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資料・データ

特定多目的ダム法の多目的ダムの費用負担の仕組と撤退ルール(在間氏)

2004.4.05
1.特定多目的ダム法(特ダム法)による多目的ダム
国土交通大臣が1級河川の管理として自ら新築するダム
流水利用の用途が、発電、水道、工業用水道(特定用途)
かんがいは用途ではない
ダム使用権(流水貯留を確保する権利)

2.基本計画とダム使用権設定予定者(特ダム法4、5条)
1) 基本計画の作成(特ダム法4条)
1項(基本計画の作成)
国土交通大臣が特ダム法の多目的ダムを新築しようとするときは、基本計画を作成しなければならない。
4項(関係都道府県知事とダム使用権設定予定者の意見聴取)
国土交通大臣が基本計画を作成、変更、廃止しようとするときは、関係都道府県知事およびダム使用権設定予定者の意見を聞かなければならない。関係都道府県知事が意見を述べるときは、議会の議決がを経なければならない。
水資源機構による水資源開発施設のように、流水を水道若しくは工業用水道の用に供しようとする者(事業からの撤退をする者を含む)の費用負担についての同意を得なければならないとの規定はない。
2) ダム使用権設定予定者(特ダム法5条)
ダム使用権の設定申請をした者で、設定要件(15条2項)の要件を備える者
特定用途に流水利用する者は、ダム使用権が必要
3) 基本計画の内容(特ダム法4条2項)
建設目的、位置及び名称、規模及び形式
貯水量、その用途別の配分事項
ダム使用権設定予定者
建設費用、その負担に関する事項
ダム使用権設定予定者の費用負担割合と額
建設費×費用負担割合=ダム使用権設定予定者の費用負担額
かんがい用途利用者の費用負担割合と額
建設費×かんがい用途費用負担割合×1/10=かんがい用途利用者の費用負担額

3.多目的ダムの費用負担の仕組(治水関係用途も目的に含む場合)
治水関係用途(特ダム法施行令1条の2第2項1号ロ)
洪水等による災害発生の予防又は軽減、流水の正常な機能の維持又は増進
費用負担用途と負担者
治水関係用途、水道、工業用水道、特定かんがい、発電
費用負担割合の決定方法
複数目的の共同施設では、各目的毎の費用負担割合を決めなければならない。
分離費用身替わり建設費妥当支出法(特ダム法施行令第1条の2~第6条)
妥当投資額、身替わり建設費、分離費用、専用施設建設費
各用途が投資限度額の割合に応じて費用を負担する
投資限度額:妥当投資額か身替建設費のいずれか少
共同施設投資可能額:分離費用+共同費用負担割合
分離費用:共同施設建設費-当該用途以外を目的とする共同施設の推定建設費
共同費用負担限度額:妥当投資額か身替建設費の少-専用施設建設費-分離費用
※例えば、○○ダムの場合
治水関係(河川)
洪水調節:身替わり建設費
流水正常機能維持:身替わり建設費
水道、工業用水道:身替わり建設費(総理府令→関係省庁申合せ)
発電:ゼロ(分離費用のみ)、分離費用>投資可能限度額ゆえ(関係省庁申合せ)
費用負担額(負担割合)=
分離費用+
(共同施設費用-分離費用合計)×
(妥当投資額か身替建設費の少-専用施設建設費-分離費用)
Σ(妥当投資額か身替建設費の少-専用施設建設費-分離費用)
治水関係用途の費用負担と支払
毎年度、国が70%、関係都道府県が30%負担して支払
ダム使用権設定予定者の費用負担と支払
当該ダムでのダム使用権設定予定者:水道用水の××県企業庁
水道:毎年度支払、国庫補助1/3
企業債で資金を調達して、後日に償還する
料金収入で償還(地方公営企業の独立採算制)
1/3の一般会計繰入(出資)が許容(交付税措置)
(参考)
工業用水道:毎年度、国庫補助30%支払、
料金収入で償還(地方公営企業の独立採算制)
一般会計からの繰入は、財政再建以外は許容外

