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水害リスクの説明責任訴訟、市側が敗訴、全国初 台風で住宅水没、京都地裁

2020年6月18日
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今年3月に予定されていた福知山水害訴訟の判決が延期され、6月17日に判決言い渡しがありました。その記事とニュースを掲載します。
京都府福知山市造成の住宅地で発生した浸水被害について被災住民7人が市に総額6221万円の損害賠償を求めた訴訟です。、
この水害訴訟は被告が河川管理者ではなく、住宅地の造成者である福知山市です。
判決は住民7人のうち、市から土地を購入した3人は請求を認め、不動産業者から購入した4人は請求を棄却しました。
市から土地購入の3人については住民側の勝訴でした。


水害リスクの説明責任訴訟、市側が敗訴、全国初 台風で住宅水没、京都地裁

(京都新聞2020/6/17 14:16) https://this.kiji.is/645860931698738273?c=39546741839462401
(写真)2013年の台風18号、17年の台風21号で相次いで浸水被害が出た住宅地(2017年10月、福知山市石原)
2013年の台風18号による川の氾濫で自宅が床上浸水した京都府福知山市の住民7人が、水害の危険性を説明せずに宅地を販売したとして、市に計約6200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、京都地裁は17日、計約811万円の支払いを命じた。
原告弁護団によると、「宅地を造成・販売する自治体に水害リスクの説明責任を認めた、画期的な判決」という。
同訴訟は従来の水害訴訟と違い、河川管理の責任ではなく、宅地販売時の行政の説明責任を問う「全国初の取り組み」(原告弁護団)という。
井上一成裁判長は判決理由で、市は土地を販売した住民に対し「過去の浸水被害発生状況および浸水被害に遭う危険性の高さについて信義則上説明すべき義務を負っていた」と認定。
ハザードマップを配布して危険性を周知していたとする市の主張に対し、100年に1回程度起こる規模の大雨の想定は現実感に乏しいと指摘。
「規模の小さい支川の氾濫や内水の氾濫は考慮されておらず、ハザードマップの情報は不十分」と断じた。
住民7人のうち、3人の請求を認め、不動産業者から購入した4人の請求は棄却した。


浸水リスク伝えず造成地販売 福知山市に810万円支払い命令 京都地裁

(毎日新聞2020年6月17日 17時35分() https://mainichi.jp/articles/20200617/k00/00m/040/163000c
(写真)2013年9月の台風18号で水没した京都府福知山市石原地区の造成地=同地区で2013年9月16日、読者提供
浸水被害が起きる可能性について十分な説明をしないまま造成地を販売したとして、2013年9月の台風18号で浸水被害を受けた京都府福知山市の住民7人が市を相手取り損害賠償を求めた訴訟の判決で、京都地裁(井上一成裁判長)は17日、住民側の主張を一部認め、市に対し3人に計約810万円を支払うよう命じた。
(写真)2013年9月の台風18号で浸水した、原告・山岡哲志さんの自宅。泥水が窓ガラスを割って流れ込み、家の中にサーフボードが浮かんでいた=京都府福知山市石原地区で2013年9月16日、山岡さん提供
判決によると09~13年、住民らは市が造成した同市石原(いさ)、戸田両地区の住宅地を、市や仲介業者から購入し自宅を建設。台風18号により付近の由良川や支流があふれ、それぞれ床上10~130センチの浸水被害を受けた。
裁判で住民側は、「造成地周辺の過去の浸水被害発生状況や被害に遭う危険性の高さについて、市が十分に説明しなかった」と主張。市側は「防災ハザードマップで予想される浸水を伝えており、買い手として情報を得る努力を怠った」と反論していた。【添島香苗】

 

福知山水害、市に賠償命令 「宅地売却で説明尽くさず」―京都地裁
(時事通信2020年06月17日17時21分)https://www.jiji.com/jc/article?k=2020061700953&g=soc
(写真)京都府福知山市の水害をめぐる訴訟の判決後、記者会見する原告の山岡哲志さん(前列左)ら=17日午後、京都市中京区
2013年9月の台風18号で、京都府福知山市が造成した土地に建てた自宅が浸水被害を受けた住民7人が、過去の水害などの情報提供を怠ったとして市に約2200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、京都地裁であった。井上一成裁判長は、市から土地を購入した3人への説明義務違反を認め、計約810万円の支払いを命じた。
判決は、市によるハザードマップ配布は宅地購入に当たっての十分な情報提供とは言えないと指摘。「市は信義則上、最近の浸水被害の状況や今後、被害が発生する可能性を説明すべき義務を負っていたが、説明義務を尽くさなかった」と判断した。仲介業者から購入した4人については、市の責任を否定した。


水害危険性「市に説明義務」被災住民へ賠償命じる 京都地裁

(NHK2020年6月17日 19時08分) https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200617/k10012474051000.html

