川辺川ダムの情報
熊本日日新聞による<おさらい川辺川ダム>㊤、㊥、㊦
熊本日日新聞による<おさらい川辺川ダム>㊤、㊥、㊦を掲載します。
国と熊本県は川辺川ダム計画復活の方向で動きつつありますが、㊥の記事を読むと、その復活は手続きの面でも容易なことではないことが分かります。
川辺川ダム無しの治水対策を考えるべきだと思います。
そして、㊦の記事が指摘しているように、川辺川ダムをめぐる現在の議論の主体は国、県と流域市町村であり、市民団体が同じテーブルにつく機会はまったくなくなりました。
2000年代はそうではなく、「川辺川ダムを考える住民討論集会」で国土交通省と住民側が公開の場で徹底した討論を行いました。そのような場が再び設けられなければなりません。
「多目的」計画 消えた「利水」「発電」<おさらい川辺川ダム㊤>
(熊本日日新聞2020年10月27日 09:31) https://kumanichi.com/feature/kawatotomoni/1656357/
(写真)第2回球磨川豪雨検証委員会の会合後、記者に囲まれ質問に答える蒲島郁夫知事=6日、県庁(高見伸)
国、熊本県と球磨川流域12市町村が、7月豪雨で氾濫した球磨川の治水対策を検討する「流域治水協議会」が27日始まる。検討に当たり蒲島郁夫知事は、川辺川ダムを治水の選択肢に含めると表明した。ただ、同ダム建設は、知事自らが12年前の2008年9月、県議会で「白紙撤回」を表明した事業。ならば今、そのダム計画はどうなっているのだろう。改めておさらいする。
今月6日、県庁で開かれた7月豪雨災害の検証委員会。国土交通省は「川辺川ダムが存在していたら、人吉市の浸水面積は約6割減っていた」-などとする推定結果を資料を交えて説明した。
しかし、そこで示された資料に首をかしげた人も少なくなかったろう。洪水調節の役割などを定めた川辺川ダムの「目的」の項目にはこんな記載があったからだ。
・かんがい用水の確保 【撤退表明】
・発電【撤退表明】
撤退表明とはさて、どういうことか。
「さまざまな経緯がありまして…平成19年(07年)1月、ダムを水源とした利水計画を取りまとめることはない、と国交省に説明しました」というのが、農水省・九州農政局(熊本市)の説明だ。
川辺川ダムからパイプラインで水を引き、球磨川右岸の3千ヘクタール以上に農業用水を届ける計画だった「国営川辺川総合土地改良事業」。現在は、計画の主柱である利水事業を廃止した上で、完成済みの一部パイプの撤去や配水施設の売却など残務処理を進める。「順調に行けば来年度、国営事業の完了公告を官報に掲載できる」(農政局水利整備課)
“さまざまな経緯”の最大の出来事が03年5月、福岡高裁で国の敗訴が確定した利水訴訟だ。事業計画変更の手続きに不備があるとして多くの地元農家が提訴。高裁は同意署名が法定数に満たないと認め、計画変更は無効と判断した。その後、農水省と地元の協議を経て、ダムの目的の一つだった「かんがい用水の確保」(利水)は失われた。
次に「発電」。基本計画では電源開発(Jパワー・東京)がダムから取水して水力発電所を設けることになっていた。ところが07年6月、同社は国交省の九州地方整備局(福岡市)に、ダム建設の見通しが立たないため、発電事業への参画を断念すると回答。発電もダムの目的から消えた。
こうして多目的ダムである川辺川ダムの現計画は、主目的の二つを失った。残る目的は「洪水調節」「流水の正常な機能の維持」(渇水対応)だけ。実態は、08年に蒲島知事が「白紙撤回」を表明するより前に、そのままでは着工困難な状況に陥っていたことになる。
それだけに12年後の今、おびただしい犠牲者を出した水害後の治水を検討する場に、「利水」「発電」を抱えたままの古い計画が持ち出される風景は、何とも奇妙に映る。(宮下和也)
「穴あき」案 着工は?工期は?アセスは?<おさらい川辺川ダム㊥>
(熊本日日新聞2020年10月28日 09:26)https://kumanichi.com/feature/kawatotomoni/1657418/
(写真)蒲島郁夫知事(左手前)に今後の復旧・復興のあり方について要望する参加者=22日、球磨村(小山智史)
2008年8月、国土交通省・九州地方整備局は、それまで堤体が川をせき止める貯水型ダム(多目的ダム)として計画されてきた川辺川ダムについて、初めて「穴あきダム(流水型ダム)」の可能性に言及した。
