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事務局からのお知らせ

昨年7月の西日本豪雨の小田川氾濫の真因と責任

2019年8月13日
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昨年7月の西日本豪雨では高梁川支流・小田川の大氾濫により、岡山県倉敷市真備町では51人の命が奪われました。
水位が高まった高梁川が支流の小田川の流れをせき止める「バックウォーター現象」が起き、小田川の水位が上昇して小田川で決壊・溢水が起きました。
高梁川の支川である小田川は勾配が緩く、氾濫が起きやすいことから、小田川の合流点を高梁川の下流側に付け替える計画が半世紀前からありましたが、ダム事業(貯水池建設事業)と一体の計画(高梁川総合開発事業)であったため、難航し、2002年に中止が決定しました。その後、小田川合流点の付け替えのみを進める事業の計画が2010年に策定され、ようやく動き出そうとしていた矢先での西日本豪雨でした。
小田川と高梁川の合流点付近は1世紀近く前に大改修工事が行われて、現在の河道になりました。改修前は高梁川が西高梁川と東高梁川に分かれていて、その分岐点に小田川が合流していて、西高梁川につながっていたので、小田川は現状より勾配があったと推測されます。1925年に完成した改修で西高梁川と東高梁川は一つの河川になりました。旧・西高梁川上流部の河道は柳井原貯水池になり、それにより、小田川は旧・東高梁川を回って流れるように付け替えられました。これにより、小田川の緩い河床勾配のベースがつくられました。柳井原貯水池をつくるための小田川の付け替えでしたが、貯水池は水漏れがひどく、当時は漏水を防止する技術が乏しく、貯水池として使われることはありませんでした。


小田川と高梁川との合流地点を付け替える事業(2019年6月16日着工)

小田川と高梁川との合流点を高梁川の下流側に付け替える事業が今年6月からようやく始まりした。この付け替えが早く行われていれば、合流点の水位が4.2mも下がるので、昨年の豪雨で、小田川が氾濫しなかった可能性が高いと考えられます。
問題はそれだけではありません。
今回、小田川について昭和46年の資料「高梁川柳井原堰建設事業計画書」を入手しました。
この計画書を見ると、小田川の付け替えが早期に行われるものとして付け替えを前提として、小田川の計画堤防高を低くする改修計画がつくられていました。下記の通りです。
下記の図-7には「現状計画堤防高」のほかに、それよりかなり低い「切替計画堤防高」が記入されています。この「切替計画堤防高」が当時の新しい計画堤防高です。
このことが大変重要な問題です。
計画堤防高を達成できるように堤防高を嵩上げする築堤工事が行われていくものですが、小田川では達成すべき計画堤防高を低くしてしまったため、築堤工事がきちんと行われないことになり、そのように堤防高不足の状態がずっと続いてきました。
小田川の付け替えを前提とするならば、早期に実現しなければならないにもかかわらず、付け替えを長年あいまいな状態に放置してきたために、小田川の改修がきちんと行われず、その結果として昨年7月、小田川で決壊・溢水が起き、大水害になりました。
小田川の付け替えを前提とした改修計画をつくっておきながら、小田川の付け替え工事を半世紀近くも先送りしてきた国土交通省の責任が厳しく問われるべきだと思います。

【補論】 ダム放流の影響について

 

高梁川水系のダムで、西日本豪雨との関係を検討すべきダムは右図に示す4基のダムです。

各ダムの諸データを次ページの表に示します。

(IWJ 2018年7月23日)

このうち、河本ダムは岡山県の多目的ダム、新成羽川ダム、田原ダム、黒鳥ダムは中国電力のダムです。新成羽川ダムはダム式発電と揚水式発電を兼ねた混合揚水式で、田原ダムを下池として揚水式発電も行っていますが、田原ダムの容量は新成羽川ダムに比べてはるかに小さいので、揚水式発電は一部だけです。

黒鳥ダムは発電ダムの下流に設置される逆調整池ダムです。発電ダムの放流は時間変化が大きいので、それを一定量の放流にするためのもので、その放流で同時に発電も行います。逆調整池ダムは貯水容量が大きくありません。

新成羽川ダムは総貯水容量が12750万㎥もあり、その放流の影響を検討する必要がありますが、中国電力という私企業のダムであるため、その放流量等のデータの入手が容易ではなく、現在、データの入手に努めている段階にあります。

河本ダムについてはデータを入手できましたので、流入量と放流量の変化をグラフ化しました。下図のとおりです。河本ダムは本豪雨で満水になり、洪水調節機能を失いました。その放流が小田川の氾濫に影響したかどうかについては今後検討を進めたいと思います。

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