7年前の台風で浸水被害を受けた京都府福知山市の住民が、水害の危険性を説明しないまま宅地を販売していたとして市を訴えた裁判で、京都地方裁判所は「説明すべき義務があった」と判断し、市におよそ810万円の賠償を命じました。

平成25年9月の台風18号による大雨で、福知山市石原地区では近くを流れる由良川とその支流が氾濫し、市が造成した宅地などで床上まで水につかる被害が出ました。
この地区などに住む住民7人は、過去にたびたび水害があったにもかかわらず、市は危険性を十分に説明しないまま宅地を販売していたなどとして、およそ6200万円の賠償を求めていました。

17日の判決で京都地方裁判所の井上一成裁判長は「浸水するおそれのある土地かどうかは購入者にとって重大な関心事だ。市はハザードマップの内容だけでなく、過去の浸水被害の状況や今後の被害の可能性に関する情報を開示し説明する義務を負っていた」と判断し、およそ810万円を支払うよう市に命じました。

判決のあと原告の1人の山岡哲志さんは「永住を決めて家を購入した1年半後に浸水被害を受けました。市は一刻も早く治水対策をして住みよい地区にしてほしい」と述べました。
福知山市は「判決の内容を精査し、今後の対応を検討していきます」とコメントしています。


「住宅が浸水」水害リスクの説明責任は? 福知山市の”説明義務違反”認める判決 京都地裁

(関西テレビ2020/6/17(水) 18:25配信)https://news.yahoo.co.jp/articles/0723101a9b0f6ebe38cd9d44ece334905cd785cf

もし、あなたの家が浸水被害を受け、その土地が水害の危険性がありながらも説明されていなかったとしたら、どうしますか?
京都府福知山市の住民が市を訴えた裁判で、注目の判決です。

浸水した住宅地…福知山市が造成
【キャスターリポート】(京都・福知山市 2013年9月) 「街全体が、茶色い湖の底に沈んでいるような状態になっています」
マイホームが、大雨で浸水。被害を受けた京都府福知山市の住民は、水害の多い土地だと知らなかったとして、裁判を起こしました。
【原告・居合克樹さん(2015年提訴時)】 「もし事前に(水害が)ここまでくると知っていたら、ですか?それは、ここには家を建てていません」
一方で、土地を造成した売り主側の福知山市は… (福知山市の主張) 「ハザードマップを配布して、危険性を周知していた」
住民と行政が5年に渡って争った裁判の判決。 京都地方裁判所は17日、一部で福知山市の説明義務違反を認める判決を言い渡しました。

【原告弁護団の代表】 「一部とはいえ、画期的な勝訴判決を得ることができた」
【原告・居合克樹さん】 「私達の主張が認められたということで、大変嬉しく思う」

浸水の危険性…福知山市に説明責任は?
この裁判のきっかけとなったのは、2013年9月の台風18号による豪雨災害です。
京都府福知山市では川の氾濫で多くの住宅が浸水し、裁判の原告のひとりで、石原地区に住む居合克樹さんの自宅も大きな被害を受けました。
【原告・居合克樹さん(2015年提訴時)】 「カーポートの樋にゴミがたくさん乗っていたので、そこまで水位が上がるとは…部屋の中はめちゃくちゃな状態ですね」
居合さんの自宅は、2017年や2018年の豪雨でも浸水。 2009年に不動産業者を介して購入した土地を造成したのは、福知山市でした。
居合さんたち石原地区などの住民7人は、福知山市が土地の販売時に浸水の危険性を告知しなかったなどと主張し、市を提訴。
福知山市から直接購入した住民に対しては危険性を告知する義務があり、不動産業者から購入した住民に対しても情報を提供する義務があったとして、あわせて約6200万円の損害賠償を求めました。
これに対し福知山市は、「ハザードマップを配布して危険性を周知していた」などと反論していました。

認められたのは…市から「直接購入」した原告のみ
福知山市から直接購入した原告3人については、「市の説明義務違反があった」として、市に対し、3人にあわせて約810万円を支払うよう命じました。
一方で、不動産業者から購入した居合さんら4人に対しては、福知山市が住民に情報を提供する義務について、法令上の根拠が認められないとして、訴えを退けました。
また、福知山市の大橋一夫市長は「判決書の内容を精査し、今後の対応を検討してまいります」とコメントしています。
カンテレ「報道ランナー」2020年6月17日放送より

 

「売主の市に説明責任」 石原の造成地水害訴訟地裁判決
(両丹日日新聞2020年06月18日)  https://www.ryoutan.co.jp/articles/2020/06/90425/

(写真)台風18号で家屋が浸水する石原(いさ)地区(2013年9月)
2013年9月の台風18号水害で自宅が浸水した福知山市石原と戸田の住民7人が、浸水リスクの高い土地であると分かっていながら、その危険性を説明せずに市が造成地を販売したことは不当として、市に計約6200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が、17日に京都地裁であった。井上一成裁判長は、市の説明義務違反を指摘して、市から直接購入した原告3人に対して計約810万円を支払うよう命じた。

