川辺川ダムの情報
流水型の川辺川ダムへの賛否に無回答3人、にじむ難しさ 12首長アンケ-ト
球磨川流域の12市町村長に朝日新聞が流水型の川辺川ダムへの賛否等についてアンケートを行った結果についての記事を掲載します。
川辺川ダムに「賛成」と答えたのは八代市、芦北町、錦町、水上村、山江村、球磨村の6首長、「やむを得ない」が人吉市、多良木町、湯前町の3首長、五木村、相良村、あさぎり町の首長は無回答でした。
このうち、水上村、多良木町、湯前町、あさぎり町は球磨川への川辺川合流点より上流側に位置しており、また、山江村は合流点より下流側ですが、球磨川本川と少し離れているので、川辺川ダムと直接的な関係がないように思います。
これらの5町村を除くと、賛成は八代市、芦北町、錦町、球磨村の4市町村になります。
このうち、球磨村では支川「小川」の氾濫で特別養護老人ホーム「千寿園」で入所者14人が亡くなりましたが、これは小川が本川よりかなり早く氾濫したことによるものであって、川辺川ダムで対応することは困難であったと思います。また、下流域の八代市、芦北町では川辺川ダムがあってもその治水効果は下流にいくほど減衰していきますので、どれほどの意味があるのでしょうか。
八代市、芦北町、球磨村の首長がどこまで理解して川辺川ダムに賛成しているのか、よくわかりません。
ダム賛否に無回答3人、にじむ難しさ 12首長アンケ-ト
(朝日新聞2021年1月5日 14時30分)
ダム湖が一面緑色に 外来種の水草、2年連続大発生 除去費億単位、アユの姿も消え… 鹿児島・さつま町
球磨川の南側、鹿児島県を流れる川内川(せんだいがわ)の鶴田ダムのダム湖で水草が2年連続で大発生し、除去費が億単位になり、アユへの影響も懸念されているという記事を掲載します。
2019年11月の記事も掲載します。
鶴田ダムは総貯水容量12300万㎥のダムです。2006年7月豪雨(鹿児島県北部豪雨)による川内川の水害のあと、放流管を増設し、洪水調節容量7500万㎥を9800万㎥/に、1.3倍に拡張するダム再開発事業が行われ、2018年度に完成しました。、
鶴田ダムは2006年7月豪雨の時に緊急放流を行い、ダム下流域を大氾濫させました。(「平成 18 年鹿児島県北部豪雨における川内川の水位上昇とその考察」http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00074/2008/52-02-0003.pdf)
川辺川ダムは前の計画では総貯水容量が13300万㎥でしたから、鶴田ダムとほぼ同じ規模です。ちなみに流域面積は川内川が1573㎢、球磨川が1880㎢で、河川の規模もほぼ同じです。
球磨川の隣を流れる川内川のダム湖で、このような水草の異常増殖が問題になっているのです。
川辺川ダムを貯水型ダムはなく、流水型ダムにする検討が進められているのは、このような水草の異常増殖の心配があるからだと考えられます。
しかし、流水型ダムにすれば、河川環境への影響を回避できるかというと決してそうではありません。
竹門康弘氏(京都大学防災研究所水資源環境研究センター)は流水型ダムの環境影響について次の3点を指摘しています。(2013年の小国川での講演資料より)
1、河床攪乱規模の低下により瀬–淵構造の形態が変化する可能性がある。⇒淵が砂利や砂で埋まり、浅くなるなどが考えられる。サクラマスやヤマメの産卵場が減少
2、湛水域上部に大粒径の石礫が滞留する結果、下流への大礫の供給が減る可能性がある。 ⇒直下流で河床の径粒分布が変化すると考えられる。
3、湛水域下部に細粒分や栄養塩が滞留する結果、平水時の濁度が若干増加する可能性や藻類が増える可能性がある。⇒直下流で青澄な流水景観が損なわれる恐れがある。
ダム湖が一面緑色に 外来種の水草、2年連続大発生 除去費億単位、アユの姿も消え… 鹿児島・さつま町
(南日本新聞2020/12/26(土) 11:15)https://news.yahoo.co.jp/articles/2932d82808253d7d54107557a7a5d8b6dd6839b4
(写真)湖面を覆う水草。専用船で除去するが追いつかない=さつま町神子の鶴田ダムから
