川辺川ダムの情報
流水型ダムに「一定の理解」 矢上雅義衆院議員(立憲民主党 熊本 4 区)
矢上雅義衆議院議員(立憲民主党 熊本 4 区)が流水型ダムの川辺川ダムに一定の理解を示すという記事を掲載します。
このHPに掲載するかどうか、迷った記事です。というのは、矢上氏は2001年~08年に相良村長で、川辺川ダム反対を表明していたからです。
2008年に当時の田中信孝・人吉市長と、矢上氏の後任の徳田正臣・相良村長が川辺川ダム計画に反対の意思を鮮明にしたので、それを受けて蒲島郁夫・熊本県知事が川辺川ダムの白紙撤回を表明しました。
いわば、矢上氏は2008年当時の川辺川ダム計画中止の立役者の一人でしたが、その人が今回、川辺川ダム容認に変わってしまったのです。
今年7月の球磨川水害では、球磨川・人吉の 7 月 4 日朝の状況について矢上氏がツィートで水の手橋を撮った録画を流しました。
https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2020/11/361f6d973f10e8d2b20ce0e5a6afa36b.pdf
その8 時 40 分の映像を見ると、球磨川の水位は水の手橋の路面を少し下回るレベルになっており、本洪水の規模を考える上で重要な情報を提供していると思います。
そのことはともかく、矢上氏が川辺川ダム容認に変わってしまったのは本当に残念です。
流水型ダムに「一定の理解」 矢上雅義衆院議員
(朝日新聞2020年12月23日
川辺川ダム計画再始動 走る国策、民意置き去り 熊本ルポ
静岡新聞の記者による球磨川水害問題のルポ記事を掲載します。問題の核心に迫る記事であると思います。
川辺川ダム計画再始動 走る国策、民意置き去り 熊本ルポ
(静岡新聞2020/12/24 18:24)https://www.at-s.com/news/article/special/sakura_ebi/006/845460.html
2020年7月3日夜から4日昼にかけて九州地方などを襲い熊本県で65人の死者を出した集中豪雨は、6千戸以上が浸水した球磨川流域を中心に今も深い爪痕を残す。被災を機に、半世紀以上前に球磨川水系最大の支流川辺川に国家プロジェクトとして計画されながら民意で12年間凍結されていた「川辺川ダム」計画が新たに流水型ダムとして再始動し、地元はまたもや国策に翻弄(ほんろう)されている。九州最大級のダム計画はいま、何を問い掛けるのか-。著しい堆砂が進み水害被害が起きている富士川上流部の日本軽金属雨畑ダム(山梨県早川町)の周辺集落などとも共通する課題を抱える流域を12月中旬、訪ねた。(「サクラエビ異変」取材班)
■命が助かるならば
(写真)JR肥薩線トンネルの上部(左奥)によじ登って“九死に一生”を得た老舗旅館「鶴之湯」の土山大典さん=12月中旬、熊本県八代市坂本町
ひしゃげた線路や河川内で大破した鉄橋、2階まで土砂にのみ込まれた住宅-。富士川や最上川(山形県)と並ぶ日本三大急流の球磨川本流を人吉市から球磨村、芦北町、八代市坂本町へと車で走ると、復旧ままならない被災状況が目に飛び込んでくる。穏やかな川は眼下の谷に水面を輝かせているが、高さ数メートルの木には濁流が運んだとみられる大量のごみが絡みついていた。
「川辺川ダムで命が助かるならば作ってほしい。でも、助かると思いますか」。球磨川沿いの八代市坂本町で1954年に創業した木造3階建ての老舗旅館「鶴之湯」。曽祖父が建てた宿を数年前に再生したものの、1階部分などを洪水で流され約1年の休業を余儀なくされている土山大典さん(38)は、川辺川ダムの是非を問われて半ばあきれ気味に答えた。7月4日早朝、急激な増水で胸まで水に漬かり、宿泊客1人とJR肥薩線のトンネル上部によじ登って“九死に一生”を得た。
国土交通省と熊本県は流域12市町が参加するわずか2回の検証委員会で、建設が中止された貯留型の川辺川ダムがあった場合の推計として「人吉市の浸水面積を約6割減らせた」などと結論付けた。蒲島郁夫知事は11月、2008年以降に自ら打ち出した“ダムなし治水”の方針を180度転換し、新たな流水型(穴あき)ダムを建設するよう国交省に要請した。