原告側の福知山市造成地水害被害弁護団(小川達雄団長)によると、自治体が開発した土地の浸水リスクについて行政の説明責任を問う全国初の訴訟で、小川団長は「一部勝訴ではあるが、行政の説明責任を認めた画期的な判決」とした。

判決によると、7人は土地区画整理事業などで市が造成した宅地を、09年~13年に市、または不動産業者から購入。台風18号の大雨で、近くの由良川や支流の大谷川が氾濫して浸水被害にあった。一帯は04年の台風23号などでも冠水しているが、市は過去の浸水被害状況や浸水リスクなどについての説明義務を怠ったとして、原告3人の請求を認めた。

井上裁判長は「地方公共団体として、石原、戸田両地区の浸水被害状況等の情報を収集・把握し、市民に対してこれを提供する立場にあったのみならず、両地区で各種減災措置を講ずるなどして宅地化を実施していた事業者であることを考慮すると、原告らに保有する地区及び本件各土地についての浸水被害状況等に関する情報を開示し、提供することは極めて容易であった。説明義務を尽くさず、説明義務に違反したものというべきである」と市の説明責任を指摘。ハザードマップの配布や、過去の浸水被害状況が複数回にわたりテレビ報道がされていることなどから「原告と被告との間に情報力の格差はない」とする市の主張は退けた。

不動産業者から購入した原告4人の請求については「市の情報提供義務は法令上の根拠が認められない」と棄却した。

福知山市の大橋一夫市長は「判決書の内容を承知しておらず、内容を精査し、今後の対応を検討してまいります」とのコメントを出した。
(写真)記者会見で思いを語る山岡さん(前列左から2人目)ら

原告市民が会見「住みよい地区」願い■
弁護団は同日、京都地裁で記者会見をした。出席した原告の山岡哲志さん(44)は「念願の家を買って1年半程度で浸水。行政をたたくつもりで提訴したのではなく、一刻も早く治水対策を進めて住みよい地区にとの思いでやってきた」。居合克樹さん(41)は「一部主張が認められてうれしいが、直接購入か否かで判断が分かれたことには違和感がある。今も雨が降ると不安になる。市には血の通った施策をしてほしい」と思いを吐露した。


浸水リスク 説明不十分、宅地販売で福知山市に賠償命令…京都地裁

(読売新聞2020/06/18 06:00) https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20200618-OYO1T50011/ 浸水被害が起きる可能性について十分に説明をしないまま宅地を販売したとして、2013年9月の台風18号による豪雨で自宅が浸水した京都府福知山市石原(いさ)地区の住民ら7人が市を相手取り、計約6200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、京都地裁は17日、市から宅地を直接購入した3人に計約800万円を賠償するよう命じた。
水害発生の可能性について、市は「(水害時の浸水区域を示す)ハザードマップで必要な情報を提供した」と主張していたが、井上一成裁判長は「マップの配布だけでは不十分」と指摘し、説明義務違反を認めた。弁護団によると、不動産販売を巡って、水害リスクに関する行政の説明義務違反を認めた判決は初めて。
判決では、宅地は市が造成し、3人は市から、4人は仲介業者を通じて09~13年に購入し、自宅を建てた。13年の台風18号で近くを流れる由良川が氾濫し、床上浸水などの被害を受けた。
由良川やその支流では、04年の台風23号など過去にも水害が相次いでおり、市は06年以降、全戸配布しているハザードマップで、地区が3~5メートル浸水する区域と表示。市は「マップで浸水について伝えており、(住民側は)情報の取得を怠った」と主張していた。
井上裁判長は判決で、「市が浸水の恐れがある土地を販売することはないと住民が信頼し、マップを考慮せずに購入することは予見できた」と指摘。販売時に過去の浸水被害や今後の浸水リスクについて説明する義務があったとした。
仲介業者を通じて購入した4人については、市の情報提供義務がないとした。
福知山市の大橋一夫市長は「判決の内容を精査し、対応を検討する」とのコメントを出した。

西日本豪雨など受け、水害の恐れ説明 業者義務付けへ
近年、大きな被害をもたらす水害が全国で相次ぎ、不動産取引の際に水害リスクの説明を求める動きが広がっている。
宅地建物取引業法は、不動産取引業者に電気・ガスの整備状況など重要事項の説明を義務付ける。重要事項の内容は大規模災害を経て拡充され、30人以上が犠牲になった広島県の土砂災害から2年後の2001年に「土砂災害」、東日本大震災が起きた11年に「津波被害」の警戒区域かどうかが盛り込まれたが、水害リスクは含まれていない。
しかし、18年の西日本豪雨などを受け、全国知事会は昨年7月、水害リスクを重要事項に加えるよう国に提言。国は今夏にも、宅地建物取引業法の施行規則を改正し、水害リスクの説明を業者に義務付ける方針だ。
滋賀県は14年制定の流域治水推進条例で、浸水想定区域などを説明する努力義務を業者に課した。京都府も16年、府が業者に水害リスクなどの情報を提供し、業者には情報の把握を義務付ける条例を制定した。