さつま町の鶴田ダムの貯水池・大鶴湖で、外来水草が昨年に続いて大量発生している。管理所が除去を進めているが、繁殖力に追いつかない。除去費用は前年度の1億5千万円を超える可能性もある。同町と伊佐市にまたがる湖はアユの産卵地で、生態系への影響も懸念されている。
12月上旬、鶴田ダムの天端から大鶴湖を望むと、専用船2隻が作業を進めていた。湖面が見えるのは船の周辺だけ。緑色の水草は、ダムから約12キロ上流の伊佐市の曽木の滝近くまで広がる。 専用船は大型のカッターで水草を刈り、運搬用の船に積み込む。岸からは4トントラックで敷地内の仮置き場に運ぶ。1日の処理量は60~70トン。仮置き場には、一部茶色く変色した草が積み上がっていた。 管理所によると現在、水草は約200万平方メートルの湖面の半分以上を覆う。外来種ボタンウキクサとホテイアオイで、環境省は生態系を壊す恐れがあるとして駆除を呼び掛ける。水面を覆い尽くし、水中の光や酸素不足から魚介類への悪影響も懸念され、枯れて沈むとダムの放流を妨げる可能性がある。
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水草の群生がみられるようになったのは2008年度。増減を繰り返し、19年度は湖面の半分まで広がった。専用船を初めて使って駆除作業に着手。しかし、暖冬で枯死しなかったこともあり、約10万平方メートルが残った。それらが再び繁殖し、9月以降一気に増えた。
生態系への影響を心配する声も上がり始めている。1~3月に大鶴湖でアユの稚魚を取っている川内川上流漁協(伊佐市)の今年の採捕量は、目標の50分の1の1キロにとどまった。山田満組合長(65)は「このままでは来年も難しいだろう。漁協運営にとって死活問題」と嘆く。 川内川漁協(さつま町)の舟倉武則組合長(74)も「今年は湖に流れ込む川で、アユの姿を見なかった」と表情を曇らせる。両漁協は7月、管理所に早期対策を求める要望書を出した。
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ダムは6~8月、大雨に備え水位を低くするため、専用船での除去作業ができない。管理所は昨年より2カ月早い9月末から専用船を投入した。11月からは2隻体制にし、同月末までに約2千トンを回収した。
水草や流木の除去費は、年約8億円のダム維持費から賄う。大量発生前の費用は年4千万円程度。前年度は約6千トンの回収で約1億5千万円かかった。本年度も同規模を想定しており、毎年実施する堆積土砂の測量を全て取りやめ、予算を確保した。
費用がかさむ場合は、緊急性のない補修工事の先送りも検討する。三浦錠二所長(57)は「春までに全て回収できるように最優先で進める」と話す。
大鶴湖の上流には水草の群生があり、今後も株が流れ込む可能性がある。ホテイアオイの生態に詳しいNPO法人オアシス水環境研究会(志布志市)の本村輝正理事長(84)は「湖水の富栄養化も異常発生に関係しているのではないか。流域全体で環境を考える必要がある」と指摘する。
【ボタンウキクサとホテイアオイ】 それぞれ環境省の特定外来生物と緊急対策外来種、重点対策外来種に指定されている。ボタンウキクサはアフリカ原産で別名ウオーターレタス。南アメリカ原産のホテイアオイはウオーターヒヤシンスとも呼ばれ、いずれも家庭などで栽培していたものが野生化したとみられる。
鹿児島)ダム湖で異常繁殖の水草、除去作業が本格化
(朝日新聞2019年11月20日 3時00分)
球磨川水害 被災者の意識調査 民意が置き去りにされた
熊本日日新聞が被災住民を対象に実施した意識調査の結果では、球磨川治水について望む対策は「宅地のかさ上げ・高台移転」「堤防のかさ上げ・引堤」「河道掘削」の順に回答数が多く、「ダム建設」は4番目です。
熊本日日新聞の社説と、調査結果を示した記事を掲載します。
被災住民が川辺川ダムの建設を望んでいるかのような話は、国土交通省と熊本県が作り上げた虚構だと思います。
被災者の大多数の意向に沿って、川辺川ダムの建設ではなく、これらの治水対策を優先して進めるべきだと思います。
被災者の意識調査 民意が置き去りにされた
