水源連:Japan River Keeper Alliance

水源開発問題全国連絡会は、ダム建設などと闘う全国の仲間たちのネットワークです

ホーム > ニュース > 報道

ニュース

報道

設楽ダム地質調査を“「活断層」濃厚” 国交省に市民団体

2019年8月28日
カテゴリー:

8月27日、設楽ダム(愛知県)予定地の断層は「活断層」の可能性が濃厚であるとして、市民グループが国土交通省本省担当者と面談し、再調査を求めました。
しんぶん赤旗の記事を掲載します。
水源連も参加しました。

設楽ダム地質調査を“「活断層」濃厚” 国交省に市民団体
本村議員参加
(しんぶん赤旗2019年8月28日(水))http://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-08-28/2019082814_02_1.html

(写真)設楽ダムの活断層問題で国交省に質問する市民グループのメンバーと本村議員(手前)=27日、衆院第1議員会館

設楽ダム(愛知県北設楽郡設楽町)予定地の断層は「活断層」の可能性が濃厚―。同ダム建設予定地の地質調査を行っている市民グループが27日、衆院第1議員会館で、国土交通省に同ダム建設予定地の地質地盤について再調査を求めました。日本共産党の本村伸子衆院議員が参加しました。
市民グループは2015~17年度の地質調査報告書を入手し検討。同ダム建設は「大きなリスクを背負い込む」として3月、同省中部地方整備局長らに意見書を提出。その後、支障がないと書かれたサイト斜面を斜めに切る断層を「活断層」と判断。4月、設楽ダム工事事務所に説明しましたが、「何の応答」もなく、本省の対応を求めたもの。
同省は「(第四紀断層の)第1次調査で活断層が見つからなかった。1次調査で見つからなければ2次調査は行わない」と述べました。
市民側は「活断層」の証拠となる地点の岩盤、断層、地層などの写真を担当者に見せながら「何をもって活断層がないと判断したのか根拠を示してほしい」「1次調査の後に、怪しい活断層が出てきたときに見直す気はないのか」と迫りました。
本村氏は「活断層でないと断言できないのなら本体工事発注前に活断層かどうか、国が調査して科学的根拠を示してほしい」と要望。同省は「話を持ち帰る」とだけ答えました。
市民グループは設楽ダム予定地周辺の地質調査グループ、水源開発問題全国連絡会、設楽ダムの建設中止を求める会、設楽ダム第2次住民訴訟原告団の4団体。

雨畑ダム(山梨)湖底に大量ヘドロ 魚類や水草、確認できず

2019年8月20日
カテゴリー:

駿河湾サクラエビの深刻な不漁との関係で浮き彫りになった日本軽金属・雨畑ダムの堆砂問題に関する記事を二点掲載します。

雨畑ダム(山梨)湖底に大量ヘドロ 魚類や水草、確認できず
(静岡新聞2019/8/20 17:05)https://www.at-s.com/news/article/social/shizuoka/671426.html

(写真)水が抜かれ湖底の堆砂があらわになった雨畑ダム湖=19日午前、山梨県早川町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
(写真)貯水状態の雨畑ダム=1日、山梨県早川町(同)
駿河湾サクラエビの不漁を受け静岡、山梨両県が濁りの実態調査を進める雨畑ダム(山梨県早川町)が台風10号の影響で増水、管理する日本軽金属が17日ごろから洪水吐ゲートを開放した。19日までに、ダム湖の堆積した大量のヘドロが露出。湖底には魚類や水草は確認できず、鉄分が空気に触れて酸化したとみられる赤茶色になった泥土が見られた。
気象庁の観測で、降り始めからの周辺の総雨量は80ミリ程度。だが、河床が上昇しているため雨畑集落では町道の一部が冠水し、つり橋が崩壊。湖底が粒子の細かいシルト・粘土で覆われている様子を目の当たりにした専門家は「下流域の生物に相当なインパクトがあると考えるべき」と指摘した。
同社蒲原製造所によると、大雨の際には社内規則のダム操作規定に基づき、洪水吐ゲートを開いて濁水を雨畑川下流に流す。水とヘドロを一緒に下流に流す排砂も実施し、ダム湖の貯水容量を上げる対策を取ることになっている。
雨畑集落の住民によると、民家に床上浸水被害が出た昨秋の台風24号の際にも長期間ゲートを開放。今回はその時以来とみられる。
雨畑ダムは高さ約80メートル、長さ約150メートルだが、国土交通省によると2016年度の雨畑ダムの堆砂率は93・4%で全国約500カ所ある中規模以上(500万立方メートル以上)のダムの中でトップ。ヘドロ堆積の詳細な実態調査が急がれる。
堆砂物を現地で確認した日本陸水学会東海支部会前会長の井上祥一郎氏は「ダムから出る濁りは導水管を経て駿河湾に到達し、海洋環境に影響している可能性が高い」と述べた。

