水源連:Japan River Keeper Alliance

水源開発問題全国連絡会は、ダム建設などと闘う全国の仲間たちのネットワークです

ホーム > ニュース > 報道 > (アフリカはいま)ナイル川、巨大ダムの衝撃 上流のエチオピア、建設

ニュース

(アフリカはいま)ナイル川、巨大ダムの衝撃 上流のエチオピア、建設

2019年8月19日
カテゴリー:

ナイル川のエチオピアに総貯水容量740億立方メートルの超巨大ダムの建設が進められていて、下流側のエジプトに深刻な影響が与えることが危惧されています。
なお、よく知られているアスワン・ハイダムはナイル川のエジプト側にあるダムで、総貯水容量1620億立方メートルのロックフィルダムです。1970年に完成しました。

(アフリカはいま TICAD7)ナイル川、巨大ダムの衝撃 上流のエチオピア、建設
(朝日新聞2019年8月18日05時00分) https://digital.asahi.com/articles/DA3S14143449.html?iref=pc_ss_date
(写真)建設中の「グランド・エチオピアン・ルネサンス・ダム」。左側が青ナイル川の上流=エチオピア北西部ベニシャングルグムズ、小森保良撮影

ナイル川流域とダム建設地
人口が急激に増加し、経済発展を続けるアフリカ大陸。エチオピアで今、成長を支えるアフリカ最大級となるダムの建設がナイル川上流で進められている。水資源をナイル川に頼る下流のエジプトを大きく揺さぶっている。(ベニシャングルグムズ〈エチオピア北西部〉=小森保良)
■経済成長、電力不足解消狙う
エチオピアの首都アディスアベバから北西に500キロの拠点都市アソサ。そこからデコボコ道を車で3時間かけて走る。スーダンとの国境に近い山間部に巨大なコンクリートの壁が現れた。建設中の「グランド・エチオピアン・ルネサンス・ダム」だ。
メインのコンクリート製ダムは全長1800メートル、高さ155メートル。さらに全長5千メートル、高さ50メートルの岩石などで造るロックフィル式の補助ダムが続く。
ダムの最上部から下をのぞき、目をこらすと地上の作業員が小さく見えた。「人はちっぽけな存在だが、偉大なものを築くことができる」。案内役の技術者が誇らしげに語った。
将来ダム湖となる上流部は木々が伐採され、荒涼とした黒い大地が広がる。その中をゆったりとした流れがダムに向かい、中央部に設けられたゲートを青ナイル川が通る。この流れは、スーダンで白ナイル川と合流し、大河ナイル川となってエジプトに向かう。
名前に付けられた「ルネサンス(再生)」には、かつて世界最貧国とされた時代から決別し、大きな飛躍を願う思いが込められた。
エチオピアは近年、年10%前後の経済成長を遂げている。国内総生産(GDP)は843億ドル(約9兆円)。この20年間で11倍近くに拡大した。人口もこの間、1・7倍以上に増加して約1億900万人に達した。
だが、電力は不足しており、送電線などの整備も途上にある。地方を中心に多くの人が明かりや炊事を牛ふんなどバイオ燃料に頼っているのが現状で、経済成長を支える海外企業の誘致にも電力インフラの拡充は欠かせない。このダムが稼働すれば、スーダンなどの周辺国への売電も視野にしており、国家収入の柱の一つになる。
この期待を一手に背負うダムの規模は桁違いだ。総貯水容量は740億立方メートルで、世界7位。日本最大の徳山ダム(岐阜県)の100倍以上の規模だ。発電能力は全16基の発電タービンで合計6千メガワットになる。総工費は33億9700万ユーロ(約4千億円)とされ、国民や在外エチオピア人に向けた国債を発行して多くをまかなう形を取っている。
■「流域国、協調を」
水資源をめぐる政治学を専門とするアディスアベバ大学のヤコブ・アサノ教授は、このダムの建設を「上流の流域国が水資源利用の正当な権利を行使できる時代が到来したことの象徴だ」と話す。
エチオピアはナイル川の上流に位置するにもかかわらず、その水利権を下流域の国に無視されてきた。