台風19号災害から8か月 出水期迎えた被災地で復旧工事進む 長野

2020年6月13日
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昨年10月の台風19号で被害を受けた千曲川の堤防復旧工事について6月10日に国土交通省千曲川河川事務所の発表がありました。その記事とニュースを掲載します。
破堤箇所を含む穂保地区560mについては住宅地側ののり面も含めて両のり面をコンクリートブロックで補強する堤防工事が進みつつあります。決壊地点周辺の140m区間はすでに終了し、残りは今年度中に終了する予定です。
住宅地側ののり面をコンクリートブロックで補強する工法は、私たちが求めてきた耐越水堤防工法です。
千曲川河川事務所調査課に問い合わせたところ、越水があった4カ所の方は耐越水堤防工法ではなく、堤防の天端と法尻を補強する工事になっているとのことです。
耐越水堤防工法の全面採用までには至っていません。

千曲川堤防 越水4カ所復旧
• (信濃毎日新聞2020年6月11日) https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200611/KT200610ATI090006000.php

(写真)復旧工事が完了した千曲川の堤防=10日、千曲市雨宮
国土交通省千曲川河川事務所(長野市)は10日、昨年10月の台風19号災害による越水で被害を受けた千曲川の堤防4カ所を復旧したと発表した。決壊した長野市穂保の堤防もほぼ復旧が完了。いずれも被災前と比べ、決壊までの時間を引き延ばせるよう堤防を強化した。

中野市栗林、上高井郡小布施町大島、長野市篠ノ井塩崎、千曲市雨宮の4カ所では越水が発生し、堤防の住宅地側ののり面が削れた。越水が続いていれば、決壊する可能性もあったため、同事務所は堤防の住宅地側の下部にコンクリートブロックを設置。堤防から流れ落ちる水で最も削れやすい部分を守り、決壊までの時間を延ばすようにした。

長野市穂保の堤防では幅約1500メートルで越水し、決壊につながった。同事務所は決壊場所を含む前後140メートルで、住宅地側と川側ののり面をコンクリートブロックで補強。この140メートルを含む560メートル区間では住宅地側ののり面だけブロックで強化し、川側は本年度中に整備する。

この他、護岸欠損などの被害があり、国が復旧する千曲川堤防計30カ所も本年度内に工事を終えるとしている。

 

台風19号災害から8か月 出水期迎えた被災地で復旧工事進む 長野
(SBC信越放送2020/6/12(金) 20:05配信)https://news.yahoo.co.jp/articles/afc6b192fd9485e75762aa553fbfa649bef75ac2

台風19号災害から8か月 出水期迎えた被災地で復旧工事進む 長野
去年10月の台風19号災害からきょうで8か月です。 長野市では被害を受けた農地の土砂の撤去がほぼ終わり、今年のリンゴの収穫に向けた作業が進められています。
去年の台風19号で千曲川の堤防が決壊した長野市長沼地区では、国の千曲川河川事務所が決壊場所を含む前後560メートルの区間で今年度中の復旧を目指し工事を進めています。
このうち140メートルについては、住宅地側と川側の両方にコンクリートブロックで補強する工事が完了し、今は土をかぶせる作業が行われています。
残りの区間については、住宅地側をブロックで強化し、川側は今年度中に整備するということです。
去年10月の台風19号災害では県内で災害関連死も含めて6人が死亡し、8300棟余りが浸水被害を受け、およそ3500棟が全半壊しました。
長沼地区では被害を受けた住宅の解体が進められています。
長野市によりますと、公費解体は先月末時点で426件の申請のうち60件が完了し、自費での解体も130件以上行われています。
一方、5センチ以上の土砂が溜まっていた被災農地については、土砂の撤去がほぼ終わりました。
米沢俊夫さん・73歳は、およそ1000坪の畑でリンゴを栽培していますが、台風災害で10本以上の木が流されるなど被害を受けました。
今はリンゴの摘果作業が進められていますが、梅雨や台風による大雨を心配しています。
きのう梅雨入りし、出水期を迎えた被災地。
住民たちは手さぐりの状態で復旧、そして復興への歩みを進めています。

「新たな『ダム洪水対策』の課題」(時論公論)

2020年6月11日
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政府の方針として出された「ダムの事前放流」についてNHK持論公論による解説を掲載します。
分かりやすい解説であると思います。


「新たな『ダム洪水対策』の課題」(時論公論)

(NHK 解説アーカイブス2020年06月05日 (金)) http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/430407.html
松本 浩司 解説委員