穴あきダムとは、堤体の下部に穴があり、通常は水や土砂をためない治水専用のダム。洪水時には水がたまり流量を一定以下に調節する。国土交通省によれば、貯水型より自然の川の流れに近いとされる。熊本県内では建設中の立野ダム(南阿蘇村・大津町)がある。
蒲島郁夫知事が川辺川ダムの「白紙撤回」を表明したのは直後の9月だった。このため国交省の“方針転換”にはさまざまな見方もされたが、その時点で事実上、多目的ダムの建設目的のうち、「利水」「発電」の二つが消滅していた。治水専用ダムへの言及はある意味で当然だったかもしれない。
しかし、だとすれば今回、蒲島知事が選択肢に含めた「川辺川ダム」は、一体いつ着工していつ完成するのか。それは多目的ダムなのか。それとも治水専用ダムか。治水専用にした場合、特定多目的ダム法(特ダム法)に基づき進められてきた川辺川ダム事業は、大きな変更を迫られることになるのか-。
国交省の水管理・国土保全局治水課は、川辺川ダム事業が08年にストップした後も、水没地域の五木村の生活再建事業は持続しており、「川辺川ダムは他のダム事業とは異質なかたちで進んでいる」と説明する。穴あきダムへの転換など、今後の計画変更の可能性や根拠法も含め、「どういう形になるのかはまだ検討できていない」。
もう一つ気になることがある。環境影響評価(アセスメント)。ダムや発電所など大規模開発による環境への悪影響を防ぐため、事前に事業者が調査して対策を反映させる制度だが、川辺川ダムでは一度も実施されたことがない。旧建設省は1998年、川辺川ダム基本計画の変更を告示した。建設に賛否がある中、アセスの是非も議論になったが、当初計画がアセスメント法の施行前であることから実施されなかった。
それから20年余り。県の幹部はアセスメントの必要性について、「国は必要ないと言うかもしれないが、県はそれではもたない」と打ち明けた。アセスメントの実施には3年程度が必要と言われ、工期に直結する。
加えてダム建設には、球磨川漁協との漁業補償協定の締結が不可欠だ。過去の交渉では、国交省が一度は漁業権の強制収用を申請するほどの高いハードルだった(後に取り下げ)。
こうして見ると、仮に県や流域自治体が年内に川辺川ダム建設を決めたとしても、すぐに着工できるような状況には程遠い。「ダム論議の前に、安心して住める場所の確保を急いで」(22日、球磨村の意見聴取)。被災者の切実な訴えに対し、国、県、流域自治体の対応は、かみ合っていると言えるだろうか。(宮下和也)
「民意」どう問う 討論集会後、消えた対話<おさらい川辺川ダム㊦>
(熊本日日新聞2020年10月29日 09:52)https://kumanichi.com/feature/kawatotomoni/1658587/
2001年12月9日、相良村総合体育館で初めて開かれた「川辺川ダム」を考える住民大集会。約3000人が参加した
12年前の2008年、川辺川ダムの白紙撤回を表明した蒲島郁夫熊本県知事。当時、その理由を「現在の民意はダムによらない治水を追求し、今ある球磨川を守っていくことを選択している」と述べた。
そして現在。7月豪雨の深刻な被害を受け、県は改めて川辺川ダムを選択肢に含めた上で、球磨川の新たな治水方針を取りまとめるという。蒲島知事は記者会見で、この新方針について、「民意を問うことになる」と表明した。
民意を巡っては8月の「くまもと復旧・復興有識者会議」で、東京大大学院の谷口将紀教授がこう提言した。「あらゆる情報を十分に吟味した上で住民はどう判断するか。少なくとも科学的で中立的な世論調査、できれば住民投票なり、討論型世論調査なりで民意を見極めて」
重要政策の民意を探る手法として、近年注目されているのが討論型世論調査。一回限りの意見を調べるだけでなく、調査対象者に十分な資料や情報を提供、討論を重ねた後に再調査し、意見や態度の変化を見る。
確かに、川辺川ダムのように長く複雑な経緯を持つ問題で、民意を見極めるのはそう簡単ではない。県南だけでも数十万人の意見は多様であり、一枚のトランプのように、くるりとひっくり返るわけでもない。ただ、有識者会議がこのほどまとめた提言は、民意の重要性は指摘したが、見極めの具体的な手法には触れなかった。
08年当時の民意は、どのように見極められたのだろう。今と決定的に異なるのは、潮谷義子前知事の時代、01年から計9回にわたり開かれた「川辺川ダムを考える住民討論集会」の存在だ。
