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報道

ダム事前放流のガイドラインの策定(国土交通省)

2020年4月23日
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利水のための貯水容量を治水に活用するダムの事前放流について、国土交通省がガイドラインを策定しました。国土交通省の発表は下記の通りです。その記事も掲載します。
総理官邸に「既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議」https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kisondam_kouzuichousetsu/
が設置され、昨年11月26日、12月12日、昨日(4月22日)会議が開かれ、事前放流ガイドラインが策定されました。
記事にある「(事前放流によって)貯水量が不足した場合の(利水事業者への)補填」は、ガイドラインに次のように書かれています。(11~12ページ)

【損失補填制度】
Ⅰ 損失補填を受けることができる施設等
国土交通省及び水資源機構が管理するダム及び河川法第 26 条の許可を受けて1級水系に設置された利水ダムを対象とする。
Ⅱ 損失補填の内容
損失補填とは、事前放流に使用した利水容量等が回復しないことに起因して、従前の機能が著しく低下し、かつ、気象庁による降雨予測と実績とに著しい相違が生じたことに合理的理由がある場合、機能回復のために要した措置等について、利水事業者の申し出に基づき、地方整備局等と利水事業者(利水ダムの管理者およびダムに権利を有する者。以下同じ。 )が協議の上、必要な費用を堰堤維持費又は水資源開発事業交付金により負担するものである。」

記事に書かれている通り、自治体が管理する河川に設置しているダムは補填の対象外です。

すなわち、補填の対象は一級水系の国の直轄区間にあるダムであって、一級水系の指定区間(都道府県管理区間)および二級水系にあるダムは補填の対象になりません(国土交通省水管理・国土保全局河川環境課水利係に確認)。

事前放流をするためはダム集水域の雨量を予測することが必要ですが、実際には量的にきちんと予測することが結構難しく、事前放流が空振りになることが少なくありません。
また、事前放流さえすれば、緊急放流を回避できるというものではありません。
2018年7月の西日本豪雨において愛媛県・肱川の野村ダムと鹿野川ダムはそれなりの事前放流をしていましたが、それでも凄まじい緊急放流を行ってダム下流域の大氾濫を引き起こしました。

国土交通省 「事前放流ガイドラインの策定について」
令和2年4月22日 http://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo04_hh_000064.html
水害の激甚化等を踏まえ、ダムによる洪水調節機能の早期の強化に向け、関係行政機関の緊密な連携の下、総合的な検討を行うため、令和元年11月、「既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議」が設置され、令和元年12月に同会議で策定された「既存ダムの洪水調節機能の強化に向けた基本方針」に基づき、関係省庁が連携して取り組みを進めてきています。
今般、同基本方針に基づき、国土交通省において、ダムの事前放流の実施にあたっての基本的事項を定める事前放流ガイドラインを策定しました。
本ガイドラインは、本日開催された「第3回既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議」において確認され、策定したものです。
報道発表資料
1.事前放流ガイドライン 概要  http://www.mlit.go.jp/report/press/content/001341536.pdf
2.事前放流ガイドライン 本文 http://www.mlit.go.jp/report/press/content/001341537.pdf
(ダム事前放流ガイドライン 国交省 2020年4月22日)
(参考)関連資料
○既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kisondam_kouzuichousetsu/
○既存ダムの洪水調節機能強化に向けた基本方針
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kisondam_kouzuichousetsu/pdf/kihon_hoshin.pdf

ダム事前放流は3日前開始 国指針、水不足の補填も
(日本経済新聞2020/4/22 18:56)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58361400S0A420C2CR8000/

国土交通省は22日、大雨に備え、ダムにためている発電や水道用の水を事前放流する際のガイドラインを定めた。どれほどの雨が降れば下流で洪水が起こるかをあらかじめ算出しておき、気象庁の予報雨量がその基準を上回る場合、3日前から放流を始めることを基本とした。
予報より雨が少なく利用できる水が足りなくなった場合、火力発電を増やしたり、給水車を出動させたりするための費用を国が補填することも明記した。
多くのダムの空き容量を増やしておけば洪水予防に役立つため、政府は昨年の台風被害を踏まえ、国や自治体、電力会社などが管理するダムで事前放流を促進する方針を決めていた。
大雨シーズンに備え、今後、ダムごとに最低限残しておく水量などを決める。国管理の河川では先行して利水関係者との協議が進んでおり、5月末までに全国で事前放流に関する協定を水系ごとに整える。
貯水量が不足した場合の補填は、ダム管理者が事前放流をためらうことがないようにするのが目的。ただ自治体が自ら管理する河川に設置しているダムは対象外になる。〔共同〕