ナイル川の取水権は1959年にエジプトとスーダンが協定を結び、エジプトが8割、スーダンが2割を持つとされた。エチオピアなどの上流域国が水資源を利用するプロジェクトを実施するには、エジプトに監督権があるとされた。エチオピアは反発し続けたが、地域大国エジプトとの力関係は明白だった。ダム建設は、エジプトの影響力低下を如実に物語っている。
アサノ教授は協定の有効性はすでに消滅しているとしつつ、「エチオピアが電力供給拠点となれば、エジプトはそれを利用した工業振興につなげられる。スーダンは地域の食糧供給拠点になる。このダムが契機となり、水資源を有効活用する流域国の協調の枠組みができる」と語った。
関係者によると、ダム本体は80%、発電施設は60%ほど工事が完了している状況だという。エチオピア側は近く貯水を開始し、2022年にも発電設備を稼働させる意向だ。
■下流のエジプト、危機感 人口増、水不足に拍車の恐れ
エチオピア政府は下流への流量を変えないと強調している。だがエジプトの警戒心は強い。
「ナイルの水が2%減っただけで、農民ら100万人が収入を失うとの試算がある」
ムハンマド・アブドルアティ水資源灌漑(かんがい)相は朝日新聞の取材にこう強調した。 エジプトは水資源の約95%をナイル川に依存しており、そのうち青ナイル川の流量は80%以上を占める。アブドルアティ氏は「ナイル川に全面的に依存する我が国が、リスクを排除することは当然の権利だ」とし、科学的なダムの影響調査の必要性を訴えた。
調査実施について、15年にスーダンも含めた3カ国が合意し、調査は始まったが、結果がまとまる時期ははっきりしていない。エジプト側は結果を踏まえて、貯水にかける期間や量などをエチオピアと協議したい意向だが、エチオピアが調査結果を待たずに貯水を始めるのではとの懸念も出ている。
アブドルアティ氏は、ダムがナイル川の水量に影響を与えれば、社会の混乱を招き、不法移民の増大やテロ組織の伸長さえ想定されているとした。
■生命線に「蛇口」
エジプトの人口は00年に6883万人だったが、18年には9842万人となり、1億人突破は目前。人口増に伴い、水の需要も高まっている。国連食糧農業機関(FAO)によると、1人あたりの年間の水消費は14年で700立方メートルだが、30年には「絶対的な不足」とされる500立方メートルを割り込むことが予想されている。この予想にはダム建設による影響は考慮されていない。まさに生命線である青ナイル川に「蛇口」を取り付けられ、エジプトの命運をエチオピアに握られる形だ。
ダムを巡っては、ムルシ前政権下では、与党議員がダム建設阻止のために軍事行動を示唆するなど強硬姿勢も目立った。しかし、14年に誕生したシーシ政権は、ダム建設を容認する姿勢を示す。現実に建設阻止は不可能と判断したとされる。ただ、ナイル川の流量を変化させるなどの悪影響を排除することが絶対条件としてきた。
水資源問題が専門のナーデル・ヌールエルディン・カイロ大学教授は「このダムはあまりにも巨大過ぎる」と指摘。貯水時の下流への流量変化やダム湖からの大量蒸発、地下への浸水などの可能性が排除できないという。また、その規模ゆえに想定外の事態が起きた場合、エジプトが被る影響は甚大だとし、「国の存亡にも関わる」と警鐘を鳴らした。
ヌールエルディン氏は「リスク回避のため、今後のエチオピアとの協議が重要だ」とした上で、「協議で折り合わなければやがて紛争となり、『水戦争』になる可能性もはらんでいる」と語った。
◆キーワード
<ナイル川> アフリカ東部ビクトリア湖に流れ込む河川を支流とする白ナイル川と、エチオピアのタナ湖周辺を源流とする青ナイル川がスーダンで合流、エジプトから地中海に注ぐ。長さ6695キロで「世界最長」とされる。一方、アマゾン川は6516キロで「世界2位」とされるが、新たな支流の発見などからナイル川より長く世界最長とする報告もある。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

↑ このページの先頭へ戻る