ただ、中下流の流域住民が被害拡大要因として強調しているのは球磨川本流にある瀬戸石ダムの存在だ。
(写真)2軒の商店があったという場所に供えられた花。建物ごと流された=12月中旬、熊本県球磨村のJR肥薩線球泉洞駅前
■「ある」ことが問題
1958年運転開始の瀬戸石ダムは、旧国策会社の電力大手「電源開発(Jパワー)」が所有する発電用重力式コンクリートダム。2018年3月に本格的コンクリートダムとして全国で初めて撤去された熊本県営荒瀬ダム(八代市坂本町)跡地の約10キロ上流にある。土砂の堆積でたびたび水害を発生させ、住民から撤去要請が続いている。2002年以降、国交省の定期検査で「ダムの安全性及び機能への影響が認められ、直ちに措置を講じる必要がある」とされるA判定を8回連続で受けた。
「当日の川辺川ダム上流の降雨はそれほどでもなかった。川辺川ダムが『ない』ことが問題なのではなく、瀬戸石ダムが『ある』ことが問題」。こう話すのは球磨川のダム問題に長年携わり、今回同行を依頼した自然観察会熊本県連絡会会長のつる詳子さん(71)=八代市=。土山さんは「荒瀬ダムが撤去されていたことが不幸中の幸い。あればもっと水位が上がっていたに違いない」と明かした。
(写真)発電機などの主要設備が被害を受けた瀬戸石ダム。洪水吐ゲートが全開されていた=12月中旬、球磨川
■流れる人を救えず
瀬戸石ダムから約12キロ上流のJR肥薩線球泉洞(きゅうせんどう)駅前には花が供えられていた。ここに2軒の商店が建っていたという。リバーガイドの溝口隼平さん(39)は「夜明けに人が屋根に乗って流されていくのを橋の上から目撃したが、なすすべがなかった」と唇をかんだ。
同じくダム上流の別の地点では、住宅が2階まで土砂に埋まっていた。地形上、堆砂が激しくこれまでもたびたび浸水してきた地区の近隣。住宅は県道から数メートルかさ上げしてあったらしいが、この水害は対応できなかった。
4日未明「過去に経験したことのない(水の)急激な流入量の増加」(電源開発8月12日発表『瀬戸石ダム・発電所の状況について』)で危機的だったとみられる瀬戸石ダム。午前7時までに洪水吐ゲートを全開し、ダム作業員が避難したことは同社が公表しているが、鶴之湯がある坂本地区をはじめとした下流に壊滅的な被害を及ぼした可能性のある放流操作が具体的にどう行われたかは「情報がなく分からない」(複数の住民)という。下流に増水を警告するアナウンスも、どの段階まで放送されたのか人によって認識が食い違うため検証しにくい状態が続いているという。
(写真)激しい水流で流されたJR肥薩線の瀬戸石駅。看板が転がっていた=12月中旬、熊本県八代市坂本町
■人間の行いが原因
「川辺川のアユが球磨川本流と比べても太く、味が濃く育つのは、ダムがなく日本一の清流だから。流水型であっても、ダムが濁りを生めばアユの味は落ちる」。洪水時のみに水をため、ダム本体下部の穴あき部分にゲートを取り付けて下流への放流量を操作する流水型は“環境にやさしい”イメージが先走りするが、川辺川で長年アユ漁を営む小鶴隆一郎さん(70)=人吉市=は先行きを見通せないでいる。「ダムだけでなく、集中豪雨をもたらす地球温暖化も、山の保水力を落とす乱伐も、元はと言えば人間の行い。自然との付き合い方を考えた方がいい」
瀬戸石ダムで何が起きたのか-。球磨川本流の上流に位置する熊本県営の多目的ダム「市房ダム」の放流の影響を指摘し川辺川ダムの効果や必要性を疑問視する住民もいる。ただ、水害を機に目覚めたダム建設という国家事業は流域の民意を置き去りに、一目散に走り始めている。
■紆余曲折 半世紀以上前から
富士川や最上川と並び日本三大急流と呼ばれる球磨川流域はこれまで何度も氾濫してきた。1965年には「五木の子守唄」で知られる五木村など流域が3年連続で大洪水に見舞われ、当時の建設省(現国土交通省)は翌年、川辺川ダムを建設する計画を発表した。