4.建設費用の範囲(特ダム法施行令8条)
本工事、附帯工事、用地、補償、事務取扱、実施計画調査、災害復旧、借入金利息
基本計画の廃止に伴い追加的に必要となる費用

5.特定用途の縮小、事業からの撤退時の費用負担
1) 負担金(特ダム法施行令1条の2第2項)
イ) 特定用途の縮小、事業からの撤退とは
ダム使用権設定予定者の設定申請の取り下げ、又は、設定申請の却下のとき
ロ) 負担額
[治水用途を含む多目的ダムの事業の縮小の場合の負担額]
多目的ダムの建設費用(後記の不要支出額は控除)の負担割合額に、以下の額を加える。①不要支出額と②縮小後の治水用途の費用負担額とその投資可能限度額との差額と③縮小後のダム使用権設定予定者の費用負担額とその投資可能限度額との差額を負担
[治水用途を含む多目的ダムの事業の撤退の場合の負担額]
①不要支出額と②縮小後の治水用途の費用負担額とその投資可能限度額との差額と③縮小後のダム使用権設定予定者の費用負担額とその投資可能限度額との差額を負担
ハ) 不要支出額と投資可能限度額
①不要支出額(特ダム法施行令6条の2)
[事業の縮小の場合]
多目的ダムの建設に要する費用の額(A)と、当該事業の縮小後の多目的ダムが有する効用と同等の効用を有する多目的ダムの建設に要する推定の費用の額(B)との差額。
全てのダム使用権設定予定者が撤退して基本計画の廃止の場合
[基本計画の廃止=特定多目的ダムの事業廃止の場合]
基本計画を廃止した多目的ダムの建設に要する費用の額(A)と、基本計画の廃止までに建設した当該多目的ダムのうち治水関係用途に供すると認められる部分の建設に要する推定の費用の額(B)との差額。
(A)-(B)
②投資可能限度額(特ダム法施行令6条の3)
各用途について身替わり建設費又は妥当投資額のうちいずれか少ない額から、当該用途の専用施設の建設費用を控除した額
ニ) まとめ
事業を縮小した場合は、後日に縮小・撤退して特定多目的ダムを建設したため、当初から縮小・撤退後の規模の特定多目的ダムを建設するのに比べて、余分にかかった建設費用と縮小・撤退後に残った用途に負担させることができない額を負担する。特定多目的ダム事業を廃止したときは、余分にかかった建設費用は、出来高のうち治水関係用途分を除いた建設費。「不要」とは、ダム事業者にとって、不要だったという意味か。
2) 撤退時の既納付負担金還付金との清算(特ダム法施行令14の2第2項、9条3号)
既納付負担金の還付金と撤退負担金とを差し引きして、差額を納付、又は、還付。
縮小時の負担金
毎年度、事業計画に応じて定められる負担金に含まれる。
縮小時は、既納付負担金は還付しない(ダム使用権設定申請の取り下げとしない)。
縮小のときも、それに対応する既納付負担金はあるので、この還付はどうなるのか。

6.縮小・撤退ルールの考察
1) 特定用途の縮小や事業からの撤退で事業が縮小、廃止されたときのルール
特定用途の縮小や事業からの撤退があると、その縮小・撤退分のための利水容量は不要になる。したがって、その分、必要なダムの規模(事業)は縮小するはず。
ダム使用権設定予定者の縮小や撤退と同時に事業の縮小(ダムの規模の縮小)行うと、その建設費がが(A)の多目的ダム建設費である。
ダムの規模を縮小することが可能な早い時期(ダム本体工事着手前、特に計画段階)では、ダムの規模を縮小したり、計画を廃止することができる。この場合は、(A)はこれまで支出した額と縮小後必要となる建設費である。縮小後必要となる建設費は(B)と差がないので、(A)から(B)を差し引いた不要支出額は、無いか、小さい。
しかし、ダム使用権設定予定者が縮小や事業から撤退をしても、ダムが出来てしまったときなど、ダムの規模が縮小されず元のままで、事業の縮小がないときがある。そのときは、治水容量を増やさないと、撤退者の負担していた建設費は治水用途の負担にもならない。治水容量が増えなければ、縮小・撤退するダム使用権設定予定者は、縮小・撤退前の建設費の負担を全てして縮小・撤退することになる。結局、縮小・撤退したダム使用権設定予定者分の容量は、有効貯水容量から除かれる。無効貯水容量になる。
2) かんがい用途について全く規定がない
かんがい用途(特ダム法10条)について全く規定がない。縮小・撤退する用途にもあげられていないし(特ダム法施行令1条の2第2項)、縮小・撤退後継続する用途にもあげられていない(特ダム法施行令1条の2第2、4項)。
基本計画の廃止、つまり特定多目的ダムの建設事業の廃止の場合、不要支出額の定義(特ダム法施行令6の2第2項)からすると、かんがい用途(農業用水)に供する部分の建設費用は、不要支出額に含まれ、特定用途(水道、工業用水道、発電)の負担となるのか。
3) 基本計画が前提
撤退ルールは、特定用途の縮小や事業からの撤退(ダム使用権設定予定者の設定申請の取下)のときの当該ダム使用権設定予定者の建設費用の負担について定めたもの。
基本計画の作成を前提とする。
特定用途の配分貯留量は基本計画で定める
ダム使用権設定予定者は基本計画で定める
ダム使用権設定予定者の建設費用負担内容は基本計画で定める

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