雨畑ダム湖底露出 シルト堆積、異様な光景 ダム上流つり橋崩壊
(静岡新聞2019/8/20 17:06)https://www.at-s.com/news/article/social/shizuoka/671408.html

(写真)洪水吐ゲートを開いたため水がなくなり湖底が姿を現した雨畑ダム=18日、山梨県早川町
(写真)台風10号の影響で上流からの流木や土砂により崩壊したダム上流のつり橋=18日、山梨県早川町の雨畑川
「サクラエビ異変」取材班は19日、技術士で日本陸水学会東海支部会前会長の井上祥一郎氏(76)と共に雨畑ダム(山梨県早川町)のダム湖周辺を巡り、露出した湖底の状況を確認。現地で、井上氏にダムから出る濁水の生態系への影響評価を聞いた。
露出した雨畑ダムの湖底は非常に粒子の細かいシルト・粘土で覆われていた。ダムにとどまらず、ダム下流の川岸の石や岩の上にもシルトなどが厚く堆積し異様な光景だった。
早川水系の濁りは想像以上だった。これが駿河湾に流れ出た場合、水産生物(魚介類)にさまざまな影響を及ぼすことは想像に難くない。濁りは太陽光を遮りサクラエビのエサの植物プランクトンの生産性を落とす。
静岡県環境衛生科学研究所の報告によれば、駿河湾の海底湧水には植物プランクトン・ケイ藻の栄養となるケイ素が豊富という。魚介類はエサ資源としてケイ藻に支えられていることは専門家の間でよく知られ、海底湧水がシルトなどで目詰まりすると、ケイ素の減少を通して、サクラエビにも相当なインパクトがあると考えるべきだ。
雨畑ダムや堆積物をどうするか、原因を元から絶つには撤去が一番分かりやすく、永続的だ。アメリカではアーチ式コンクリートダムを撤去した事例もある。撤去も選択肢に、住民の判断材料になる科学的情報が重要。新しく発足した「『森は海の恋人』水の循環研究会」では、広い情報網から判断材料を提供してほしい。山、川、海それぞれの立場で、かつ、つながりを考えることが大切だ。

■「土砂の掘削移動、今後も」
日本軽金属蒲原製造所のコメント 台風10号の大雨で地元の農地や倉庫、町道を冠水させ、住民の皆さまに多大なご迷惑、ご心配をお掛けし深くおわびする。被災された現地の復旧、再発防止に向け、早急に対応を進める。地域の安全確保を最優先課題とし、今後も、雨畑ダム上流域での河道の確保をするため、河床の上がっているエリアの土砂掘削移動作業を実施し、災害を未然に防止すべく関係各所の協力をいただき対応を進める。
井上祥一郎氏 1943年、名古屋市出身。信州大農学部卒。長年技術士として民間会社に勤務し、全国で森から海の流域環境修復に従事。日本陸水学会東海支部会前会長。公益財団法人海と渚環境美化・油濁対策機構の「漁民の森づくり活動調査」委員。

(写真)崩壊前の橋=7月24日

アメリカで1200カ所ものダムが撤去された理由とは?