事前放流で指針策定/利水ダム洪水調節活用/国交省

(建設通信新聞 2020/4/23 ) https://www.kensetsunews.com/archives/445887

国土交通省は、利水ダムを含む既存ダムを洪水調節に活用する政府の方針に基づき、事前放流ガイドラインを策定した。国交省所管ダムと河川法第26条の許可を得て設置された利水ダムを対象に、事前放流を開始する基準や貯水位低下量、最大放流量、中止基準の設定方法など、事前放流の実施に当たって基本的な事項を定めた。事前放流後に水位が回復しなかった場合の対応も盛り込んでいる。
22日に開かれた政府の「既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議」で決定した。
洪水調節容量が設定されていない利水ダムは、発電や都市用水などの補給で貯水位を高く維持しなければならず、事前放流後に利水容量が回復しない場合に利水者が損失を被ることが、事前放流を拡大する上で課題だった。
ガイドラインは、水位が回復しないでダムからの補給による水利用が困難になる恐れが生じた場合、河川管理者がダムの貯留制限緩和の可能性や取水時期変更の可能性など必要な情報を利水者に提供し、関係者間の水利用の調整が円滑に実施されるよう努めると明記。国交省が20年度に創設した損失補填制度の詳細も記し、必要な水量を確保できず、利水者に特別の負担が生じた場合に制度を活用できるとの見解を示している。
政府の検討会議は、既存ダムの洪水調節機能の強化に向けた基本方針を2019年12月に決定。19年の台風19号を踏まえ、緊急時に既存ダムの有効貯水容量を洪水調節に最大限活用できるよう、国交省を中心に関係省庁が密接に連携して速やかに必要な措置を講じることを決めた。事前放流ガイドラインは取り組みの1つと位置付けている。

質問なるほドリ ダムの洪水対策が進むの? 「利水」用でも事前放流 国がガイドライン作成=回答・山本佳孝
(毎日新聞東京朝刊2020年5月9日) https://mainichi.jp/articles/20200509/ddm/003/070/112000c

(写真)放流するダム=相模原市緑区で2019年10月、本社ヘリから宮本明登撮影
なるほドリ そろそろ雨の季節だね。2019年にはたくさんの川で洪水(こうずい)が起きたから、ダムの機能が強化されるって聞いたよ。
記者 日本には1500基(き)近くのダムがありますが、洪水を防ぐ「治水(ちすい)」機能を持つのは全体の4割にとどまります。6割は上水道や発電、農業用といった「利水(りすい)」目的のみで水をためているダムです。そこで国はこの夏から、利水ダムにも治水の役割(やくわり)を担(にな)ってもらおうとしています。

Q どういうことをするの?
A 利水ダムに「事前放流(じぜんほうりゅう)」をしてもらうのです。事前放流とは、大雨が降る前に利水用の水をダムの外に流すことです。ダムの空き容量(ようりょう)を増やして水をためられるようにし、下流の川で洪水が起きるのを防ぎます。これまで、事前放流に応じる利水ダムは限られてきました。そこで国土交通省(こくどこうつうしょう)は4月、多くの利水ダムに協力してもらおうと、事前放流に関するガイドラインを初めて作ったのです。

Q どういう内容なの?
A まずは各ダムで、どれくらいの雨が降れば下流の川で洪水が起きるのかという基準降雨量(きじゅんこううりょう)を設定しておきます。気象庁(きしょうちょう)の予報雨量がそれを上回った時、早ければ3日前から放流の判断を始めましょうという内容です。国は5月末までに、特に重要な川である「1級水系」のダムを管理する電力会社や土地改良区(とちかいりょうく)、自治体と治水協定を結ぶ予定です。

Q でも予報通りに雨が降らないと、利水用の水がなくなって困るんじゃないかな。
A ガイドラインでは貯水量(ちょすいりょう)が不足した場合の補塡(ほてん)策も示しています。水力発電の代わりに火力発電を増やしたり、取水制限(しゅすいせいげん)で給水車を出動(しゅつどう)させたりした時の費用について、国が補います。既存(きぞん)のダムをフル活用し、洪水対策にあたる構えです。(社会部)

 

 

 

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