水源連:Japan River Keeper Alliance

水源開発問題全国連絡会は、ダム建設などと闘う全国の仲間たちのネットワークです

ホーム > ニュース > 事務局からのお知らせ > 「ウナギが生きる川を取り戻す。ウナギと河川環境の問題を考えるシンポジウム」報告(2016年9月11日)

ニュース

「ウナギが生きる川を取り戻す。ウナギと河川環境の問題を考えるシンポジウム」報告(2016年9月11日)

2016年10月1日
カテゴリー:

2016年9月11日(日)午後、東京・水道橋の全水道会館の大会議室で「ウナギが生きる川を取り戻す。ウナギと河川環境の問題を考えるシンポジウム」を開催しました。主催団体は「利根川流域市民委員会」です。その報告を掲載します。

和波一夫(水源連事務局)

シンポジウムの開催趣旨は次のとおりです。

「ニホンウナギ漁獲量の減少はすさまじいものがあります。とりわけ、霞ケ浦を含む利根川は、かつて日本で最大のウナギ漁獲量がありましたが、今は激減しています。  ニホンウナギが激減した要因はシラスウナギの乱獲だけでなく、様々な河川工作物や河川工事により、ウナギの遡上・降下が妨げられ、ウナギの生息場(エサ場、隠れ場所)が失われてきたことも大きな要因と考えられます。 そこで、ウナギが生息できる河川環境を取り戻すため、ウナギに関する第一線の研究者にご登壇いただき、今後の河川のあり方を市民とともに考えるシンポジウムを開催します。」

シンポジウムの概要は次のとおりです。

◆「利根川の未来を考えるカムバック・ウナギ・プロジェクト」の取組み  はじめに、利根川流域市民委員会の共同代表の嶋津暉之さんから、このプロジェクトへの取り組みの活動経過として、関係資料の収集、漁協ヒアリングとアンケート、内水面水産試験場ヒアリング、利根川下流部の現地調査についての報告と、利根川下流部にある利根川河口堰と霞ケ浦・常陸川水門の現状についての報告がありました。 報告の詳細は「八ッ場あしたの会」のHPhttp://qq4q.biz/yIU8 をご覧ください。

〔注〕常陸利根川:霞ケ浦から出て利根川に合流する部分を常陸利根川と呼んでいます。ただし、河川法上は「霞ケ浦」(西浦・北浦・外浪逆浦(そとなさかうら)・北利根川・鰐川・常陸川)の範囲を「常陸利根川」という利根川の支川としています。

キャプチャ

◆講演 「ウナギの保全生態学 二ホンウナギの現状と保全策」

第一部の講演は、海部健三さん〈中央大学准教授 IUCN(国際自然保護連合)種の保存委員会 ウナギ属魚類専門家グループメンバー〉を講師に迎え、1時間の講演と質疑が行われました。  写真右下=「ウナギの保全生態学」海部健三 著 共立出版  2016年5月発行

キャプチャ 講演を要約しますと、  「ウナギは川と海を行き来する通し回遊魚である。ウナギの一種、ニホンウナギ(学名Anguilla japonica)は現在、急激に減少している。日本の河川や湖沼におけるウナギの漁獲量(いわゆる天然ウナギの漁獲量)は、1960年代には3000t前後であったが、2015年にはわずか70tにまで減少した。このような状況を受け、2013年に環境省が、2014年にIUCN(国際自然保護連合)が、相次いで本種を絶滅危惧種に指定した。」

「ニホンウナギの減少を引き起こしている要因は、他の多くの種と同様、複合的なものであり、(1)海洋環境の変動、(2)過剰な漁獲、(3)成育場の環境変化の三つの要因が重要とされている。   高度経済成長期以降、日本の河川には河口堰やダム、砂防堤など多くの河川横断工作物が建設され、河川の上流と下流のつながりを含む、海と川のつながりが失われた。ニホンウナギをおびやかしている複合要因のうちでも、成育場の喪失は、本種のもっとも重要な要因と考えるべきだろう。」

「ニホンウナギが遡上できる河川であれば、海と川のつながりは良好であり、ダムなど人為的影響によって遡上できない河川は、改善する必要がある。」

「ニホンウナギは河川と海の連結性、水辺の食物網の健全性の指標種として優れているだけでなく、水辺の生物多様性の回復を進めるためのシンボルとしても、大きな役割を果たすことができる。」

◆第二部のパネルディスカッション「ウナギが生息できる河川環境を取り戻すには?」

第二部では最初に、二平 章さん(茨城大学人文学部市民共創教育研究センター・客員研究員)から「ウナギ資源の減少と河口堰建設」の報告を受け、続いて浜田篤信さん(NPO霞ケ浦アカデミー、元・茨城県内水面水産試験場長)から「霞ケ浦がウナギを救う」と題しての報告を受けました。

お二人の報告の内容を要約しますと、  「霞ヶ浦開発前の霞ヶ浦は、内水面全国第一位の漁業を誇った。最盛期の漁獲量は約2万トンに達したが、ウナギは最重要漁獲対象種で、シラスウナギやクロコが養殖用種苗として、また成魚は食用ブランド品として出荷され、漁家の生計を支えた。漁業の状況を一変させたのは霞ヶ浦開発事業である。1963年には霞ヶ浦最下流部に常陸川水門が建設され、1970年からは、これと並んだ地点の利根川に利根川河口堰が完成し、ウナギに致命的な打撃を与えた。」

「霞ヶ浦では常陸川水門の完全閉鎖後の4年後からウナギ漁獲量が著しく低下したのは、閉鎖後に湖内へのシラスウナギの遡上量が減少し、4年後に漁獲の中心となる4才魚の漁獲量が減少したこと、4才魚以上の雄の大半が降河したことによるものと考えられる。」

「絶滅危惧種指定に関する報道や学者のウナギ論議に弱いのは、ウナギの成育場としての河川や湖沼に対する開発政策の見直しを求める視点の欠落である。あたかも乱獲だけがウナギを減少させた要因とする議論は、禁漁や漁獲規制といった漁業生産者のみに対策を矮小化させることでもある。」

「シラスウナギが遡上でき「クロコ」となって流域全体の小河川・湖沼にまで分布生息して産卵魚となるまで成育できる流域環境の修復・保全政策なくしてはニホンウナギの再生はない。」

「ニホンウナギの資源回復には、利根川水系の水資源開発事業の見直しが不可欠である。その影響を詳細に解明し、具体化することが解決策につながる。」

以上の講演と報告を受け、パネルディスカッションになりました。コーディネーターは、和波一夫が担当しました。会場からの質問は、パネルディスカッションのなかで適宜回答してもらいました。   ニッポンウナギだけでなく、ヨーロッパウナギの危機的状況やEUの取組みが講師から紹介され、魚道の課題や河川横断工作物による問題が会場参加者に深く認識されたシンポジウムになりました。

◆ウナギが生息できる河川環境を取り戻すための提言

本シンポジウムではウナギが生息できる河川環境を取り戻すため、重要な提言がなされました。それは次の3点です。  ① 海と川のつながりの回復が最重要課題  (ウナギが遡上できないところで何をやっても無駄であるから、①が最重要課題である。)  ② 局所環境について、河川では水際の土と植生、多様な水深が重要。  ③ 沿岸では干潟河川や沿岸域の本来の姿を取り戻す視点が必要。    利根川流域市民委員会はこの提言にそって、「利根川の未来を考えるカムバック・ウナギ・プロジェクト」の活動にこれからも取り組んでいく予定です。

キャプチャ3

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

↑ このページの先頭へ戻る