01年12月、相良村であった初回には約3000人が参加。ダム事業を推進する国土交通省と、反対派の研究者や住民らが約7時間、激論を交わした。
9回の開催中、賛否は最後まで平行線だった。だが、集会への参加や報道を通じ、住民に多くの資料と情報が提供されたことは間違いない。東京大教授だった蒲島氏に学び、潮谷県政を研究した中條美和・津田塾大准教授は、住民討論集会について「広く県民の前に(川辺川ダム)問題を顕示し政治問題化した」と分析している。(『知事が政治家になるとき』木鐸社)
「08年までは対話形式の議論があった。今、一番違うのは、流域の意見聴取が帳面消しのように進んでいる点だ」と「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」の中島康代表。
県民の会など市民団体は川辺川ダムに一貫して反対、討論集会にも出席して論陣を張った。だが08年以降は風向きが変わる。10年以上続いたダムによらない治水対策も、7月水害の検証委員会も、議論の主体は国、県と流域市町村。市民団体が同じテーブルにつく機会はなくなった。
県は今月13日、流域住民や団体の意見聴取の会を翌々日から始めると発表した。矢継ぎ早に日程が追加され、計20回を超える。
「民意」は急ぎ足で吸い上げられていくのだろうか。(宮下和也)
川辺川ダム 賛成29% 反対34% 豪雨被害の球磨川流域住民 建設に慎重論
共同通信が球磨川流域住民300人に川辺川ダム建設の是非をアンケートした結果についての記事を掲載します。
自宅や営む事業所が被災した180人のうち、反対は計37%(67人)、賛成は計26%(47人)、
一方、被災していない残る120人のうち、反対は計30%(36人)、賛成は計33%(40人)で、
被災者の方がダムは不要と回答した割合が高いという結果が得られました。
川辺川ダム 賛成29% 反対34% 豪雨被害の球磨川流域住民 建設に慎重論
(毎日新聞2020年10月29日 西部朝刊)https://mainichi.jp/articles/20201029/ddp/041/040/007000c
7月の豪雨で氾濫した熊本県・球磨川の治水策に関し、共同通信が流域住民300人に支流での川辺川ダム建設の是非をアンケートした結果、「不要」「やや不要」の反対意見を選んだ人は計34%(103人)で、「必要」「やや必要」の賛成計29%(87人)を上回った。
「どちらとも言えない」は37%(110人)。300人のうち豪雨による被災者が180人いたが、同様の傾向だった。流域市町村の首長がダムを柱とした治水策を求める中、住民間では慎重論が根強く、賛否も拮抗(きっこう)していることが浮き彫りになった。
アンケートは、浸水被害が出た人吉市や球磨村など7市町村で10~23日、対面形式により20~90代の住民に実施した。
熊本県の蒲島郁夫知事は2008年、ダム建設に反対を表明、翌年に民主党政権が中止の方針を決めたが、豪雨後に建設の是非を巡る議論が再燃した。
生活再建を急ぐ蒲島氏は、復興計画の前提となる治水の方向性を年内に示す方針。アンケート結果に関し、蒲島氏は28日、取材に「流域の生命財産と清流の恵み、両方を最大限守れる対策を講じたい」と述べた。
反対意見の内訳は「不要」78人、「やや不要」25人。記述式で理由を尋ねたところ「清流を守りたい」「ダムでは被害を防ぎきれない」との声が目立った。
賛成意見のうち「必要」は46人、「やや必要」は41人。「ダムがあれば水量を調整できる」「氾濫が怖い」という声が多かった。6割超に当たる56人は「豪雨後に必要性を感じるようになった」と回答。豪雨を経験し、賛成に転じた人が一定数いたことも判明した。
「どちらとも言えない」と答えた人は「ダムに翻弄(ほんろう)された歴史があり賛否は示せない」「ダム以外の対策も講じるべきだ」などを理由に挙げた。
自宅や営む事業所が被災した180人のうち反対は計37%(67人)、賛成は計26%(47人)。被災していない残る120人のうち、反対は計30%(36人)、賛成は計33%(40人)で、被災者の方がダムは不要と回答した割合が高かった。
7市町村は八代市、人吉市、芦北町、錦町、相良村、球磨村、あさぎり町で、7市町村の人口は計20万1443人(10月1日現在)。八代市は被害が甚大だった坂本町地区で調査した。
「川まで奪わないで」人吉市ではダム反対多数 熊本知事の意見聴取会