(熊本日日新聞社説2020/12/282月28日 09:28) https://kumanichi.com/opinion/syasetsu/id45018
球磨川流域を中心に甚大な被害をもたらした7月豪雨を受け、蒲島郁夫知事は12年前に「白紙撤回」した川辺川ダム建設計画を一転して容認。流水型(穴あき)のダムを造るよう国に求めた。国土交通省は即、呼応。来年度予算案に調査費が盛り込まれた。
豪雨後の治水対策協議で軸となったのはダム建設。スピード感というより、むしろ拙速な印象を拭いきれない。熊本日日新聞社が被災住民を対象に実施した意識調査の結果を見て懸念が的中した。浮き彫りになったのは最も重視すべき住民の意向、いわゆる民意が置き去りにされている実態である。
ダム要望は4番目
調査によると、行政に取り組んでほしい施策で最も多かったのは「生活や事業の再建」で、53・0%と過半数を占めた。元の生活に早く戻りたいとの切実な思いが伝わる。「治水対策」は2番目で25・6%。最重点で取り組むべきは、やはり生活再建である。
球磨川治水に絞ると、望む対策は「宅地のかさ上げ・高台移転」「堤防のかさ上げ・引堤」「河道掘削」の順に回答数が多く、「ダム建設」は4番目だった。
ダムへの期待度は高くなく、ダムありきで治水対策を主導した国交省や県との認識の違いが際立つ。治水協議に加わった流域市町村の首長は、住民の要望を直接肌で感じていたはずだ。ダムに固執する理由の説明が求められよう。
知事は方針転換の理由に「民意の変化」を挙げた。12年前はダム不要が大半だったが、被災後、少なくとも3分の1は建設に賛成しているというものだ。今回の知事判断を「支持する」との回答は「どちらかと言えば」を合わせて41・8%。知事の想定に近い。
民意は動いたのか
しかし、「どちらかと言えば」を含めた「支持しない」は36・3%、「分からない・無回答」も21・9%だ。単純比較はできないが、知事が白紙撤回を決断した当時、流域住民の82・5%が支持したのとは落差がある。ずれが生じたのは、結論を急ぎすぎたためではないか。
建設の賛否を問う住民投票を「実施すべきだ」は「いずれ」を含め59・8%と、「実施すべきでない」(14・3%)を大きく上回った。流域治水を進めていく上で、住民の合意が得られていない点は今後の不安材料だ。円滑な事業推進の妨げになりかねない。
知事が11月19日、県議会でダム容認を正式表明した際、特に反省の弁はなかった。2008年の白紙撤回は半年間の熟慮の末、「球磨川そのものが守るべき宝」と決断したが、今回の容認は周囲があっけにとられるほど早かった。
被害の責任どこに
代替策とした「ダムによらない治水」が12年間にわたり全く進まなかったことの責任の所在は、一体どこにあるのだろう。
治水に深く関与していた国交省の責任はより重い。知事の白紙撤回表明の直前、九州地方整備局長は「ダムを建設しないことを選択すれば、住民に水害を受忍していただかざるを得ないことになる」と述べた。何としてもダム建設を進めたい気持ちの表れだったのだろう。しかし建設は中止に。治水の主導的立場にありながら不作為ともとられかねない12年間の姿勢と、関連はあるのだろうか。
治水対策協議で対立し、事業を後押しできなかった流域市町村の首長も責任は免れまい。
次のステージにやみくもに進む前に立ち止まり、きちんと総括すべきである。流域治水をどう進めれば最も効率的なのか、展望も開けてこよう。不可欠なのが、住民の要望を丁寧にすくい取り合意形成につなげることだ。果たすべき責任はそこにある。
2020熊本豪雨 熊日球磨川流域被災者調査 人吉市、八代市坂本町、球磨村、相良村、五木村
(熊本日日新聞2020年12月29日)
球磨川の冶水対策を尋ねた設問(複数回答、回答数786件)では、
宅地かさ上げや堤防堅備など被災者にとって身近な場所での冶水対策を望む声が、ダムやゆ遊水地の整備を大きく上回る傾向が出た。
回答で最も多かったのは、「宅地のかさ上げ・高台移転」で、241件に逮した。「埋防のかさ上げ・川幅を広げる引堤」も207件と目立った。
県が10~11月に実施した流域の憲見聴取会で住民から要望が相次いだ「河道掘削」は158件だった。
一方、「ダム建設jは100件にとどまり、被災者のニーズは乏しかった。「遊水地の堅備jも41件と少なかった。
