「九州2ダム事業の議連視察」報告
カテゴリー:
国会議員連盟「公共事業チェックとグリーンインフラを進める会」,九州2ダム事業視察
1:概要
2024年3月23日から25日にわたって、国会議員連盟「公共事業チェックとグリーンインフラを進める会」が、下記日程で石木ダム事業地・川辺川ダム影響予定区域を視察しました。「不要」「人権侵害」「自然破壊」と批判する市民が多いこれら2ダム問題の本質を認識することを目的としていました。この視察には市民枠が設けられ、水源連から5名、水郷水都から1名が全行程同行しました。市民枠で同行した水源連の遠藤保男が、報告いたします。報告が遅れに遅れたことをお詫びいたします。
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参加者
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- 嘉田 由紀子 参議院議員(全行程)
- 山田 勝彦衆院議員(3/23石木のみ)
- 野田 国義 参議院議員(3/23石木のみ)
- 山崎 誠 衆議院議員(3/24~3/25)
- 今本 博健(京都大学名誉教授、河川工学)(全行程)
- 細谷 和海(近畿大学名誉教授、魚類学・保全生物学)(全行程)
- 宮本 博司(元国交省職員、3/23石木のみ)
- その他、水源開発問題全国連絡会メンバー5名、水郷水都1名(全行程)
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行程:
- 3/23 午前 長崎空港から石木ダム予定地訪問午後 集会「清流をまもる 未来をまもる~石木ダム 本当に必要?~」(川棚町公会堂)
夕刻 こうばる公民会で、こうばる居住13世帯皆さん・支援者・視察団で懇親会 - 3/24 午前 八代・人吉経由で五木村へ移動
午後 五木村水没予定地~奇跡の吊り橋~ダム予定地~相良村柳瀬~球磨川合流点~人吉市山田川
19:30 くま川ハウスで市民グループと勉強会 - 3/25 人吉市街地被災地~球磨村渡(千寿園跡)~球磨村神瀬(嵩上げ)~瀬戸石ダムと豪雨災害~荒瀬ダム撤去跡~道の駅坂本~坂本町「みちのけ」で昼食・勉強会
14時 国土交通省八代河川国道事務所訪問(事前送付した別紙質問項目について質疑)
15時半 終了解散
- 3/23 午前 長崎空港から石木ダム予定地訪問午後 集会「清流をまもる 未来をまもる~石木ダム 本当に必要?~」(川棚町公会堂)
2:3月23日の川棚町公会堂での講演会
「清流をまもる 未来をまもる」集会
- 参照HP 「石木川まもり隊」の下記ページに丁寧且つ分かりやすく紹介されています。是非、ご参照ください。
- 集会の目的 集会チラシ
- 概要
- 主催は「清流をまもる 未来をまもる」集会実行委員会 共催は 国会議員連盟「公共事業チェックとグリーンインフラを進める会」。
- プログラム
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- 加藤登紀子さんからのビデオメッセージ
https://youtu.be/45JqFTtROto - 地元住民の岩下和雄さん 現地状況説明
- https://youtu.be/wlzuE8G1svo
- 河川工学が専門の今本博健さん(京都大学名誉教授)講演 「水位計算による川棚川治水への石木ダムの効果についての検討」
- 要旨:
- 石木ダム計画の水位計算がおかしい。
- 何故なら、水位計算に必要な粗度係数(河川の側面や底の粗さを表す値)の設定がおかしいから。
- 粗度係数が低下すれば水位は下がる。川棚川では1990年7月洪水のあと河川改修が実施されており、粗度係数は設定時より低下しているはずなのに修正されていない。粗度係数が設定値の0.8倍以下なら石木ダムは役に立たない。
- 講演資料:今本博健氏
- 動画: https://www.youtube.com/watch?v=OCJPiSmWN6s
- 要旨:
- ダム建設に詳しい宮本博司さん(元国土交通省河川局防災課)講演 「ダムで命と清流は守れるのか?」
- 要旨
この治水計画はあまりにも杜撰!- 雨量観測も流量観測もやっていない。
- そのことにより雨量と流量の検証がされていない。
- 絵に描いた餅であり、こんな計画で立ち退きを要求してはダメ!