7月の豪雨で氾濫した球磨川の治水について蒲島郁夫・熊本県知事が被災地住民から意見を聴く会が人吉市で開かれました。その記事とニュースを掲載します。
多くの方が「川辺川は宝」であるとしてダムに反対し、清流への愛情と行政への不信感が浮き彫りになりました。
川辺川ダム推進の流れが変わることを願うばかりです。
「川まで奪わないで」人吉市ではダム反対多数 熊本知事の意見聴取会
(西日本新聞2020/10/25 6:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/657698/
(写真)球磨川が氾濫し、多くの民家などが被害を受けた熊本県人吉市=7月4日、西日本新聞社ヘリから
7月豪雨後の治水策に民意を反映させるため、熊本県の蒲島郁夫知事が球磨川流域で開いている意見聴取会が24日、同県人吉市であり、計約100人が参加した。豪雨による犠牲者20人、家屋被害3千戸と最大の被災地であり、是非論が再燃している川辺川ダムによる治水の最大受益地とされるが、多くはダムに反対した。「川辺川は宝」。清流への愛情と行政への不信感が浮き彫りになった。
「知事さん、ダムを造らないで」。地元で生まれ育った木本千景(ちひろ)さん(34)は切々と訴えた。川辺川は遊び場であり、アユ漁や川下りができる観光資源であり、古里の原風景。学生だった2008年、ダム建設を「白紙撤回」した蒲島氏のニュースを東京で見て「うれしくて泣いた。だから、ここに戻って子育てし、幸せな生活を送っています」。川遊びする長男(4)の写真を蒲島氏に向けた。
「多くを失った被災者から川まで奪わないで」。他の参加者の反対意見にも川への深い愛情がにじんだ。
ダムへの拒否反応も強い。「ヘドロが増えた」「臭い」などとやり玉に挙がったのは球磨川上流の県営市房ダムだ。7月豪雨時には防災効果を発揮したが「今回の水害は市房ダムの放流が原因という声が多い」との意見も出た。「川辺川ダムが存在すれば人吉市の浸水範囲は6割減った」という国の検証結果についても、複数の市民が「信用できない」と述べた。
蒲島氏は会合後、報道陣に対し、ダム反対論の多さに関して「不信感の強さを感じた。丁寧に説明すべきだと感じた」と話した。
(古川努、中村太郎)
ダムめぐり慎重な検討求める声相次ぐ 熊本
(朝日新聞2020年10月25日 10時00分)
ダム建設巡り賛否交錯 熊本県が人吉市で意見を聴く会
(熊本日日新聞2020/10/25 09:00) https://this.kiji.is/692885624023450721?c=39546741839462401
(写真)蒲島郁夫知事(手前左)に球磨川治水に対する意見を述べる出席者ら=24日、人吉市
7月豪雨で氾濫した球磨川の治水対策などについて、熊本県の蒲島郁夫知事は24日、20人が犠牲となり甚大な被害が出た人吉市の住民から意見を聴いた。川辺川ダム建設を巡っては賛否が交錯。住民に建設の賛成、反対を問う住民投票の実施を求める声も上がった。
同市内2カ所で計3回、104人から意見を聴いた。球磨地域振興局であった2回の会合には、各町内会長や被災者らが参加。同市城本町の城本雄二町内会長は、町内の9割を超える住民が建設を求めているとして「漠然と球磨川を再生したいと考えている人は誰一人いない。ダムがあれば、避難する時間は稼げる」と述べ、ダム建設に賛成した。
同市南泉田町のラフティングガイド、木本千景さん(34)は「美しい川辺川が残っている地元で子育てをしたいと思い帰郷した。ダムを造ったら川は死ぬ」と涙ながらに訴えた。球磨村に住んでいた親族の川口豊美さん(73)と牛嶋滿子さん(78)を亡くした北願成寺町内会長の岡田昭範さん(75)も「2人は『かさ上げしたので安全だ』と言われていた場所で流されてしまった。ダムを造っても災害は防げない」と建設に反対した。
治水対策の結論を急ぐ県の方針に、苦言を呈する声も。自宅が全壊した同市下薩摩瀬町の元小学校教師林通親さん(71)は「被災者は日常を取り戻すのに必死で、ダムについて落ち着いて考える状況にない」と述べた。
同市下原田町の中原コミュニティセンターでは、複数の町内会長からダム建設賛成の声が上がった。その一方で、今回の水害で甚大な被害が出た同市中神町大柿地区の農業、尾方和敏さん(72)は「私たちは被害を受けてもダムには反対。ダムは必要ない」と断言。中原小PTA会長の隈部圭二さん(50)は「ダム問題をわが子の世代まで残したくない。住民投票などで総意をまとめ、新たなスタートを切るべきではないか」と提案した。
