2008年6月(2府4県宛て)近畿地整に対して、淀川水系河川整備計画案の撤回と、流域委員会の意見書に真摯に答える計画原案の再提示を求めてください
2008年6月 日
○○府県知事 様
水源開発問題全国連絡会
共同代表 嶋津暉之
共同代表 遠藤保男
近畿地整に対して、淀川水系河川整備計画案の撤回と、流域委員会の意見書に真摯に答える計画原案の再提示を求めてください。
河川法の精神を踏みにじる近畿地整
去る6月20日に近畿地方整備局は、淀川水系流域委員会との「見切り発車はしない」という約束を破って、一方的に淀川水系河川整備計画案を発表し、流域府県知事に対して意見照会を行いました。同委員会から4月25日に整備計画原案の見直しと再提示を求める意見書が出されていたにもかかわらず、それをまったく無視して、整備計画案の発表を強行しました。河川法第16条の2に基づき、近畿地方整備局が自ら設置した同委員会の意見書に対して拒絶反応を示したことはあってはならないことであって、新河川法の精神を踏みにじるものであり、国土交通省自体が法違反の行為を行っていると言っても過言ではありません。
しかも、6月6日には関係4府県知事との会談で、各知事から淀川水系流域委員会との関係正常化と原案の再提示を求められていたにもかかわらず、その要請をも無視した近畿地方整備局の行為は、明らかに常軌を逸しています。
人命を守ることができる治水対策の最優先化を求める淀川委員会の意見書
淀川委員会の意見書は、治水効果がわずかで現実的な意味が薄いダム建設などは捨て置いて、想定を越える洪水が来ても人命を守ることができる治水対策を最優先で進めることを求めました。治水に関して同委員会が求めた最も基本的なことは次の2点です。
- 想定を越える洪水が生じても、壊滅的な被害を回避・軽減するため、計画高水位以下の堤防だけでなく、計画高水位以上の堤防を強化し、急激な破堤が起きないよう、越水対策強化を最優先で行うこと
- ダムに関しては、大戸川ダムを例にとれば、ダムがない場合に淀川の水位が計画高水位を超えるのは、検証33パターンの計画規模洪水の中でわずか2パターンであり、しかも、その超過高はたった17cmに過ぎず、ダムの効果はきわめて限定的である。さらに、洪水位が計画高水位をその程度超えても堤防天端高までははるかに余裕があるから(約3m)、現実的な意味は薄く、(1)の対策を実施すればまったく無意味なものになる。したがって、大戸川ダム等のダム計画を見直すべきである。
論理矛盾している近畿地整の説明
これに対する近畿地方整備局の説明は、次のとおりで、答えにならないものでした。
「淀川水系では、全川にわたって計画高水位以下の流水の通常の作用に対して安全な構造とする。計画高水位を上回る洪水に対しては技術的な課題があるから、壊れない堤防、耐越水機能を持つ堤防を造ることはできない。確実に水位低下を行うことのできるダムの代替案とはならない。」
しかし、計画高水位以下についての浸透・洗掘対策と同じ対策を計画高水位以上についても行えば、計画高水位以上についても安全となることは自明のことであり、近畿地方整備局は論理矛盾したことを臆面もなく語っています。しかも、耐越水機能を持つ堤防の整備はすでに中部地方整備局が雲出川(三重県)で、近畿地方整備局が円山川(兵庫県)で実施していることなのです。真の治水効果がない大戸川ダム等のダム計画をごり押しするために、意見書にはまともには答えられず、理由にならない理屈を並べ、強行突破を図ろうというのが近畿地方整備局の姿勢なのです。
府県知事は真に有効な治水対策を求める責務があります
想定を越える洪水が来ても買い滅的な被害を避ける治水対策を最優先で行うことを求めた淀川水系流域委員会の意見書は、人命の大切さを思えば、河川行政の進むべき方向を明確に示すものであり、それを無視してダム建設にまい進し、真に有効な治水対策を蔑ろにする近畿地方整備局の姿勢を何としても正さなければなりません。
各府県内の人命と財産を守ることが最も重要な使命である知事もまた、壊滅的な被害を避ける治水対策の最優先化を近畿地方整備局に求める責務を負っています。しかも、もし大戸川ダム等のダム計画が進められれば、その建設費の負担が関係府県の財政にも大きな影響を与えます。その費用負担が府県内の人命と財産を守ることに寄与するならばともかく、実際にはそのために人命を守るための真に有効な治水対策がなおざりにされてしまうのです。
以上のことを踏まえ、貴知事におかれましては、近畿地方整備局に対して、淀川水系河川整備計画案の撤回と、流域委員会の意見書に真摯に答える計画原案の再提示を求めることを強くお願いいたします。
以上
連絡先:東京都千代田区平河町1-7-1-W210 リバークラブ内
水源開発問題全国連絡会 電話:03-5211-5429