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全国初!前例のないコンクリートダム撤去はどう行われたのか 熊本県・球磨川の荒瀬ダムの撤去

2016年3月7日
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熊本県・球磨川の荒瀬ダムの撤去工事に関する記事を掲載します。経過が詳しく述べられていて、大変参考になります。

全国初!前例のないコンクリートダム撤去はどう行われたのか

 ニュースイッチ 2016年3月6日(日)9時14分配信) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160306-00010001-newswitch-bus_all&p=1
熊本県荒瀬ダム、鮎の棲む川を守る

 大きくて美味しい鮎が釣れることで有名な川が熊本県にある。球磨川(くまがわ)だ。春先、球磨川には10センチほどに育った鮎の成魚が、産卵のために遡上する。鮎釣りの愛好家らの間では有名な球磨川だが、2010年ごろから、別の側面でも注目を集めるようになった。この川に建設された荒瀬ダムが撤去されることになったのだ。国内のダムは2700基を超えるが、本格的なコンクリートダムの撤去工事は初めて。国内では前例のない方針決定に対し、熊本県荒瀬ダム撤去室は、さまざまな関係先と連携し、工事完了まで最善を尽くしている。

<なぜダムを撤去するのか>
ダムはそれぞれ、洪水の調整、かんがい用水・上水道用水・工業用水の確保、もしくは水力発電用に建設されている。
戦後復興のさなか、熊本県内は深刻な電力不足にみまわれていた。それを補う目的で荒瀬ダムは1953年に着工し、55年に竣工した。湛水(たんすい)面積は123ヘクタール、総貯水容量は1013万7000立方メートルで、2キロメートルほどダムの下流にある県営藤本発電所では、年間供給電力量7468万キロワット時を維持し、ダム建設当時は県内の電力需要のうち16%を補っていた。
ではなぜダムを撤去することになったのか。ダム建設当時から自然環境に対する不安は上がっていたが、ダム建設後にはアオコによる水質障害が確認されるようになり、鮎が釣れることで「宝の川」と呼ばれた球磨川近隣の住人からはダム反対運動が起こるきっかけとなった。
また、ダムは定期的にメンテナンスを行う必要がある。そのための資金が、ダムを管理する熊本県にとって、大きな財政問題となった。さらに、電力自由化に対する問題もある。電力自由化の中で今後の電力収入はますます厳しくなることが予想された。
さらに追い打ちをかけたのが、水利権の問題だ。ダムを稼働させるには、国土交通省に対して河川への水利権を申請し、定期的に更新手続きを行う必要がある。
03年に更新を迎えた荒瀬ダムは、04年から10年までの7年間の水利権更新を最後として、次の更新を迎える前にダム撤去を本格化させる方向で舵(かじ)を切ることになる。ダム存続か撤去か、長い間県内で議論されてきた問題は、10年2月に「撤去」の方向で固まった。

<荒瀬ダムが全国のモデルへ>
実際の撤去工事に先立ち、まず熊本県が実施したのが学識経験者や関係機関・団体、地元代表をメンバーに迎えた「荒瀬ダム対策検討委員会」の設置(03年)だ。ダム撤去に伴い、環境対策やダム撤去工法などについて慎重に協議された。
撤去が確定した後は「荒瀬ダム撤去技術研究委員会」を設置(10年)。同時に熊本県は「撤去にあたっては安全の確保、撤去技術の確立、環境問題等さまざまな課題があるが、本格的なコンクリートダム撤去として、荒瀬ダムが全国のモデルとなるよう取り組む」と表明し、本格的な撤去計画策定が始まった。


工事完了への道と撤去とともに守るべきもの
 <鮎の生息育成に配慮>
まず最初に取り組んだのが、河川内工事の期間設定だ。鮎の生息育成に配慮し、渇水期にあたる11―2月の冬場の4カ月間だけ、撤去工事を行うと決定。このスケジュールにのっとり、工事期間を12年度から17年度末に設定した。
また、ダム撤去にあたっては、環境モニタリングを実施し、治水や環境の変化についてダム撤去による影響を確認していくとともに、各種専門家で構成される荒瀬ダム撤去フォローアップ専門委員会における助言などを踏まえながら撤去工事を進めるように計画を立てた。
ダム貯水池内に堆積している土砂、礫石(れきせき―小石)、泥土(シルト)への対策も検討された。ダム撤去に伴い、ダム上流の滞留物がそのまま下流に流れ堆積すれば、治水面・環境面に影響を与えることが懸念される。
土砂・礫石は、堆積している70万立方メートル中、10万立方メートルを除去し、残りは自然流下で状況を観察するとした。シルトは砂よりも粒子が細かく、岩や礫石に付着しているコケ・藻に絡まり、河川に堆積する可能性がある。コケを主食とする鮎にも大きな影響が出ると判断し、ダム撤去開始までに全量を除去すると決められた。
<工事完了は18年3月末>
実際の撤去工程だが、荒瀬ダムは可動堰(ぜき)付き重力式越流型コンクリートダムだ。工法は「右岸先行スリット撤去工法」を採用し、フジタ・中山建設工事共同企業体が請け負う。12年度はダムのゲート部分の撤去と水位低下設備の設置から始まった。
ダム本体の撤去工事に伴い、貯水位を下げる必要がある。ダム堤体に「FONドリル工法」を用いて高さ4メートル、幅5メートル、長さ17メートルの矩形(くけい)トンネルを掘削し、ダムの放流口を確保した。
そこへ重さ30トンの水位低下ゲートを設置。この水位低下設備は貯水位を徐々に低下させるための流量調節機能を持たせ、また緊急時にはゲートを開閉できるようにすることで、円滑な放水を確保した。同時に右岸側にある門(ゲート)が撤去されたが、ゲートは一度にクレーンでつり出せないため、16分割する必要があった。
13年度は中央部の4ゲートと、右岸の門柱、管理橋の撤去が行われた。門柱には内部に鉄筋が入っている。鉄筋を切断し、爆薬を挿入するために削孔する。そこに装薬した上で制御発破し破砕塊を搬出する作業を繰り返し、3門柱を撤去した。
また、門柱は高さが20メートル以上あることから高所作業を減らすため、門柱を倒壊させた後に小割する方法を採用した。14年度は右岸みお筋部の堤体を、門柱撤去時同様の制御発破により撤去した。15年度は左岸側の管理橋と5門柱を撤去しているところだ。
16年度はダム建設前の河床を基準に左岸側の堤体を撤去し、17年度は残っている右岸部を撤去していく。工事完了は18年3月末を予定している。

<ダム撤去で水質改善>
12年から始まった撤去工事だが、工事完了後、2年間は環境モニタリングを続け、フォローアップ専門委員会に報告していく方針だ。
ダム撤去に伴い影響を受けると予想される底生動物(ウスイロオカチグサやモノアライガイ)は別の場所への移植を実施している。また、工事に伴う廃棄物(コンクリート殻)は発電に使用していた導水トンネルの埋戻しに活用し、処分量を抑えている。
滞留水がダム撤去によって流水状態になったことで、「水質面での改善が確認された」と地域住民から歓迎の声が熊本県に多く寄せられている。実際、鮎のエサとなるコケや藻、他生物についても増えつつある状況が確認されている。
工事完了まで残り2年あまり。「安全面、環境面に配慮しながら、確実な撤去を遂行していく」(吉ヶ嶋雅純熊本県企業局荒瀬ダム撤去室長)と決意を新たにしている。

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