2019年8月20日
カテゴリー:

アメリカのダム撤去についての記事を掲載します。

アメリカで1200カ所ものダムが撤去された理由とは?
(GIGAZINE 2019年08月20日 06時00分) https://gigazine.net/news/20190820-edwards-dam-removal/

by funario

アメリカでは、1999年から2019年までの20年間に大小合わせて1200基近くのダムが撤去されました。河川の増水による洪水から人々を守ったり、併設される水力発電所により二酸化炭素や有害物質を出さないクリーンエネルギーを生み出したりと、大切な役割を持つダムが見直されつつある背景には、環境を大事にするからこその理由がありました。

How Removing One Maine Dam 20 Years Ago Changed Everything • The Revelator

How Removing One Maine Dam 20 Years Ago Changed Everything

20 Years Ago, Edwards Dam Removal Sparked a Movement for Free-flowing Rivers

20 Years Ago, Edwards Dam Removal Sparked a Movement for Free-flowing Rivers

A Brief History of Edwards Dam on the Kennebec River

A Brief History of Edwards Dam

かつて、アメリカのメイン州に流れるケネベック川には、1837年に建設された歴史あるエドワーズダムがありましたが、1999年7月1日に撤去されました。撤去当日のケネベック川には、地元の人やメイン州の知事だけでなく、商務省のテリー・ガルシア事務局長などの政府要人も合わせて1000人もの見物客がつめかけ、作業機械がダムを破壊し、川に水があふれる様子を見守りました。

エドワーズダムの撤去が決まるまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。撤去計画が持ち上がった1989年当時、ダムの所有者である地元企業エドワーズ・マニュファクチャリングは折しも水力発電施設の発電量を3倍に引き上げる拡張工事を予定しており、撤去計画に激しく反発。河川修復運動団体American Riversや漁業関係者などで結成されたケネベック連合と、エドワーズ・マニュファクチャリングや共同権利者である地元オーガスタ市との交渉は難航し、合意に至るまで5年以上もの歳月を要しました。

また、撤去費用が高額なことや、川岸が浸食されたり、下流地域における洪水が増加したりする危険性もあったことから、ダムを存続させるべきだという意見も根強く存在しました。地元市民の中にも、160年にわたり地元産業を支えたインフラであり、街の景観の一部としても親しまれてきたダムの撤去計画に、複雑な思いを抱いていた人が少なからずいたとのこと。

それでもエドワーズダムの撤去が決行されたのは、ケネベック川の生態系を取り戻したいという、河川修復運動家や漁業関係者の強い意志があったからです。ダムが建設される以前、オーガスタ市では毎シーズン500匹ものサケが収穫されていましたが、建設後の1850年には5匹にまで減少し、事実上オーガスタ市の漁業は壊滅しました。また、ケネベック川の下流でも、年間32万ポンド(約145トン)あったチョウザメの漁獲量は、1880年には年間1万2000ポンド(約5トン)にまで減少しています。

by California Department of Fish and Wildlife

セントマーチン大学のジェフ・クレーン教授はエドワーズダムに関する論文の中で、「ニシン・アロサ・シマスズキ・タイセイヨウサケ・チョウザメといった無数の魚を育み、カワウソやハクトウワシなどの生態系を支えていたケネベック川は、メイン州の経済発展と引き替えに工場の排水システムと成り果てた」と報告。1億ドル(約106億円)を投じて建設された水処理施設によりケネベック川の水質はかなり改善しましたが、生態系の宝庫だったかつての姿を取り戻すには至っていませんでした。

しかし、こうした状況はダムの撤去と同時に一変しました。撤去工事から1年も経たないうちに、ケネベック川にはチョウザメが戻り、ニシンを追って海から40マイル(約65km)も川をさかのぼってきたアザラシが観察されるようになったとのこと。さらに数年の内にケネベック川の水質は劇的に改善し、ハクトウワシやカワウソ、熊といった動物も含めた生態系はほぼ完全に回復しました。

豊かな流れの恩恵を受けたのは魚や動物だけではありません。ケネベック川の沿岸には公園や歩道が整備され、オーガスタ市民の交流や憩いの場となりました。American Riversの理事を務めるブライアン・グレーバー氏は「私はオーガスタ市の郊外で幼少期を過ごしていましたが、当時ケネベック川は生活の場でも、遊びの場でもありませんでした。それが今日では、カヌーやカヤックを持ち寄って楽しいひとときを過ごす人々でにぎわっています」と話しています。

レジャー客でにぎわうケネベック川。

by Ken Curtis

エドワーズダムの事例は河川環境を回復させる活動のモデルケースとなり、これ以降撤去されたダムは1200基近くにものぼります。

1912年から2018年までの間にアメリカで撤去されたダムの位置を示す地図。

グレーバー氏は「アメリカ中のダムを壊そうというつもりはありません。アメリカ全土には依然として9万基以上のダムが存在し、その多くは大切な役割を担っています。しかし、ダムの撤去こそ川を最も迅速に、そして効率的によみがえらせる唯一の方法なのです」と話し、ダムを撤去するメリットは時としてダムそのものがもたらす価値よりも大いものだとの見方を示しました。