終了後、蒲島知事は「ダムへの考え方には多面性があると感じた。意見聴取を重ね、しっかり分析した上で治水の方向性を考えたい」と述べた。(内田裕之、澤本麻里子、小山智史、吉田紳一)
人吉市で被災住民の意見を聴く会
( テレビ熊本TKU 2020.10.24 17:32)
(映像)
球磨川の治水をめぐり県が行っている被災地住民から意見を聴く会、24日は人吉市で開かれました。
会では集まった住民を前に、まず県側が今回の被害について人吉市では約518ヘクタール4681戸が浸水したこと、そして仮に川辺川ダムが存在した場合、人吉市では今回の洪水のピーク水位より約2メートル低下するなど効果が推定される一方、すべての被害を防ぐことはできなかったなどとするこれまでの検証結果を説明しました。
24日の参加は合わせて約90人、ダムへの賛否を含め「来年災害がないとは限らない。ダムを含めた治水をしっかり考えてほしい。まずは命を守っていただいて、それから環境を考えてほしい」や「2008年に白紙撤回のときは東京でテレビで見ていて、うれしくて声をあげて泣きました。それがあったから戻ってきて今幸せな生活をしています。知事には作らないでほしいです」などさまざまな声があがりました。
蒲島知事はここでの意見などを踏まえ、年内のできるだけ早い時期に治水対策の方向性を示すとしています。
人吉市で球磨川治水会議が開かれる
(RKK熊本放送2020/10/24(土) 17:54配信)https://news.yahoo.co.jp/articles/dd370e9db283e5fe7d4d75d7d25e9c8777799158
(映像)
7月の豪雨で氾濫した球磨川の治水について蒲島知事が住民から直接、意見を聴く会が人吉市で開かれました。
「わが家も床上浸水1メートルで堤防を2メートル超えた水量が流れてきている。怖かった思いです」(参加した住民)「被災した人々の生活支援をお願いしたい」(参加した住民)
会議には地元の町内会長などおよそ30人が出席しました。参加した人からはダム建設を望む声や河床掘削や堤防の強化などダムによらない治水を求めるものなどさまざまな意見が出されました。
いっぽうで「ダムの是非について対立を続けるより住民投票を行ってでも白黒つけてほしい」とダム問題の再燃を憂慮する声もありました。午後からも人吉市の球磨地域振興局で住民から意見を聴く会が開かれました。
川辺川ダム建設に賛否 熊本知事が人吉市民に意見聴取 住民投票求める声も
(毎日新聞2020年10月24日 19時38分) https://mainichi.jp/articles/20201024/k00/00m/040/212000c
(写真)水害時の避難のあり方などについて熊本県の蒲島郁夫知事(奥)に意見を述べる住民(手前)=熊本県人吉市の中原コミュニティセンターで2020年10月24日午前11時9分、清水晃平撮影
7月の九州豪雨で氾濫した熊本県南部の球磨川の治水対策について、蒲島郁夫知事が流域住民の意見を聴取する会が24日、自治体として最大規模の浸水被害を受けた人吉市であり、焦点の川辺川ダム建設への賛否は分かれた。蒲島知事が2008年に川辺川ダム建設の「白紙撤回」を表明した際は当時の人吉市長らの反対が理由だった。
同市は全壊882棟、半壊1411棟など、約4600棟の家屋が浸水被害を受けた。市内で3回開かれた会には、各地区の町内会長やPTA関係者ら計約100人が出席した。
(写真)熊本県の蒲島郁夫知事(奥)に対し、球磨川の治水について意見を述べる参加者(手前)=熊本県人吉市の県球磨地域振興局で2020年10月24日午後2時30分、清水晃平撮影
ダムに賛成する住民からは「水害は来年も来るかもしれない。ダムを含めた治水をしっかりと考えてもらいたい」といった意見があった。一方、「緊急放流の不安がぬぐえない」などの理由での反対があった他、「国が示すダムの効果の数字だけでなく、『ダムがなかった場合』の数字も出してもらったうえで検討したい」「被災者一人一人の声を聞いたうえで判断してほしい」という慎重意見もあった。住民投票の実施を求める意見も出た。
また、ダムに賛成、反対双方の住民から「河床にたまった土砂の撤去など、できる対策を早期にしてほしい」との声も上がった。