しかし、ダム湖に沈む地元は反発。住民と国との裁判闘争も行われるなか、90年代には下流域でも反対運動が強まりをみせ、「脱ダム」の世論が全国的にも盛り上がりをみせていった。そして、2008年9月、「現在の民意は球磨川を守っていくこと」とした蒲島郁夫知事が「白紙撤回」を表明。当時の民主党政権が09年に中止の方針を決めた。
蒲島知事は10年には球磨川本流にある県営荒瀬ダム(八代市坂本町)の撤去も最終判断。18年3月には本格的コンクリートダムとして全国初の完全撤去が完了。このまま「ダムによらない治水」を進めるかにみえた。
事態が大きく変わったのはことし7月の豪雨による氾濫だ。蒲島知事は11月、白紙撤回と同じ「民意」を引き合いに方針転換。ダム下部に穴あき部分(水路)を設ける「流水型」を国に提案することを表明し、10年以上の期間を経て、川辺川ダム建設計画は再び動き始めた。
地元五木村は08年のダム建設の白紙撤回を受け、水没予定地に村営の宿泊施設を建設した。新たな観光振興策を進めようとした矢先で、地元行政や住民は振り回されている。
■人吉市、相良村は建設反対4割 「賛成」上回る 被災住民アンケート
民間シンクタンクの「マイズソリューションズ」(東京都)と横浜国立大・及川敬貴研究室は11月、今夏の豪雨で被災した熊本県南部の球磨川流域で住民アンケートを実施した。川辺川ダム建設の賛否について、特に被害が大きかった人吉市と川辺川沿いの相良村では、「反対」が4割を占め、「賛成」の3割を上回る結果となった。
アンケートでは、多肢選択式で「川辺川ダムの建設について賛成か、反対か」と聞いた。2市村では「絶対に反対である」「どちらかといえば反対である」の合計が102人中42%(43人)を占めた。一方、「大いに賛成である」「どちらかといえば賛成である」の合計は30%(31人)にとどまった。
複数回答可で「反対」の理由を聞いたところ、「ダムによる自然環境への影響が大きすぎる」(84%)、「ダムには緊急放流の危険が伴う」(77%)―などが多かった。流域出身で同社代表の舛田陽介氏(35)は「大型観光旅館もある人吉市は渓流下りやアユ釣りなど川との関係が深い。『ダムでコントロールできるほど自然は単純ではない』と思っている人も多い」と話す。
アンケートでは、2市村以外の流域住民にも同様に質問した。被害が比較的少なかった八代市街地住民らを含めた307人が回答し、「賛成」が35%(107人)と「反対」の29%(89人)をやや上回る結果となった。ただ、「川辺川ダムの建設について、流域住民との議論・説明は十分になされていると感じるか」と聞いたところ、307人の回答者のうち69%(213人)が「全くもって不十分」「やや不十分」と回答した。
調査はインターネットを使って実施。「サクラエビ異変」のインタビューにも登場し、富士川水系の現状を知る及川敬貴同大大学院環境情報研究院教授と連携して実施した。
球磨川流域治水協議会の第2回会合の配布資料
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12月18日、「球磨川流域治水協議会」の第2回会合が開かれました。
その配布資料が国土交通省九州地方整備局のHPに掲載されました。下記の通りです。
球磨川流域治水協議会 第2回 令和2年12月18日開催
http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/river/r0207_ryuikitisui_gouukensho/index.html
【議事次第、出席者名簿、座席表、規約(案)、資料1、資料2(1/2)、資料2(2/2)、資料3、参考資料1、参考資料2】
気になるところを下記に転記しておきます。
治水対策はゲート付き流水型の川辺川ダムの建設がメインになっています。
私は今後の治水対策として最も重要であるのは球磨川の本川および支川の河道掘削であると思いますが、河道掘削は小規模なものにとどめられています。
対策の考え方及び目標 資料1 4ページ
◇対策の目標
