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田んぼの貯水機能 防災貢献で重要性増す

2015年9月21日
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田んぼダムの重要性を指摘した記事を掲載します。

田んぼの貯水機能 防災貢献で重要性増す

(日本農業新聞 2015/9/20) http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=34717

関東・東北を襲った記録的な豪雨に伴う水害から10日が過ぎた。被害の全容はいまだに把握し切れない状況だ。JAグループのボランティアも支援に入るなど、復旧への動きは始まっているものの、出来秋を迎えた農作物への影響が広がっている。被害が拡大した要因に、上流域での多量の降雨が挙げられる。田んぼのダム機能にあらためて注目したい。
異常気象の言葉がかすむほど近年は想定を超える自然災害が頻発している。今回の水害でも考えさせられることが多い。原因の解明はこれからだが、「線状降水帯」という積乱雲が連なった気象現象を主因に、いくつかの要因が複合的に重なったのではないかと推察される。
河川上流域の森林管理が不十分で、倒木や下草を刈らずに放置されれば、豪雨の際に一時的に蓄えられた雨水が限界点を超えると一気に流出し、土砂崩れや河川の増水を招く。そこに中流域からも一斉に河川に水が流れ込めば、洪水や堤防決壊の危険は一段と高まる。森林や農地の荒廃は、災害と直結することを忘れてはならない。森林から河川流域全般に渡る治山、治水の視点が必要だ。
そんな中で、田んぼの貯水機能を生かすことで、被害を軽減できる田んぼダムの広がりに期待したい。米どころ新潟県内で2002年度から取り組み、北海道や富山、福井、愛知、兵庫などへ、じわじわと広がり始めた手法だ。
田んぼの排水口に調整板を取り付け、排水路に流れる水量を抑え、増水時に河川への流量を調整することで、はん濫防止につなげる。低コストで即効性が期待され、15年度から始まった国の日本型直接支払制度の「多面的機能支払」(地域の共同活動支援)の対象にもなっている。日ごろの管理や豪雨時に調整する対応など、農家の協力があって効果を発揮する取り組みだが、市民にはあまり知られていないのが実情だ。
農業を巡っては、環太平洋連携協定(TPP)交渉問題をはじめ、農畜産物の輸入拡大や国際競争を促し、大規模化を推し進める声が強まっている。だが規模拡大一辺倒で農家が減っていけば、こうした農地を生かす防災対応も難しくなる。
大規模な被害を招く水害を防止するには、どう取り組むか。農山村だけの問題ではなく、近年、都市部で起こるゲリラ豪雨の発生時にも、近隣に農地があれば、一時的な貯水池機能を果たせ、水害防止への貢献も期待できる。農地の重要性と、それを守る意義を、環境保全や防災の視点からも、もっと重視すべきではないか。
意欲的に取り組む農家や地域の支えとなるよう、国が積極的に農地の多面的機能を国民に理解してもらう取り組みを求めたい。それが、地域住民の生命や財産を守るとともに、地産地消の促進や地域農業の理解につながるのではないか。

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