球磨川に「粘り強い堤防」 のり面保護し水害時の避難時間稼ぐ 国が整備検討
球磨川水系で国土交通省が「粘り強い堤防」の整備を検討しているという記事を掲載します。
「粘り強い堤防」(耐越水堤防)をきちんと導入すれば、球磨川水系では川辺川ダムは不要になると思います。
球磨川に「粘り強い堤防」 のり面保護し水害時の避難時間稼ぐ 国が整備検討
(西日本新聞2021/12/29 6:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/854642/
2020年7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川水系(熊本県)の治水策を巡り、国土交通省が、大水害が起きても壊れにくい「粘り強い堤防」の整備を検討していることが分かった。熊本豪雨級の雨量があった場合、球磨川が再び氾濫する恐れがあることを前提に進める対策の一環。決壊までの住民の避難時間をできるだけ稼ぐためのハード整備で、全国的にも先進的な取り組みとなる。
堤防は通常、土砂を固めて造られる。粘り強い堤防は、河川から水が住宅側に氾濫した場合に備え、土でできている堤防ののり面を全面的にブロックなどで保護する。通常の堤防より崩れにくくなるため、決壊が起きた場合でも、住民が避難する時間を少しでも長く確保することができる。
国交省関係者によると、粘り強い堤防の整備は費用面の負担が大きいことなどから、球磨川流域では決壊時に甚大な被害が想定される区間が対象となる見通し。堤防ののり面を、アスファルトやブロック、遮水シートなどで保護する工法を検討する方針という。
崩れにくい堤防を巡っては、旧建設省が1990年代に「フロンティア堤防」として整備を計画した経緯がある。球磨川を含めた全国での計画は2002年に撤回され、筑後川など4河川で計13キロだけが整備された。コストに加え、維持管理や耐久性など技術面でも課題が多かった。
しかし、熊本豪雨では、熊本県人吉市で球磨川の堤防の右岸が幅約30メートル、左岸が幅10メートルにわたって決壊し、流域に大きな被害が出た。いずれも川からあふれた水が低地に流れた後、川に向かって逆流し、その勢いで堤防の土砂が削られたことが原因とみられている。
熊本豪雨を受けて国交省は今年12月、球磨川水系の治水の長期目標を定めた河川整備基本方針を変更した。流水型ダムや遊水地などを一体整備する「流域治水」を、長期間かけて進める方針だ。ただ、整備を終えた後も熊本豪雨級の洪水が起きれば、堤防が耐えられる最高水位を約60キロにわたって超えると試算されるため、粘り強い堤防が必要と判断したという。
粘り強い堤防は、2019年10月の台風19号で全国122カ所の堤防が河川氾濫に伴い決壊したことを受け、国交省の有識者検討会が20年8月、整備の必要性を打ち出した。台風19号で決壊した千曲川(長野県)で、のり面をブロックで覆う工法の試行的整備が進んでいる。 (御厨尚陽)
氾濫前提の対策重要
旧建設省OBで元土木研究所次長の石崎勝義さんの話 温暖化で水害の激甚化が進んでおり、今後は堤防を越える洪水の頻度が多くなる。川底の掘削など河川の水位を下げる事業を着実に実施しつつ、堤防からの氾濫を前提とした対策も進めていくことが重要だ。
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