球磨川治水、想定最大流量1・2倍に 国交省変更案 人吉で毎秒8200トン
9月6日、国土交通省の社会資本整備審議会小委員会が開かれ、球磨川水系の治水の長期目標である河川整備基本方針の案が示され、委員会は受け入れる考えを示しました。
5紙の記事を掲載します。
委員会の配布資料は国交省のHPに近日中に掲載されます。
2007年策定の現行の球磨川水系河川整備基本方針では、球磨川上流の人吉市にある基準地点の基本高水流量は7000㎥/秒、計画高水流量(河道で対応する最大流量)は4000㎥/秒です。残りの3000㎥/秒を川辺川ダムと既設の市房ダムで対応することになっていました。
新たな基本方針では昨年7月の豪雨を受けて、人吉の基本高水流量を8200㎥/秒に引き上げるが、一方、河道で対応する計画高水流量は4000㎥/秒のままです。
昨年の豪雨を踏まえれば、計画高水流量を大幅に引き上げて、球磨川とその支川の河道掘削と堤防嵩上げに総力を注入しなければならないはずなのに、計画高水流量がそのままで、(流水型)川辺川ダムの建設に注力する基本方針がつくられようとしています。
2001年12月の「川辺川ダムを考える住民討論集会」以降、川辺川ダム反対の世論の高まりで、川辺川ダムは中止の方向になってきましたが、国土交通省は昨年7月の球磨川豪雨を巻き返しの機会としてとらえ、川辺川ダムを強引に推進しようとしています。
しかし、昨年7月豪雨の球磨川流域の死者50人のほとんどは球磨川本川ではなく、支川の氾濫によるものであって、当時、仮に川辺川ダムがあってもその命を守ることができなかったという調査結果が示されています。
球磨川治水、想定最大流量1・2倍に 国交省変更案 人吉で毎秒8200トン
(熊本日日新聞 | 2021年09月07日 07:50)https://kumanichi.com/articles/385326
熊本県の球磨川水系の治水対策を見直している国土交通省は6日、洪水の想定最大流量を基準地点の人吉と横石(八代市)でそれぞれ1・2倍程度引き上げる変更案を社会資本整備審議会小委員会に示した。昨年7月豪雨と同規模の洪水では、ダムなどの新たな洪水調節施設を整備しても、多くの区間で安全の目安となる水位を超えるとの検証結果も明らかにした。
想定最大流量の「基本高水ピーク流量」は、ダム建設や河川改修などの長期的な方向性を定めた「河川整備基本方針」の基礎となる。国交省は温暖化による降雨量増加を踏まえ、中流域の人吉で現行の毎秒7千トンを8200トンに、それより下流の横石で毎秒9900トンを1万1500トンに変更するとした。
これに対し、河道に流せる「計画高水(河道配分)流量」は、市街地が迫る人吉では河川改修による上積みが困難なため毎秒4千トンで据え置き。横石では河道の掘削によって毎秒8300トンまで増やす。基本高水との残りの流量差は、支流・川辺川の新たな流水型ダム整備や市房ダム(水上村)の機能強化、遊水地などの洪水調節施設でカットする。
一方、昨年7月豪雨の降雨実績は、気候変動に主眼を置いて変更した今回の想定雨量も大きく超過。このため再び同規模の洪水があれば、ダムなどで洪水をカットしても人吉市から球磨村、八代市にかけて安全に流せる基準水位(計画高水位)を上回る結果となった。ただちに越水の恐れがあるわけではないが、水位の超過高は最大1メートルになる。
国交省は、ソフト対策も含めた「流域治水」の重要性を強調。河川管理者と流域の自治体、住民が連携して一層の水位低下や被害の最少化に取り組むとした。今後、小委員会に続いて審議会にも意見を聴き、年内をめどに球磨川水系の基本方針変更を目指す。(福山聡一郎)
昨夏の豪雨で球磨川の最大流量見直し 熊本・人吉で毎秒8200トン
(朝日新聞2021年9月6日 20時30分)
球磨川の想定流量、豪雨受け変更 国交省が発表 流域治水の重要性高まる
(西日本新聞2021/9/7 6:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/796875/
昨年7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川水系を巡り、国土交通省は6日、洪水時に想定される最大流量「基本高水」の案を正式発表した。治水の長期目標である河川整備基本方針の見直しを検討する有識者委員会の会合で示した。球磨川上流の熊本県人吉市で熊本豪雨時の流量を超える一方、下流の八代市ではこれを下回る数値となり、地元や専門家からは流域治水の重要性を指摘する声が相次いだ。