大雨への警戒が必要な時期を迎えましたが、今月から全国のダムの運用が大きく変わり、これまで洪水対策に使われていなかった水道用や発電用などのダムも防災の役割を担うことになりました。毎年続く豪雨災害を受けたもので、洪水のリスクを下げることが期待される一方、課題も少なくありません。

▼ダム運用はどう変わるのか
▼効果はあるのか
▼水不足と防災態勢など課題について考えていきます。

【大きく変わるダム運用】

ダムには水道水用や農業、工業用水用、発電用、治水用、それに複数の用途を兼ねた多目的ダムとさまざまな種類があります。その数は全国で1500近くになりますが、治水、つまり洪水対策に使われているものは実は4割にとどまっています。

政府は台風19号など洪水被害が相次いだことから、残り6割のダムも洪水対策に活用することめざし、まず重要な河川である一級水系にある955のダムのうち治水目的以外の620のダムと協定を結び、今月から新たに洪水対策にも使うことになりました。

その運用方法です。台風などで大雨が予想されたとき3日前から「事前の放流」を始めてダムの水位を普段より下げておきます。そして大雨が降った時に上流から流れ込む大量の水をためて放流する水の量を減らし、下流の川の増水を抑え氾濫を起こりにくくしようというものです。

【どのくらい防災効果があるのか】
どれくらいの防災効果が期待できるのでしょうか。

国土交通省は、多目的ダムでの増加分もあわせ、大雨に備えて確保できるダムの空き容量がこれまでの2倍近くになるとしています。
また下げることのできる川の水位について、すでに防災運用を始めている発電専用ダムの例をあげています。

紀伊半島の熊野川にある風屋(かぜや)ダムと池原(いけはら)ダムでは、昨年の台風10号のとき事前に放流をして容量の3割を空けて備えました。ここでは川を掘り下げる対策もとっていて、国土交通省はそれらによって下流の川の水位を、何もしなかった場合にくらべて1.3メートル下げる効果があり、ぎりぎりのところで住宅の浸水を防いだと説明しています。
このように増水のピークを下げるほか、氾濫が起きてしまった場合も発生を遅らせ、避難する時間を稼ぐことができるといいます。

【課題① 水不足のリスク】
一方、課題も小さくありません。
まず、水不足にならないように運用できるかです。

事前放流をするかどうかの判断は気象庁によるダム上流の降雨予測に基づきます。ダムごとに基準が決められていて、それを超える大雨が予測されたら3日前から放流を始めます。しかし実際に雨が降らずに「空振り」になった場合、水不足につながる恐れがあります。ダムを管理している自治体や農業団体、電力会社はこれをたいへん心配しています。
<VTR>
多摩川の上流にある小河内ダムです。東京都が管理する水道水用のダムですが今月から洪水対策にも活用されることになりました。
多摩川の下流では去年の台風19号のとき市街地や超高層マンション街が浸水する大きな被害が出ました。多摩川上流には洪水対策用のダムがひとつもないことから水道水用の小河内ダムに洪水対策機能を持たせることに防災関係者は強い期待を寄せています。
その一方で都民の貴重な水源のひとつだけに、事前放流したものの予測が外れたときに水不足にならないか心配する声があがっています。

最近、全国で渇水が起きたのは4年前ですが、このときの小河内ダムの貯水量を示したグラフです。6月に入って雨が降らずに急激に減少しましたが、その後回復して持ちこたえ、給水制限は行われませんでした。
仮に、新たな運用基準で求められる量の事前放流を6月に行ない、予測が外れ雨が降らなかったらどうなるのでしょうか。貯水量の曲線は大きく下がります。
これを平成最悪の渇水だった平成6年と比較します。この年は2か月近く給水制限が行われ市民生活に大きな影響が出ましたが、ほぼ同じ水準になります。これは極端な想定ですが、
東京都の担当者は「予測の精度がわからない」として不安を抱いています。
国は水不足になった場合、自治体などが対策にかかる費用を補償するとしていますが、市民生活や農業などに大きな影響がでることは避けられません。
スーパーコンピュータやAIも使い降雨予測の技術は急速に進歩していますが、ダムの集水域ごとの雨量を正確に予測するには高い技術が必要で、その精度が運用の大きなポイントになります。

【課題② 防災態勢の整備】
もうひとつの課題は防災態勢です。
新たな運用で増水や氾濫を遅らせることになりますが、下流の住民から見ると雨がおさまってから川が増水するなど警戒が必要なタイミングが変わることになります。
また下流で急激な増水が起こるリスクも指摘されています。

ダムの構造は千差万別ですが、中小規模の防災用でないダムは複雑な放流操作はできません。運用も、これまでは高い水位のまま大雨を迎え、すぐに満杯になって上流からの水をそのまま流していたところが少なくありません。つまりダムがない状態に近く、下流は大雨が降るとすぐに増水していました。