・治水対策において目標とする流量は、再度災害防止の観点から令和2年7月洪水流量とする。
(人吉:7,900m3/s、横石:12,600m3/s)
◇対策の考え方
・今次洪水は、球磨川において現行の治水計画の目標としている河川整備基本方針において定めた基本高水のピーク流量(人吉:7,000m3/s、横石:,900m3/s)を上回る洪水であったことから、球磨川におけるこれまで積み上げてきた治水対策の検討内容も踏まえ、「令和2年7月球磨川豪雨検証委員会」を開催し、今次洪水に対する検証を行った結果、各種治水対策を行っても全ての被害を防ぐことはできないことを確認した。
川辺川ダム
資料2(2/2) 86ページ
資料2(1/2) 12ページ
堆積土砂の掘削について(国管理区間)
堆積土砂量:約125万m3(推定)
撤去中(契約中):約35万m3
撤去済::約 3万m3
資料2(1/2) 13ページ
堆積土砂の掘削について(熊本県管理区間:権限代行分)
堆積土砂量:約20万m3(推定)
撤去中(契約中) :約15万m3
撤去済:約 5万m3
河道掘削
資料2(1/2) 17ページ
河道掘削の考え方
(中下流部):環境面、景観等に配慮した平水位(平常時の水面相当)以上の掘削
名前がついた瀬・淵・岩等が消滅することがないように配慮した掘削
(人吉地区):環境面、景観等に配慮した平水位(平常時の水面相当)以上の掘削
人吉層の掘削を行わない
熊本、球磨川治水 国内最大規模の「流水型ダム」提案
12月18日、「球磨川流域治水協議会」の第2回会合が開かれ、国交省は川辺川ダムを軸とする治水案を提示しました。その記事を掲載します。
治水対策のメニューにはいろいろと書いてありますが、ゲート付き流水型ダムの川辺川ダムを建設することがメインになっています。
熊本、球磨川治水 国内最大規模の「流水型ダム」提案
(西日本新聞 2020/12/19 6:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/674870/
7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川流域の治水策として、国土交通省九州地方整備局は18日、支流・川辺川への流水型ダム建設を含む素案を公表した。既存ダムの再開発や遊水地整備などを組み合わせた「流域治水」を実現することで、次に熊本豪雨級の雨が降った場合、大規模氾濫が発生した熊本県人吉市付近では、堤防の越水を防ぐほどの水位低減効果があるとする試算も明らかにした。
素案は、県と流域12市町村などでつくる流域治水協議会で提示した。遊水地の整備範囲を、球磨川上流部や人吉市を流れる支流付近に設定。球磨村などの山間狭窄(きょうさく)部では河道の掘削・拡幅に加え、道路や宅地のかさ上げなどの対策を盛り込んだ。その上で、九地整は流水型ダム案の具体化に向けた地質調査や環境調査、構造の検討などに「速やかに着手する」と表明した。
また、熊本豪雨における人吉市付近のピーク時の流量毎秒7400トンに基づき、対策の効果を試算。流水型ダムで同2600トン、県営市房ダムの再開発で同200トン、遊水地で同300トンを貯水するなどして、最下流の八代市平野部や人吉市などでは越水を防ぐほどの効果がある一方で、狭窄部の八代市坂本町や球磨村付近での氾濫は完全に防げないという。
出席した首長からは「時間がかかる環境アセスメントをする必要があるのか」など、治水対策を急ぐよう求める意見もあった。
九地整は次回会合で、田んぼダムやため池の利用、土地の利用制限、避難対策など河川以外の対策案を提示する。流域治水の全体計画は来年3月に策定予定。 (古川努)
周辺環境に及ぼす影響未知数
球磨川流域の治水対策の一つである支流・川辺川へのダム計画で、国土交通省が素案で示した「流水型」は同形態としては国内最大になる。常に水をためる「貯留型」に比べて環境負荷は少ないとされるが、前例のない規模だけに周辺環境に及ぼす影響は未知数。国交省は熊本県の意向に沿い、環境影響評価(アセスメント)などの実施に前向きだが、法定通りに行う場合は最長5年近くを要することもあり、事業スケジュールを左右しそうだ。
