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スーパー堤防事業の虚構 

2022年12月8日
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スーパー堤防(高規格堤防)の最新状況のデータを国交省から入手しました。

手持ち資料からスーパー堤防の過去の経過を振り返り、最新データも使って、スーパー堤防の問題点をスライド形式の報告でまとめました。

その報告をスーパー堤防事業の虚構 (2022年12月)

にアップしました。詳細はそのスライドで説明しております。

その主な内容を下記に記しますので、長文ですが、お読みいただきたいと存じます。

スライドとの対応はそのスライド番号を№で示しますので、詳しい内容はスライドを見ていただきたいと思います。

 

1 スーパー堤防事業の創設と2011年の見直し (スライド№2~6)

スーパー堤防(高規格堤防)とは堤防の裏のり面(河川側ではないのり面)の幅を計画堤防高の30倍にして(通常の堤防は2倍以上)、頑丈な堤防をつくろうというものです。

この事業の創設は1987年度になります。当初の計画は江戸川の全部、利根川、荒川、多摩川、淀川、大和川の河口部から中流部までの堤防の全部をスーパー堤防にしようというものでした。

利根川 363km、江戸川 121km、荒川 174km、多摩川  83km、淀川 89km、大和川 44km、合計873kmの距離のスーパー堤防を整備することになっていました。(スライド№3~4)

当初は国交省にとって陰りが見えてきたダム建設事業に代わって、巨額の公費を使う一大河川事業としてスーパー堤防事業が考えられたようです。

しかし、当初のスーパー堤防整備計画はだれが見ても、実現性が全くなく、荒唐無稽の計画でした。

その後、2010年の行政刷新会議の事業仕分けで、「高規格堤防整備事業は事業廃止」の判定が出ました。(スライド№2)

それに対して、国交省が巻き返しを図り、整備距離を873㎞から119㎞に縮小してスーパー堤防事業を存続させることになりました。(スライド№5~6)

見直し後の計画は利根川 0km、江戸川下流部 22km、荒川下流部 52km、多摩川下流部 12km、淀川下流部 23km、大和川下流部 7kmの距離の整備を進めていこうというもので、大幅に縮小されました。

 

2 スーパー堤防整備の現状(あまりにも遅い進捗状況) (スライド№7~14)

その後、見直し後の計画に沿って整備が進められることになりましたが、現実はその歩みはあまりにも遅く、ほんの少しだけ進んだだけです。(スライド№7~8)

そして、整備が一応終わったところを見ると、用地買収等の問題があって、堤防高さの30倍の堤防幅が確保されたところは一部しかないところが多いのが現状です。(スライド№9)

2022年4月段階で整備済みのスーパー堤防で1:30の基本断面形状が確保された距離を取り出して集計すると、江戸川下流部 680m、荒川下流部 730m、多摩川下流部 1675mです。

上記見直し後の整備計画の整備距離数に対する比率を見ると、江戸川下流部は3.1%、荒川下流部は1.4%、多摩川下流部は11%しかありません。(スライド№10~13)

これを事業開始後20年経過しての進捗率と仮定すれば、見直し後の整備計画の整備距離通りの整備を終えるためには、江戸川下流部は650年、荒川下流部は1400年、多摩川下流部は180年必要ということになります。(スライド№14)

スーパー堤防の整備は気が遠くなるような年数を経ないと、終了しないことになります。

 

3 スーパー堤防の整備が遅々として進まない理由 (スライド№15~20)

スーパー堤防の整備が遅々として進まない理由はいくつかあります。

(1)人々が住んでいる場所に堤防をつくるという手法そのものに無理がある。 (スライド№16~20)

① 区画整理や再開発などのまちづくり事業が先行しないと、進められず、国交省自体が整備スケジュールを示すことができないケースが多いです。(スライド№16)

➁ 現住居を終の棲家として余生を送るとしてきた人たちを強制的に追い立てる問題を引き起こすことがあります。(スライド№17~20)

江戸川下流部の北小岩一丁目高規格堤防の整備では住民の一部に対して強制収用が行われました。

これに対して事業の差し止めを求めて、江戸川区の住民4人が提訴し、2011年11月から第一次、第二次、第三次の訴訟が行われ、裁判での闘いが展開されました。

2020年10月に最高裁判所から上告棄却の決定が出て、このスーパー堤防差し止め裁判は終わりになりましたが、この一連の裁判によって、スーパー堤防事業とは何と愚かな治水対策であるかが明らかになりました。

 

(2)スーパー堤防の整備は巨額の費用が必要 (スライド№21~22)

スーパー堤防の整備費用は関連事業(土地区画整理事業や道路、緑地、都公園事業など)の含め方によって差があり、一般的な整備費用を示すことが難しいですが、江戸川下流部の二つの事業は次の通りでした。

この二つの例についてスーパー堤防の整備単価を求めると、北小岩一丁目は 整備距離1mあたり5,300万円、篠崎公園地区は1mあたり5,600万円です。

1mあたり5,000万円として、江戸川下流部について計画通りの整備を終えるのに必要な費用を単純計算すると、江戸川下流部は約1兆円にもなり、費用の面でもスーパー堤防の整備は現実性があるとは思われません。

 

4 現在のスーパー堤防は避難場所にもならない   (スライド№23)

行政は、スーパー堤防は一部しかできていなくても、「その敷地を一時的な高台避難地として活用することが可能となる」と述べているが、現実を踏まえない机上の話に過ぎません。

① 「点」の整備しかできていないスーパー堤防は一時的な高台避難地にもなりません。超過洪水が発生した場合、周辺は通常堤防であるから、越水・決壊の危険に晒されています。わざわざ、江戸川等の大河川に面する長さがわずかな距離のスーパー堤防の上に避難しようする人がいるはずがありません。

② スーパー堤防の用地は大半が住宅地であり、災害時とはいえ、一般の人が個人の住宅地の中に入ることはできないから、高台避難地になるはずがありません。

③ 避難住民のためのトイレ等の避難施設が何も用意されていないところが避難地になるはずがありません。

 

以上の通り、遅々として進まず、治水対策の役目を果たさないスーパー堤防整備事業、公費を浪費するだけで、関係住民の生活に大きな影響を与えることがあるスーパー堤防整備事業は早急に終止符を打つべきです。

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