(野方信助)
◇調査方法 11~20日、球磨川流域2市3村の計798世帯に設問による対面調査を実施し、540世帯から回答を得た。
人吉市、八代市坂本町、球磨村、相良村は仮股住宅と遍曜所の全世帯が対象。五木村については避難所などがないため、NTT電話帳から無作為で紬出した世帯を対面で調査した。
水源連の意見書「球磨川大氾濫を受けて球磨川の治水対策をどう進めるべきか」
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川辺川ダムは必要性が希薄で、流水型ダムであっても環境に多大な影響を与えます。
蒲島郁夫・熊本県知事は11月19日に流水型ダムとして川辺川ダムを建設することを容認すると表明しました。
振り返ってみれば、2008年における蒲島知事の川辺川ダムの中止宣言は知事の本意ではありませんでした。
当時、蒲島知事の意思表示の直前に相良村長と人吉市長が川辺川ダムの中止を求めたため、蒲島知事も中止を表明せざるをえなくなったのであって、蒲島知事の当初の思惑は川辺川ダム推進でした。
県民が反対する県の路木ダムの建設を強引に推進し、電源開発の瀬戸石ダムの水利権更新に簡単に同意してきたのが蒲島知事です。
今回の蒲島知事の意思表明で、川辺川ダムは推進の方向に向かう恐れはありますが、様々な手続きがあり、そう簡単に進むものではありません。
川辺川ダムよりもっと重要で、必要とされる治水対策があること、川辺川ダムが流水型ダムであっても川辺川、球磨川の自然に大きなダメージを与えることを訴えていかなければなりません。
川辺川ダムよりもっと重要で、必要とされる治水対策については11月17日に水源連は次の意見書を提出しました。
◆意見書「球磨川大氾濫を受けて球磨川の治水対策をどう進めるべきか」(水源連(水源開発問題全国連絡会))
https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2020/11/361f6d973f10e8d2b20ce0e5a6afa36b.pdf
◆流水型ダムの問題点については次のまとめをお読みください。
流水型ダム(穴あきダム)の問題点 | 水源連 (suigenren.jp)
川辺川ダム計画の復活をストップさせるため、上記2点を訴えていきたいと思います。
流水型ダム(穴あきダム)の問題点
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球磨川の治水対策として川辺川ダムを流水型ダム(穴あきダム)にすれば、河川環境への影響を回避できるような話が流れています。
他のダム計画でも、流水型ダムとすることによって、ダムの反対運動を押さえようという事例が多くなりました。
日本における既設の流水型ダム、工事中・計画中の流水型ダムは別紙の
日本の流水型ダム_ 1121をご覧ください。
既設の流水型ダムは益田川ダム、辰巳ダム,西之谷ダム、浅川ダム、最上小国川ダムです。
工事中は、三笠ぽんべつダム、立野ダム、足羽川ダム、玉来ダム、矢原川ダムです。
そして、計画中は、城原川ダム、大戸川ダムです。大戸川ダムは計画がストップしたままです。
また、石木ダムも利水機能がある流水型ダムとして計画されています。
しかし、流水型ダムが環境にやさしいという話は怪しげな話です。
は以下の項目についてまとめたものです。お読みいただければと思います。
流水型ダムの問題点
1 自然にやさしくない流水型ダム
1-1 水生生物の行き来を妨げる障害物「副ダム」
1-2 濁りの長期化
1-3 ダム下流河川の河床の泥質化
2 流水型ダムの危険性 ―大洪水時には閉塞して洪水調節機能を喪失-
なお、既設の流水型ダムで最も大きいのは総貯水容量675万㎥の益田川ダムです。
川辺川ダムの元の計画は総貯水容量13300万㎥、洪水調節容量8400万㎥、堆砂容量2700万㎥でしたから、治水目的だけでつくるとしても、8400万㎥+2700万㎥=11100万㎥の容量になります。
仮に流水型ダムとして川辺川ダムをつくるとすれば、けた違いに大きい流水型ダムとなりますので、どのようなことになるのか、予想が付きません。