しかし今後、事前に水位を下げ、流入した雨水を貯えるようになると、その間は下流の水位が低く抑えられますが、ダムが満杯になって大雨が続くと一気に大量の水が流れ下ることになります。それまで抑えられていただけに急激に増水することになるのです。
このように今までは特段の操作をしていなかったところで水量のコントロールが行われるようになるわけで「情報」がとても重要になってきます。
ダムを管理する都道府県や電力会社、土地改良区などと川の管理者、流域の市町村がこれまで以上に連携することが求められます。「あとどのくらいでダムが満杯になるのか」、「いつどのくらい放流するのか」などの情報をリアルタイムで共有し、住民への避難情報を的確に出せるように防災体制を強化する必要があります。

【まとめ】
この取り組みは気候変動による豪雨の増加が指摘されるなか、今ある社会インフラであるダムをいわば「総動員」して被害を少しでも小さくしようというもので、狙いは評価できると思います。

ただ、新たに大きな費用はかかりませんが、ダムを運用する現場は新たな負担と責任を引き受けることになります。また降雨予測の精度や、事前放流で川ごとにどのくらい水位を下げることができるのかが示されておらず、効果が見えにくくなっています。実際に運用を進める中で検証を重ね、効果を高めていく必要があります。
一方、私たち住民の側も、ダムと人の操作によってリスクが下がり守られていること、そしてその効果には限界があることも十分理解したうえで、大雨の際の避難など身を守る方法を考えておくことが大切だと思います。

(松本 浩司 解説委員)

1級水系ダム、水害対策貯水容量を倍増 事前放流の損失補填制度新設で

2020年6月9日
カテゴリー:

政府が6月4日、「ダムの洪水調節機能強化に向けた関係省庁検討会議」で示した「全国の1級水系河川のダムで、利水目的でためた水を事前に放流し、洪水調節容量を増やす」方針を各紙を取り上げています。
京都新聞の社説と毎日新聞の記事を掲載します。
事前放流によって利水者に損失が出た場合の補償は、
事前放流ガイドライン(国土交通省 水管理・国土保全局 )https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kisondam_kouzuichousetsu/dai3/siryou2.pdf に次のように書かれています、
「損失補償
協議の上、必要な費用を堰堤維持費又は水資源開発事業交付金により負担するものである。
① 発電
事前放流に使用した利水容量が従前と同等に回復しないことに起因して生じる電力の減少に対する火力発電所の焚き増し等の代替発電費用の増額分とする。なお、火力発電所の焚き増し等による費用とは、減少した発電量に発電事業者の火力発電所の焚き増し等の発電単価を乗じた費用とする。事前放流による増電がある場合は、これを考慮する。
② 水道
事前放流により利水容量が従前と同等に回復しない場合で、取水制限の新たな発生や、その期間の延伸及び取水制限率の増加に伴い発生する利水事業者の広報等活動費用及び給水車出動等対策費用の増額分とする。」

水道の場合は利水事業者の広報等活動費用及び給水車出動等対策費用の増額分ですから、それほどの金額にならないように思いますが、発電の場合は代替発電費用の増額分ですから、どの程度の金額になるのでしょうか。
机上の取りきめで事前放流の話が進んでいますが、実際にどのようなことになるのか、わかりません。


社説:ダム事前放流 運用広げて大被害を防げ

〔京都新聞2020/06/08 16:00) https://news.yahoo.co.jp/articles/7248b6117489e5aeced6be0ee557d95e6cc852c6

大雨のシーズンが近づいている。近年相次いでいる甚大な水害を防ぐには、取り得る対策を総動員する必要があろう。
全国各地で急がれているのが、大雨が降る前にダムを放流し、ためられる水量を増やして洪水への対処能力を高める取り組みだ。
政府は治水強化策として進めている。ダムの事前放流を行う手続きについて、全国109の1級河川水系のうちダムのある全99水系で地元自治体や利水団体と合意し、今月初めまでに協定を結んだという。
ダムの役割には、雨をためて洪水を防ぐ治水と、農工業や発電、水道用の利水がある。これまで利水用のダムはほとんど治水目的の放流を想定していなかった。
今回の協定により、利水ダム620カ所と治水・利水両用の多目的ダム335カ所で事前放流できるようになる。
新たに水害対策に充てられる貯水容量は45億立方メートル分の確保が見込まれる。現状から全体で倍増するというから大きな前進といっていいだろう。京滋を流れる淀川水系でも貯水容量が最大78%増、由良川水系は28%増になるという。
事前放流を拡大するのは、頻発化する大規模水害への対処が「待ったなし」だからだ。
2018年7月の西日本豪雨では、愛媛県のダムで緊急放流後に下流が氾濫し、犠牲者が出た。再発防止に向けた国土交通省の有識者検討会が提言したのが、事前の水位調整である。
事前放流は、下流域の浸水リスク軽減に加え、満杯による「緊急放流」を避けて住民の避難時間を確保する効果もある。
昨年10月の台風19号では各地で河川氾濫が相次いだ。茨城県など4県と国は、治水機能を持つダム6カ所で満杯近くになった水を緊急放流した。いずれも事前放流していなかった。
直前の昨年8月末時点で事前放流実施の要領を作成していた利水、多目的ダムは全国でわずか58カ所。管理者が水位が回復せずに農業用水などが不足するのを心配し、ためらった例が多かったようだ。
このため政府は、省庁横断の検討会議を設置し、既存ダム活用を拡大する方針を確認。今回、各ダムで利水団体などと結んだ協定では、事前放流で用水が不足した場合、別の河川から融通するとし、金銭面でも補償もするとしたのが地元協力につながったといえよう。
新たなダム建設や堤防強化などは膨大な費用と時間を要する。従来の縦割り行政を見直し、今回のように国交省以外が所管する利水ダム活用を広げることは、現実的かつ即効性が期待できる新たな治水対策として有意義だろう。
ただ、施設改修しなければ事前放流できないダムも少なくない。国は今月中に放流設備の改良など対策の工程表を水系ごとにまとめるという。災害は待ってくれない。一日も早く機能するよう整備してほしい。
貯水状況や放流の情報発信とともに、住民避難の方法も再確認しておきたい。