1999年施行のアセス法に基づけば、国交省は本体着工に必要な河川整備計画を策定する際に、環境影響を調べる必要がある。主に(1)環境面で配慮すべき事項(水質や生態系、地質など)の検討(2)調査方法の決定・実施(3)結果-を各段階で公表し、住民からも意見を募る。知事は市町村長の意向を踏まえて意見を出せるほか、環境省も内容に問題がないかチェックする。
国交省が今回提示したダム案では、大雨時に洪水調節でたまる容量は1億600万立方メートル。国内最大の益田川ダム(島根県)など既存の流水型5基の72万~650万立方メートルを大きく超え、建設中の足羽川ダム(福井県・2820万立方メートル)の3倍以上ある。既存の流水型ダムは参考にしづらい面があり、「ダムの堤体が厚く、放流口が長いため、魚が遡上(そじょう)しにくくなる」など生態系への影響に対する専門家の懸念も根強い。
従来の川辺川ダム計画が発表された66年にはアセス制度はなく、旧建設省は独自に環境調査した結果を2000年に公表。専用設備によって貯水池の水質を保全し、下流への影響は軽減可能-などとした。
熊本県の蒲島郁夫知事は流水型ダムについて「客観的かつ科学的な環境への影響評価が必要」とし、アセス法に基づく調査または同等の調査を要望し、国交省も必要性を認めている。「時間を要しても厳密に法定通り行う」「法に準じながら過去の環境調査も参考にし、一部手順を省略する」などの選択肢が想定され、環境省と協議するとみられる。 (大坪拓也)
川辺川ダム「流水型にゲート」 国交省提示、放流量を調節可能に
(熊本日日新聞2020/12/19 08:43) https://www.47news.jp/localnews/5622593.html
7月豪雨で氾濫した球磨川の治水対策に関し、国土交通省は18日、熊本県の蒲島郁夫知事が支流・川辺川への建設を要請した治水専用の流水型(穴あき)ダムについて、放流量が調節できるゲート付きとする案を県や流域12市町村でつくる流域治水協議会の第2回会合で提示した。流水型ダムは、現行の川辺川ダム(貯水容量1億600万トン)の規模を維持した場合の治水効果(試算)を示した。実現すれば国内最大となる。
流水型ダムは、洪水時のみに水をため、平時はためない構造。本体下部の穴あき部分にゲートを取り付ければ下流への放流量を操作できる。一方、ダムの規模について同省は「建設場所を含めて検討中」と説明した。
流水型ダム建設と合わせて県が実施を求めている環境影響評価(アセスメント)について、国交省は同協議会に「追加して必要となる環境調査や環境保全措置を検討する」と報告した。
この日の会合では、ハード・ソフト両面の対策を総動員し、7月豪雨の最大流量(人吉地点で毎秒7900トン)に対応できる治水対策を目標とすることを確認した。目標値は、人吉地点で7千トンとした国の「河川整備基本方針」(2007年策定)を上回った。
国交省は、7月豪雨の流量に対し、新たな対策を実施した場合の水位低減効果の試算も公表した。人吉地点(7900トン)では流水型ダムで2600トン、既存の県営市房ダムで500トンをカット。さらに市房ダムに放流口を増設し、貯水容量を増やす改良で200トン、遊水地整備で300トンを削減し、4300トンまで減らせるとした。
河道掘削や引き堤を加えると、人吉地区の水位は概ね堤防の高さを数十センチから2メートル下回るとした。ただ、中流域の八代市坂本町付近では堤防を最大1メートル越える地点もあった。
国交省と県はこの日提案された治水対策メニューについて、河川工学など専門家から意見を聴く場を23日に設ける。来年の梅雨時期に備えて直ちに実施する「緊急治水対策」を年明けに公表した上で、流域全体で推進する「球磨川流域治水プロジェクト」を年度内にまとめる方針。(高宗亮輔)
川辺川ダム、開閉式のゲート備えた流水型に 国交省が案
(朝日新聞2020年12月18日 21時42分)