約20回を予定する知事による意見聴取は24日までに14回が終了。川辺川ダム建設予定地の相良(さがら)村で23日にあった会では、水産業の男性が「ダムを造ると大量の土砂がたまって濁りが長期化する。日本一の水質や天然アユという観光資源を捨て去ることになる」と主張。球磨川中流で被害が大きかった球磨村や八代市坂本地区での会では「ダム論議より、被災者の生活再建が先」といった声も出た。【城島勇人、清水晃平】
「流水型」環境に優しい? 川辺川ダム、計画変更求める声 専門家、効果疑問視も
川辺川ダムを流水型ダム(穴あきダム)にする話が出ています。
熊本日日新聞10月25日がこのことを報じていますので、その記事を掲載します。
流水型ダムは環境にやさしいダムだという話になっていますが、実際は環境に与える影響は決して小さくないと思います。
2005年に完成した益田川ダムが日本で最も古い流水型ダムで、できてから、まだ15年しか経っていないので、問題が顕在化していないだけだと思います。
日本で今までに完成した流水型ダムは末尾の表のとおり、5ダムです。最大が益田川ダムで、洪水調節容量は675万㎥です。
川辺川ダムは旧計画では洪水調節容量が8400万㎥で、益田川ダムの12.4倍もあります。川辺川ダムをもし流水型ダムにしたら、どうなるのか、先行きは不透明です。
「流水型」環境に優しい? 川辺川ダム、計画変更求める声 専門家、効果疑問視も
(熊本日日新聞2020/10/25 18:00) https://this.kiji.is/693021528682775649?c=92619697908483575
7月の熊本豪雨の検証委員会や球磨川の治水に関する意見聴取会で川辺川ダム建設計画が再燃する中、「流水型(穴あき)」への計画変更を求める声が一部の流域首長から上がった。「貯水型」に比べて環境に優しいとされるためだが、川辺川ダムが流水型となれば国内最大規模。専門家からは環境への負荷軽減の効果を疑問視する声や、「清流を守るためには一層の工夫が必要だ」との指摘も聞かれる。
流水型は、普段は川底付近のダム本体に設けた穴から水が流れ、洪水(大水)時だけ水をためて調整する治水専用ダムだ。
国内では、ことし11月に本体着工し、2026年度に完成予定の福井県の足羽川[あすわがわ]ダム(高さ約96メートル、総貯水容量約2870万トン)が最大規模になる。だが、川辺川ダムの計画は約108メートル、1億3300万トン。総貯水容量は4・6倍に及ぶ。
◇08年に比較案
国土交通省九州地方整備局は2008年8月、蒲島郁夫知事による川辺川ダム計画の「白紙撤回」表明の直前に、流水型と貯水型の比較案を県に示したことがある。
球磨川の「河川整備計画」の原案の策定を前に提示。完成予定は貯水型より1年早まり9年後とされ、本体工事が中心となる残事業費も100億円減の1200億円とした。洪水調節能力は貯水型と同程度で、人吉地点での洪水時の水位を同じ高さに維持する内容だった。 コケ生育阻む
ダム治水の限界を訴える新潟大名誉教授の大熊孝氏(河川工学)は、巨大な流水型では、洪水時には流入量より放流量が極端に少なくなって流れが滞り、粒の大きな土砂が堆積していくと指摘。堆積が重なれば、結局は貯水型と同じように川の水を濁らせる恐れがあるとみる。
濁った水は光を遮り水中の光合成を弱め、球磨川の資源であるアユが食するコケの生育を阻む。さらに「穴の大きさや長さ、勾配や普段の水量により魚が行き来できなくなる恐れもある」とする。
京都大名誉教授の今本博健氏(同)も「穴あきでも下流への土砂供給の減少は避けられず、河床の土砂が動かなくなり古いコケがそのまま残る」と危ぶむ。
◇ゲートで調節
一方、熊本大大学院の大本照憲教授(同)は流水型でも環境への影響をさらに小さくする工夫が必要とし、ゲート操作によるダムの放流調節を提案する。
これまでの流水型は、あけた穴を流れきれない水が自然にたまる構造だが、「ゲートで放流量を調節すれば、洪水時に土砂を押し流す力を強めることもできる」とする。実際、足羽川ダムは、国の流水型ダムでは初めて、川底付近に設けたゲートにより洪水調節できる設計だ。
穴の位置や形も重要で「穴の位置を低くして、できるだけダム建設前の川の流れに近い状態に近づける。工夫の余地はあるはずだ」と強調する。(太路秀紀)
【参考】(嶋津のまとめ)
坂本町と球磨村で住民の意見を聴く会 ダム建設否定的な意見多数