1級水系ダム、水害対策貯水容量を倍増 事前放流の損失補填制度新設で

(毎日新聞2020/6/4(木) 21:43配信)https://news.yahoo.co.jp/articles/ef25e0491a4e350b3ee34b1b22e4f4c3267139a5

政府は4日、ダムの洪水調節機能強化に向けた関係省庁検討会議で、国が管理する全国の1級水系の河川で、水道や発電など利水目的でためた水を事前に放流できるようにして、水害対策に使える貯水容量が約46億立方メートルから約91億立方メートルに倍増したことを明らかにした。事前放流は、予測と異なり貯水量が回復しなかった場合の事業者の損失が課題だったが、必要経費を国費で補塡(ほてん)する制度を新設するなどして対応した。
政府は昨年10月の台風19号で洪水被害が相次いだことを受け、同11月からダムの洪水調節機能強化の検討を始めた。菅義偉官房長官は会合で「拡大できた容量は(建設に)50年、5000億円以上をかけた(群馬県の)八ッ場ダム50個分に相当する」と成果を強調。「本格的な雨の時期を迎える中、国民の生命と財産を水害から守るために、国土交通省を中心に一元的な運用を開始してほしい」と指示した。
全国の1級水系で治水機能のあるダムは335基、上下水道や発電など利水目的のダムは620基ある。ただ、すべての貯水容量のうち治水目的に使えるのは約3割(約46億立方メートル)にとどまっていた。
国交省は、事前放流後に貯水量が回復しなかった場合に、代替発電費用や取水制限に伴う給水車の費用などを国が補塡することを定めたガイドラインを策定。同省や発電、水道事業者らが1級水系のうちダムのある全99水系で、利水ダムにたまった水や、治水機能のあるダムの利水目的の水を事前放流できるよう降雨量の基準などを定めた治水協定の締結に合意。貯水容量が約91億立方メートルに倍増する見通しとなった。
政府は2級水系のダムについても貯水容量を拡大させる方針。【佐野格】

事前放流へ統一運用/1級水系で治水協定締結/政府

2020年6月8日
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既報の通り、国土交通省が管理する1級水系で、大雨が予想される際にダムの利水容量についてあらかじめダムの水位を下げる事前放流の治水協定が締結されてきました。
この治水協定について建設通信新聞の記事を掲載します。
これは、首相官邸の「既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議」https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kisondam_kouzuichousetsu/index.html
の指示によるもので、この会議は菅義偉官房長官の肝いりで設置されたものです。
菅氏は下記の通り、BLOGOSで自ら、その成果を宣伝しています。

しかし、ダムの事前放流を行うと、ダムの洪水調節容量が約2倍になるという話は前にも述べましたが、かなり機械的に計算したものであって、実際に必ずそうなるということではありません。
また、ダム集水域の雨量を定量的に予測することは結構難しく、事前放流は空振りになることが多いです。
その場合は状況によっては利水者への補償が必要となることがあります。
この補償について補填の対象は一級水系の国の直轄区間にあるダムであって、一級水系の指定区間(都道府県管理区間)にあるダムは補填の対象になりません(国土交通省水管理・国土保全局河川環境課水利係に確認)。
また、この補償は直轄堰維持費と水資源開発事業交付金の予算項目から支出するとのことですが、今年度は緊急放流のための予算増額はされておらず、必要に応じて2021年度から予算措置をするという話です。
そして、繰り返しになりますが、事前放流さえすれば、ダムの緊急放流を回避できるというものではありません。
2018年7月の西日本豪雨において愛媛県・肱川の野村ダムと鹿野川ダムはそれなりの事前放流をしていましたが、それでも凄まじい緊急放流を行ってダム下流域の大氾濫を引き起こしました。

