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2008年6月10日 熊本県知事 蒲島郁夫様 第5回有識者会議について(抗議ならびに要望)

2008年7月18日
熊本県知事 蒲島郁夫様

第5回有識者会議について(抗議ならびに要望)

  1. ブラウン氏の選出と発言内容について
    オランダ人アドバイザー ディック・デ・ブラウン氏は14日県庁で会見し、「人吉市の人々が流域に住み続けたいと考えるならばダムは必要。従来計画の場所、規模のダムが最適だ」さらに、河床掘削や川幅の拡大という手法について「地下水や河川を生かした活動への影響を生じたり、市街地の移転を伴うため難しい」と否定的な考えを示した旨の発言をしています。
    そもそもブラウン氏が有識者会議のアドバイザーであるのならば、有識者会議の求めに応じて助言をすることが、その役割を果たすことです。有識者会議がダムについての見解を出すことを求められているのに、このブラウン氏の会見による発言内容は越権行為と言わざるをえません。とりわけ有識者会議は、現在も審議中です。そのような状況において、アドバイザーが会見を行うことは有識者会議を形骸化させるものに他ありません。知事がブラウン氏の記者会見を許した事は、自らが設置した有識者会議の意義を否定するものであり、知事の見識が問われます。
    また、ダムを受け入れなくては流域に生活することができないという同氏の発言に対して、流域の人々の間には驚愕と怒りの渦が巻き起こっています。人吉、球磨地域には先史以来人間が流域に住み続けており、しかも流域の人々の大半がダム建設を望んでいないことは周知の事実であります。80年に一度の洪水の規模について氏がどのような認識を持たれたのか、私たち住民には理解できません。
    また代替案の手法に関する発言は、国交省が2000年以前の事業計画説明書に掲載した内容から一歩も出ておりません。さらに、住民側が示した総合的な治水案への言及は一切なされていません。
    さらに「80年に一回の洪水を基準に議論しているが、世界では200年、1000年が基準だ。洪水のリスクが過小評価されているのではないか」という発言にいたっては、ダムの寿命と現地でのダムによる治水の限界に関して全く理解ができていないと断じざるを得ません。1~2日の現地見学、及び有識者会議での今後の議論も見極めない中での氏の発言は無責任極まりなく、最初から結論ありきであったとしか言いようがありません。
    このような地域住民の意思を無視し、現地の実態を認識していないブラウン氏の発言に厳重に抗議するとともに、このようなアドバイザーを選任した知事に、以下の点に対して回答を求めます。

    1. 有識者会議を形骸化させてしまうブラウン氏の会見をなぜ許したのか。
    2. 知事は、有識者会議に対しては判断を求めないと言われていましたが、今回、ブラウン氏が有識者会議の半ばで判断されたという事実をどう受け止めておられるのか。
    3. 県は、これまでの住民討論集会や有識者会議における住民側の資料・意見書を訳し送付を行うとか、十分な説明を行うなど、正確な情報を与えてきたのか。その役割は誰が責任を持って行ってきたのか説明いただきたい。
    4. 中立性を担保できる外国人の専門家として、知事が同氏をアドバイザーとして起用したといわれているが、同氏が中立性を担保できると判断した根拠について説明していただきたい
    5. ブラウン氏が世界銀行の技術者であるということについて知事は承知しておられたのか、また同氏のこれまでのダムに関する業績についての認識を伺いたい。
  2. 既存ダムが環境に与えた影響について検証を行うべき
    蒲島知事は、荒瀬ダムと川辺川ダムは別の問題であるとして、有識者会議に荒瀬ダムの資料を提供しようとしません。また、金本座長は第4回会議後の記者会見等で荒瀬ダムについて問われると「議論の前提となる資料がなかった」旨答えられています。
    しかしながら、熊本県はダムの治水効果を主張するためには、市房ダムの治水効果を独自で検証し、そのデータを有識者会議に積極的に提供し説明しています。また、第5回有識者会議においても荒瀬ダムのパンフレットを配布しています。都合のよい場合だけ既存ダムのデータを提供するというのは、客観的・総合的な判断を歪めるものです。
    川辺川ダムを環境の視点で検証するにあたっても、同一水系にある既存ダムが、建設後どのような影響を与えてきたかを検証は不可欠であり、避けて通れないものです。既存ダム建設後の環境の変化について、現場の意見を踏まえ広い視点で議論ができるよう、熊本県は有識者会議に対して、既存ダムに関する資料提供・意見聴取の場の設定を行うべきです。

    1. 次回の有識者会議に荒瀬ダムの資料を提供されることを確約していただきたい。
    2. もしもその意思をお持ちでないのならその理由を明確に説明していただきたい。
  3. 熊本県の事務局の運営に関して
    現地調査は単に過去の洪水の状況を把握するためのものではなく、流域住民の洪水に対する考えと求める治水の方法を調査することが課せられた課題です。しかるに現地調査における事務局の説明では、各地点での問題点や河川環境の変化、流下能力の実態、地域住民の意向に対する説明が不十分であり、特に住民側がこれまでに討論集会や意見書で指摘している点の説明は不十分であり、あるいはおざなりであったといえます。さらに意見聴取は会場で一括して30分程度の時間しか与えられておらず、このような不十分な説明と限られた時間内では、有識者委員が流域の実態を正確に把握し、流域住民のダム反対の意思を確認するのは困難です。
    また、今回の現地調査においての説明ポイントは治水に関係する地点ばかりでした。流域の治水対策を考えるに当たっては、環境への配慮が欠かせないことは河川法で定められた通りです。環境については、第4回有識者会議においても説明が不十分であったため、有識者会議の委員の方々がこの流域の環境について十分に理解されているとは到底思えません。

    1. 現地で流域住民の発言を許可しなかった理由について伺いたい。
    2. 今回の時間配分が公平であると判断されるのか。
    3. 今後の有識者会議で環境の議論を深めるために、県としてどう対処しようと考えているのか。

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