- 講演資料:宮本博司氏
- 動画:https://www.youtube.com/watch?v=GyPNC4bco6I
- 要旨
- 淡水魚が専門の細谷和海さん(近畿大学名誉教授)講演 「シーボルトが見た日本の水辺と石木川の魚類生態系の魅力」
- 要旨
- 石木川を含む川棚川水系は、シーボルトが世界に紹介した日本の淡水魚の模式産地の可能性がある。
- シーボルトとビュルゲルが日本から持ち帰った魚類標本は1465個体もあった。
- シーボルトとビュルゲルが日本から持ち帰った魚類標本は1465個体もあった。
- シーボルトの川を標榜するなら、いま棲息しているシーボルトコレクションにある魚をトポタイプ(現存個体)として保全する必要がある。
- 淡水魚を保護するためには、河川の上・下流、本流・氾濫原、表層・浸透層をつなぐ回遊経路を保全する必要がある。
- 講演資料:細谷和海氏
- 動画:https://www.youtube.com/watch?v=J_M5YcTiP1c
- 要旨
- 加藤登紀子さんからのビデオメッセージ
休憩 『川原のうた』のビデオ
清流をまもる未来をまもる こうばるのうた(09:44)
https://youtu.be/q_qKWf1Wbvk
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- 以下の詳細,まとめては、 https://ishikigawa.jp/blog/cat18/8836/
- 佐世保市民で石木川まもり隊の松本美智恵さん。石木ダムの利水問題(佐世保市の水事情)
https://youtu.be/2aZd_nxWuEI - 山田勝彦衆議院議員 挨拶
- https://youtu.be/Ex7ph24eLBk
- 嘉田由紀子参議院議員 挨拶
- https://youtu.be/Rt7N-q3totM
- 野田国義参議院議員 挨拶
- https://youtu.be/ZwC6oRFox7k
- 堀江ひとみ県議会議員 挨拶
- https://youtu.be/8rDHgIytlq0
- 小田徳彰佐世保市議会議員 挨拶
- https://youtu.be/-ceNs3G1NhU
- 炭谷猛川棚町議会議員 挨拶
- https://youtu.be/sBdaGW7kfB4
- 質問コーナー
- https://youtu.be/nNSC6Hzpejc
- 集会宣言文案が読み上げられ、満場の拍手をもって採択
清流をまもる未来をまもる 集会宣言
https://youtu.be/GkeP2Z1_4Ss
- マスコミ報道
3:3月24日の川辺川五木村下流部と人吉市内の7/4豪雨災害被災状況視察と夜の勉強会
- 企画の目的 マスコミリリース
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7/4豪雨災害被災状況視察
- 当日はかなりの降雨があり、バスの外に出たのは要所に限りました。
3月24日10時半にJR八代駅からレンタルバスで先ずは川辺川ダム計画予定地の五木村を目指しました。車中では、2020年水禍視察に向けた資料が提供されました。 - そこから川辺川伝いに球磨川合流点から人吉市内の被災地を視察しました。夜は、球磨川ハウスでスライドを用いての勉強会、翌25日は球磨川沿いに被災地の状況を見分しつつ八代国道河川事務所で2020年7月4日水禍と川辺川ダム問題について質疑応答・意見交換を持ちました。
- 2020年球磨川流域豪雨災害現地調査資料
- 当日はかなりの降雨があり、バスの外に出たのは要所に限りました。
以下、要所要所の状況を収めた写真で説明いたします。
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- 3月24日 石木ダム予定地から人吉市内被災地
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- 3月25日 人吉から八代河川道路事務所
2020年球磨川流域視察団 八代事務所話合い用資料
話合いで取り上げた論点の簡単な解説です。