 

事前放流へ統一運用/1級水系で治水協定締結/政府
[建設通信新聞 2020-06-08 2面 ] https://www.kensetsunews.com/archives/460092

政府は、国土交通省が管理する1級水系で、大雨が予想される際の水害対策に発電用ダムや農業用ダムなどの利水ダムを活用し、あらかじめダムの水位を下げる事前放流の実施体制を整えた。国交省とダム管理者、関係利水者が治水協定を5月までに締結し、有効貯水容量に対して水害対策に利用できる容量の割合を従来の3割から6割に増やした。国交省が4月に策定した事前放流ガイドラインに沿って、多目的ダムと利水ダムの統一的な運用を今出水期に始める。
政府が4日に開いた「既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議」で、治水協定締結の進捗状況を確認した。菅義偉内閣官房長官は、国民の生命と財産を水害から守るため、国交省を中心とした関係省庁が治水協定に基づき、既存ダムの事前放流などを一元的に行う新たな運用を開始するよう指示した。また、降雨量とダムへの流入量をAI(人工知能)で予測する技術について、研究開発を進める国交省と気象庁に対して早期の実用化を求めた。
1級水系は、全109水系のうち99水系にダムが955カ所ある。その有効貯水容量は152億6300万m3で、このうち多目的ダムの洪水調節容量は3割に当たる45億8900万m3となっている。
利水ダムを水害対策に最大限活用するため、洪水調節可能容量(洪水調節に利用可能な利水容量)を設定する治水協定を99水系で結んだ。これにより、新たに45億4300万m3を水害対策に利用できるようになり、洪水調節容量と洪水調節可能容量を合わせた水害対策に利用できる容量は6割の91億3300万m3に倍増した。追加分の45億4300万m3は、3月に完成した八ッ場ダム50個分に相当する。
政府は、水害対策に利用できる容量のさらなる拡大に向け、ダムのゲート改良などハード・ソフト一体となった対策を講じる方針で、水系ごとの工程表を6月にまとめる。
都道府県が管理する2級水系でも治水協定の締結を支援し、利水ダムが事前放流を実施する体制を河川全体で整備する考え。国交省によると、2級水系でダムがある354水系のうち、福島県管理の鮫川水系は治水協定を締結済みで、75水系では治水協定締結に向けた協議が始まっている。

 

洪水対策:縦割り行政を排し、新たに八ツ場ダム50個分の洪水調整機能を確保
• 菅義偉
(BLOGOS2020年06月06日 20:25)https://blogos.com/article/462893/

今週「既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議」を開催し、梅雨や台風などの大雨に備えた洪水対策を取りまとめました。
10月の台風第19号をはじめとした一連の記録的な豪雨は、東北、関東甲信越を中心とした広範な地域において大きな被害をもたらしました。中上流域を中心に71河川の142カ所で堤防が決壊して、洪水が発生した地域の被害は甚大なものとなりました。
これを機に、昨年11月に私の指示で、水害対策としてもっと今あるダムを活用するための各省検討会議を官邸に作りました。
全国には1470のダムがありますが、このうち水害対策を担当する国交省が所管するダムは570で、そのほか経産省が所管する電力用のダムや農水省が所管する農業用水用のダムなど全国に約900ある「利水ダム」は、各省の縦割りの弊害で、水害対策にはほとんど使われていませんでした。
結果として、全国のダムの合計容量のうち、洪水時にダムに水を貯めて水害対策に使える部分は、全体の3割しかなかったのです。
まず全国約100の1級水系について、こうした縦割りを排し、電力や農業など管理者と調整を進めて治水協定を結び、今回の取りまとめとなりました。
全国のダムの容量のうち水害対策に使える部分が従来の2倍となる6割にまで拡大することができました。拡大できた容量は、建設に50年、5千億円以上をかけた八ツ場ダム50個分に相当します。
例えば、利根川水系では川俣ダムなどで水害対策に使える容量が八ツ場ダム3個分相当増え、相模川水系では城山ダムなどで八ツ場ダム1個分増えることになりました。今後はそれぞれの水系において、大雨が予想される際には、それぞれのダムの事前放流などについて国土交通省を中心に一元的な運用を行うことになります。
さらに全国にダムがある2級水系は約350ありますが、これらについても今後同様の調整を進めます。特に、近年水害が起きた水系や大きなダムがある水系などについては速やかに調整を進めていきます。
また、AIを活用して降雨量やダムへの流入量を精緻に予測し、ダムの放水量もAIを使って予測する研究開発を進めています。
今回の対策は、これまでの治水行政の大きな転換で、縦割りを排してこれまで使われていなかった機能を有効利用することで、巨額の予算を投じることなく洪水調整機能を大幅に増やすことができました。いのちと暮らしを守るために、さらなる能力向上に向けて引き続き取り組んでまいります。

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