(アフリカはいま)ナイル川、巨大ダムの衝撃 上流のエチオピア、建設

2019年8月19日
カテゴリー:

ナイル川のエチオピアに総貯水容量740億立方メートルの超巨大ダムの建設が進められていて、下流側のエジプトに深刻な影響が与えることが危惧されています。
なお、よく知られているアスワン・ハイダムはナイル川のエジプト側にあるダムで、総貯水容量1620億立方メートルのロックフィルダムです。1970年に完成しました。

 

(アフリカはいま TICAD7)ナイル川、巨大ダムの衝撃 上流のエチオピア、建設
(朝日新聞2019年8月18日05時00分)

川辺川ダム中止表明10年 水没免れた熊本・五木村、集落存続に力

2019年8月18日
カテゴリー:

川辺川ダムは、民主党政権が中止を表明してから、9月で10年になります。
水没を免れた五木村の現状を伝える記事を掲載します。

川辺川ダム中止表明10年 水没免れた熊本・五木村、集落存続に力
(産経新聞2019.8.18 07:00)https://www.sankei.com/region/news/190818/rgn1908180017-n1.html

(写真)熊本県五木村の水没予定地周辺。宿泊施設などが整備された
熊本県で国が高度経済成長期から進めた川辺川ダム建設計画は、民主党政権が中止を表明してから、9月で10年になる。水没を免れた同県五木村は、人口減少や高齢化にあえぎながらも、地場産業を立て直して集落の存続を図っている。
◆林業を軸に振興
「ここまで急激に人が減るとは…。村内で経済が回らなくなってしまった」
在任12年になる和田拓也村長(72)は、地域活性化策への思いを巡らせながら、ため息をつく。
昭和30年代に6千人超が暮らした五木村は、国がダム計画を発表した41年以降、水没予定地で離村する人々が目立った。人口は今年7月末時点で、1080人にまで減った。65歳以上の割合を示す高齢化率は、県の平成29年10月時点の集計で49%。県内45市町村の中で最も高い。
かつて立ち並んでいた商店は衰退し、今は村外へ買い出しに行く住民が多い。
代替の住宅地や道路整備と引き換えにダム建設に同意した村は今、林業を軸にした振興を目指している。
27年に「森林で自立する村づくり」を宣言。自然乾燥させて強度を高めた地元産のスギで造る「五木源住宅」を、村の森林組合や設計事務所などと連携して売り込む。
28年4月に起きた熊本地震の被災者向けモデル住宅に選ばれたこともあり、これまでに村外を中心に40棟ほどを建てた。
◆上向く観光客数
村は県と定めた振興計画に基づき、観光にも力を入れる。
27年以降、国が買収した水没予定地を賃借し、国の交付金も活用しながら、村営公園「五木源パーク」や、第三セクター方式の宿泊施設を整備した。
村内で川遊びや山登りを手軽に楽しめることも好評で、村ふるさと振興課によれば、20年に12万951人だった観光客数は、29年に約44%増の17万4271人となった。
首都圏で町おこしの仕事をしていた日野正基さん(32)は昨年、村出身の妻、望生さん(26)と一緒に移り住んだ。
地域活性化を手掛ける会社を立ち上げ、遠方の大学生に村での就業体験をあっせんしたり、地元産の野菜やシカ肉を使った料理を提供するカフェを営んだりしている。
「清流があり、人も優しい。人口が減る中でも、みんなが楽しく暮らせる村をつくりたい」。日野さん夫妻は前を向く。

【用語解説】川辺川ダム建設計画
日本三大急流に数えられる熊本県の球磨川流域で水害が相次いだことを受け、国は昭和41年、支流の川辺川にダムを設ける計画を発表した。建設賛成派と環境破壊などを懸念する計画反対派が対立。蒲島郁夫知事は平成20年9月、計画反対を表明した。翌21年9月17日、民主党政権の前原誠司国土交通相も中止方針を示した。ダムに代わる治水対策を、国と流域自治体が協議している。

↑ このページの先頭へ戻る