公共事業チェック議連と国交省八代河川国道事務所話合い メモ
話合いに向けて事前に提出した質問(赤字)と、口頭回答+意見交換の速記録です。
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24日夜の勉強会
2020年7月4日の豪雨水禍の実態を調査している「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域群市民の会」みなさんからスライドを使って説明を受けました。川辺川ダム計画は豪雨水禍の実態を無視した暴挙であること、気候変動に伴う雨の降り方には、ダム依存の河川法では全く対応できないことが知らされました。
4:まとめ
1975年に公定計画とされてから50年経過している石木ダムは、「その必要性は計画決定直後から喪失しています。長崎県は「地元の了解なしではダムは造らない」と覚書きを交わした上で予備調査を開始した1972年からこれまで、覚書を反故にして工事を強行し続け、土地収用法を適用して地元住民の地権をすべてはく奪しています。住民13世帯皆さんは地権をはく奪されたことに抗して、毎日ダム建設工事現場に座り込み、「石木ダム・覚書 県」https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2024/06/83ea662d062895a7fac88be7fe866d64.pdfを遵守して工事を中断して,必要性についてゼロからの話合い」を長崎県に要請する生活を続けています。長崎県は「今後の生活に関すること以外は話し合わない」と行政代執行のスキを狙っています。このような事態の本質を知るべく勉強会がこの視察で持たれました。本年は石木ダム事業計画の再評価が行われるので、地元関係者の皆さんは、この勉強会で暴かれた真実を基本に据えて、まともな再評価を実施させるべく活動を行っています。
2008年に「球磨川は地域の宝」として「川辺川ダム建設事業計画の白紙撤回」を国に求めた熊本県知事蒲島郁夫氏は、2020年7月4日の球磨川未曽有の大規模水禍の直後に、「環境にやさしい流水型川辺川ダム建設」を国に求めました。しかし、7月4日の水禍はこれまでとは全く異なった雨の降り方に起因していることが流域住民の調査で明白にされました。川辺川ダム予定地から遠く離れた球磨川の西部側に停滞した線状降水帯からの豪雨が、球磨川の各支流から豪流となって流出したことで、7月4日の大規模水禍に至りました。2008年からこれまで、「ダムに依存しない球磨川水系の治水」を図ってきたはずでしたが、実は国と県は、川辺川ダムを大前提とした河道整備に固執するばかりで、流域の山々の状況などの整備をほったらかしにしていたのです。それを踏まえることなく、「ダム群による流量調節を基本に据えた球磨川水系河川整備基本方針」を定め、直ちに「流水型川辺川ダムを中心に据えた球磨川水系河道整備計画」を策定しました。しかも、この整備計画では「2024年7月4日の雨量は統計的に異常値」として切り捨て、「従来計画降水量の1割増しに対応」としたため、今後十分に予想される2020年7月4日型の豪雨には対応できません。それは国と県が認めています。そればかりか、そのような川辺川ダムを前提とした宅地嵩上げ、軌道整備がなされるので、2020年7月4日型の豪雨再来時にはまた同様な水禍に見舞われてしまいます。流水型と言っても、大洪水時にはダム堤上流には大規模な堆砂が生じ、放流口が河道と同じ高さにあるため、雨が降るごとに堆積物が直接流出ことになるのですから、下流への白濁水流出が長く続きます。自然に優しいどころか下流の河川を白濁流で殺してしまうことは明らかです。このような致命的な問題を抱えた球磨川水系治水対策の実態を見分できました。水禍の実態を調査された皆さんが、「ダムから球磨川を守ろう。今の河川法では、雨の降り方が大幅に変わってきていることに対応できない」と指摘していることが理解できました。
九州2ダム問題の視察で明らかになったことを政治に活かす、河川政策を見直す。私たちの課題と思います。
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