10月22日は球磨川の治水について熊本県知事が住民の意見を聞く会が、八代市坂本町と球磨村で開かれました。荒瀬ダム(すでに撤去)と瀬戸石ダムによってダムのマイナス面を経験してきた住民から、川辺川ダムについて否定的な意見が相次ぎました。そのニュースと記事を掲載します。
坂本町と球磨村で住民の意見を聴く会 ダム建設否定的な意見多数
(テレビ熊本2020.10.22 19:15) https://www.tku.co.jp/news/20201022%ef%bd%855/
(映像)
球磨川の治水について県が行っている被災地住民から意見を聴く会が22日、八代市坂本町などで開かれ、生活基盤の復旧を求める声のほかダム建設については否定的な意見が相次ぎました。
八代市内から集まった住民35人全員が「いまだにスクールバスが通れず子供たちは八竜小、坂本中にまだ戻れない。国道219号にスクールバスが通れるよう国に強く要望をお願いしたい」「家を建てる所がないと悩んでいる人がいる」「間伐や枝打ちなどがされていない。かなりの倒木が川に流れ込み被害を拡大させた。林業からの見直しも感じている」「ダム造りは絶対反対」「移住して10年。積み上げたものをすべて失った。それでも川が好き。私のイメージの中に川辺川ダムはない。いの一番は瀬戸石ダムの検証だ」など一人ずつ意見を述べました。
一方、球磨村で開かれた会では、神瀬地区の一部住民が蒲島知事に「ダムをめぐる治水議論の前に被災者の住む所や生活再建の議論を優先してほしい」などの要望書を提出しました。7月の豪雨で八代市では坂本町で4人が犠牲となり今も1人の行方が分かっていません。
【熊本豪雨】八代市などで治水の意見聞く会(熊本県)
(熊本県民テレビ(KKT) 2020/10/22(木) 19:32配信)https://news.yahoo.co.jp/articles/0b8458b825d4db4d5f240cca26ce73e8cdd82545
蒲島知事が7月豪雨で氾濫した球磨川の治水対策の方向性を決めるため開かれている「住民の意見を聞く会」。これまでに人吉市や芦北町などで地域の住民や様々な団体の意見を聞いてきた中22日、大きな被害を受けた八代市坂本町と球磨村で意見を聞く会が開かれた。
地元の住民を中心に30人以上が集まった八代市坂本町の「住民の意見を聞く会」。地区で唯一のスーパーの店主本田進さんの姿もあった。
7月豪雨で甚大な被害を受けた八代市坂本町。4人が犠牲になり、今も1人が行方不明のままとなっている。球磨川沿いの本田さんの店は7月豪雨で球磨川の濁流に襲われ、自宅から裏にある店の2階まで泳いで渡り九死に一生を得た。
かつて八代市坂本町では、球磨川にあった「荒瀬ダム」を撤去した過去がある。
一方、球磨川の治水をめぐり蒲島知事は「川辺川ダムも選択肢のひとつ」と述べ、自らが白紙撤回したダムの再検討に言及している。
生活のすぐそばにダムがあった坂本町の住民からは治水のためのダム建設に対する反対の声が相次いだ。また他の出席者からは高台など安全な避難場所の設置を求める声などが挙がった。
一方、午後からは球磨村の2つの地区で意見を聞く会が開かれた。住民が注目したのは国による川辺川ダムの効果をまとめた調査結果。「川辺川ダムがあった場合人吉市の浸水面積がおよそ6割減らせた」としているが、住民からは「当事者がつくった資料を信用できるのか」という疑問の声が。
また今も復旧作業が続く神瀬の会場では「治水対策を考える前に道路や公民館の復旧など生活基盤を整えてほしい」という意見が相次いだ。
住民たちからの意見を聞いた蒲島知事は、「様々な意見があった。慎重論もあったしダム+αも丁寧に受け止めて判断に生かしたい」と述べた。22日以降も各地を回る予定の蒲島知事。11月半ばまで医療、観光などの各団体や被災した住民から話を聞き、年内の早いうちに治水対策の方向性を示す方針だ。
「ダムに頼らない治水を」 熊本県の意見聴取会、豪雨被災住民から反対意見相次ぐ
(熊本日日新聞2020/10/22 21:03) https://www.47news.jp/localnews/5406581.html
熊本県の蒲島郁夫知事は22日、7月豪雨で氾濫した球磨川の治水対策について、甚大な被害が出た八代市坂本町と球磨村で住民らに意見を聴く会を開いた。このうち、2018年に撤去が完了した県営荒瀬ダムがあった坂本町では、建設計画が再燃している川辺川ダムについて、反対する声が相次いだ。