川辺川に流水型ダム建設、国が提案 熊本県知事「速やかな対応を」
(毎日新聞2020年12月18日 20時21分) https://mainichi.jp/articles/20201218/k00/00m/040/310000c
(写真)熊本県のあさぎり町、多良木町などにまたがって田畑が広がる球磨川流域=2020年11月17日午前10時50分、本社ヘリから津村豊和撮影
7月の九州豪雨で氾濫した球磨川の治水対策として、国土交通省は18日、従来の川辺川ダム計画の貯水規模を維持した治水専用の流水型ダムを建設する案を、熊本県や流域の12市町村に示した。実現すれば流水型ダムとしては国内最大となる。2009年に旧民主党政権が計画を中止した後、国はダムによらない治水を検討してきたが、九州豪雨後に蒲島郁夫知事がダム容認に転じたのを受け、11年ぶりにダムによる治水に回帰した。
18日に熊本県庁であった「球磨川流域治水協議会」の第2回会合で、国交省はダムを軸に遊水地や河川掘削などを組み合わせて氾濫を抑止する流域治水の案を提示した。蒲島知事は「必要な予算措置を含めて、速やかな対応をお願いしたい」と支持し、市町村からも異論は出なかった。国交省は今後、有識者から意見を聞くなどして具体的検討に入り、年度内に治水策を決める。
国交省案は、貯水型の多目的ダムから水をためない流水型ダムに変える。その上で不要になる農業や発電の利水容量をすべて治水に活用することで、洪水調節容量は従来計画に比べ少なくとも約1・2倍の1億600万トンになるとした。国交省の担当者は会合で「(従来計画の容量を)最大限活用する観点で考えたもの」と説明した。国交省は豪雨後、仮に川辺川ダムがあれば人吉地区の浸水面積が6割減らせたが、球磨川の氾濫自体は防げなかったとの推計を示していた。
国交省案ではまた、ダム本体にゲート付きの水路を設置。ゲートを開閉することで放水量を調整し、豪雨時に水をためられるようにする。国交省は流水型であれば水質を維持しやすく、魚の遡上(そじょう)など河川の連続性を確保しやすいと強調した。一方、蒲島知事が求めている環境影響評価(アセスメント)を実施するかどうかについては明言を避け、ダムの完成時期のめどや概算事業費も示さなかった。【城島勇人、平川昌範】
2020くまもとこの1年「4」川辺川ダム流水型建設へ方針転換
川辺川ダム問題についてテレビ熊本の配信記事を掲載します。
「完成から14年が経過した益田川ダムですが、ダム完成後、ダムが満たされるほどの大雨は一度も降っておらず、現時点で治水面でどのような効果をもたらすのかまだ検証できていません。 また、そもそも計画されていた川辺川ダムは、堤の高さが108メートルと益田川ダムの2倍以上、これほどの規模の流水型ダムが建設された例は全国でもまだないのです。
また、島根県が行った環境調査では、ダムの下流側、上流側にそれぞれにアユの食み跡が確認されたものの、食み跡は下流側に比べて上流側は少なく、ダムがアユ遡上の阻害要因の一つと考えられています。」
は重要な指摘であると思います。
2020くまもとこの1年「4」川辺川ダム流水型建設へ方針転換
(テレビ熊本2020/12/17(木) 18:55)https://news.yahoo.co.jp/articles/32036d42a76b37d2bb8c88f2a05c974efd25a15a
『2020くまもとこの一年』、
17日は、再燃した川辺川ダム問題です。 蒲島知事は、12年前の白紙撤回から方針転換し新たな流水型のダム建設を国に求めると表明しました。 流水型ダムとはどのようなものか、島根県のダムを訪ねました。 11月19日、蒲島知事は議会で大きな決断を表明します。
【蒲島知事】
「私はここに、貯留型特定多目的ダム法に基づく現行の川辺川ダム計画の完全な廃止を国に求めます。その上で」
「新たな流水型のダムを国に求めることを表明いたします」
計画発表から54年が経過した川辺川ダム計画の廃止と、新たな流水型ダムの建設を国に求めるというものでした。
【蒲島知事ON】