国交省の案によると、人吉市の基準地点の基本高水は、現行の毎秒7千トンから同8200トンに引き上げ、熊本豪雨時に推計された最大流量の同7900トンを上回った。同4200トンはダムを含めた洪水調節施設などで受け止め、残る同4千トンは川に流すとした。
もう一つの八代市の基準地点でも、現行の同9900トンから同1万1500トンに増やしたが、熊本豪雨時の推計最大流量の同1万2600トンより少ない。洪水調節施設などで貯留するのは同3200トンと定めた。
さらに国交省は同時に、新たな基本高水を前提に洪水調節施設と河川の整備を進めても、熊本豪雨級の洪水が再び発生すれば、球磨川流域で計約60キロにわたって堤防が決壊する恐れがあるとする試算も示した。
この日の会合はオンライン形式で開かれた。委員から新たな基本高水に異論はなかったものの、堤防決壊の試算には懸念が出た。熊本県の蒲島郁夫知事は「流域治水を強力に推進する必要があると、あらためて認識した」と述べた。
有識者委委員長の小池俊雄・東京大名誉教授は会合後の取材に「国や自治体、住民、企業それぞれの流域治水の役割について議論を進める」と語った。
現行の基本高水は2007年策定の河川整備基本方針で設定されたが、国は気候変動による豪雨災害の激甚化などを踏まえて見直しに着手した。新たな基本高水は球磨川支流の川辺川で建設が検討されている流水型ダム整備などの前提となる。国は新たな基本高水を含めた基本方針の内容を固めた上で、球磨川水系の具体的な治水対策を策定する。 (御厨尚陽)
球磨川流量引き上げ 毎秒8200トン 国交省、ダム計画に影響 熊本
(毎日新聞西部朝刊 2021/9/7) https://mainichi.jp/articles/20210907/ddp/041/010/011000c
国土交通省は、2020年の九州豪雨で氾濫した熊本県の球磨川の河川整備基本方針を見直し、同県人吉市で想定される豪雨時の最大流量(基本高水流量)を、現行の毎秒7000トンから同8200トンに引き上げる方針を決めた。同省の有識者委員会に6日、流量を引き上げる方針を示し、了承された。想定される最大流量が増えることで、国が支流の川辺川に建設するダムの規模などにも影響するとみられる。
河川整備基本方針は、具体的な河川整備の目標や内容などを定める河川整備計画の前提になるもので、国は水系ごとに基本方針を策定している。球磨川については07年、人吉市の流量が最大で毎秒7000トンになるなどとする基本方針を策定した。しかし、九州豪雨時の人吉市の最大流量が同7900トンあったと推定されたことを踏まえて見直すことにし、気候変動による降水量の増加も考慮して決めた。
同省は人吉市で想定される毎秒8200トンのうち、同4000トンを川に流し、残りをダムや遊水地などの洪水調節施設でカットすると説明。川に流す流量は現行方針と変わらないため、カットする流量は同3000トンから同4200トンに増えることになる。
有識者委が今後、想定される最大流量を含めた河川整備基本方針の見直しを決めれば、国はそれを踏まえて新たな河川整備計画を策定する。【城島勇人】
球磨川治水 九州豪雨超える流量想定…基本方針案 国交省小委が了承
(読売新聞2021/09/07 05:00 ) https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20210907-OYTNT50020/
昨年7月の九州豪雨で氾濫した球磨川の長期的な治水の基本方針を話し合う国土交通省の検討小委員会は6日、熊本県人吉市の大雨時の想定最大流量(基本高水流量)について、九州豪雨時を踏まえ毎秒8200トンに引き上げる案を了承した。これまでは毎秒7000トンとしていた。想定最大流量は、支流の川辺川で検討されている流水型ダムの規模などの前提となる。
河川法に基づき2007年に策定された現行の基本方針は、最大流量を人吉市で毎秒7000トンとし、うち3000トン分をダムなどの洪水調節施設で受け止めるとしている。しかし、九州豪雨では最大流量が毎秒7900トンに上ったとみられている。
検討小委員会は6日、オンライン形式で会合を開催。気候変動による雨量の増加も加味し、最大流量を8200トンとした上で、うち4200トンを流水型ダムや遊水地などで受け止める案について了承した。蒲島郁夫知事も委員の一人として出席し、この案を受け入れる考えを示した。
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