坂本町の坂本地域福祉センターでは、住民でつくる自治協議会役員や市政協力員ら34人が参加した。同協議会復興推進部会の松嶋一実副部会長は「かつて川辺川ダムの賛否で地域が分断された。今は住民が結束しなければならない大事な時期。ダムに頼らない治水を考えてほしい」と訴えた。
荒瀬ダム撤去運動を主導した本田進さん(86)は「ダムによって川は死ぬ」と主張。上流の瀬戸石ダム(電源開発)についても「今回、堆積した土砂が一気に流れて被害が拡大した」と指摘した。
一方、球磨村では村役場と神瀬地区の集会施設でそれぞれ意見聴取があり、村議や区長ら計22人が参加した。同村一勝地の齋藤寛さん(62)は「ダムありきの議論は拙速だ。県はダムのメリットだけでなく、デメリットの話も聞かせてほしい」と述べた。
住民でつくる「こうのせ再生委員会」の岩崎哲秀さん(46)も「ダム論議の前に、安心して住める場所の確保を急いでほしい」と要望した。宅地の高台移転を求める意見もあった。
終了後、蒲島知事は、21日の定例会見で「ダム建設を望む声が多くなったと感じる」と発言したことに関して、「意見を聞き始めたばかりで、言うべきではなかった。さまざまな意見を丁寧に受け止めたい」と述べた。(益田大也、小山智史)
(写真)球磨川治水や地域の復興に関する意見を述べる坂本町の住民たち=22日、八代市坂本町
被災地「ダム案は拙速」熊本知事の意見聴取会 八代市・球磨村拒否反応も
(西日本新聞2020/10/23 8:00)https://www.nishinippon.co.jp/item/n/657050/
(写真)復旧・復興や治水について意見を述べる被災地の住民=22日午前、熊本県八代市坂本町
7月豪雨で氾濫した熊本県南部の球磨川を巡り、治水策に民意を反映させようと、蒲島郁夫知事は22日、甚大な被害が発生した八代市坂本町と球磨村で住民の意見を聞いた。「一日も早く集落に帰りたい」という被災者の思いの実現に向けて「治水の方向性」の判断を急ぎ、「川辺川ダムも選択肢の一つ」とする蒲島氏に対して、この日の会合では「拙速」との声やダムへの拒否反応も相次いだ。
「代替地があれば早く帰りたい。でも家を建てる場所がない」。坂本町住民自治協議会の蓑田陽一監事は「何とかしてほしい」と訴えた。会合では「生活道路の早期復旧を」「河川を掘削して」などの要望も上がった。
集落再生の前提となるのは治水策。洪水の被害想定ができない状態では、具体的な復興計画を立てられないからだ。そこで、12年前に蒲島氏が「白紙撤回」した川辺川ダム建設の是非論が再燃しており、流域には「必要性は理解できる」との声や推進論もある。
だが、坂本町で商店を経営してきた本田進さん(86)は「ダムができれば地域は崩壊する」と強調。別の発電用ダムが原因で「川が死んだ」との思いがあるという。球磨村でヤマメ養殖場を管理する斎藤寛さん(62)も「川辺川ダムで浸水被害を6割減らせる」とする国の検証結果に「拙速で不十分。デメリットも丁寧に説明を」と指摘した。
同村神瀬地区で住民組織を立ち上げた一人、岩崎哲秀さん(46)は「まず住める場所の確保」を望み、最終目標として「人々が集う村づくり」を提案した。
蒲島氏は会合終了後、報道陣に「川辺川ダムを巡っては、分断の歴史が60年近くあった。(地域が)二分されないような計画、方向性を考えなければいけない」と語った。 (古川努、中村太郎)
九州豪雨 球磨川治水 ダム効果に疑問の声 住民意見聴取で相次ぐ /熊本
(毎日新聞熊本版2020年10月23日) https://mainichi.jp/articles/20201023/ddl/k43/040/318000c
7月の九州豪雨で氾濫した球磨川の治水対策を巡り、熊本県の蒲島郁夫知事が流域住民から意見を聴く会が22日、同県八代市坂本町の市坂本地域福祉センターであり、参加者からは環境悪化などを理由にダム以外の治水対策を求める声が相次いだ。
地元の自治会やPTA関係者ら35人が参加した。豪雨後に議論が再燃している川辺川ダム建設について「ダムがあっても今回の洪水は防げなかったのではないか」と疑問視する声が続出。河道掘削や遊水池整備などを求める声が目立った。
このほか、球磨川中流の瀬戸石ダムが洪水被害を拡大させたとの指摘もあり、「川辺川ダムよりも瀬戸石ダムがなければどうなっていたのかを検証するのが先だ」との意見も出た。【城島勇人】
国や熊本県の豪雨検証「不十分」 被災者が知事に訴え
(朝日新聞2020年10月23日 10時00)分)