「命と環境、これを守ること」 「それを考えたときに流水型の洪水調整機能、そして流水型でありますから環境への負荷がとても最少化できる。この両方守るために新しい形のダムをお願いした」
流水型ダムは、命と環境の両方を守る切り札となるのか、本格的な流水型ダムとしては国内で初めて建設された島根県の益田川ダムを訪ねました。
【郡司&島根県益田県土整備事務所 管理第二課 井下 和壽課長】
「近づいてみると、その大きさというのが分かりますよね」
「そうですね、上から見られるのと比べて迫力の方は違うかと思います」
「ここのダムは一番ダムの下側に『洪水吐』という穴が開いておりまして上流から流れてきた水は、そのまま下流の方へ流れているということで 水をためないようになっております」
「貯留型のダムであれば、私たちが今立っているこの場所は水没している可能性が…」
「そうですね、おそらく通常の貯留型ダムであれば、ここらあたりは平常時から水没している高さになると思われますね」
流水型ダムの最大の特徴は、通常ダムの中上部にある水を通すための穴『常用洪水吐』が川底にあること。 平常時は川の流れを妨げません。 穴の高さは3.4メートルと大人の身長の2倍ほどです。 大雨の際は、この2つの穴で流れきれない分が自然とたまり、下流の流量を抑えます。 もし満水になれば上の穴から水が落ちていくため、人為的な、いわゆる緊急放流を行うことはありません。
島根県西部に位置する益田市は、益田川の氾濫による水害に見舞われ、特に昭和58年、1983年の水害では死者39人という未曽有の被害となりました。 益田川ダムは当初、利水も兼ねた多目的ダムとして計画されました。 しかし水没地域で反対運動が起きたため、上流にある農地防災用の笹倉ダムを利水ダムに改修。 益田川ダムは治水専用のダムに計画変更。 また、流水型にすることで砂の堆積がなくなり、高さを下げることで水没地域を減らし2006年に完成しました。 益田川ダムでは、流水型ならではの特徴がいくつかあります。
【郡司&井下さん】
「こちらは何になるんですかね」
「これは『流木捕捉工』と申しまして、洪水が発生するときには上流の方で土砂崩れとかによって木が倒れて、それが流れてくる場合があるんですが、そういった木を構造物でせき止めるとダムの『洪水吐』穴の方に向かって大きな木が流れていかないように止める構造物になっています」 また益田川ダムの2キロほど上流にも。
【郡司&井下さん】
「ここはどういった施設になるんでしょうか」
「ここはグラウンドゴルフ場ですね」
「満水になるくらいの大雨になった場合はここは水没してしまうと」
「そうなります」
「それを前提にして、利活用が図られているということなんですか」
「はいそうです」
しかし、いくつか気になる点もあります。 完成から14年が経過した益田川ダムですが、ダム完成後、ダムが満たされるほどの大雨は一度も降っておらず、現時点で治水面でどのような効果をもたらすのかまだ検証できていません。 また、そもそも計画されていた川辺川ダムは、堤の高さが108メートルと益田川ダムの2倍以上、これほどの規模の流水型ダムが建設された例は全国でもまだないのです。
また、島根県が行った環境調査では、ダムの下流側、上流側にそれぞれにアユの食み跡が確認されたものの、食み跡は下流側に比べて上流側は少なく、ダムがアユ遡上の阻害要因の一つと考えられています。
蒲島知事は、川辺川に建設を要請した新たなダムについて来年3月までに完成までの全体像を示すとしています。
【郡司】
「今後ダム本体着工まで時間がかかることが予想される中で再び民意が『ダムではない』と『流水型でも造ってほしくないんだ』というような民意になった場合には、再度の方針転換というのは有りうるのか。それとも11月の判断が最後の判断だとお考えなんでしょうか?」
【蒲島知事ON】 「この判断についてこれ以上の判断はないと自分で考えておりますので(方針転換は)ないと思います」 (少なくとも知事自身が今後判断を変えることはない?) 「わたくしはありません」