで治水面の必要性が作り上げられていること、を別紙「「石木ダム治水目的の検証」と「田んぼダムの」検討~川棚川の治水対策は「田んぼダム」の導入を~」で明らかにした。
- 同別紙には、上記事項とともに、川棚川水系にとってより有効な治水対策は「田んぼダム」であることを述べた。
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行政不服審査請求制度の目的
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- 事業認定取消しを求める審査請求「棄却裁決」の理由は、「(処分庁・九州地方整備局長が提出した)資料によれば、以下の諸点に照らして、本件事業が法第20 条各号の要件を充足するとした本件処分について違法ないし不当な点は認められない。」とする誠に気楽なものであった。
- 行政不服審査法は、「・・・・・、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」のであるから、本件行政不服審査請求において、審査庁に必要な判断はあくまでも、「13 世帯住民の生活の場を奪わなければならないほどの理由があるのか」という視点からの判断である。
- ①収用明渡し裁決の原因処分である事業認定に瑕疵(事実誤認等)はなかったのか、②事業認定処分後に事業認定時に想定していなかった事態が生じていないのか、について、「国民の権利利益の救済を図る」視点からの行政としての見直し権限は国土交通大臣しか持ち合わせていない。
- 「国民の権利利益の救済を図る」視点からの当該案件見直しを求めた。
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事業認定処分に無効となるような重大かつ明白な瑕疵の有無について
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- 処分庁(長崎県収用委員会)は「事業認定処分に無効となるような重大かつ明白な瑕疵」として、最高裁判示から「誤認が一見看取し得るもの」とし、土地収用法上の4つの手続き不備を例示している。
- しかし残念ながら手続きがそろっているとしても、その内容が虚偽の積み重ねであるのが本件なのである。
- 土地収用法は第63条第3項で「起業者、土地所有者及び関係人は、事業の認定に対する不服に関する事項その他の事項であつて、収用委員会の審理と関係がないものを前2項の規定による意見書に記載し、又は収用委員会の審理と関係がない事項について口頭で意見を述べることができない。」としている。
- この項に縛られた収用委員会公開審理がなされる以上、事業の認定内容が虚偽で塗りたくられていることを土地所有者及び関係人が伝えることができない。この項はまさに事実を事実として伝えることを禁じた、土地所有者の人格権を侵害する憲法違反の条項である。
- 実際、第1次収用明渡裁決申請にかかる収用委員会公開審理では第63条第3項を盾に石木ダムの必要性に関する質疑は封じられ、本件においても共有地権者からの石木ダム事業に係る土地収用事件の却下を求める要請書には回答が来ていない。
- 本件審査請求者は全員、本審査請求において、「誤認が一見看取し得るもの」の壁を越えて、事実と向かい合った結果としての裁決を求めている。
- 以上より、本処分の効果を一時停止した上での、審査庁による現地調査を含めた証拠審査、審査請求人等と本件に関係した起業者・行政処分者との公開による質疑応答の積み重ね、を求めた。
(再々反論書追加分別紙)「石木ダム治水目的と田んぼダム 検討の為に 」 では、下記事項を記しました。
- 石木ダムの治水目的は、山道橋下流域を計画規模1/100対応とし、到達流量1,320m³/秒を計画高水流量1,130m³/秒に調整することであった。
- 本稿では、この計画規模1/100、計画規模に対応する流量(基本高水流量)、現状の河道流下能力について検証を加えた。
- その結果を整理する。
- 石木ダムの集水域は川棚川流域の11%しかない、
- ダムによる治水上の効果は川棚川流域の7%にしか及ばない、
- 川棚川流域の計画規模1/100は1970年代の河道を対象にして決めたもので、河川整備基本方針策定当時(2005年当時)の河道を対象にするべきであった。その結果は計画規模1/50で石木ダムは不要となるが、長崎県は「川棚川の『ダムと河道改良による治水』を換えることはできない」とした。
- 計画規模1/100に対応する流量(基本高水流量)1,400m³/秒の算出根拠として採用した降雨パターン(昭和42年洪水時の降雨引伸しパターン)の1時間ピーク値138mmは超過確率が1/100より遙かに低い1/500~1/600という異常値である。しかし長崎県は「洪水到達時間3時間雨量203mmの超過確率は1/100。1時間雨量の棄却検定は必要ない。」を押し通している。
- 洪水到達時間3時間も、長崎県が示しているハイエトとハイドロが示すように洪水到達時間は1時間でしかない。長崎県は「クラーヘン式では3時間」としているが、クラーヘン式は流路距離と勾配しか考慮していない式なので、「昭和42年洪水時の降雨引伸しパターン」のように突出した降雨ピークを持つ洪水は流れが速く、適用できないのである。
- さらには、長崎県が明らかにしているように、山道橋下流の川棚川は河道が整備されている。1/100基本高水流量1,400が生じて山道橋地点に1,320m³/秒の洪水が到達しても、その下流であふれることなく流下する。「石木ダムなし」で襲来しても、実害はゼロである。
- 以上、石木ダムの治水目的が破綻していることは、その算出経緯すべてが間違っていることで証明されている。
- 石木ダムによる治水は、必要ない上に、①②で示したように、治水施設として効果を果たす機会、効果を果たす地域、ともにきわめて限られている。
- 田んぼダムによる効果を試算した。その結果を記す。
- 田んぼダム化により、山道橋地点到達としている1,320m³/秒が80m³/秒~130m³/秒低下することで、山道橋地点下流域はより安全性が高まる。
- 石木ダムでは川棚川の石木川合流点上流域には治水効果を及ぼさないが、田んぼダム化による効果は川棚川流域全体に及ぶ。
- これからは気候温暖化により、豪雨に見舞われる可能性が高い。その備えとして石木ダムは用をなさないだけでなく、超過洪水・放流口の目詰まりにおいては突然溢れ出し、その下流域に急激な氾濫をもたらす危険がある。
- 石木ダムではなく、川棚川流域の広い範囲を集水域とした田んぼダムなどの創設と普及を図ることが急がれる。
- 以上より、長崎県が石木ダムが治水目的上必要としている理由はすべて事実無根であり、本件事業工事継続はとりわけ13世帯住民の人格権を致命的に侵害する。よって、本件工事継続は差し止められなければならない。
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